借地権の登記のメリット・デメリットをわかりやすく解説|やり方や必要書類・費用まで解説

投稿日 : 2020年04月18日/更新日 : 2023年06月03日

借地権には種類があり、地上権は登記が行われていることが多いですが、賃借権を登記するのは一般的ではありません。借地権は登記を行うべきなのでしょうか。

借地権や借地権の登記についてわかりやすく解説した上で、借地権の登記を行うメリット・デメリットをお伝えします。

 

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借地権の登記とは土地を借りる権利を登記すること

借地権の登記とは不動産登記の一つで、建物を所有することを目的に、土地を借りる権利を登記することをいいます。

借地権とは何か、借地権の種類について解説していきます。

借地権とは地主から土地を借りて使用する権利のこと

借地権とは、借地借家法2条で規定されているように、「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」です。

引用元:借地借家法2条

借地権は、単に土地を借りる権利を指すのではありません。建物を建てて自己所有することを目的として、地主から土地を借りて使用する権利という点が特徴です。

また、借地権が設定されている土地のことを底地と呼びます。

借地権については、『「借地権」とは|借地権付き建物の調査方法とメリット・デメリットを解説』で詳細に解説しています。

借地権の種類

借地権には旧借家法による借地権のほか、1992年8月に施行された新借地借家法による普通借地権、定期借地権という種類があります。

<旧借地法での借地権>

1992年8月以前から賃貸借契約をしている土地は、旧借地法による借地権です。土地を借りている借地人が希望する限り、半永久的に契約が更新されます。

旧借地権法による借地権では、建物の構造によって、契約期間が決められ、木造などの非堅固な建物は20年以上、RC造やSRC造などの堅固な建物は30年以上です。

契約期間の定めがない場合の契約期間は、非堅固な建物は30年、堅固な建物は60年とされていました。

<普通借地権>

普通借地権も借地人が更新を希望すると、地主は正当な事由がない限り、更新を拒むことができません。

建物の構造を問わず、契約期間は30年以上です。

更新後の契約期間は、1回目は20年上、2回目は10年以上とされています。

<定期借地権>

定期借地権とは期限を定めて土地を貸借し、契約期限の満了時には土地を地主に返還する契約形態です。

定期借地権には、一般定期借地権、建物譲渡特約付借地権、事業用定期借地権という種類があります。

一般定期借地権は契約期間を50年以上とし、契約の終了時には更地にして返す形態です。

建物譲渡特約付借地権の契約期間は30年以上で、契約の終了時には地主が借地人から建物を買い取ります。

事業用定期借地権の契約期間は10年以上50年未満で、契約の終了時には借地人は更地にして返還します。

定期借地権付きマンションについては、『定期借地権とは|特徴と契約満了時の取扱い・定期借地権付マンションを解説』で詳しく解説しています。

借地権の「地上権」と「賃借権」の違い

借地権には、地上権と賃借権という2つの権利形態があり、権利の強さや性質が異なります。

地上権と賃借権の違いについて解説していきます。

地上権の特徴は権利の強さ

地上権は民法265条で、「他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利」と規定されています。

引用元:民法265条

つまり、地上権とは、他人が所有する土地の地上や地下の空間を使って、建物を建てたり、道路を建造したり、樹木を植えたりすることができる権利です。

地上権の場合、地主に登記への協力義務があります。また、地主の承諾を得ることなく、第三者に地上権を売買したり、貸借したりすることもできます。

地上権は物を直接支配できる物権の一つであり、賃借権を比較すると、圧倒的に地上権の方が借地人の権利が強いのです。

賃借権は債権のため法的な効力が弱い

賃借権は賃貸借契約によるもので、契約内容に基づいて土地や工作物を使用できる債権です。

債権とは、債権者が一定の行為を債務者に請求できる権利であり、直接、物を支配できる物権よりも法的な効力が弱いです。

賃借権の場合、地主に登記の協力義務はなく、登記を行うには地主の承諾を得ることが必要です。

賃借権の譲渡や貸借も地主の許可なくできません。

地上権と賃借権を比較

地上権と賃借権の違いについて、権利の強さや登記、地代の支払いなどを比較して表にまとめました。

地上権 賃借権
権利の種類 物権 債権
権利の強さ 強い 弱い
登記の義務 あり なし
地代の支払い 規定なし(地代を設定するのが一般的) 必要
権利の譲渡時の地主の承諾 不要 必要
存続期間(契約期間) 自由
(建物の所有を目的とする場合30年以上)
20年以下
(借地借家法が適用される場合30年以上)
抵当権の設定 権利自体に設定可能 権利自体には設定不可

借地権の譲渡については、『借地権の売買は可能か|借主と地主の権利関係と取引における注意点』で詳しく解説しています。

借地権の対抗要件

対抗要件とは、法的な権利を第三者に明確にすることをいいます。

借地権は、地主が第三者に土地を売却した場合や、地震や火災によって建物がなくなってしまった場合において問題になることがあります。

借地人が借地権を主張できる対抗要件を備えているかが争点となりやすいため、しっかりと理解しておくことが大切です。

地上権の場合は登記ができるため、登記によって対抗要件を備えていることが多いです。

賃借権の場合は、地主に登記への協力義務がありません。

そのため、借地借家法では建物の登記による対抗要件も定められています。

<借地権の対抗要件のまとめ>

  • 借地権の登記(ただし、地主が協力しないかぎり登記をすることができない)
  • 土地の上に建物があり、借地人の名義で所有権が登記されている
  • 火災などによって建物が滅失した場合や、建て替えのため建物を取り壊し場合は、新たに建築することと建物の内容を記載した立て札を土地に立てる。ただし、2年間が限度。

不動産登記簿への借地権の記載

借地権が地上権の場合は、地主に登記への協力義務があり、登記が行われているのが一般的です。

一方、土地の賃借権の場合は、地主が承諾しなければ登記ができないため、登記されていないことが多くあります。

つまり、借地権が設定されていたとしても、土地の登記簿を見ただけでは借地権が設定されているかどうかわからないケースがあるのです。

借地権の登記はなしでも良いのか

原則として、不動産の対抗要件になるのは登記です。

借地権のうち地上権は、地主に登記への協力義務があり、対抗要件を備えるために登記を行うべきです。

一方で、賃借権の場合は、地主の承諾が得られなければ登記はできません。

しかし、借地人は自らの名義で建物の所有権を登記すれば対抗要件を備えることが可能です。

そのため、賃借権は必ずしも登記を行う必要はありません。

借地権を登記するメリット

借地権のうち、地上権は登記が行われているケースが多いですが、賃借権は土地所有者に登記協力義務がないため、登記が行われていないケースが大半を占めています。

ここでは土地所有者側、土地を借りている側の双方の視点から、借地権を登記するメリットをまとめました。

土地所有者のメリット

借地権の登記で、土地所有者にメリットがあるのは定期借地権のケースです。

  • 定期借地権の場合には、登記をすることで定期借地権であることを証明できる
    定期借地権のうち、一般定期借地権は公正証書以外の書面による契約も認められているため、契約書類を紛失すると定期借地権であることを証明できなくなります。万が一、借地人が契約期間の終了とともに土地を返還しなかった場合に、登記を定期借地権であることの証拠として、明け渡しを求められます。
  • 建物が譲渡された場合に第三者に対抗できる
    定期借地権の場合、底地に建つ建物が第三者に譲渡されたケースでは、登記によって定期借地権であることを主張できるため、契約期間の満了時に土地の返還を求められます。

土地を借りている側のメリット

土地を借りている借地人にも、借地権の登記によるメリットはあります。

  • 第三者に対して借地権を対抗できる
    土地が第三者に譲渡されたケースなどでは、建物を登記していれば第三者に対抗できますが、建物が滅失してしまうと対抗することができなくなります。立て札を立てて建物を建てる旨を明記しておけば、2年間は第三者に対して対抗できますが、登記があれば立て札を立てる必要がありません。
  • 地上権の場合は抵当権を設定できる
    地上権の登記を行うことで、建物以外に地上権にも抵当権が設定できるようになります。

借地権を登記するデメリット

借地権を登記することによるデメリットはあるのか、土地所有者と借地人のそれぞれの立場からみていきます。

土地所有者のデメリット

土地所有者にとって、借地権を登記することによるデメリットは、登記費用や手続きの手間がかかること以外ありません。

このデメリットの大きさは、登記費用を土地所有者と借地人のいずれが負担するかにもよるでしょう。

土地を借りている側のデメリット

借地人にとっても、借地権を登記することによるデメリットは、登記費用や手間がかかること以外はありません。

借地権設定登記の手続き方法

借地権の登記手続きは、電子申請で行う方法と書面で申請する方法があります。

書面で申請する場合は、申請書の作成と添付種類の準備を行い、対象となる不動産を管轄する法務局に申請します。申請にあたっては登録免許税の納付が必要です。

あらかじめ、登録免許税を銀行などで振り込んだ領収書を申請書に添付するか、登録免許税の税額分の収入印紙を申請書に貼付します。

法務局で審査が行われて処理が完了した後、法務局で登記識別情報と登記完了証を受け取ります。

次に、借地権設定登記に必要な費用や書類などについて、解説していきます。

登記に必要な費用

借地権設定登記には登録免許税がかかり、司法書士に登記手続き委託する場合は委託報酬も発生します。

「登録免許税」と司法書士費用について、それぞれ説明します。

「登録免許税」

登録免許税とは、登記手続きを行う際に国に納める国税です。借地権設定登記の登録免許税の税額は、以下の式で計算できます。

地上権又は賃借権の設定登記:登録免許税 = 固定資産税評価額 × (税率)1%

<計算例:賃借権の設定登記、固定資産税評価額2,000万円の場合>

2,000万円 × 1% = 20万円

固定資産税評価額は実勢価格の約7割とされていますので、2,800万円程度で売買されている土地の借地権設定登記にかかる登録免許税が、20万円が目安ということになります。

関連記事:登録免許税とは|不動産登記にかかる税金の計算と軽減措置について

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手続きを依頼するなら「司法書士費用」

借地権設定登記の手続きを司法書士に委託する場合には、委託報酬がかかります。

司法書士の委託報酬は事務所によって違いますが、地上権や賃借権の設定登記費用は、3万円程度からが相場です。

相続する場合に必要な「相続税」

借地権も、法定相続人は相続することが可能です。

ただし、遺言によって賃借権の遺贈を行う場合には地主の承諾が必要になり、承諾料が発生することがあります。地主が承諾しない場合には家庭裁判所に申し立てを行い、許可が出た場合には遺贈が可能です。

借地権の相続登記に必要な登録免許税は、地上権も賃借権も、固定資産税評価額の0.2%です。

また、借地権を相続する場合は相続税の対象になります。借地権の相続税評価額は以下の計算式で算出できます。

借地権の相続税評価額 = 自用地の相続税評価額 × 借地権割合

自用地とは他人の使用する権利のない土地のことをいい、自用地の相続税評価額は路線価方式や倍率方式と呼ばれる方法で算出されます。

借地権割合は地域ごとに国税局が設定しており、一般的に住宅地は60%~70%です。

登記に必要な書類

賃借権を登記する場合や、底地に建つ建物の所有権保存登記を行う場合に必要な書類を紹介します。

ただし、土地賃借権を登記するには地主の承諾が必要なため、賃借権を登記するケースは限られています。

そこで、土地賃借権の公正証書を組む場合に必要な書類についても触れていきます。

「賃借権の登記」に必要な書類

賃借権を登記するにあたって、地主と借地人が必要な書類は以下になります。

<地主>

  • 賃貸借契約書
  • 印鑑証明書
  • 登記識別情報又は権利証
  • 固定資産評価証明書
  • 実印
  • 本人確認書類(運転免許証や住民基本台帳カード、パスポートなど)
  • 委任状(司法書士に委託する場合)

<借地人>

  • 認印
  • 本人確認書類(運転免許証や住民基本台帳カード、パスポートなど)
  • 委任状(司法書士に委託する場合)

通常、司法書士に賃借権の設定登記を委託する場合は、賃貸借契約書の作成も併せて依頼します。固定資産税評価書は市町村の役所で取得することが可能です。

「所有権保存登記」に必要な書類

地上権は地主に登記への協力義務があるため、登記されるケースが多いですが、賃借権は地主の登記への協力義務がないため、登記はあまり行われていません。

しかし、土地の賃借権が登記されていない場合でも、建物の所有権保存登記を行うことは可能であり、第三者への対抗要件になります。

借地人が建物の所有権保存登記を行うには以下の書類が必要です。

  • 住民票の写し
  • 住宅用家屋証明書
  • 委任状(司法書士に委託する場合)

住宅用家屋証明書は、所有権保存登記などで登録免許税の軽減を受けるために必要な書類です。

住宅用家屋証明書は市町村の役所で取得できます。また、司法書士に所有権保存登記の手続きを委託する場合は、住宅用家屋証明書の取得も併せて依頼することも可能です。

「土地賃借権」を公正証書で組む場合に必要な書類

土地賃借権は地主の承諾がなければ、登記することはできませんが、公正証書を組むことは可能です。

事業用定期借地権は公正証書を作成して契約を行わなければ有効になりませんが、ほかの貸借契約においても公正証書を組むことによって、特に地主側にメリットがあります。

公正証書によって、定期借地権では契約期間や明け渡しの時期が明確になります。

また、借地人が賃料の支払い義務を怠った場合に強制執行するという特約を付けることも可能です。

土地賃借権の貸借契約で公正証書を組む場合に必要な書類は以下です。

<地主と借地人>

  • 「運転免許証やパスポート、写真入りの住基カードのいずれか+認印」又は「印鑑証明書+実印」

<地主や借地人が代理人を依頼する場合>

  • 委任者の実印のある委任状+印鑑証明書
  • 代理人の「運転免許証やパスポート、写真入りの住基カードのいずれか+認印」又は「印鑑証明書+実印」

<地主>

  • 賃貸借契約書

公正証書の作成にあたっては手数料が必要です。

まとめ

借地権のうち、地上権については登記を行うのが一般的ですが、賃借権については、地主の協力を得る必要が有り、登記を行うケースは限られています。

そこで、賃貸権では、第三者への対抗要件を備えるために、建物の所有権保存登記を速やかに行うことが大切です。

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。
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