第一種低層住居専用地域とは何かわかりやすく解説|メリットや第二種との違いも紹介

投稿日 : 2020年06月04日/更新日 : 2023年06月03日

用途地域の一種である第一種低層居住専用地域は、住環境の良さから高級住宅街として人気です。

また、静かなセカンドライフを過ごす場所として選ぶ方も多くいます。しかし、同時にデメリットもあり、それらを買主様に理解していただくことが大切です。

今回は、第一種低層居住専用地域の基本的な知識や営業活動を行う上での注意点について解説します。

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第一種低層住居専用地域とは

用途地域とは

都市計画法により、住居・商業・工業など土地の用途が定められた地域を「用途地域」と言います。用途地域の詳細については以下のページをご参照ください。

あわせて読みたい:制限が多く複雑な用途地域についてわかりやすく解説します

 

第一種低層住居専用地域とは

第一種低層住居専用地域は、「低層住宅の良好な環境を守るための地域」として都市計画法で定められた用途地域のうちの1つです。13の用途地域のうち、第一種低層住居専用地域はひときわ厳しい制限が設けられています。

建物の高さは10m、もしくは12mに制限(絶対高さ制限)されているため、3階以上のビルやマンションなど大規模な建物は建てられない地域となります。

また、建ぺい率や容積率、外壁後退の制限があるため、敷地いっぱいに建物が建てられているということがなく、ゆったりとした2階建ての戸建てが多く見られるという特徴があります。

大規模商業施設や工場が立つ予定もないので、日当たりのいい閑静な住宅街の環境が続く地域と言えます。

 

第一種低層住居専用地域の用途制限

 

第一種低層住居専用地域の用途制限は以下のとおりです。

建ぺい率 30~60%(10%きざみ)
容積率 50~200%の範囲内(6種類)
絶対高さ制限 ~10m、~12m
外壁後退

(敷地の端から住宅までの距離)

1m、1.5m
道路斜線制限

 

適用距離 ~20m、~25m
勾配 1.25
北側斜線制限 立ち上がり 5m
勾配 1.25
日影制限 対象建築物 軒高7m超または3階以上
測定面 1.5m
規制値 3-2h/4-2.5h/5-3h
敷地面積の最低限度 200㎡以下の数値

 

第一種低層住居専用地域と第二種低層住居専用地域との違い

第一種低層住居専用地域と第二種低層住居専用地域の違いは、店舗の建築ができるかどうかです。

第一種低層住居専用地域では店舗の建築は禁止されているのに対して、第二種低層住居専用地域は、床面積150㎡以内で2階建てまでの店舗や飲食店を建てることができます。

ただし、コンビニエンスストアに関しては、近年高齢化により買い物弱者が増えてきているため、条件をクリアすれば、第一種手相住居専用地域でも建てることができるようになってきています。

 

第二種低層住居専用地域の詳細については以下のページをご参照ください。

あわせて読みたい:第二種低層住居専用地域について不動産営業マンが知っておくべきこと|第二種低層住居専用地域についてのまとめ

 

第一種低層住居専用地域のメリットとデメリット

第一種低層住居専用地域におけるメリット・デメリットは以下のとおりです。

 

第一種低層住居専用地域のメリット

第一種低層住居専用地域における一番のメリットは、住宅環境の良さです。

騒音や光害などと無縁で、隣接する民家とも距離があるため、日光に関するトラブルも起きにくくなっています。第一種低層住居専用地域はいわゆる高級住宅街と呼ばれることも多いため、ご近所トラブルも起きにくいと言われています。

また、建ぺい率の低さから建物利用されていない面積が増え、必然的に緑豊かな街になるため、緑に囲まれた生活を送ることができます。

 

第一種低層住居専用地域のデメリット

第一種低層住居専用地域は快適な住環境を目的とした地域ですが、コンビニエンスストアやスーパー、ショッピングモールなどは建設することができません。ちょっとした買い物に行きたいときも手間がかかるため、自転車がないと不便に感じてしまう方が多くいます。

しかし、2019年から騒音対策や営業時間を短縮するなどの条件をクリアできれば、コンビニエンスストアなどの店舗を建設することができるようになっています。住民の理解を得る必要もあり、簡単にこれらのお店が充実するとは言えませんが、これまでに比べて便利にはなるでしょう。

また、駅から離れている場所も少なくないため、移動は少々不便になります。

その他、病院や大型商業施設がないということにも注意が必要です。

保育園や小中学校、高校は建てることができますが、建物の高さは制限されます。保育園や幼稚園は問題ないことが多いですが、小中学校、高校に関しては実際は建設しづらいため、学校の近くに住むことは難しくなります。

 

第一種低層住居専用地域で建てられる建物と建てられない建物

第一種低層住居専用地域における建物の制限については以下のとおりです。

第一種低層住居専用地域で建てられる建物

第一種低層住居専用地域は住居専用地域のため、住みやすさを重視しているという特徴があります。そのため、建てることができる建物・施設も限られています。

建築可能な建物・施設は、以下のとおりです。

  1. 住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿、小規模な店舗又は事務所兼自宅
  2. 幼稚園、小学校、中学校、高校、公衆浴場、老人ホーム、交番、図書館

第一種低層住居専用地域で建てられない建物

騒音の原因となる可能性がある建物や、工場など、安全面に配慮が必要になる建物は建てることができません。

制限のある建物は以下のとおりです。

  1. 大学、専修学校、病院
  2. 住宅を兼用しない店舗
  3. 住宅を兼用しない事務所や
  4. 工場
  5. ホテル・旅館
  6.  遊戯施設・風俗施設(パチンコ店、ボーリング場、スケート場、プール、映画館など)
  7. 自動車教習所
  8. 倉庫業の倉庫
  9. 駐車場

 

土地の区分の確認方法

その土地がどの用途地域に指定されているかは、各自治体の役所で調べる事が可能です。

また、インターネットで「〇〇市 用途地域」と検索すれば、役所が提供している情報を確認することもできます。

また、不動産業者は宅建業法によって、土地の購入時に詳細な説明をすることを義務付けられています。お客様から土地の分類について質問されたときは丁寧に答えられるようにしましょう。

 

各地域の特徴を理解した営業

第一種低層住居専用地域は、住みやすさとしてはトップクラスであるため、高級住宅街として人気です。マンションやアパートが建つことがなく、ゆったり暮らせるので、静かなセカンドライフを過ごすのに向いた場所と言えます。平屋の広々とした日当たりの良い一軒家を建てたいという方には特におすすめです。

しかし、「高級住宅街」というブランドエリアに家を建てたいという気持ちだけで選ぶと後悔してしまうことがあります。

多少人が多くても商店街やスーパーマーケットの近くが良いという方には、第一種中高層住居専用地域、閑静な住宅街に住みたいけどコンビニは必要という方には第二種低層住宅地域など、地域の特性とお客様の希望をよく理解し提案していくことが大切です。

 

営業活動を行う上での注意点

用途地域については、不動産重要事項説明書の「建築基準法に基づく制限」の項目で、相手に説明することが義務付けられています。

また、他の用途地域と比較しても建ぺい率や容積率などの制限が厳しいため、土地の広さに対して建物は小規模なものになってしまいがちです。

一般的な感覚で建物を想定してしまうと、計画の段階で一気に覆されてしまう場合もあります。

用途制限地域のため一見坪単価が低く見えても、トータルの土地代はかえって高くなるケースも見受けられます。このあたりの注意点をお客様に説明し、理解を得た上で進めていくことを意識していきましょう。

 

まとめ

第一種低層住居専用地域は、静かでゆったりとした住環境が魅力です。しかし、近くに商業施設や病院がないという不便な面もみられます。

お客様の希望や地域の特性を理解し、生活する上での利便性、快適性どちらを優先するのかを考え提案できるようにしましょう。

 

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。