「道路斜線制限」とは何かわかりやすく解説|目的・仕組み・緩和要件

投稿日 : 2020年06月15日/更新日 : 2023年06月03日

土地所有者である限り、その土地に自由に建物を建てることはできますが、形状・大きさ・高さなどに関してはそれぞれ制限があり、自由に建築ができるわけではありません。

その中でも建物の高さに関しての制限の1つに道路斜線制限があります。

今回は、その道路斜線制限が規定されている目的や仕組み、そして緩和要件について解説します。

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道路斜線制限とは

道路斜線制限は斜線制限の1つで、建物自体が接している道路の幅員に応じた高さの制限になります。

 

その他の斜線制限

斜線制限は道路斜線制限も含めて3種類あり、全てが高さに関する制限となります。

3種類の斜線制限はそれぞれ以下のような特徴を持っています。

斜線制限の種類 概要
道路斜線制限 道路の幅に応じた高さ制限
隣地斜線制限 道路以外の隣地に面した高さ制限
北側斜線制限 北側に面した道路及び隣地に関する高さ制限

 

斜線制限について詳しいことは以下のページをご参照ください。

あわせて読みたい: 建物の高さを決定するには斜線制限の確認が必要

 

 

道路斜線制限の目的

 

土地を所有している限り、その土地に建物を建築することは自由ですが、建物の高さや大きさに関してはさまざまな制限が課せられます。

それは建物を建築することによって起こる周囲への影響を少しでも抑えるためで、道路斜線制限もそのような制限の1つになります。

道路斜線制限は道路にも日照風通しを確保することで、周囲の住環境に悪影響を与えないことを目的とした制限です。

 

 

道路斜線制限は全ての用途地域に適用される

道路斜線制限を始めとする斜線制限に大きく関わってくるのが用途地域です。

用途地域とは土地をどのような用途に使用するかを定めた地域のことを指し、住居・商業・工業系で計13種類があります。

用途地域について詳しいことは以下のページをご参照ください。

あわせて読みたい: 制限が多く複雑な用途地域についてわかりやすく解説します

 

斜線制限は用途地域ごとに適用の有無や、制限される数値が異なります。

道路斜線制限に関しては全ての用途地域に対して適用されます。

しかし、制限内容に関しては、容積率に応じて傾斜勾配と適用距離の数値がそれぞれ異なるという特徴を持ちます。

道路斜線制限の仕組み

 

道路斜線制限の具体的な内容は、建物に接する道路の反対側の境界線から上空に向けて斜めに線を引き、建物がその斜線を越えて内側に建築を行ってはいけないというものです。

道路斜線制限は容積率に応じて、傾斜勾配と適用距離の数値が定められています。

ここからは道路斜線制限に必要な要素である容積率・傾斜勾配・適用距離について解説します。

容積率

容積率とは建物を建築する土地の敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合をパーセンテージで表したもので、その土地に対してどのくらいのサイズの建物が建築できるかを示す基準になります。

また、容積率は用途地域によって上限が定められており(指定容積率・基準容積率)上限値を越えた建物を建築することはできません。

容積率について詳しいことは以下のページをご参照ください。

あわせて読みたい: 自分好みの家を建てるには 容積率の緩和要件・特例のまとめ

この容積率と用途地域によって、後述する傾斜勾配と適用距離の制限内容も異なってきます。

傾斜勾配

道路斜線制限を測定する際に、道路境界線から上空に向かって伸びていく斜線のことを傾斜勾配と言います。

傾斜勾配を図で表すと以下のようになります。

画像引用:八尾市HP | 高さの制限

 

傾斜勾配の角度は用途地域によって数値が異なっており、住居系の用途地域では1mにつき1.25m高く、それ以外の用途地域では1mにつき1.5m高くなる角度と決められています。

 

適用距離

適用距離は1987年(昭和62年)に建築基準法へ加えられた道路斜線制限における新しい規定です。

具体的には建物と隣接する道路の距離のことで、一定以上の距離を設けると傾斜勾配による制限がなくなり、直線的に建物を建築することが可能になります。

適用距離を図で表すと以下のようになります。

画像引用:志布志市HP | 建物の高さ制限

 

適用距離は容積率の数値によってそれぞれ異なります。

 

用途地域ごとにおける道路斜線制限のまとめ

用途地域ごとに適用される容積率・傾斜勾配・適用距離をまとめると以下のとおりです。

用途地域 容積率 適用距離 傾斜勾配
第一種・第二種低層住居専用地域

第一種・第二種中高層住居専用地域

第一種・第二種住居専用地域

田園住居地域

準住居地域

200%以下 20m 1.25m
201~300% 25m
301~400% 30m
401%以上 35m
近隣商業地域

商業地域

400%以下 20m 1.5m
401~600% 25m
601~800% 30m
801~1,000% 35m
1,001~1,100% 40m
1,101~1,200% 45m
1,201%以上 50m
準工業地域

工業地域

工業専用地域

200%以下 20m 1.5m
201~300% 25m
301~400% 30m
401%以上 35m

道路斜線制限の緩和要件

 

道路斜線制限を含む斜線制限を厳密に適用し続けると、建物の大きさや高さに関係なくどこまでも制限を受け続けることになります。

よって、周囲の日照や風通しに影響を与えないのであれば、建物への道路斜線制限が緩和できる要件がいくつかあります。

先程述べた適用距離の規定も、ある意味では道路斜線制限における緩和要件の1つと言えます。

ここからはその他の緩和要件について見ていくことにしましょう。

 

セットバック

建物の建築条件の1つに必ず道路に接していなければならない(接道義務)という条件があります。

道路にもクルマが通れる広いものから人しか通れない狭いものまで、いろいろな幅の道路がありますが、特に幅4m未満の道路を通称2項道路(建築基準法第42条2項に規定)と呼びます。

いわゆる2項道路において建物の建築を行う際は道路沿いではなく、下図のように道路中心線から2m後退した場所からでしか建物を建築できないという決まりがあり、これをセットバックと言います。

また、道路の境界線から建物までの奥まった部分を後退部分と言います。

画像引用:三郷市HP | 道路後退に伴う支援

 

道路斜線制限においては、下図のようにセットバックの際に生じた後退部分の幅と同じ分だけの幅を反対側の道路境界線として定めることができ、境界線が離れた分制限が緩和されます。

画像引用:東京都江戸川区HP | どのくらいの高さまで建物をたてられますか?

 

ただし、建物からせり出したベランダやバルコニー等に関しては、せり出した分からの距離となるので、その点には注意が必要です。

 

その他の緩和要件

道路斜線制限における緩和要件は、セットバック以外にも以下のようなケースがあります。

 

①高低差

隣接する道路が建物の敷地より低く高低差が1m以上ある場合「高低差の実数-1m÷2」を、反対側の道路境界線の高さに加味することで制限を緩和します。

 

②複数の道路に面した場合

建物が複数の道路に接している場合は、最も幅が広い道路に対する斜線制限が狭い道路にも適用されます。

 

③道路の幅員が12m以上

この緩和要件は第一種・第二種低層住居専用地域を除く住居系用途地域に適用されるもので、従来の傾斜勾配の角度である1.25mが1.5mに緩和されます。

 

④公園

前面道路を挟んだ向かい側が公園・広場・河川・線路などの場合、日照や風通しが十分に確保されるため、前面道路ではなく向かいの公園などの境界線が反対側の道路境界線としてみなされ、かなりの制限が緩和されることになります。

 

まとめ

道路斜線制限は全ての用途地域において適用されるため、建物を建てる際には必ず何かしらの制限を受けます。

お客様に対しては、建物を建てる際に用途地域だけでなく、前面道路の状況も確認する必要性を伝えた上で、提案を行っていきましょう。

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。