不動産を夫婦の共有名義で所有するメリットとデメリット|名義変更や贈与について解説

投稿日 : 2020年05月05日

夫婦がマイホームを購入するケースでは、単独名義と共有名義の2つの方法があります。共働き夫婦の場合は、住宅ローンを1人のみが組む、2人がそれぞれローンを組むなど、ローンの借り方も問題になります。

そこで、共有名義で不動産を持つことやローンの組み方によるメリットやデメリットなどを解説します。

kobayashi この記事の監修者:
小林 紀雄
住宅業界のプロフェッショナル

某大手注文住宅会社に入社。入社後、営業成績No.1を出し退社。その後、住宅ローンを取り扱う会社にて担当部門の成績を3倍に拡大。その後、全国No.1売上の銀座支店長を務める。現在は、iYell株式会社の取締役と住宅ローンの窓口株式会社を設立し代表取締役を務める。

 

不動産の名義は単独と共有がある

不動産の所有形態には、単独名義と共有名義があります。

単独名義は1人の名義で登記することをいいます。共有名義は2人以上の複数が共同で出資して不動産を購入し、出資した費用の割合に応じた持分で登記することです。

単独名義の場合、1人が購入資金をすべて出す形で、1人で頭金を支払い、住宅ローンを支払います。共有名義は2人以上で頭金を出したり、住宅ローンを組んだりします。

 

 

不動産を共有名義で所有するメリット

不動産の中でも、マイホームを夫婦の共有名義で所有する場合、以下の2つのメリットがあります。

 

売却するとき、3,000万円特別控除を2重に受けられる

不動産を売って利益が出た場合、譲渡価格から取得費用や売却費用を引いた譲渡所得は、所得税や住民税の課税対象になります。

3,000万円特別控除は、マイホームを売却した場合に一定の要件に合致すると、最高で3,000万円までの特別控除を受けることができる特例です。

夫婦で共有名義の場合、3,000万円の2人分で6,000万円までの譲渡所得が非課税となるのです。

 

<譲渡価格:8,000万円、取得費:3,000万円、譲渡費用:300万円のケース>

8,000万円 – (3,000万円 + 300万円) = 4,700万円

 

単独名義の場合

4,700万円 – 3,000万円 = 1,700万円

1,700万円 × 20.315% = 345万円

譲渡所得税:約345万円

※税率は長期譲渡所得の20.315%で計算

 

共有名義の場合

4,700万円 – 3,000万円 – 3,000万円 ≒ 0円

譲渡所得税:0円

 

住宅ローン控除を2重に受けられる

「住宅ローン控除」とは要件を満たすと、毎年、年度末の住宅ローン残高のうち1%が所得税から控除される制度で、所得税で控除できなかった分の一部は住民税からの控除を受けることが可能です。

最大控除額は住宅ローン残高4,000万円の1%の40万円です。

2019年10月~2020年12月までに居住を開始した場合は、13年間住宅ローン控除が適用されますが、11年目以降の最大控除額は少し変わります。

 

夫婦いずれも住宅ローン控除の対象になるのは、連帯債務で借り入れをしているケースと、夫婦がそれぞれ単独債務で住宅ローンの借り入れをするペアローンと呼ばれるケースです。

しかし、実際の所得税額や住民税からの控除限度額を踏まえると、住宅ローン控除の控除額まで使い切れないケースが多いです。

そのため、夫婦で住宅ローン控除を2重に受けられるとお得です。

 

たとえば、年末のローン残高が4,000万円の場合、40万円の住宅ローン控除が利用できます。しかし、夫が年収500万円の場合、所得税と住民税から控除できる額は約27万円です。

約13万円が控除できずに残ってしまうため、夫婦2人で住宅ローン控除を受けた方が住宅ローン控除をフル活用しやすいのです。

 

不動産を共有名義にするメリットについては、『不動産を共有名義にするメリットとデメリット|決定のポイントは出資者の数』で、詳しく解説しています。

 

 

不動産を共有名義で所有するデメリット

不動産を夫婦の共有名義で所有することには、次に挙げる4つのデメリットもあります。

 

 

共有者が亡くなったら相続の対象になる

夫婦のいずれかが亡くなった場合、共有持分が相続の対象になります。相続人が複数いる場合は、遺産分割協議を開いて財産を分割するため、亡くなった配偶者の共有持分を分割相続することも考えられます。

 

登記費用が2倍になる

単独の場合は登記費用は1人分となりますが、共有名義ということは共有者の人数分費用がかかることになります。住宅ローンを利用する際にも、諸費用は人数分だけ費用がかかります。

 

共有者の許可なく売却できない

共有名義の不動産では、共有者は全員、持分に関わらず所有者としての権利を持っています。そのため、夫婦に限らず、共有名義の不動産を売却するには、共有者全員の承諾が必要です。

たとえば、夫が9/10、妻が1/10の持分の場合で、夫が持分の多くを所有していても、夫は妻の同意がなければ売却をすることができません。

 

また、夫婦のいずれかが認知症が進行した場合、意思能力がなく、法律行為を行うのが難しいと認識されてしまうと、不動産を売却して介護費用に充てるといったことが難しくなるのです。

 

離婚時に揉める原因になる

夫婦共有名義の不動産がある場合、特に大きく揉める原因になりやすいのは離婚をするときです。離婚をして、夫婦いずれかの収入でローンを支払うことは難しいケースが多く、名義の問題も生じます。

そのため、離婚時には売却するという選択肢が取られることが少なくありませんが、前述のように夫婦2人のいずれかが反対していると売却することもできません。

共有名義の場合、離婚後に不動産をどうするか話を進めにくいのです。

 

離婚した場合の共有名義の不動産の取り扱いに関しては、『離婚したら不動産の共有名義をどう扱うか|残債がある場合の対処と登記申請』で解説しています。

 

 

共有名義のローンの注意点

共有名義の不動産で、ローンを夫婦2人で組んだ場合、次に挙げる3点に気をつける必要があります。

 

共有名義のローンで片方死亡した場合

共有名義で不動産を購入し、夫婦2人でローンを組んでいた場合、ローンの組み方によって片方が死亡したときのリスクは異なります。

 

夫婦それぞれが単独名義で住宅ローンを借りるペアローンの場合は、2人とも団体生命信用保険に入るため、亡くなった方のローンの残債は保険金で返済されます。残された方は自分の借り入れ分だけを返済していく形です。

 

連帯債務型は夫婦の片方が主債務者になり、もう一方が連帯債務者になります。

民間の金融機関の連帯債務型は主債務者しか団体生命信用保険に入れないため、連帯債務者が死亡した場合には、主債務者の負担が大きいというリスクがあります。

フラット35の場合は、主債務者も連帯債務者も団体生命信用保険に加入できるため、万が一のときも安心です。

 

共有名義の持分比率とローン

共有名義で不動産を購入する場合、購入資金の負担割合と同じ持分比率で所有権の登記を行うのが基本です。

購入資金の負担割合と異なる持分比率で、登記を行った場合には贈与税が発生します。

 

たとえば、物件価格が5,000万円で、頭金は夫が300万円、妻が200万円を出して、夫名義で2,700万円、妻名義で1,800万円の住宅ローンを組んだ場合、負担割合に応じた持分比率は夫が3/5、妻が2/5です。

この場合に、持分比率を1/2ずつとして所有権の登記をしてしまうと、5,000万円に対して、「1/2―2/5=1/10」の持分にあたる500万円の贈与が夫から妻にあったとみなされ、贈与税の課税対象になってしまうのです。

 

ライフステージによる変化への対応

ペアローンや連帯債務型で夫婦で住宅ローンを組むと、1人で住宅ローンを借り入れるよりも大きな金額の融資を受けることが可能です。

しかし、住宅ローンの借入期間の間には、妻の妊娠や育児によって子育てと仕事の両立が負担となり、正社員からパートに働き方を変えたり、退職したりすることも考えられます。

夫の方も転職によって収入が下がることがあるかもしれません。

ライフステージが変化しても無理なく返済することができるか、返済計画をきちんと立てておくことが大切です。

 

 

共有名義でローンは夫のみにする場合

共有名義で不動産を所有する場合でも、ローンは夫婦のいずれか片方の単独名義で借り入れるという方法もあり、夫の単独名義で借りるという選択肢もあります。

しかし、ローン審査では、通常はローンを借り入れる本人の収入などの属性によって借入可能額が決まるため、購入を希望する物件によっては、夫1人の借入可能額では購入資金を賄えないことも考えられます。

そこで、夫婦の一方をローンの契約者である債務者、もう一方を連帯保証人にする連帯保証型と呼ばれる方法であれば、夫婦の収入を合算して借入可能額をアップさせることが可能です。

ただし、夫が死亡した場合は団体生命信用保険の保険金で残債の支払いがなくなりますが、万が一、失踪した場合には連帯保証人である妻に残債の支払いの義務が発生するため、リスクが高くおすすめできません。

 

夫の単独名義のローンのみで借りるのは、連帯保証型にすることなく、夫のみのローンで購入に必要な額を賄えるケースに向いています。

 

 

ローンを夫(妻)のみにするメリット

夫または妻のいずれか、主に生計を維持している方が単独名義でローンを借りると、万が一契約者が亡くなったときには、残債の返済が免除され、住まいが残ることがメリットです。

残された方は返済をする必要がありません。

また、夫名義でローンを借りている場合、出産や育児で妻の収入が減っても、支払いに影響するリスクが小さいといえます。

 

ローンを夫(妻)のみにするデメリット

ローンを夫婦のいずれかの単独名義で組むと、夫婦がそれぞれローンを組む場合などと比較して、借入可能額が低いことがデメリットです。

希望する物件によっては、単独名義のローンでは購入できないことも考えられます。

また、住宅ローン控除もローン契約者の方にだけ適用されるため、マイホームの購入による節税効果も薄れます。

 

ローンを組まない方が頭金を出してないケースや、頭金の出資額を超えた持分比率にするケースで、共有名義で登記をして所有すると、贈与税が発生します。

 

 

共有名義の不動産の固定資産税

共有名義の不動産の固定資産税は、地方税法によって共有者全員の連帯債務とされ、持分に関わらず共全額を連帯して支払う義務があります。

そのため、固定資産税の納税通知書は持分按分によって個別に送付されず、代表者に送られてきます。

代表者を決める基準は市町村によって異なりますが、一般的に当該不動産のある市町村に居住している人や持分が多い人、登記順位が早い人が優先されます。

市町村への届出により、代表者を変更することもできます。

 

 

共有名義の変更方法

「夫の単独名義の不動産を妻との共有名義に変えたい」、あるいは「兄弟で相続したマンションを兄の名義に変えたい」といったケースなど、単独名義から共有名義、あるいは共有名義から単独名義に変えたいというシチュエーションが想定されます。

こうしたケースではどのように手続きを進めたらよいのでしょうか。

 

以下の3パターンについて、それぞれについて解説していきます。

 

単独名義から共有名義へ変更

単独名義から共有名義へ変更する場合、単に登記だけを変えて変更することはできず、持分の売買を行うか、贈与をするといった方法があります。

ここでは、夫の単独名義の不動産の所有権の一部を妻に売却する方法を例に挙げます。

 

  1. 市場価格をもとに売却価格を決定
  2. 夫から持分を妻に売却する売買契約を結び、決済を行う
  3. 夫から妻に売却された持分に従い、所有権移転登記を行う
  4. 夫が妻への持分の売却により譲渡所得が発生した場合は、確定申告を行う

 

共有名義から単独名義へ変更

共有名義から単独名義へ変更するには、持分を売買する方法や贈与する方法があります。

ここでは、兄弟で共有名義の不動産の弟の持分を兄が買い取り、兄の単独名義に変更する流れをみていきます。

 

  1. 市場価格をもとに売却価格を決定
  2. 兄が弟の持分を購入する売買契約を結び、決済を行う
  3. 弟の持分の所有権移転登記を行う
  4. 弟が兄への持分の売却により譲渡所得が発生した場合は、確定申告を行う

 

名義を書き換える(贈与)

家族間で金銭の収受を伴わずに、所有権の異動を行う方法は一般的に名義変更と呼ばれています。

単独名義から共有名義への変更も、共有名義から単独名義への変更も、金銭を伴わずに無償で行えますが、贈与とみなされます。

夫の単独名義の不動産を妻との共有名義に変更する流れをみていきます。

 

  1. ローンを借りている場合は金融機関の承諾を得る
  2. 妻に贈与持分に応じて所有権移転登記を行う
  3. 贈与税の確定申告を行う

 

 

贈与税の発生に要注意

無償で不動産の名義を変更すると贈与に当たるため、贈与税の課税対象になります。

ただし、1年間に110万円までの贈与であれば非課税であり、婚姻期間が20年以上の夫婦の間での居住用不動産を贈与した場合には、2,000万円まで配偶者控除が受けられる特例があります。

 

また、持分の売却によって単独名義から共有名義、あるいは共有名義から単独名義に変更する場合も、売却価格が市場価格とかけ離れている場合には、差額が贈与とみなされますので、注意が必要です。

 

 

まとめ

マイホームは夫婦で共有名義で持っていると、住宅ローンの組み方によっては住宅ローン控除が2人とも受けられ、マイホーム売却の際には3,000万円の特別控除を2重に受けられるメリットがあります。

一方で、共有名義の不動産は、相続や離婚の際にトラブルになることも少なくありません。