登録免許税とは|不動産登記にかかる税金の計算と軽減措置について

投稿日 : 2020年04月22日/更新日 : 2023年06月03日

不動産取引では所有権移転登記などの登記手続きが発生し、登録免許税がかかります。

この登録免許税とはどういった税金なのでしょうか。

登録免許税とは何か、不動産取引以外で発生するケースに触れたうえで、登記の種類による税率の違いや軽減税率が適用される条件、計算方法などについて解説していきます。

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登録免許税とは何かわかりやすく説明

登録免許税とは、登記手続きを申請する際に納める国税です。

登記とは、一定の事項を法務局の登記簿に記録して権利関係を公示することをいいます。登記は取引を円滑に安全に行うために重要なものと位置付けられています。

そして、登記された情報は広く一般的に公開されており、誰でも法務局で手数料を支払って閲覧したり、登記事項証明書の交付を受けたりすることが可能です。

ここでは、登録免許税が課税される登記にはどんな種類があるのか、解説していきます。

不動産登記とは何かわかりやすく解説|不動産登記の種類や目的も紹介

不動産登記に課税

不動産登記とは、不動産である土地や建物の所在地や広さ、所有者の住所、氏名といった情報を法務局の登記簿に記録して、広く一般に公開することをいます。

不動産登記は登録免許税の課税対象になります。

会社設立の登記に課税

会社の登記とは、取引を行うときに重要とされる、会社の商号(社名)や本社所在地、事業の目的、代表者の氏名や住所といった事項を法務局の登記簿に記録して、一般公開することです。

株式会社や合資会社、合名会社、合同会社に関する登記は商業登記といいます。

また、一般社団法人や一般財団法人、医療法人社団、社会福祉法人、学校法人、宗教法人、特定非営利活動法人に関する登記は法人登記です。

商業登記にも法人登記にも登録免許税が課税されます。

会社の登記には、設立や移転、役員変更、称号変更、目的の変更、解散、清算結了といった種類があります。

その他の課税対象

登記には、不動産登記や会社の登記以外にも種類があり、以下のような登録も登録免許税の課税対象になります。

<その他の登記など>

  • 船舶登記
  • 債権譲渡登記
  • 航空機の登録
  • ダム使用権の登録
  • 著作権の登録
  • 出版権の登録
  • 特許権の登録
  • 実用新案権の登録
  • 商標権の登録

登録免許税が課税される不動産登記

登記に関わる登録免許税のうち、不動産登記に関する登録免許税について、詳しく解説していきます。

不動産登記とは

不動産登記とは、不動産である土地や建物の所在地や面積といった物理的状況や、所有者の氏名や住所、抵当権の設定の有無などの権利関係を法的に明らかにする制度です。

不動産登記をしていなければ、第三者に対して不動産に対する権利を主張することができません。

また、相続を繰り返す中で登記を失念していると、所有者が特定できない土地になってしまう恐れもあります。

また、登記をしていなければ、不動産を担保に融資を受けることはできません。

不動産登記の手続きを取引の当事者自身が行うケースは少なく、後述する表題登記は土地家屋調査士に、所有権保存登記・所有権移転登記・抵当権設定登記などは司法書士に委託するのが一般的です。

不動産登記には種類がある

代表的な不動産登記は、以下の種類があります。

<不動産登記の種類>

  • 土地表題登記
    国有地を譲り受けたケースなど、初めて土地を登記するときに、土地の所在や地番、地目、地積といった土地の物理的状況を登記すること。
  • 土地分筆登記
    1筆の土地を分割して、2筆以上の土地として登記すること。土地登記簿では1つの土地を1筆と呼び、1筆ごとに地番が割り振られている。
  • 土地合筆登記
    2筆以上の土地を合わせて1筆の土地とする登記のこと。複数の隣接する土地を合わせて売却するときなどに行われる。
  • 建物表題登記
    建物を新築したときやまだ登記していない建売住宅を購入して初めて登記するときに、建物の所在や家屋番号、種類、構造、床面積といった建物の物理的状況を登記すること。
  • 所有権保存登記
    国有地を譲り受けたケースや建物を新築したケースなど、まだ所有権が登記されていない土地や建物の不動産で、初めて所有権を登記すること。
  • 所有権移転登記
    売買や贈与、相続などによって、土地や建物の所有権が移ったときに行う登記のこと。
  • 抵当権設定登記
    債務者が債務を履行できない場合に備えて、土地や建物に担保権を設定する登記のこと。
  • 抵当権抹消登記
    ローンを完済したときに、融資を受けるときに設定した抵当権を登記簿から抹消する登記のこと。
  • 所有権名義人住所変更登記
    引越しなどにより、土地や建物の所有者の登記簿上の住所と現住所が変わったときに行う登記のこと。

不動産の登録免許税の税率

不動産の登録免許税の税率は、登記の種類や登記を行う事由によって異なります。

登録免許税は課税標準と呼ばれる税金の算定に用いる基準に、税率を掛けて算出します。

登記の種類ごとに、登録免許税の課税標準と税率を紹介していきます。

土地の所有権の移転登記の税率

土地の所有権移転登記を行う場合の登録免許税の課税標準と税率は以下の通りです。

課税標準 税率
売買 固定資産税評価額 2%
相続 固定資産税評価額 0.4%
その他
(贈与・交換・収用・競売等)
固定資産税評価額 2%

引用元:国税庁 No.7191 登録免許税の税額表

建物の登記の税率

建物に関わる所有権保存登記と所有権移転登記の課税標準や税率は以下の通りです。

課税標準 税率
所有権の保存 固定資産税評価額
(決定していない場合は法務局の登記官による認定価格)
0.4%
売買又は競売による所有権の移転 固定資産税評価額 2%
相続又は法人の合併による所有権の移転 固定資産税評価額 0.4%
その他の所有権の移転(贈与・交換・収用等) 固定資産税評価額 2%

引用元:国税庁 No.7191 登録免許税の税額表

抵当権設定登記の税率

抵当権設定登記を行う場合の登録免許税は、課税標準となる債権金額、つまり、住宅ローンの借入額に税率を掛けて算出します。

課税標準 税率
抵当権の設定 債権金額 0.4%

不動産の登録免許税の計算方法

不動産の登録免許税は次に挙げる計算式で算出できます。

登録免許税額 = 課税標準 × 税率

土地や建物の登録免許税の計算方法について、具体例を挙げていきます。

<土地の所有権移転登記(売買):固定資産税評価額2,000万円の場合>

(固定資産税評価額)2,000万円 × (税率)2% = 40万円

<建物の保存登記:固定資産税評価額1,000万円の場合>

(固定資産税評価額)1,000万円 × (税率)0.4% = 4万円

<建物の所有権移転登記(売買):固定資産税評価額1,000万円の場合>

(固定資産税評価額)1,000万円 × (税率)2% = 20万円

<抵当権設定登記:住宅ローン借入額3,000万円の場合>

(債権金額)3,000万円 × (税率)0.4% = 12万円

不動産登記の登録免許税の計算方法については、『登録免許税の計算方法を解説|不動産登記の軽減税率が適応する条件とは』で詳しく解説しています。

登録免許税の軽減措置

不動産の登録免許税では、一定の要件を満たすと税負担が軽減されます。

不動産の登録免許税に関係する軽減措置について解説していきます。

軽減措置が適用される条件

不動産の登録免許税に軽減措置が適用されるには条件が設けられています。

次に挙げる住宅用家屋のケースで、登録免許税の軽減税率が適用される条件について解説していきます。

  • 新築住宅の場合
  • 中古住宅の場合
  • 抵当権の設定登記の場合

新築住宅の場合

新築住宅の所有権保存登記で、住宅用家屋の登録免許税の軽減措置が適用されるのは、以下の全ての条件を満たした場合になります。

  • 個人が2022年3月31日までに新築した住宅、又は建築後使用されていない住宅。
  • 個人が自己居住するための住宅であること。
  • 新築したとき又は取得したときから1年以内に行う所有権保存登記の申請であること。
  • 床面積が50m2以上で、店舗や事務所との併用の住宅は、居住部分の面積が9割を超えること。
  • マンションなどの区分所有建物の場合、耐火建築物や準耐火建築物、低層集合住宅のいずれかに該当すること。

中古住宅の場合

中古住宅の所有権移転登記で、住宅用家屋の登録免許税の軽減措置が適用されるのは、以下の全ての条件を満たした場合になります。

  • 個人が2022年3月31日までに、売買や競売によって取得した住宅であること。
  • 個人が自己居住するための住宅であること。
  • 新築したとき又は取得したときから1年以内に行う所有権移転登記の申請であること。
  • 床面積が50m2以上で、店舗や事務所との併用の住宅は、居住部分の面積が9割を超えること。
  • マンションなどの区分所有建物の場合、耐火建築物や準耐火建築物、低層集合住宅のいずれかに該当すること。
  • 住宅の取得日より築20年以内、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造等の場合は、築25年以内であること。あるいは、新耐震基準に適合することの証明を取得していること。

抵当権の設定登記の場合

住宅ローン借り入れの際の抵当権設定登記で、軽減措置が適用される条件は、所有権保存登記や所有権移転登記と同じです。

新築住宅の場合は、新築建物の所有権保存登記で登録免許税の軽減措置が適用される条件を満たしていれば、抵当権の設定登記の登録免許税の軽減措置も適用されます。

同様に、中古住宅の場合の抵当権設定登記の登録免許税の軽減措置の適用条件も、中古住宅の所有権移転登記の登録免許税の軽減措置が適用される条件と同じです。

2022年3月31日までであることに注意!

住宅用家屋に関わる登録免許税の軽減税率の適用は時限措置であり、所有権保存登記も所有権移転登記も、抵当権設定登記も2020年3月31日までとされていました。

しかし、この3つについては期限が延長され、2022年3月31日までとなっています。

不動産の登録免許税の軽減税率

不動産の登録免許税の軽減税率は、ここまでに紹介した以外にもあります。軽減税率や期限などを一覧にまとめました。

本則税率 軽減税率 期限
土地の所有権移転登記(売買) 2% 1.5% 2021年3月31日
住宅用家屋の所有権保存登記 0.4% 0.15% 2022年3月31日
住宅用家屋の所有権移転登記 2% 0.3% 2022年3月31日
特定認定長期優良住宅の所有権の保存登記 0.4% 0.1% 2020年3月31日
認定低炭素住宅の所有権の保存登記 0.4% 0.1% 2020年3月31日
特定の増改築等がされた住宅用家屋の所有権の移転登記 2% 0.1% 2020年3月31日
住宅取得資金の貸付け等の抵当権設定登記 0.4% 0.1% 2022年3月31日

新築住宅の場合は住宅用家屋の所有権保存登記、中古住宅の場合は住宅用家屋の所有権移転登記、抵当権の設定登記の場合は住宅取得資金の貸付け等の抵当権設定登記が該当します。

登録免許税の金額例

実際に登録免許税はいくらかかるのか、新築マンションと新築一戸建て、中古マンションの場合について、具体例を挙げて紹介していきます。

なお、土地の所有権移転登記には2021年3月31日までの軽減税率を適用し、建物の所有権保存登記および建物の所有権移転登記、抵当権設定登記については2022年3月31日までの軽減税率を適用しました。

新築マンションの場合

<物件価格4,5000万円(土地評価額900万円、建物評価額1,900万円)、住宅ローン借入額4,000万円の場合の登録免許税額>

土地の所有権移転登記:900万円 × 1.5% = 13万5,000円

建物の所有権保存登記:1,900万円 × 0.15% = 2万8,500円

抵当権設定登記:4,000万円 × 0.1% = 4万円

合計:20万3,500円

新築一戸建ての場合

<物件価格4,5000万円(土地評価額1,200万円、建物評価額1,600万円)、住宅ローン借入額4,000万円の場合の登録免許税額>

土地の所有権移転登記:1,200万円 × 1.5% = 18万円

建物の所有権保存登記: 1,600万円 × 0.15% = 2万4,000円

抵当権設定登記:4,000万円 × 0.1% = 4万円

合計:24万4,000円

中古マンションの場合

<物件価格4,5000万円(土地評価額900万円、建物評価額1,900万円)、住宅ローン借入額4,000万円の場合の登録免許税額>

土地の所有権移転登記:900万円 × 1.5% = 13万5,000円

建物の所有権移転登記:1,900万円 × 0.3% = 5万7,000円

抵当権設定登記:4,000万円 × 0.1% = 4万円

合計:23万2,000円

登録免許税はいつ払うのか

登録免許税の支払い方法には現金で納付する方法と収入印紙で納付する方法、オンライン申請の場合に電子納付する方法があります。

ここでは、現金で納付する方法と収入印紙で納付する方法について、支払いのタイミングに触れて紹介していきます。

  • 現金で納付する方法
    現金で納付する場合、登録免許税の領収書を登記申請書に添付する必要があるため、法務局で申請手続きを行う前に納付を済ませておきます。まず、税務署や金融機関で領収済通知書(納付書)を入手して必要事項を記入します。次に、税務署又は金融機関の窓口で、現金に領収済通知書(納付書)を添えて納付すると、領収書が交付されます。

    その後、登録免許税納付用台紙に領収証書を貼付して、登記申請書に添付して登記申請を行うという流れです。

  • 収入印紙で納付する方法

登録免許税を収入印紙で納付する場合は、収入印紙を登記申請書に貼付して登記申請を行います。多くの法務局では収入印紙を販売していますので、申請時に収入印紙を購入してその場で貼付することが可能です。

収入印紙での納付は登録免許税の税額が3万円以下のときとされていますが、実際には税額が3万円を超える場合であっても、収入印紙で納付されるケースもあるようです。

税額が3万円を超える場合は、収入印紙での納付で問題ないか、事前に法務局に確認するとよいでしょう。

まとめ

登録免許税は建物を新築したり、土地や建物の売買を行なったりした場合などに必要となる、登記手続きで発生する税金です。

登録免許税は不動産売買で発生するいわゆる諸費用の一つになります。お客様に適切に登録免許税の目安を伝えられるように、計算方法や税率、軽減税率が適用される条件などを把握しておきましょう。

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。