供託所等に関する説明とは|営業保証金と弁済業務保証金分担金の違いを知る
不動産の売買契約をするときの重要事項説明では、必ず供託所等に関する説明を行います。
供託所等に関する説明とは、私たち宅建業者が信頼に足る会社であると証明する説明です。
今回は供託所と宅建業者の関係について、わかりやすく解説していきます。
供託所とは
そもそも供託とは提供寄託の略称であり、寄託には「物品などを他人に預け、その処置や保管を頼む」という意味があります。
つまり供託所とは、金銭の寄託を提供された先の保管場所のことを指します。
不動産業界でいうと、法務局や地方法務局・支局などが最終的な供託所になります。
不動産業を始めるときに必要な保証金供託
供託所に供託金を預け入れるのは、宅建業をはじめとする不動産業者を開業するときです。
不動産業を始めるためには国土交通大臣か都道府県知事の免許を取得するとともに、所定の保証金を納める必要があります。これが供託金です。
供託金は納め方により営業保証金と弁済業務保証金分担金の2種類に分かれます。どちらの場合でも、必要な営業保証金の金額は同じです。
営業保証金
営業保証金とは、不動産業者が直接法務局に供託する保証金です。
◎必要な営業保証金の額
主たる事務所(本店) | 1,000万円 |
その他の事務所(支店等) | 拠点数×500万円 |
関連記事:営業保証金とは何かわかりやすく解説|供託の目的や方法、期限なども紹介
弁済業務保証金分担金
弁済業務保証金分担金とは、保証協会の加入者が直接法務局に供託するのではなく、保証協会に納付する分担金です。保証協会は不動産業者の代わりに法務局へ供託金を納めます。保証協会については後ほど詳しくご説明します。
「弁済業務補償分分担金」制度で初期費用大幅減額
宅建業者として開業するには、多額の供託金を用意する必要があります。しかし保証協会に入会すれば、「弁済業務保証分担金」制度を利用でき、供託金の代わりに保証協会に入り「弁済業務保証分担金」を納めることで、開業の初期費用を大幅に減額することができます。
◆「弁済業務保証分担金」の金額
- 主たる事務所(本店)の場合…60万円
- 他の事務所(支店)…1店舗ごとに30万円
ただし、保証協会に入会すると、入会金や年会費または月会費が別途かかりますので、ご注意ください。
供託所等に供託金を預ける意味
営業保証金もしくは弁済業務保証金分担金は、一般消費者を守る目的で使われます。
業者の倒産などで直接弁済が受けられずお客様が泣き寝入りしてしまわないように、あらかじめ第三者が一定額を預かっておくシステムです。
不動産取引によりお客様に何らかの損害が発生したときには、供託された営業保証金や弁済業務保証金の範囲内で弁済を行います。
なお供託金による損害補償を受けられるのは一般消費者だけです。過去には宅建業者なども補償対象になっていましたが、現在では対象外になっています。
供託金は宅地建物取引業法の義務
宅建業者には供託金を預ける・預けないという選択権はありません。宅地建物取引業法
第25条により、全ての宅建業者には供託金の預け入れが義務付けられています。
第4章 営業保証金
第25条(営業保証金の供託等) 宅地建物取引業者は、営業保証金を主たる事務所のもよりの供託所に供託しなければならない。 |
逆に言えば、供託金をきちんと預け入れている宅建業者は正規の手続きを踏んで開業しているという証明になります。
供託金を預かる保証協会
先ほど保証金には営業保証金と弁済業務保証金分担金の2種類があると説明しました。
弁済業務保証金分担金を預かって宅建業者の代わりに供託所へ納付しているのが、各保証協会です。
日本には複数の不動産業界団体が存在しますが、ほとんどの宅建業者は全日(ぜんにち)もしくは全宅(ぜんたく)に所属していると考えられます。それぞれの業界団体に関連する保証協会を利用している宅建業者も多いでしょう。
各保証協会では弁済業務保証金分担金を預かり、実際に不動産トラブルが発生したときには、一般消費者との仲裁にもあたってくれます。
話し合いで解決できず、不動産業者側に過失があると認められたときには、不動産業者に代わり保証協会から弁済金を支払います。
以下では、2つの業界団体に関連する保証協会をご紹介します。
全日(全日本不動産協会)所属の場合
全日本不動産協会 、通称「全日(ぜんにち)」に所属している不動産業者の多くは、以下の保証協会に加入して弁済業務保証金分担金を支払います。
公益社団法人不動産保証協会(旧名称:社団法人不動産保証協会)
全宅(全国宅地建物取引業協会連合会)所属の場合
全国宅地建物取引業協会連合会 、通称「全宅)ぜんたく)」全宅(ぜんたく)に所属している不動産業者の多くは、以下の保証協会に加入して弁済業務保証金分担金を支払います。
保証協会関連記事はコチラ
▶ウサギの「全日」、ハトの「全宅」とは| 不動産業者団体を紹介
「供託所等に関する説明」とは
冒頭で申し上げたとおり、不動産契約の重要事項説明では必ず供託所等に関する説明を行います。
これは省略してはいけません。なぜなら重要事項説明で話すべき内容は宅建業法で定められており、不動産契約時には全ての項目を口頭で説明する必要があるからです。
供託所と重要事項説明の関連性について確認しましょう。
重要事項説明書の必須項目
重要事項説明で供託所等に関する説明を行わなければいけないと定めているのは、宅地建物取引業法第35条の規定です。
この規定を理解することにより、お客様がこれから締結する不動産契約で万が一トラブルが発生しても金銭的な保障が受けられること、その際の請求先はどこになるかをお伝えすることができます。
重要事項説明書の記載例
実際の重要事項説明書には、以下の「Ⅲ その他の事項」に供託所等を記載する項目があります。
画像引用(部分):国土交通省|重要事項説明書(売買・交換)(第八面)
媒介等を行った不動産会社が納めているのが営業保証金なのか弁済業務保証金分担金なのかで、記載する個所が違います。
営業保証金の場合は上記項目の(1)に、弁済業務保証金分担金の場合は上記項目の(2)に記載します。
こちらも合わせて参照ください。
▶重要事項説明とは?宅建業者の役割と上手く説明するポイントを解説
供託金の支払い金額
営業を開始するために法務局に支払う供託金の金額は、以下となります。
- 主たる事務所(本店)の場合…1,000万円
- 他の事務所(支店)…1店舗ごとに500万円
供託金での弁済が発生した場合、弁済上限額は供託金の金額と同額です。
そのため、納めた供託金額を上回る弁済を要する場合、不足分は宅建業者が支払うことになります。
供託手続きの方法
都道府県知事から「宅建免許通知」が郵送されてきたら、供託手続きが可能です。手続きは、不動産事務所を開設する地域を管轄する法務局やその支局・出張所にて行います。
営業保証金の金銭供託用の供託書に必要事項を記載し、供託金とともに提出します。供託するものは、現金以外にも有価証券や振替国債でも可能です。
その後、供託書を都道府県知事に提出し、完了となります。供託書の提出期限は、宅建免許取得日から3ヵ月以内と決められているので、手続きは速やかに行う必要があります。
また、2つ以上の都道府県に事務所を設置する場合は、国土交通大臣への申請が必要となるので、注意しましょう。
◆供託書の記載事項
- 宅地建物取引業者の住所・氏名または法人名・代表者の資格・氏名
- 宅地建物取引業者の免許番号
- 供託金額(訂正不可のため要注意)
- 代理人による供託の場合、代理人の住所・資格・氏名 など
まとめ
今回は供託所とは何か、供託金はどのように預け入れと支払いを行うのかについて解説しました。
高額な金銭を取り交わす不動産契約にこれから臨むお客様の多くは、内心不安な気持ちでいっぱいです。
供託所に関する説明を行ってお客様の不安を払拭して差し上げるとともに、自分の会社が信頼に足る宅建業者であると、誇りを持ってお伝えしましょう。
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