公図、地積測量図、建物図面・各階平面図の見方|宅建業者が確認すべきポイント

投稿日 : 2019年10月26日/更新日 : 2023年06月03日

宅建業者が担当不動産を調査する際に用いる図面には3種類あり、「公図」「地積測量図」「建物図面・各階平面図」があります。

これを用いて、土地や建物の形状や周囲との位置関係を確認していきます。

図面と現況とに差異がある場合や、不動産取引における障害が見つかった場合には、担当者として適切な対応が求められます。

お客様への説明責任を果たし未然にトラブルを防いでいくためにも図面についての理解を深めておきましょう。

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「公図」の見方

「公図」の見方について説明します。

「公図」とは

「公図」とは、土地の形状・範囲、隣接地や道路・水路との位置関係を記した図面です。

隣接地との境界を線で表し、各土地には地番が記載されています。

公図は、明治時代に徴税の目的で作成された図面がもとになっています。

「公図」の見方|確認チェック

  1. 土地の形状・範囲が現況と一致しているか
    明治時代に作成された図面のため、必ずしも現況と一致しない場合があります。
    →公図と現況との間で差異がある場合は、お客様や隣接地の所有者にヒアリングして原因を探る。
    →原因が明らかにならない場合は、「土地家屋調査士」などの専門家に調査を依頼する。
  2. 土地と隣地・道路との位置関係が一致しているか
  3. 道路に地番がついていないか
    地番付きの道路は私道の可能性があります。
    →登記簿謄本を取得し、名義人(所有者)を確認する。a.所有者が国や地方自治体の場合…公道のため問題なし。
    b.所有者が個人や法人の場合…私道のため、道路の使用許可・上下水道管の引き込みや改修工事の際に、所有者の許諾を得る必要がある。
    不動産売買の実務においては、宅建業者が私道の使用・掘削に関する取り決めを記載した承諾書を作成し、私道所有者全員から署名捺印をもらった上で、買主に引き継ぐことが一般的です。しかし、私道所有者の意向により署名がもらえない場合もありえますので、そのような場合には、買主に対して、承諾書が取れない理由、それにより将来起こり得るリスクなどを説明する必要があります。
  4. 「接道義務」を守っているか(建物を建築したい場合)
    「接道義務」とは、建物を建築する際、敷地が建築基準法で認められた道路に2m以上接していなければならないという法令です。
    →土地と道路の間に他の地番のついた土地が存在しないか確認する。
    →道路に地番がついていないか確認する(私道の可能性がある)。

▼「公図」の記載例


(出展元:法務局

※方位は、矢印の先端が「北」。
※「種類」は図の出展元。「旧土地台帳付属地図」や「土地区画整理所在図」など。

「地積測量図」の見方

「地裁測量図」の見方について説明します。

「地積測量図」とは

「地積測量図」とは、土地家屋調査士により作成された測量図面で、筆界(1筆の土地の範囲を示す境界線)である多角形の頂点座標により土地の面積が計算されています(座標法)。

登記簿謄本の「地積」には、「地積測量図」に記載された面積が反映されます。

「地積測量図」の見方|確認チェック

  1. 「地積測量図」と現況が一致するか確認する。
    間口・奥行・境界標(筆界点を表すために土地に設置する目印)の位置・道路幅員などを確認する。
    →地積測量図に誤りがある場合、そもそも存在しない場合には、新たに作成する必要がある。
  2. 作成年月日を確認する。
    →作成年が古いと、測量技術が発達する前の精度の低い図である可能性があるので、注意が必要。
  3. 土地区画整理事業による土地の場合、道路と私有地との境界明示が完了していることがわかる明示書(写)を取得する。

◇地積測量図に誤りがある場合の原因

  • 作成時期が古く、測量技術が発達する前の精度の低い図であるため。
  • 隣接地や周辺の土地の状況が変化したため。

◇地積測量図が存在しない場合の原因

  • 登記申請書類への地積測量図の添付が義務化(不動産登記法改正)される昭和35年4月1日以前からある土地であるため。
  • 分筆により発生した「残地」で、費用などの事情から測量されずに放置されているため。

▼「地積測量図」の記載例


(出展元:法務局

※方位は、矢印の先端が「北」。

「地積測量図とは」|法務局・インターネットでの取得方法【誰でも取得可能です】

地積測量図の不備への対応

不動産の売買において、正しい「地積測量図」がない場合には、隣接地の地積測量図を取得し、外周部の数値だけでも特定するようにします。

また、売却案件であれば、売主様(所有者)に実測や仮測(簡易測量)をご提案しましょう。

地積測量図の作成時期が古い場合にも、現況と誤差がある可能性があるため、測量をおすすめすると良いでしょう。

地積測量をする場合は、土地家屋調査士に依頼します。

地籍測量図について詳しくは以下の記事をご参照ください。
あわせて読みたい:地積測量図とは|不動産の土地面積がわからないときや法務局での取得方法について

「建物図面・各階平面図」の見方

「建物図面・各階平面図」の見方を説明します。

「建物図面・各階平面図」とは

「建物図面」とは、敷地と建物の位置関係を示す図面です。

「各階平面図」には、各階ごとの床面積・形状・寸法が記載されています。付属建物がある場合にも、ここに記載されます。

「建物図面・各階平面図」の見方|確認チェック

「建物図面・各階平面図」は、地積測量図と同じく、昭和35年4月1日に登記申請書類への添付が義務化された図面です。

それ以前の建物では図面が存在しない場合や、現況と一致しない場合があります。

→施工図面など関連資料をできるだけ用意し、現在の状況を正確に把握しましょう。

◇建物図面・各階平面図に誤りがある場合の原因

増築・改築・減築による変更の未登記

→本来は、増改築後1ヶ月以内に「建物表題変更登記」を行う義務があります。

▼「建物図面・各階平面図」の記載例


(出展元:法務局

※方位は、矢印の先端が「北」。

増改築による変更未登記への対応

売買する物件が「建物表題変更登記」未了の場合、買主様が金融機関から融資を受けられない場合があります。

また、未登記状態のままですと、契約後のトラブルにもつながりかねません。

そのため、売主様には必ず「建物表題変更登記」を行うようサポートしましょう。

万が一、未登記のままで契約を進める場合には、売主様による「建物表題変更登記」を物件の引き渡し条件として定めるといいでしょう。

まとめ

「公図」「地積測量図」「建物図面・各階平面図」のそれぞれ確認すべきポイントをしっかり押さえて、売主様・買主様が安心して交渉を進められるようにしていきましょう。

その他建物図面の見方について詳しくは以下の記事をご参照ください。
あわせて読みたい:建物図面の見方を解説|建物図面の基礎を初心者にも分かりやすく教えます

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。
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