不動産売買の金銭消費貸借契約と決済までの準備~売主・買主のやることリスト

投稿日 : 2019年10月26日/更新日 : 2023年06月03日

不動産売買契約を締結したら、次は代金の授受=決済をすることになります。

決済にはいくつかの準備が必要で、特に住宅ローンを利用する場合は、両当事者のやるべきことは多くなります。

今回は売主・買主それぞれの決済までの準備、やることリストを紹介します。

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①住宅ローンの正式審査申込み【買主】

売買契約後にまず行うべき手続きが、買主の住宅ローン正式審査申込みです。

金融機関に住宅ローン正式審査申込みを行ない審査をクリアすると、「金銭消費貸借契約」を締結し、ローンを組むことができます。

通常、ローンの商品説明や金融機関への持ち込みなどを、宅建業者が代行します。商品内容を充分理解し、確実に対応しましょう。

契約時に必要書類を用意してもらう

事前審査なら審査にかかる日数は1日~1週間ほどですが、正式審査の場合は10日~2週間ほどかかります。

「融資利用特約」の期日内に、金融機関から審査結果の回答をもらえるよう、余裕を持って手続きすることが大切です。

したがって買主には、契約締結の際に、住宅ローン正式審査申込みの必要書類をすべて用意してもらうといいでしょう。

正式審査でチェックされる項目

正式審査では、次のような内容をチェックされます。

◇正式審査の内容

  • 住民票・住民税決定通知書のチェック
  • 不動産の担保評価
  • 保証会社による審査

「団体信用生命保険」に加入する際は、その審査もこの段階で受けます。

非承認になる場合の理由

事前審査には通ったにもかかわらず、正式審査で非承認または減額となった場合、次のような理由が考えられます。

◇非承認になる理由

  • 事前申込書の告知内容に誤りや変更があった。
  • 正式審査までに新たに借り入れをした。
  • 不動産の担保評価に関わる問題が発覚した。
  • 団体信用生命保険の審査で非承認となった。

例:違法建築、再建築不可、心理的瑕疵、など

その他、追加書類を要求され、新たに問題が発覚するケースもあります。

②「金銭消費貸借契約」を締結する【買主】

住宅ローンの審査で正式承認を得られたら、金融機関と「金銭消費貸借契約(金消契約)」を結びます。

これは宅建業者が代行せず、申込者である買主本人が金融機関の窓口で行います。

金消契約を正式に結ぶと、以後の内容変更はできません。

融資条件を改めて確認し、不明点はどんどん質問するよう、買主にアドバイスしておきましょう。

また、条件を見直したい場合には、最後のチャンスとなることを伝えておきましょう。

◇金消契約日までに決めておく内容

  • 住宅ローン条件(金利の種類、支払い方法など)
  • 融資実行日(決済日)
  • 融資実行店(返済用口座を開設しておく)

※この日に売主の抵当権が抹消するので、抹消手続きと合わせて日程調整する。

◇金消契約の必要書類

  1. 住民票
  2. 実印、印鑑証明書
  3. 本人確認書類
  4. 返済用口座の通帳、銀行届出印
  5. 収入印紙(金消契約書貼付用)
  6. 売買契約書の原本

例:運転免許証、健康保険証、マイナンバーカード、在留カード(外国籍の場合)など

③抵当権抹消の準備【売主】

買主が住宅ローンの正式承認を得たら、売主は物件の抵当権抹消の準備をします。

金融機関に「完済依頼」を行う

売主がまだ売却する物件の住宅ローンを支払っている場合は、金融機関への「完済依頼」が必要になります。

完済依頼とは、「この日に残債務を全て支払うので、抵当権抹消書類一式を準備してください」と依頼することです。

これは、完済日の2週間ほど前までに、契約者(売主)本人が金融機関の窓口で行います。

また、完済依頼手続きには完済日を設定するので、それまでに完済日を確定しておく必要があります。

「抵当権抹消書類」の受け取り方を調整する

次に、債務を弁済する金融機関と、決済当日の抵当権抹消書類の受け取り方について調整します。

通常、売主側の金融機関の担当者は、決済場所には同席しません。

そのため、決済後に売主本人か登記担当の司法書士が金融機関の窓口まで、抹消書類を受け取りに行きます。

金融機関が遠方の場合、決済場所か管轄法務局に一番近い支店の窓口で受け取れるよう依頼します。

上記が整い次第、金融機関が準備する抹消書類の事前確認を、司法書士に依頼します。

④決済前の最終チェック【売主・買主】

買主の金消契約と売主の完済依頼が終わったら、決済当日に支払う決済金の金種を確認します。

現金・振込・保証小切手などを、支払い項目ごとに区分しておきます。

通常は、売主の希望に合わせます。登記費用・仲介手数料などは、現金で用意するのが一般的です。

◇決済時の金種区分例

  • 「残代金A」2000万円…振込
  • 「残代金B」100万円…現金
  • 「日割清算金(買主負担分)」3万円…現金
  • 「金融機関事務手数料」3万円…引落
  • 「住宅ローン保証料(外枠)」50万円…引落
  • 「登記費用(司法書士への報酬を含む)」27万円…現金
  • 「火災保険料(火災・地震)」30万円…現金
  • 「仲介手数料」90万円…現金

―――――――――――――――――――

合計 2,303万円

売買契約の際に、物件に関わる売主の未払い金(税金・光熱費・管理費など)があった場合は、決済日までに支払いが住んでいるか確認します。

振込用紙控や管理会社への連絡によって確認しましょう。

売主への口頭での確認では不確実なので、必ず書面での確認を徹底することが重要です。

まとめ

不動産売買の契約の流れから決済、そして金融機関とのやり取りについてしっかりと理解をし、抜け漏れと遅滞のない手続きを目指していきましょう。

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。