都市計画法で定められる用途地域とは|ジャンル別13種類の決めかた

投稿日 : 2020年02月05日/更新日 : 2023年06月03日

土地の売買時や建築計画を立てる際には、その土地で定められている用途地域についてお客様にご理解いただく必要があります。

土地を購入して住まいを建てようとしているお客様から「用途地域とは何ですか?」と聞かれたときに、わかりやすくご説明するにはどうしたら良いでしょうか。

今回は用途地域について、正しい知識を身につけましょう。

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用途地域とは

用途地域とは、市街化区域内で指定されている地域地区の1種類です。

市街化区域では場所によって「住宅を中心とする地区」「オフィスや店舗を中心とする地区」など、土地の使用用途を分けています。これを用途地域と言い、用途地域ごとに建てられる建物の種類も異なっています。

用途地域には全部で13種類あります。用途地域の種類については後ほど詳しくご説明します。

 

用途地域は都市計画法により定められる

用途地域のそれぞれを知る前に、用途地域の基本となる都市計画法について理解しましょう。

都市の健全な発展と秩序ある整備を目的として、都市計画法は定められています。

都市計画法によって用途地域が指定されるまでには、いくつかのステップを踏む必要があります。順番に見ていきましょう。

 

都市計画区域

まずは日本全国の各地域を、都市計画をする区域・しない区域に分けていきます。

都市計画区域に含まれないエリアは都市計画区域外・準都市計画区域とします。 都市計画区域外と準都市計画区域は都市計画区域に比べて人口密度も低く、あまり開発されていない田舎が主な土地柄です。

 

区域区分(線引き)

都市計画区域に指定された地域は、次には市街化区域・市街化調整区域に分かれます。どちらともつかない地域は非線引き区域と一般的に呼び、暫定保留の扱いとなります。これを区域区分(線引き)と言います。

線引きにより市街化区域に指定された地域が、この先ご説明する用途地域の各種類へと分けられます。

 

都市計画を策定するのは各自治体

 

地域を都市計画区域内・区域外に分けたり、区域区分(線引き)の場所を決めているのは全国の各自治体です。

都市計画法に基づき、自治体が条例を定めてそれぞれのマスタープランを策定しています。ですから各自治体によっては、線引き基準などに相違が見られる可能性があります。

 

メタウェアリサーチが提供するMapExpert.netの中の「用途地域マップ」により、日本全国の用途地域を調べることができます。遠方の土地を取り扱うときなど、市区町村役場に出向きにくい場合の参考になります。

▶MapExpert.net|用途地域マップ

 

市街化区域以外では用途地域は指定されない?

市街化区域だけでなく、準都市計画区域や非線引き区域に指定された地域であっても用途地域を定めることが可能です。

ただし、市街化区域と違い都市計画法で用途地域の指定が義務付けられてはいません。あくまでも用途地域の指定は自治体判断によります。

 

地区計画等を定める地域も

用途地域だけでなく、自治体独自の地区計画等を定めている地域も多くあります。それぞれの地域の特性に応じた地区計画等を定めることにより、景観を守ったり、歴史のある街並みや建物を保全することができます。

 

地区計画等は以下5つの種類に分かれます。

地区計画 建物・道路・緑地などのルール
防災街区整備地区計画 密集市街地の防災を図るためのルール
沿道地区計画 幹線道路沿いの住民の安全や生活環境を守るためのルール
集落地区計画 主に農村集落の無秩序な農地転用を防止するためのルール
歴史的風致維持向上地区計画 歴史のある建物や景観を守るためのルール

 

用途地域は13種類

 

ここからは、実際に13種類の用途地域を確認しましょう。まずは全ての用途地域の名称を一気にご紹介します。

  1. 第一種低層住居専用地域
  2. 第二種低層住居専用地域
  3. 第一種中高層住居専用地域
  4. 第二種中高層住居専用地域
  5. 第一種住居地域
  6. 第二種住居地域
  7. 準住居地域
  8. 田園住居地域
  9. 近隣商業地域
  10. 商業地域
  11. 準工業地域
  12. 工業地域
  13. 工業専用地域

上記の13種類は、大きくは以下の3種類に分類できます。それぞれの詳細もあわせてご説明します。

 

住宅系

住宅系の用途地域は、第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域・第一種中高層住居専用地域・第二種中高層住居専用地域・第一種住居地域・第二種住居地域・準住居地域・田園住居地域の8種類です。

基本的には住居用建物が主たる建築物になりますが、それぞれの用途地域ごとに建築制限が異なります。

 

商業系

商業系の用途地域は近隣商業地域・商業地域の2種類です。近隣商業地域は日常的な生活用品の買い物をする店舗等が多く建ち、対する商業地域はデパートやオフィスビルなどが建ち並ぶ繁華街です。

 

工業系

工業系の用途地域は準工業地域・工業地域・工業専用地域の3種類です。準工業地域は軽工業の工場と住宅・店舗等が混在し、工業専用地域には住宅などは建てられません。

 

その他の地域地区

用途地域は地域地区の1種ですが、他にもいろいろな地域地区があります。都市計画法では用途地域以外の地域地区を以下のように定めています。

  • 特別用途地区
  • 特例容積率適用地区
  • 特定用途制限地域
  • 高層住居誘導地区
  • 高度地区又は高度利用地区
  • 特定街区
  • 都市再生特別地区
  • 防火地域又は準防火地域
  • 特定防災街区整備地区
  • 景観地区又は準景観地区
  • 風致地区
  • 駐車場整備地区
  • 臨港地区
  • 歴史的風土特別保存地区
  • 第1種歴史的風土保存地区又は第2種歴史的風土保存地区
  • 特別緑地保全地区
  • 流通業務地区
  • 生産緑地地区
  • 伝統的建造物群保存地区
  • 航空機騒音障害防止地区又は航空機騒音障害防止特別地区

建築制限を定めるのは都市計画法でなく建築基準法

 

用途地域は都市計画法によって定められていますが、指定された用途地域の建築制限は建築基準法によって定められています。

つまり、都市計画法と建築基準法は相関関係にあります。

高さ制限や建ぺい率など、用途地域ごとに守らなければいけない決まりがありますので、土地を購入されて新築建物を建てたいと計画しているお客様がいらしたら、対象地の用途地域がお客様の希望と合致しているかを必ず確認しましょう。

 

用途地域は重要事項説明の必須項目

お客様が物件を決められて売買契約を行う際にも、最終的な用途地域の確認が必要です。

不動産契約時の重要事項説明書には、都市計画法に基づいた用途地域を記載する個所があります。

 

画像引用(部分):国土交通省|重要事項説明書(売買・交換)

 

宅地建物取引士が記名押印した重要事項説明書の記載項目は全て口頭で買主様にご説明し、納得頂く必要があります。

お客様にわかりやすい表現を使って、正しく丁寧に説明しましょう。

 

まとめ

 

今回は都市計画法で定められた用途地域について解説しました。

日頃不動産用語になじみのないお客様にとっては「都市計画法」「用途地域」と言われても、すぐに理解するのは難しいものです。

不動産のプロである私たち宅建業者が、難しい言葉をわかりやすく噛み砕いてしっかりと説明して差し上げましょう。

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。