【日影規制を徹底解説】不動産営業が知っておきたい基礎知識とデータの読み方

投稿日 : 2020年03月14日

不動産の販売にあたっては、建築基準法上の制限をクリアしていることが絶対条件です。

制限の内容によっては、買主様の希望通りの住宅を建てられない可能性もあります。しっかり説明して買主様に納得して頂くためにも、営業が正しく法令を理解しなければなりません。

今回は、建築基準法の制限の1つである日影規制に焦点を当てて解説していきます。

kobayashi この記事の監修者:
小林 紀雄
住宅業界のプロフェッショナル

某大手注文住宅会社に入社。入社後、営業成績No.1を出し退社。その後、住宅ローンを取り扱う会社にて担当部門の成績を3倍に拡大。その後、全国No.1売上の銀座支店長を務める。現在は、iYell株式会社の取締役と住宅ローンの窓口株式会社を設立し代表取締役を務める。

 

日影規制とは

日影規制の読み方は、「ひかげきせい」あるいは「にちえいきせい」と読みます。高層ビルやマンションが建築されたことで、日照権の侵害を訴える訴訟が度重なり生まれた規制です。

中高層建築物の北側に隣接する敷地が日影になる時間の基準を設けることにより、日照時間の保障と建築物の高さ制限を行うことができます。

太陽光が当たらないことによって相手の「日照権」を侵害してしまうために、一定の制限を設ける必要があるのです。

 

画像引用:静岡県|用語解説:日影規制

 

対象となる中高層建築とは、地方自治体が条例で指定する区域内のものであって、原則として高さ10mを超える建物のことです。

高さ制限を超える中高層建築物を建築する場合、冬至(12月22日)の午前8時から午後4時まで一定の時間、隣地に日影を生じさせないものとする必要があります。

中高層住宅が対象であることから、一般的な2階建ての住宅が規制の対象になることはありません。

 

用途地域による規制の違い

用途地域とは、都市計画法で定められた用途によって指定されるエリアのことです。用途に応じて住宅系、商業系、工業系に分類されます。

このうち「9つ」の用途地域内において、自治体が設定した規制対象区域の一定の建物が日影規制の対象になります。

 

対象を受ける用途地域別の規制範囲は以下の通りです。

地域又は区域 制限を受ける建築物 種別 規制範囲(10m以内) 規制範囲(10m以上) 平均地盤面からの高さ
第一種低層住居専用地域

第二種低層住居専用地域

 

軒の高さが7メートルを超える建築物又は地階を除く階数が3以上の建築物

 

(一) 3時間(道の区域内にあつては、2時間) 2時間(道の区域内にあつては、1.5時間) 1.5m
(二) 4時間(道の区域内にあつては、3時間) 2.5時間(道の区域内にあつては、2時間)
(三) 5時間(道の区域内にあつては、4時間) 3時間(道の区域内にあつては、2.5時間)
第一種中高層住居専用地域

第二種中高層住居専用地域

高さが10メートルを超える建築物 (一) 3時間(道の区域内にあつては、2時間) 2時間(道の区域内にあつては、1.5時間) 4m又は6.5m
(二) 4時間(道の区域内にあつては、3時間 2.5時間(道の区域内にあつては、2時間
(三) 5時間(道の区域内にあつては、4時間) 3時間(道の区域内にあつては、2.5時間)
第一種住居地域

第二種住居地域

準住居地域

近隣商業地域又は準工業地域

 

高さが10メートルを超える建築物

 

(一) 4時間(道の区域内にあつては、3時間) 2.5時間(道の区域内にあつては、2時間)  

4m又は6.5m

(二) 5時間(道の区域内にあつては、4時間) 3時間(道の区域内にあつては、2.5時間)
用途地域の指定のない区域

 

 

 

 

 

軒の高さが7メートルを超える建築物又は地階を除く階数が3以上の建築物

 

 

(一) 3時間(道の区域内にあつては、2時間) 2時間(道の区域内にあつては、1.5時間) 1.5m

 

 

(二) 4時間(道の区域内にあつては、3時間) 2.5時間(道の区域内にあつては、2時間)
(三) 5時間(道の区域内にあつては、4時間) 3時間(道の区域内にあつては、2.5時間)
高さが10メートルを超える建築物

 

 

(一) 3時間(道の区域内にあつては、2時間) 2時間(道の区域内にあつては、1.5時間) 4m

 

 

(二) 4時間(道の区域内にあつては、3時間) 2.5時間(道の区域内にあつては、2時間)
(三) 5時間(道の区域内にあつては、4時間) 3時間(道の区域内にあつては、2.5時間)

※「商業地域」「工業地域」「工業専用地域」は規制の対象外となります。

引用元:建築基準法|第56条 e-Govウェブサイト

 

自治体による規制の違い

担当の物件が日影規制に該当するかは、市役所の建築指導課に連絡して直接確認を取ることがベターです。

日影規制の対象となるのは地方公共団体が条例で定めた区域に限られるほか、どの区分の規制が適用になるかは決まりがないため、自治体ごとに違います。

また、北海道に関しては「冬至日(12月22日)の午前8時から午後4時まで」ではなく、「冬至日(12月22日)の午前9時から午後3時まで」となります。

 

その他の規定

  • 都市計画区域または準都市計画区域内の建物であるならば、上記の用途地域外であっても地方公共団体が条例で指定すれば規制できます。
    規制する建築物の定義は「軒高7mを超える建物又は地階を除く3階以上の建物」です。
  • 同一の敷地内に2つ以上の建築物がある場合は、2つの建築物を1つの建築物とみなして日影規制が適用されます。
  • 日影規制の適用区域外の建物であっても、絶対に規制対象から外れるということはありません。高さ10m超で冬至日に日影規制区域内の土地に日影が生じるときは、日影規制の区域内の建築物であるとみなして日影規制が適用されます。

物件データにおける日影規制の読み方

用途地域図や物件データにおいて「日影規制4h-2.5h/1.5m」などと記載されていることがあります。

これは、「日影がかかっても良い制限時間」を表しています。

読み方としては、「冬至日の午前8時から午後4時までの間において、敷地境界線から5mを超える範囲なら4時間以上、10mを超える範囲なら2.5時間以上の日影を生じさせてはいけない」という意味になります。また、測定した地面からの高さは1.5mとなります。

日影規制に基づく「日影図」とは

対象となる建物の日影の動きを把握するための図面です。時間ごとの日影の動きを正確に把握することができます。中高層住宅における買主様への説明資料として活用されるほか、日照権に関する裁判の際には提出を求められることがあります。

 

画像引用|東京都大田区:日影規制

 

図のように時間ごとの影をかいたものが日影図です。たとえば、8時と11時の日影が重なる部分をみてください。ここは該当の3時間日影になることを表しています。

日影図をもとに、同じ時間のみ日影になる点を結んだ図もあります。そちらは「等時間日影図」と呼ばれています。

画像引用|東京都大田区:日影規制

 

例えば、第1種中高層住居専用地域の場合を考えてみます。条例において3時間、2時間という規定値が指定されている場合、3時間日影は5mライン、2時間日影は10mラインを超えてはいけないというのが決まりです。

日影図の作成はCADなど図面作成ソフトにある日影図作成機能を使用します。自分で作ることはなく、建築事務所へ依頼するのが一般的です。

日影図の作成に当たっては、「建物と高さの形状」「冬至日の太陽の方向と角度」の情報が必要になります。

 

日影規制以外の規制

日影規制以外にも、建築基準法で定められた制限は数多くあります。今回は「北側斜線制限」と「隣地斜線制限」について概要を紹介します。

 

北側斜線規制

北側に位置する隣地の日照時間を確保するため、隣地境界線との間に一定の空間を設けなければならないとする規制です。

対象区域は「第1種・2種低層住居専用地域」「第1種・2種中高層住居専用地域」の4つです。

建築物のうち、隣地境界線に接する部分の高さが低層住居専用地域であれば5m、中高層住居専用地域であれば10mに規制されます。

一方、採光や通風確保のための計算式(天空率)の基準に適合する場合は北側斜線規制は適用されません。

 

隣地斜線規制

建物を建築する際に、隣地境界線との間に一定の空間を設けるための規制です。

第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域はもともとの高さが隣地斜線規制より低いために対象外となります。

隣地境界線に接する部分の高さが、住居系の用途地域では20m、その他の用途地域は31mに規制されます。

北側斜線制限と同じく、天空率の基準に適合すれば隣地斜線制限は適用されません。

 

まとめ

今回は建築基準法の制限のうち、日影規制をメインに解説しました。各種法令について買主様に納得して頂くためには、営業が正確な知識をもって分かりやすく説明する必要があります。

建築基準法への理解を深め、買主様に適切なご説明やアドバイスができるようになりましょう。