不動産信託の仕組みとは|メリット・デメリットと登記の流れを徹底解説

投稿日 : 2020年03月17日

近年、不動産管理と相続対策のための手法として「不動産信託」が注目されています。

不動産信託は、「所有する不動産の管理を、信頼できる人に任せたい」「自分の死後もサポートを続けてもらいたい」といったニーズにマッチする制度です。信託には財産を長期的に管理する機能があるため、相続対策としても活用されています。

多くのメリットを持つ不動産信託ですが、活用するためには登記の流れやデメリットの正確な把握が不可欠です。

今回は、不動産活用法の1つである「不動産信託」について解説していきます。

kobayashi この記事の監修者:
小林 紀雄
住宅業界のプロフェッショナル

某大手注文住宅会社に入社。入社後、営業成績No.1を出し退社。その後、住宅ローンを取り扱う会社にて担当部門の成績を3倍に拡大。その後、全国No.1売上の銀座支店長を務める。現在は、iYell株式会社の取締役と住宅ローンの窓口株式会社を設立し代表取締役を務める。

 

不動産信託とは

信託とは、財産の所有者が第三者に財産の所有権を移転して管理を委託することです。

不動産信託とは、信頼できる第三者に不動産の管理を委託(信託)することを指します。自身は不動産の管理によって得られる利益のみを受けられる等のメリットがあります。

 

関係する人(委託者、受託者、受益者)

不動産信託に関係する人として、委託者・受託者・受益者という3人の人が関わってきます。

 

画像引用:一般社団法人信託協会|信託の基本

  • 委託者=財産の管理を第三者に預けて(信託)管理を依頼する人
  • 受託者=財産を委託者から預かり、管理・運用を行う人
  • 受益者=財産の管理によって生じる利益を受ける人

受益者は委託者が指名することで決まります。

 

どんな時に必要なのか(家族信託、他)

不動産信託は、主に「家族信託」の際に利用されています。ここでは、不動産信託が活用される場面として「家族信託」と「その他」に分けて解説します。

 

【家族信託】

家族信託とは、財産の管理を信頼できる自分の家族に委託するものです。第三者の範囲を家族に限定しています。

家族信託のメリットは以下の通りです。

  • 認知症対策として使える
  • 管理は家族に任せ、利益のみ受け取ることができる
  • 二次相続に活用できる

 

認知症対策として使える

家族信託に似た制度に「任意後見」という制度がありますが、こちらは委託者が認知症等になって初めて受託者の効力が発揮されるものです。通常の相続の場合も、委託者が死亡するまでは財産を第三者が処分できません。

 

管理は家族に任せ、利益のみ受け取ることができる

家族信託であれば、委託者が元気なうちから管理を家族に任せることができます。また、家族信託であれば面倒な管理は受託した家族が行います。自身は面倒な管理から解放され、不動産から生じる利益のみ得ることが可能です。

 

二次相続に活用できる

家族信託は二次相続にも活用できる点も魅力です。受託者を孫に設定することで、信託修了時に残余財産を孫に相続させることができます。

通常の遺言では孫の代までの相続を指定できません。孫の代まで相続を決められるのは家族信託ならではのメリットです。

家族信託であれば、「先祖代々の資産を末代まで直系の家族に守ってほしい」という委託者の希望を実現できます。認知症になっても土地の自由な管理・処分ができます。

 

【その他】

所有している不動産の管理を、信託銀行に委託することも可能です。一部の信託銀行では不動産の売買や鑑定業務まで行っており、委託者は不動産の面倒な管理をプロに任せることができます。

 

不動産信託受益権とは

信託受益権とは、財産から生じる利益を受け取る権利のことです。信託において、受益者がこの権利を取得します。

信託受益権の中でも、不動産から生まれる利益(家賃収入や賃料)を受け取る権利のことを不動産受益信託と呼びます。不動産信託受益権を売却することも可能です。

信託は図の通り三者が関係する制度ですが、委託者自身を受益者とすることもできます。これが「自益信託」です。

 

画像引用:信託協会|自益信託と他益信託

 

不動産信託のメリット・デメリット

不動産の管理を第三者に委託できる不動産信託には、多くのメリットと同時にデメリットもあります。

 

メリット

不動産信託は、通常の不動産取引に比べてコストを抑えることができます。

通常、不動産の売買には以下のような税金や手数料が発生します。

  • 印紙税
  • 登録免許税
  • 不動産取得税

不動産信託ではこのうち、不動産取得税がかかりません。

住宅の税率は2021年3月31日までは固定資産税評価額の3%、宅地は固定資産税評価額の2分の1に対して3%です。これだけの税金がかからないのは不動産信託ならではのメリットです。

 

デメリット

不動産信託のデメリットは、信託受益権を現物に戻す際に不動産取得税や登録免許税がかかることです。

不動産取得税がかからないというメリットは、課税が繰り延べられたという表現が正しくなります。単なる税金対策にはならない点に注意が必要です。

信託を設定する際にも登録免許税はかかるため、トータルでは多く税金を払うことになります。

さらに、信託銀行が受託者になっている場合は信託報酬が発生するほか、不動産信託受益権の買い手が見つかりにくいという点もデメリットです。

 

信託財産の所有者は誰か

不動産信託は、委託者・受託者・受益者の関係が成り立っています。そこで、信託財産の所有権は誰が持っているかが問題になります。

信託財産は、形式上の所有者と実質的な所有者が違う点に注意が必要です。

形式的な所有者は、「受託者」になります。委託者から受託者への所有権移転登記がなされるため、受託者はその権限を使って賃貸や売却を行います。

一方で信託財産の実質的な所有権は、「財産から利益を得る受益者」が持っています。賃貸や売買によって受託者の元に入ったお金は受益者のものなので、受託者が無断で使用することはできません。信託が終了した場合は、残余財産は受益者が得ることになります。

このように、信託においては「財産を管理する権利」と「財産から収益を得る権利」が分かれているのです。

 

 

不動産信託にかかる費用

不動産信託を行うためには登記を行う必要があり、登記費用が発生します。

不動産信託に必要なコストは、大きく分けて以下の3つです。

  • 登録免許税
  • 印紙税
  • 専門家への報酬

登録免許税

不動産信託の登録免許税は、土地評価額の0.3%および建物評価額の0.4%がかかります。

なお、通常の売買取引の場合は土地評価額の1.5%および建物評価額の2%がかかるため、不動産信託の方が大幅に安くなります。

 

印紙税

信託契約書に印紙代200円、受益権売買契約書に印紙代200円がかかります。

これも通常の不動産取引であれば、印紙代が最大で48万円かかります。特に不動産業者が取り扱う数億円単位の物件の場合に差が大きくなります。1億円の物件の場合、不動産信託であれば400円で済むところを3万円支払うことになるからです。

【参考】国税庁|印紙税額の一覧表

 

専門家への報酬

登記を専門家に依頼する場合は、手数料も忘れてはいけません。

自身で全ての登記を行うことも不可能ではありませんが、通常は弁護士や司法書士に依頼することになります。費用の見積もりには登記費用のほか、交通費や通信費、調査費などの名目で専門家の取り分が記載されます。

依頼する専門家や物件の規模によって費用は大きく変わるため、早い段階での確認が必要です。

 

不動産信託の流れ

実際に不動産信託を行う際は、どのような流れで進めればいいのでしょうか。大きくは「所有権移転登記」と「信託登記」に分かれます。

 

所有権移転登記

所有権移転登記とは、売買や贈与、相続によって所有権が移動した際に行う登記のことです。「不動産がどのようなもので、誰が所有しているか」を表していて、登記簿のうち「権利部の甲区」に記載されます。

 

画像引用:wikipedia|所有権移転登記

 

不動産信託においても、受託者に所有権が移る時に所有権移転登記を行います。

所有権移転登記には、以下の書類が必要です。

 

【委託者の必要書類】

  • 固定資産評価証明書
  • 登記済証または登記識別情報
  • 印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
  • 委任状(司法書士が作成)

 

【受託者の必要書類】

  • 住民票(有効期限なし)

信託登記

信託を原因とする所有権移転登記の後は、信託登記を行います。必要書類は以下の通りです。

 

【委託者の必要書類】

  • 不動産権利書
  • 印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
  • 固定資産税評価証明書
  • 実印
  • 身元証明書(運転免許証など)

 

【受託者の必要書類】

  • 住民票
  • 認印
  • 身元証明書(運転免許証など)

 

まとめ

今回は、不動産の管理手法の中でも「不動産信託」について紹介しました。生前から管理を託すことができる、死後もサポートを継続してもらえるなど相続対策としても注目されています。

メリットだけでなく、デメリットもしっかり把握して買主様に提案できるようにしましょう。