高圧電線の不動産取引への影響|高圧線下地の建築制限・メリットデメリット

投稿日 : 2020年02月05日

不動産の現地調査をするときには上空の確認も忘れてはいけません。

対象地の上空に高圧電線が通っていると、建築制限やその他の理由により土地評価額が大きく変わる可能性があるからです。

今回は高圧電線が土地に与える影響と、メリット・デメリットについて解説します。

kobayashi この記事の監修者:
小林 紀雄
住宅業界のプロフェッショナル

某大手注文住宅会社に入社。入社後、営業成績No.1を出し退社。その後、住宅ローンを取り扱う会社にて担当部門の成績を3倍に拡大。その後、全国No.1売上の銀座支店長を務める。現在は、iYell株式会社の取締役と住宅ローンの窓口株式会社を設立し代表取締役を務める。

 

高圧電線とは

 

電圧は流れる電流の大きさによって低圧・高圧・特別高圧の3種類に分類されます。高圧電線は一般的に高圧と特別高圧の総称として使用されます。

 

(電圧の種別等)

第二条  電圧は、次の区分により低圧、高圧及び特別高圧の三種とする。

一  低圧 直流にあっては七百五十ボルト以下、交流にあっては六百ボルト以下のもの

二  高圧 直流にあっては七百五十ボルトを、交流にあっては六百ボルトを超え、七千ボルト以下のもの

三  特別高圧 七千ボルトを超えるもの

引用:電気設備に関する技術基準を定める省令(平成九年通商産業省令第五十二号)

 

低圧線との違い

住宅地などの電柱には高圧と低圧の2種類の電線がはりめぐらされています。電柱には何本もの電線が通っていますが、電柱の上部には高圧線、下部には低圧線が張られます。

画像引用:株式会社東北制御|電線① 電線には種類がある?高圧線と低圧線

 

発電所から高圧電線で地域へ送られる6600Vの電流は、柱状変圧器を経由して100Vまたは200Vに変圧され、各家庭に送られます。

 

高圧線下地とは

高圧電線の下に位置している土地を高圧線下地(こうあつせんかち)と言います。高圧線下地には厳しい安全基準が定められており、住宅等の建築も制限されています。

具体的にはどのような制限があるのでしょうか。

 

高圧線下地の建築制限

高圧線下地における建築制限は、高圧電線の種類が高圧か特別高圧かにより異なります。

特別高圧電線の下地の場合、水平距離の制限により建物の建築や竹木の植栽などが一切できません。高圧線の外側線から水平に3mの範囲内には建造物を建ててはいけないからです。

画像引用:国土交通省 近畿地方整備局|高圧線下地の土地評価について

 

高圧電線の種類が高圧であれば建物の建築は可能です。その場合でも離隔距離の制限により、建物の高さを送電線から3m以上低くしなければいけません。

送電が35,000Vを超えると、離隔距離3mに加え10,000Vごとに15cmプラスされます。

画像引用:国土交通省 近畿地方整備局|高圧線下地の土地評価について

 

なお電気通信事業法の2012年改正により離隔距離制限は若干緩和されています。ですが現時点で高圧電線が通っている高圧線下地は旧基準が適用されるため、土地評価の際にも旧基準を前提とした方が適切です。

 

上空に高圧電線が通っている土地のメリット

電気は現代人の生活には必要不可欠な存在ですが、高圧電線が通っている土地は評価額が低くなるのが実情です。

しかし高圧線下地だからこそのメリットは存在しないものでしょうか。ここからは不動産評価のプラス材料となる高圧線下地のメリットを挙げてみます。

 

 

土地価格が安い(買主様)

高圧線下地の一番のメリットは土地価格が安くなっている点です。周辺地域の土地相場に比べて破格の安さになっていることが多く、買主様にとっては少ない予算で土地が購入できるメリットとなります。

 

線下補償料がもらえる

上空に高圧電線が通っている土地の所有者には、電力会社から線下補償料が支払われます。これは土地評価額のダウンに対する補償金です。

 

電柱敷地料がもらえる

敷地内に電柱が建っている場合には、電柱分の土地使用料として電柱敷地料が電力会社から支払われます。

電柱敷地料の年額は電気通信事業法で定められています。地目が宅地の場合には電柱1本あたり年額1,500円、田の場合には年額1,870円、畑の場合には年額1,730円、山林等の場合には年額215円です。

 

落雷のリスクが減る

鉄塔に雷が落ちると、雷の電流は鉄塔を通して大地に逃がされます。また、送電線への雷撃を防止するために、送電線には架空地線(グラウンドワイヤ)が必ず設けられています。

つまりきちんと雷対策がされた鉄塔や電柱の近隣であれば、他の場所より雷から避けやすいというわけです。

 

上空に高圧電線が通っている土地のデメリット

上記では高圧線下地のメリットを説明しましたが、やはり高圧電線が近くにある土地にはデメリットが多くなるのはやむを得ません。

一般的に言われているデメリットを改めて確認してみましょう。

 

 

土地価格が安い(売主様)

メリットの項で挙げていた「土地の安さ」は、売主様側から見ればそのままデメリットに転じます。買い手がなかなか見つけづらいこともあり、売却までに時間がかかる傾向にあるのも売主様としてのデメリットです。

 

建築物の制限がある

先ほどご説明した建築制限もデメリットのひとつになります。希望するような高さやデザインの住宅が建てられないのは、既に建物が建っている土地であってもその後の建替えに影響するために敬遠されます。

 

電磁波の影響 200

高圧電線は低周波の電磁波を発しているため、電磁波による健康被害が心配されます。ただし、一般財団法人電気安全環境研究所では以下のように説明しています。

 

質問

送電線の下の土地に長く住んでいると、健康に悪い影響が出るのでしょうか?

回答

送電線から発生する電磁界のうち、電界は健康に影響を与えないと考えられています。一方、磁界については、平均0.4マイクロテスラ(μT)以上浴び続けると、小児白血病の発生リスクが2倍に増加するという統計的な関係が示されています。しかし、生物学的な研究からは、悪影響を及ぼすような再現性のある結果は得られていません。

これらのことから、世界保健機関(WHO)は、ファクトシート№322「超低周波電磁界へのばく露」の中で、「全体として小児白血病に関連する証拠は因果関係と見なせるほど強いものではない。その他の疾患への影響については、小児白血病についての証拠よりも更に弱い。」と述べています。

⇒参考資料:WHOファクトシート№322「超低周波電磁界へのばく露」(日本語訳)PDF

 

景観がそこなわれる

鉄塔や電柱、あるいは高圧電線そのものにより景観がそこなわれると考える人もいます。ただしこれは地上電線がある地域の全てに該当する話なので、高圧線下地特有のデメリットではありません。

 

嫌悪施設として捉えられる

上記の電磁波や景観の問題から、不動産取引では高圧線下地を嫌悪施設として取り扱います。不動産広告の表示や重要事項説明の際にも説明する必要があります。

 

地役権の設定を確認

高圧電線の下にある土地は、建築制限だけでなく登記等の権利についても確認が必要です。高圧線下地は電力会社と土地所有者が地役権(民法第280条)設定契約を結んでいる可能性があり、その場合は電力会社が土地を自由に使用できる権利を持っています。

地役権の有無は登記簿謄本上の権利部(乙区)で確認できます。

 

画像引用:国土交通省 近畿地方整備局|高圧線下地の土地評価について

 

地役権が登記されていない土地については、土地所有者との取り決めがどうなっているかを電力会社に問い合わせて調べます。

 

まとめ

高圧電線が通っている土地を取り扱う際には、建築制限や健康上リスクの可能性などさまざまな問題を考慮しながら進める必要があります。しかしデメリットだけでなくメリットもきちんと提示できなければ、その土地の成約には結びつきません。

それぞれの土地にある魅力とメリットを高圧電線に限らず見極めて、売主様と買主様が双方ともに納得できるような媒介を行いましょう。