建築士とはなにか?仕事内容と建築士試験について解説
建築士の仕事自体はとてもメジャーなので、名前だけは知っていても、仕事内容までは理解していない人もいるのではないでしょうか。 そこで本記事では、建築士は建築の現場においてどんな役割を持った職業なのか、1級・2級建築士がそれ
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容積率は、建ぺい率と同じく住宅を建築するためには欠かすことができない数値基準です。また、その基準において幾つかの制限がある点も建ぺい率と同じです。
しかし、容積率には緩和の特例があります。
今回は、この容積率緩和の特例を中心に容積率について解説していきます。
これを機に容積率への理解を深めていきましょう。
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この記事の監修者: 小林 紀雄 住宅業界のプロフェッショナル某大手注文住宅会社に入社。入社後、営業成績No.1を出し退社。その後、住宅ローンを取り扱う会社にて担当部門の成績を3倍に拡大。その後、全国No.1売上の銀座支店長を務める。現在は、iYell株式会社の取締役と住宅ローンの窓口株式会社を設立し代表取締役を務める。 |
容積率とは建物を建築する土地の面積である敷地面積に対する建物の床の面積である延べ床面積の割合をパーセンテージで表したもので、その土地に対してどのくらいのサイズの建物が建築できるかを示す基準になります。
わかりやすく言い換えると、容積率とは建物の延べ床面積と土地の面積の割合を表し「この土地に建築できる建物はこの大きさまで」という基準に使われます。
建物を建築するためのもう1つの基準には建ぺい率があります。
建ぺい率についてはこちらを参考にしてください。
あわせて読みたい:イメージが湧きにくい建ぺい率を具体例も含めてわかりやすく解説
容積率は土地の面積に対する建物の延べ床面積の割合をパーセンテージで表したものですが、これを計算式に表すと以下のようになります。
容積率(%)= 建物の延べ床面積 ÷ 敷地面積 × 100 |
この計算式から算出された容積率が、各用途地域で定めた基準を上回ると、違法建築物になります。
当該用途地域に建築を行う際は、容積率がその基準を下回らなければなりません。
例:建物の延べ床面積1階70㎡・2階50㎡ 敷地面積100㎡ 一般住居の場合
建物の延べ床面積(1階+2階)120㎡÷敷地面積100㎡×100=容積率120%
容積率は120%になります。
なお、建物の延べ床面積は全ての階の床面積を合算します。
容積率は、用途地域による制限を受け➀指定容積率と②基準容積率の2つの基準があり、この2つのうち厳しい方の基準が実際に制限として適用されます。
用途地域とは地域地区の1つで住居・商業・工業系に大別され全部で13種類あり、市街化区域では必ず用途地域を定めることになっています。
用途地域の詳細についてはこちらを参考にしてください。
あわせて読みたい:制限が多く複雑な用途地域についてわかりやすく解説します
➀指定容積率
指定容積率とは、用途地域ごとに定められた容積率で各地域ごとに数値が異なっています。
用途地域における指定容積率は以下のとおりです。
用途地域 | 指定容積率(%) |
第一種低層住居専用地域 | 50・60・80・100・150・200 |
第二種低層住居専用地域 | |
田園住居地域 | |
第一種中高層住居専用地域 | 100・150・200・300 |
第二種中高層住居専用地域 | |
第一種住居地域 | 200・300・400 |
第二種住居地域 | |
準住居地域 | |
近隣商業地域 | |
準工業地域 | |
工業地域 | |
工業専用地域 | |
商業地域 | 200・300・400・500・600・700・800・900・1000 |
②基準容積率
基準容積率は、該当する用途地域に接する道路の幅が12m未満の場合に、指定容積率よりも基準が厳しくなるケースで適用される容積率です。
複数の幅12m未満の道路に接している場合は幅が広い方の道路を、また、2項道路の場合は幅を4mとみなして計算を行います。
実際の計算方法は道路幅に対して、用途地域で定めた係数を掛けて算出します。
例えば、第一種中高層住居専用地域の指定容積率は300%ですが、これに幅6mの道路が接している場合は「6m×40(係数)=240%(基準容積率)」となり、このケースで適用されるのは、より基準が厳しい240%の基準容積率のほうになります。
用途地域ごとにおける係数は以下のとおりです。
用途地域 | 係数 |
第一種低層住居専用地域 | 40 |
第二種低層住居専用地域 | |
田園住居地域 | |
第一種中高層住居専用地域 | 40(特定行政庁指定の区域は60) |
第二種中高層住居専用地域 | |
第一種住居地域 | |
第二種住居地域 | |
準住居地域 | |
近隣商業地域 | 60(特定行政庁指定の区域は40・80) |
準工業地域 | |
工業地域 | |
工業専用地域 | |
商業地域 |
容積率は、市役所など各役所の都市計画課に問い合わせることで確認ができます。
また、建ぺい率や用途地域も同様に都市計画課で確認することが可能です。
名古屋市では上記のような形で公開されています。
容積率は、画像中央の上から順に「1種中高・200」「近隣・300」「近隣・400」と書かれているのがわかります。
容積率は、用途地域による制限を受けますが、以下のような理由から基準が緩和される特例も多く認められてます。
市街地の景観や良好な生活環境を維持するために建築できる建物を規制することは重要ですが、規制緩和を行い民間業者への負担を軽減することで、建設需要の増加や、自由度の高い発想による建築などが見込まれ、都市再生にも繋がります。
国や自治体などは近年、市街地における都市再生に力を入れており、都心部への居住を促すために今までにはなかった新しい街づくりを進めています。
そのために、上記のような規制緩和を行うことで需要を喚起しています。
容積率緩和の特例は、建ぺい率と異なり、空間や設備など建物自体の構造物に直接関わってくる内容が多くあります。
この特例を上手に利用することで、より買主様の好みにあった家の建築が可能になります。
建築する建物に地下室がある場合は、住居として生活を行う建物の延べ床面積のうち3分の1までを容積率の計算から除外することができます。
例:敷地面積100㎡ 容積率60% の場合
通常建築できる建物は延床面積60㎡までですが、地下室がある場合は3分の1が除外されるため「60㎡×3分の2=90㎡」よって延床面積90㎡まで建築可能です
ベランダやバルコニー、庇(ひさし)といったものには、建物の外壁から突き出している部分が1m以内であれば建築面積として計算はされません。
出窓も同様の計算を行いますが、下記の条件が追加されます。
ロフトや屋根裏収納に関しては、該当する階の床面積の内1/2までを容積率の計算から除外することができます。
1/2を越えてしまうと、さらにもう1階増えてしまうことになるため、注意が必要です。また、屋根裏収納などの高さは140㎝以下と決められています。
吹き抜けがある場合は、吹き抜け自体に床は存在しないため、床面積に含まず、計算から除外することができます。
また、吹き抜け部分に階段が隣接して設置されている場合は、階段を含めた面積が建築面積を算出する計算の対象外となります。
建物の1階部分にガレージ(いわゆるビルトインガレージ)を設置した場合、建物の延べ床面積のうち5分の1までを容積率の計算から除外することができます。
幅が15m以上の道路はいわゆる特定道路にあたり、特定道路から分岐した道路と隣接する一定の範囲内における土地については容積率が緩和されます。
また、該当する敷地の前面に接する道路の幅が6m以上12m未満で、特定道路に至る距離が70m以内の場合はそれぞれの距離に応じて容積率を加算することができます。
ちなみに、特定道路までの距離とは、該当する敷地から特定道路まで最短で到達する距離のことを指します。
マンション内の住居のことを専有部分といい、エレベーターや階段・廊下・エントランスホールといったマンションの住民が共同で利用する部分は共用部分と呼ばれます。
マンションの共用部分に関しては建物の延べ床面積としての計算は行わず、また容積率としても算入されません。
用途地域によって定められている容積率の基準をオーバーすると、以下のようなペナルティが課されることになります。
➀違反建築物として取り扱われる
②住宅ローンや銀行の担保が組めない
容積率の基準をオーバーしたときについてはこちらを参考にしてください。
あわせて読みたい:イメージが湧きにくい建ぺい率を具体例も含めてわかりやすく解説
建築または購入する建物が容積率の基準内かどうかを前もって確認するようにしましょう。
今回は、容積率の制限と緩和を中心に紹介してきましたが、それ以外にも建ぺい率をはじめ建物を建築するにあたってたくさんの制限があります。
容積率以外の制限についてはこちらを参考にしてください。
あわせて読みたい:さまざまな建築制限とその解除についてまとめてみた
一昔前までは、長方形の形をした団地や建売住宅など同じ様なデザインの住宅が多くを占める時代がありました。
しかし、近年はモダンな形をしたマンションや、吹き抜けや1階にガレージを設置した家など個性のある住宅が続々と誕生しています。
容積率緩和の特例を理解し、買主様のニーズに応えていきましょう。