不動産の管理を自分以外に任せる信託登記とは│メリットと費用を解説

投稿日 : 2022年07月28日/更新日 : 2022年08月11日

高齢化が進んでいる現在、認知症の患者が徐々に増加しているというデータがあります。もし自分が認知症になった場合に財産をどうするか、将来について悩んでいる方も多いでしょう。

不動産営業の立場として、そのような方から財産の信託についての相談を受けることもあるかもしれません。

信託は信託登記が必要になるため、相談を受けるならその辺りの知識を身に着けておく必要があります。

本記事では信託について学び始めた不動産営業の方に向けて、信託登記の基本的な内容を解説します。

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不動産の信託登記とは

不動産 手続き

不動産に関する信託登記について、基本的な内容を解説します。

信託は「第三者を信じて任せる」こと

信託とは、読んで字のごとく「第三者を『信じて』『託す』」ことです。

委託者(依頼する側)が受託者(依頼される側)に財産を預け、所有権も受託者に移すことで、信託財産の形式的な名義は受託者のものになります。委託者は、受託者に財産を一定の目的に沿って管理・処分してもらうことができます。

一方の受託者は自身の財産と分別して、信託財産を管理する義務が生じます。

信託には登記が必要

不動産を信託した場合、下記の手続きを行うことで対外的に「信託財産であること」を明示することが必要です。

  1. 所有権移転登記
  2. 信託登記

所有権移転登記は、信託財産となる不動産の登記名義を委託者から受託者に移転する手続きのことです。委託者と受託者が共同で申請を行います。

信託登記は不動産を信託した場合に、内容を登録しておくために行う登記です。

不動産の場合、管理する方法は信託登記しかないため、この登記は必ず行う必要があります。

信託の基本的内容

信託には以下の3つの人物が登場します。

  • 委託者(本人・依頼する人)
  • 受託者(信託銀行など・依頼を受ける側)
  • 受益者(財産から生じる利益を得る人)

委託者は信頼できる受託者に自分の財産を信託し、受託者は指示に従って財産を管理・運用して利益を受益者に渡します。

信託した財産を、何のために、どのように管理・運用するかは委託者が決めることができます(信託目的)。原則として違法・脱法なもの等ではない限り、信託目的も委託者が自由に設定できます。

また、委託者自らが受益者になり、自分のために財産を管理・運用することもできることもできます。委託者と受益者が同一人物の信託が「自益信託」、委託者と受益者が異なる信託が「他益信託」です。

財産を信託することのメリット

マル メリット

自分の財産を(信頼しているとはいえ)、他人に信託することに抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、信託することによって以下のメリットが得られます。

  • 財産の管理・運用を任せることで認知症対策になる
  • 「信託受益権」に転換することで、財産を運用できる
  • 登記の際に不動産取得税が課されない

財産の管理・運用を任せることで認知症対策になる

信託では受託者に財産の管理・処分を委ねることができるため、本人(委託者)が認知症になった際にも、受託者が与えられた権限の範囲内で管理・処分を継続することが可能です。

家族信託であれば財産処分について判断能力があるうちに家族に委任でき、委託者の健康状態に関係なく家族が財産を処分できます。

信託銀行に信託する場合なら信託法・信託業法などを知り尽くした専門家が知識と経験をもとに財産を管理・運用してくれます。

「信託受益権」に転換することで、財産を運用できる

金銭や土地など、信託した財産は信託受益権という権利に転換されます。

信託した財産が信託受益権という権利になると事務手続きが容易になるだけでなく、信託受益権を投資家に売買するなどの運用をすることも可能です。

信託受益権とは

信託受益権は「資産から発生する経済的な利益を受け取る権利」のことです。

信託では委託者(不動産の所有者)が受託者に物件の購入や売却・賃料の回収や管理を指示するのですが、信託銀行が自ら不動産の管理・運用を自ら行うことはまずありません。通常は不動産管理会社を選定して任せます。

不動産管理会社が得た収益から受託者に信託報酬が渡り、税金や管理費などの必要経費が差し引かれた金額が受益者に分配されます。

登記の際に不動産取得税が課されない

不動産の信託登記を行う際、「不動産取得税」が課されることはありません。

不動産を取得すると受託者へ所有権移転登記が行われたうえで信託登記がなされ、受託者は名義人として登記簿に記載されます。

とはいえ、受託者は形式的な名義人になっているだけなので、不動産取得税がかからないというわけです。

あわせて読みたい:不動産信託とは|仕組みやメリット・デメリット、不動産登記の流れも徹底解説

信託登記にかかる費用

費用 コスト

信託登記を行うにあたり、一定の費用がかかることは知っておきましょう。

主に必要になる費用は以下の3つです。

  • 登録免許税
  • 印紙税
  • 司法書士への報酬支払い

登録免許税

不動産の信託登記をする場合に必要になる登録免許税の金額は以下のとおりです。

  • 所有権移転登記:非課税
  • 土地の信託登記:固定資産税評価額の0.3%
  • 建物の信託登記:固定資産税評価額の0.4%

信託の登記については登録免許税が通常の所有権移転登記の場合と比較しておよそ5分の1になり、負担が大きく軽減されるのがメリットです。

固定資産税評価額は、毎年届く固定資産税納税通知書に記載されています。

印紙税

不動産信託では信託契約書に貼付けする印紙税が200円、受益権を売買する場合は受益権の売買契約書に貼付けする印紙税が200円かかります。

一方で通常の不動産取引では、契約金額次第で数万円から最大48万円の印紙税が課されます。

信託では印紙税を大きく抑えることが可能です。

司法書士への報酬支払い

専門家抜きで不動産信託登記を始めることも不可能ではありません。

ただ、法律に詳しくない人が独断で進めることで生じる様々なリスクを避けるために、司法書士などの専門家に依頼することが一般的です。

信託登記の手続きを司法書士に依頼する場合の費用相場は8~15万円とされています。ただし、家族信託のプランニングから依頼した場合、30万円ほどが相場になるようです。

具体的な費用は司法書士事務所によっても異なるので、事前に確認しておきましょう。

まとめ

本記事では信託について学び始めた不動産営業の方に向けて、信託登記の基本的な内容を解説しました。

不動産を信託した場合は対外的に「信託財産であること」を明示するために「所有権移転登記」「信託登記」が必要ですが、専門家に管理してもらえたり信託受益権として運用が可能になったりというメリットもあります。

メリットや費用面も解説できるように、この機会に知識を深めておきましょう。

kobayashi この記事の監修者:小倉 大将
「いえーる 住宅研究所」編集長
学生インターン期間を経て、新卒一期生としてiYell株式会社に入社。開発マネジメント部門・メディア事業部門を経験し、入社2年目にして「いえーる 住宅研究所」の編集長に異例の抜擢を果たす。現在、同メディアを不動産業界のDX推進の一翼を担う媒体とすることをミッションに、日々業務に励む。
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