出典:東日本レインズ 市場倍増に向け、市場整備が急ピッチ
室内空気環境対策
UL Japanグリーンガード認証では、VOCの排出量について、世界 で最も厳しい基準を設定している
住まいの高気密化でシックハウス問題が再燃
キーポイント
▶シックハウスの相談は4年連続増加
▶認知度向上で症状に気がつく人も
▶規制の化学物質以外にも配慮を
シックハウス症候群については、2000年代前半に社会問題化した。国は03年に建築基準法を改正し、シックハウスの原因となるホルムアルデヒド発散建材の使用を制限。また、業界団体などが中心となり揮発性化学物質(VOC)の表示制度などを整備、24時間換気システムの設置を義務化するなど、シックハウスについての取り組みが進んだ。しかし、未だにシックハウス症候群に悩む人がいるのも事実だ。
(公財)住宅リフォーム・紛争処理支援センターが公表するシックハウス症候群に関する相談件数をみると、14年から4年連続で増加する傾向にある。相談件数は03年の546件から年々減少する傾向にあったが、13年の68件を境に増加に転じ、17年には135件まで増えている。
その理由の一つとして、住宅の高気密化が進むことが挙げられる。省エネ性能、快適性が向上する一方で、室内の空気汚染が顕在化しやすくなる傾向がある。
また、インターネットなどを通じて、シックハウス症候群に関する情報に触れることで、認知が広がり、医療機関などに相談に行く人が増え、結果として症状に気づく人も増えているといった声も聞かれる。
F☆☆☆☆だから安全は大きな間違い
建材メーカーなどは、指針値が定められたVOCからの脱却を図るために代替材への転換を進める。しかし、代替材からも揮発性のVOCが発生し、新たなシックハウスの原因となっているのではないかという指摘がある。日々、生み出される新建材の中には規制されていないが、人体に悪影響を及ぼす化学物質が含まれている懸念もある。
千葉大学の予防医学センターの健康都市・空間デザイン学分野の鈴木規道特任准教授は、「ホルムアルデヒド以外の化学物質についての表示制度は整備されていない。『F☆☆☆☆(フォースター)』なので『安全な建材である』は大きな間違い」と指摘する。
こうした状況に対応して、世界トップクラスの第三者安全科学機関であるULの日本法人、UL Japanは、国際的な空気環境認証サービス「GREENSWARD認証」の日本展開を強化し、住宅建材メーカーなどへの活用を促す。VOCなどの排出量について世界でも最も厳しい基準を設定し、300以上の化学物質についても厳しい排出量の基準を設けている。より高い安全性を求めるユーザーへのアピールポイントになりそうだ。
これからどうなる?
化学物資の「見える化」で住まい手自ら素早い対策が可能に
室内空間の化学物質を「見える化」するシステムがシックハウス問題の解消に向け糸口になりそうだ。千葉大学の予防医学センターの研究チームでは、測定の精度を落とさず、リアルタイムに、かつ同時に複数の化学物質の成分を分析できる装置の開発を進めている。2020年までにはプロトタイプを具体化できる見込み。化学物質を「見える化」し、化学物質の濃度が高くなるとアラームが鳴るといった機能を付加することで住まい手自ら、化学物質の濃度が高まればすぐに換気するといった対策が取りやすくなる。空調メーカーと連携して、化学物質の濃度に応じて、自動換気するシステムを開発することも可能になるかもしれない。
Housing Tribune編集部(創樹社)提供
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