【不動産売買の消費税】土地は非課税・建物は課税対象|売主が個人の場合は建物も非課税!

投稿日 : 2020年05月01日/更新日 : 2023年06月03日

売買や賃貸借などの不動産取引は取り扱う金額が大きく、諸費用として様々な費用が発生しますが、消費税の課税対象になるものと、消費税が非課税のものがあります。

どういった費用が消費税の課税対象となるのでしょうか。
売買など不動産取引における、消費税の課税対象と非課税対象について解説していきます。

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土地は非課税のため購入時に消費税はかからない

不動産を購入するとき、土地は非課税のため消費税はかかりませんが、建物は消費税の課税対象です。

ただし、建物も消費税の課税対象となるのは不動産会社などの課税事業者から購入する場合で、一般的な個人からの購入は非課税です。

また、消費税が課税されるのは引き渡しの時点のため、原則として建物にかかる消費税の税率は引き渡し時のものが適用されます。

 

国税庁(非課税となる取引)のホームページに掲載されている主な非課税取引に、「土地の譲渡及び貸付け」が含まれています。

 

土地の購入に関する税金に関しては、『土地の取得で納める税金、納付方法と期限まとめ|消費税に関する疑問』で詳しく解説しています。

 

 

不動産購入時の消費税の計算方法

不動産会社が売主の住宅の販売では、販売価格のうち、建物部分は消費税が課税対象で、土地部分は非課税です。通常、不動産価格では消費税は内税の価格表示となっています。

 

<不動産会社が販売する建売住宅の消費税の計算例/販売価格:6,000万円の(建物価格(税込):2,000万円、土地価格:4,000万円>

 

税込みの建物価格から消費税を算出するには以下の計算式となります。

 

建物価格:2,000万円 ÷ 1.1 ≒ 1,818万1,819円

消費税:2,000万円 – 1,818万1,819円 = 181万8,181円

 

 

不動産にかかる消費税の課税・非課税一覧

不動産の売買取引や賃貸借取引における消費税の課税対象と非課税対象についてまとめました。消費税の課税対象は国税庁(課税の対象)のホームページに掲載されているように、以下の通り定められています。

 

1. 事業者が事業として行う取引

事業者には法人のほか、個人の事業者も含まれます。個人の場合、独立して資産の譲渡等を対価を得て繰り返し、継続して行っていると、事業者とみなされます。

 

2. 対価を得て行う取引

物品の販売などの対価として対価を受け取る取引です。

 

3. 資産の譲渡等

事業として有償で行われる商品や製品などの販売やサービスの提供、資産の貸付が該当します。

 

消費税の課税対象

不動産の売買取引や賃貸借取引で、消費税の課税対象になるのは以下のものです。

 

  • 仲介手数料
  • 建物の建築
  • 法人・事業者による売却
  • 1ヵ月未満の土地の一時貸し
  • 駐車場としての施設利用
  • 非住宅用(オフィス等)の貸借
  • 事務手数料
  • 融資手数料
  • 司法書士への支払い

 

仲介手数料

不動産の売買取引も賃貸借取引も、仲介手数料はサービスを提供した対価とみなされるため、消費税の課税対象です。土地や建物の売買のほか、住居用も店舗用も、オフィスや倉庫のいずれの賃貸借契約の仲介手数料も課税されます。

 

仲介手数料の消費税で特に注意するべきなのは、不動産会社が売主で建物を含む売買取引のケースです。

通常、不動産価格は「不動産の表示に関する公正競争規約施工規則」で総額表示とされているため、不動産会社が売主のケースでは、販売価格は土地の価格と建物の価格、建物の消費税が含まれた金額となっています。

一方、仲介手数料は法律で上限が決められており、400万円を超える取引では、「売買価格 × 3% + 6万円」で算出できますが、売買価格は消費税を含まない額で算出します。

建物に対する消費税を含めた販売価格で仲介手数料を上限額で算出すると、払い過ぎになるので、建物部分の価格や消費税を確認するようにしましょう。

 

 

建物の建築

建物の建築は消費税の課税対象です。消費税は引き渡しの時期の税率が適用されますが、2019年10月の消費税の10%への増税の際には経過措置が設けられ、2019年3月31日までに工事請負契約を結んだ注文住宅に限り、引き渡しが2019年10月1日以降になっても従前の税率の8%が適用されました。

 

 

法人・事業者による建物の売却

法人や個人でも事業者による建物の売却は消費税の課税対象になります。法人は事業を行うことを目的として設立されているため、不動産会社限らず、建物を売却すると消費税が課税されます。

個人でも、投資用マンションやオフィスビルの売買を繰り返し行っている場合は、事業性があると判断されるため、消費税の課税対象となります。

 

たとえば、新築のマンションや建売住宅は、不動産会社が売主ですので、建物は消費税の課税対象です。

 

 

1ヵ月未満の土地の一時貸し

土地の貸付は通常非課税ですが、1ヵ月未満の土地の一時貸しは消費税の課税対象となります。

貸出期間が1ヵ月未満に該当するかどうかは、契約内容から判断されます。そのため、実際に土地の貸付を行った期間が1ヵ月以上であっても、契約期間は1ヵ月未満の場合は消費税の課税対象になります。

一方で、実際に土地の貸付をしていたのは1ヵ月月以内ではあっても、契約期間が1ヵ月以上の場合は非課税です。

1ヵ月未満の土地の一次貸しが発生する例として、たとえば、資材置き場として3週間土地を貸したといったケースが考えられます。

 

 

駐車場としての施設利用

駐車場など土地を利用した施設利用の場合は消費税の課税対象となり、国税庁(駐車場の使用料など)のホームページで説明されています。

駐車場の利用料が消費税の課税対象となるのは、駐車車両の管理を行うケースや、アスファルト舗装など地面の整備やフェンスの整備、区画割り、建物の設置などを行って駐車場を運営しているケースです。

一方で更地のまま駐車場として貸している、いわゆる青空駐車場の場合は土地としての貸付になるため、消費税は非課税です。

 

また、野球場やプール、テニスコートといった施設の利用に伴う土地の使用も、消費税の課税対象になります。

 

 

非住宅用(オフィス等)の貸借

オフィスや店舗、倉庫などの賃貸借に関わる費用は消費税の課税対象です。

賃料や管理費、共益金のほか、礼金や権利金、保証金の償却部分、更新料は消費税の課税対象です。

預り金としての性格を持ち退去時に返却される、敷金や保証金の非償却部分は非課税です。

通常、マンションの賃料は住居用として消費税が課税されない金額で設定されていますが、事務所として借りる場合には消費税がかかるため、注意が必要です。

また、民泊を営むために借りている場合も、消費税の課税対象になります。

 

消費税は2019年10月に10%に増税されましたが、経過措置として2013年10月1日から2019年3月31日までの間に締結した賃貸借契約の契約期間が、2019年10月1日をまたいでいる場合は、当初の契約期間の間は、消費税の税率は8%が維持されます。

 

 

事務手数料

不動産を住宅ローンを利用して購入する際に金融機関に支払う事務手数料は、消費税の課税対象です。

事務手数料は金融機関によって、借入金額に関わらず一律の定額型と、借入金額に対して一定の比率で支払う定率型があります。

 

 

融資手数料

融資手数料は事務手数料と同じものであり、不動産を住宅ローンを利用して購入するときに金融機関に支払う手数料です。

融資手数料も消費税の課税対象になります。

 

 

司法書士への支払い

不動産の売買では登記手続きを司法書士に委託することが一般的ですが、司法書士への委託報酬もサービスの対価として、消費税の課税対象です。不動産を購入した場合には所有権を法的に明確にするために、土地の所有権移転登記や、建物の所有権保存登記あるいは所有権移転登記を行います。また、住宅ローンを借り入れた場合には抵当権設定登記を行うことが必要です。

 

 

消費税の非課税対象

不動産の売買取引や賃貸借取引において、消費税が非課税になるのは以下のものです。

 

  • 土地の購入・売却
  • 個人による建物の売却
  • 土地の借地利用
  • 住宅用の建物の貸借
  • 住宅ローンの利息
  • 住宅ローンの保証料
  • 住宅ローンの団体信用生命保険
  • 建築確認申請料

 

土地の購入・売却

前述のように土地の売買は非課税となります。土地の売買が非課税なのは、土地は消費するものではなく、減少しないという考え方によるものです。

 

 

個人による建物の売却

建物が消費税の課税対象となるのは、不動産会社などの法人が売主の場合です。個人が売主の場合は土地だけではなく、自宅などの建物の売買も非課税です。

ただし、個人でも不動産投資を行っている場合など、事業性が認められる場合は消費税が課税されることもあります。

 

中古マンションや中古の一戸建ては個人が売主のケースが多く、建物の販売価格は消費税が非課税で、不動産仲介会社への仲介手数料には消費税が課税されているというパターンが多いです。

 

 

土地の借地利用

土地は売買だけではなく、借地利用も原則として非課税です。

ただし、1ヵ月未満の土地の貸付は消費税の課税対象となることが、国税庁のホームページで示されています。

 

 

住宅用の建物の貸借

住宅用の建物の賃貸借で、賃料、管理費や共益金、礼金、敷金は消費税が非課税です。敷金は預かり金のため、住宅用以外でも非課税になります。

また、更新時の更新料は非課税ですが、不動産会社に支払う更新手数料は事務手数料でサービスの対価にあたるため、消費税の課税対象です。

賃料等が非課税になるのは、明らかに住宅用として契約している場合に限られます。

社宅は企業が社宅として住宅を借りている賃料も、企業が従業員に貸している賃料も住宅用のため、非課税になります。

一方で住宅用であっても、ウィークリーマンションなど貸付期間が1ヵ月未満の場合は、消費税の課税対象です。

 

実は住宅用の建物の賃料は消費税がスタートした当初は課税対象でしたが、1991年の制度改正以降は非課税となっています。

 

 

住宅ローンの利息

消費税は資金の流れに関する取引は非課税とされ、預貯金や貸付金の利息は非課税です。そのため、不動産を購入する際に利用する住宅ローンの利息も非課税となっています。

 

住宅ローンの利息は金融機関や金利タイプによって異なります。金利タイプには変動金利型と固定金利型があり、変動金利型の方が金利は安いことがメリットですが、金利が上昇することで返済額がアップするリスクがあることがデメリットです。

固定金利型には3年、5年、10年といった固定期間を選択する固定期間選択型と、借入期間の全期間の金利が固定される全期間固定型があります。固定金利型は、固定期間が短い方が金利が低く設定されています。

 

 

住宅ローンの保証料

信用の保証料は消費税が非課税とされているため、不動産を住宅ローンを利用して購入するときに発生するローン保証料は消費税が非課税です。

 

ローン保証料とは、住宅ローンを借りるときに連帯保証人の代わりとなるローン保証会社に支払う費用です。

ローン保証料の支払い方法は、借入時に一括で支払う方法と毎月、金利に上乗せして支払う方法があります。

万が一住宅ローンの返済が滞ったときには、保証会社が金融機関に返済を行います。ただし、住宅ローンの借入をした債務者は保証会社に返済の義務が生じます。

住宅ローンの利用にあたっては、ローン保証会社の保証を受けられることが融資の条件とされることがほとんどです。

 

 

住宅ローンの団体信用生命保険

保険料は非課税であり、住宅ローンを利用して不動産を購入する場合に加入する団体信用生命保険の保険料も非課税です。

 

団体生命信用保険とは、住宅ローンの借入中に万が一死亡したときや高度障害の状態になったときに、保険金で残債が返済される保険です。フラット35を除く民間の住宅ローンでは、団体生命信用保険への加入が借入の条件とされていることが多く、保険料は金利に含まれていることが一般的です。

 

 

建築確認申請料

建築物を建てるときの建築確認申請手数料は、非課税です。建築確認とは、建築物を建てるときに、建築主事や指定確認検査機関に建築計画を提出して、建築基準法などの法令に適合をしているか確認を受けることです。

建築確認に合格して確認済証の交付を受けた後、工事に着工できます。

 

個人の場合、新築の注文住宅を建てるときのほか、防火地域や準防火地域で増築を行うときやそれ以外の地域で10m2を超える増築を行う場合などに、建築確認申請料が発生します。

 

 

 

まとめ

不動産取引は、特に土地や建物の売買では大きな金額になることが多いため、消費税の課税対象になるか、非課税になるのか把握しておくことが大切です。認識が誤っていると資金が不足することが危惧されます。

売買や賃貸借の取引をする前に消費税がかかるものを把握しておき、必要な資金を伝えられるようにしておきましょう。

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。