所有権移転登記とは何かわかりやすく解説|費用や必要書類、誰がするのかも紹介
土地や建物を購入したり、相続や贈与によって取得したりしたときには、所有権移転登記を行うことが必要です。
しかし、実際のところ、相続をしても所有権移転登記を行わずに放置してしまう方もいます。
この記事では、所有権移転登記とは何か、必要な書類や費用、手続きの流れなどについて解説していきます。
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所有権移転登記とは
所有権移転登記とは、土地や建物の所有権が売買や相続、贈与などによって移ったということを法的に明確にするために行う登記をいいます。
たとえば、売買によって所有権を得ていても、所有権移転登記を行って登記を備えなければ、第三者に対して所有権の移転を主張できないことが、民法177条で定められています。
不動産についての物権の得喪変更は、その登記を具備しなければ、当該登記の欠缺を主張する正当な利益を有する第三者に対抗することができない。 |
所有権について登記簿で確認する方法については、『登記簿謄本「甲区」の見方|所有権の確認ポイントと対処すべき記載とは』で解説しています。
所有権移転登記が必要になるケース
不動産の所有権移転登記が必要になるケースとして、主に次に挙げる4つがあります。
土地や建物を売却(購入)した場合
土地や建物の売買を行った場合は、売主から買主への所有権移転登記を行うことが必要です。
買主が登記権利者、売主が登記義務者という位置付けであり、原則として共同して登記申請を行わなければなりません。
通常は所有権移転登記の手続きは司法書士に委任するため、売買代金の決済日当日に、司法書士が法務局に出向いて登記申請が行われます。
不動産の相続人となった場合
不動産の所有者が亡くなった場合、遺言書がある場合は遺言書の検認、遺言書がない場合には相続人全員による遺産分割協議にて、遺産の分け方が決まります。
不動産を相続することになった人は所有権移転登記を行います。
生前贈与で不動産を譲り受けた場合
生前贈与を行うと贈与税が発生するため、事実上、贈与を行っていても所有権移転登記を行わないケースもありますが、所有者が亡くなって相続が開始されると、別の相続人が所有権移転登記を行うリスクがあります。
生前贈与による所有権の移転を明確にするために、所有権移転登記を行うことが必要です。贈与を受けた受贈者が登記権利者で、贈与をした贈与者が登記義務者となり、原則として共同で登記申請を行います。
夫婦が離婚した場合
夫婦が離婚して、不動産の財産分与が発生した場合には所有権移転登記を行うことが必要です。
夫あるいは妻の単独名義の不動産を相手の名義にする、夫婦の共有名義の不動産を単独名義に変更するといったケースが考えられます。
こうした場合には、夫と妻が協力して登記申請手続きを進めていくことが必要です。
所有権移転登記は誰がする?
所有権移転登記は、所有権を失うという不利益を被る所有権義務者と、所有権を取得するという利益を得る所有権権利者が、共同して行うとされています。
ただし、必ずしも本人が所有権移転登記の申請手続きを行わなければならないものではなく、委任状を作成すれば、司法書士などに委任することも可能です。
しかし、所有権移転登記は任意となっているため、実際には長年にわたって登記が行われず、所有者が不明となっている土地が増加しているという実情があります。そのため、政府では、2020年を目標に所有権移転登記を義務化することを検討しています。
自分で所有権移転登記する方法・流れ
所有権移転登記は司法書士に委任するのが一般的ですが、自分で進める方法もお伝えします。登記申請を自分で行う場合には、法務局に事前に相談することが推奨されています。
買主自らが所有権移転登記の申請手続きを行う場合について、順を追って流れを解説していきます。
1. 登記申請書を作成する
まず登記申請書を作成しますが、所有権移転登記の登記申請書は、法務局のホームページに、様式(フォーマット)と記載例が掲載されています。
売買の場合は売買用の様式を選び、以下のように記載します。
登記申請書の項目 | 記載する内容 |
原因 | 売買の日時を記入 |
登記権利者 | 買主の住所氏名 |
登記義務者 | 売主の住所氏名 |
添付情報 | 登記申請に必要な添付資料を確認すること |
申請日 | 申請した日にち |
法務局 | 不動産の所在地の管轄の「法務局」を記入 |
申請人兼義務者代理人 | 売主から登記申請の委任を受けた買主の住所氏名 |
課税価格 | 固定資産税評価額による土地と建物のそれぞれの評価額と合計 |
登録免許税 | 「課税価格」に所定の税率をかけて算出した、土地と建物のそれぞれの税額と合計 |
不動産の表示 | 登記事項証明書に記載されている通りに、正確に記入。
ただし、「不動産番号」を記載した場合は、土地は「所在や地番、地目、地積」、建物は「所在や家屋番号、種類、構造、床面積」の記入を省くことができます。 |
2. 登記申請書を添付書類と一緒に法務局へ提出
所有権移転登記の登記申請の際には、登記申請書と添付書類を不動産が所在する場所の管轄の法務局に提出します。
登記申請(売買)の場合に必要となる添付書類 | 登記識別情報または登記済証、売買契約書、売主の印鑑証明書、買主の住民票の写し |
また、登記権利者である買主が登記申請を行う場合には、登記義務者の売主からの委任状が必要です。
法務局の受付時間は、平日の8時30分から17時15分までとなっています。土日、祝日は開いていませんので注意しましょう。
3. 審査書の不備を補正
所有権移転登記の登記申請の書類を提出した後、書類審査が行われ、不備があった場合には職員の指示に従い、訂正をします。
4. 登記完了証・登記識別情報受け取り
登記手続きの完了までには1~2週間程度かかり、登記が完了すると登記完了証と登記識別情報の交付を受けます。
登記完了証は登記手続きが完了したことを示す書類で、申請内容などが記載されています。
登記識別情報とは登記証に代えて発行されるもので、アラビア数字と符合を組み合わせた12桁の符合で、登記名義人ごとに定められています。
登記申請を行うときの本人確認書類の一つになるもので、目隠しシールを貼って交付されますので、剥がさずに保管します。
所有権移転登記にかかる費用
所有権移転登記を行うには登録免許税がかかります。
登録免許税は登記手続きを行うにあたって、国に支払う税金で、固定資産税評価額に税率をかけて算出します。
ただし、相続による所有権移転のうち、2021年3月31まで、個人が相続によって土地を取得して登記をしないまま亡くなった場合と、相続により評価額が10万円以下の少額の土地を相続した場合には、免税になります。
このほかに、売主は印鑑証明書や固定資産評価証明書、買主は住民票の写しといった公的な書類の交付を役所で受ける際の手数料が発生します。
また、司法書士に所有権移転登記の手続きを委任した場合の費用は、5万円~10万円程度が目安です。
関連記事:登録免許税とは|不動産登記にかかる税金の計算と軽減措置について
関連記事:登録免許税の計算方法を解説|不動産登記の軽減税率が適応する条件とは
登録免許税の計算方法
登録免許税は、「固定資産税評価額×税率=登録免許税額」という計算式で算出できます。
所有権移転登記の登録免許税の税率は、売買や贈与は2%、相続は0.4%です。
ただし、2021年3月31日まで売買による土地の所有権移転登記の登録免許税は、1.5%に軽減されています。
また、建物では一定の要件を満たした住宅用家屋の売買による所有権移転登記は、2022年3月31日までは税率が0.3%になります。
2020年3月までにはなりますが、一定の要件を満たした認定長期優良住宅や認定低炭素住宅、買取再販業者によるリフォーム済み住宅の所有権移転登記の登録免許税は0.1%です。
<売買による所有権移転登記における登録免許税の計算例>
固定資産税評価額2,000万円の土地:2,000万円 × 1.5% = 30万円
固定資産税評価額2,000万円の家屋:2,000万円 × 0.3% = 6万円
※いずれも軽減税率を適用した場合
所有権移転登記の費用は誰が負担する?
所有権移転登記にかかる費用は商習慣で買主が負担することが一般的です。
ただし、抵当権抹消登記や住所変更登記、氏名変更登記を行う必要があるケースでは、売主の費用負担が発生します。
所有権移転登記の必要書類
所有権移転登記の手続きには以下の2つの書類が必要です。
この他に、不動産を譲る側と譲り受ける側でそれぞれ用意する必要がある書類があります。
必要書類1. 委任状
委任状は司法書士に登記申請手続きを委任する場合に必要になる書類です。売主は委任状に実印の押印が必要です。
通常、委任状の用意は司法書士が行っています。
必要書類2. 登記原因証明情報
「登記原因証明情報」とは、登記の原因になった法律行為を証明する書類です。
登記原因証明情報に記載する内容は「登記の目的」と「登記の原因」、「当事者」、「不動産」です。
登記の目的 | 「所有権移転登記」と記入 |
登記の原因 | 売買や贈与・相続といった、所有権移転のもととなった法律行為と日付 |
当事者 | 買主などの登記権利者と売主などの登記義務者の氏名 |
不動産 | 登記事項証明書に記載された不動産の表示 |
登記原因証明情報には、売主の実印の押印が必要です。
売買の場合は、売買契約書でも代用できます。
また、売買による所有権移転登記では、売却代金の領収証が求められることもあります。
必要書類3. 売主(譲る側)が用意するもの
所有権移転登記で売主(譲る側)が用意する書類などは以下のものです。
- 印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
- 固定資産評価証明書
- 登記済証または登記識別情報
- 実印
印鑑証明書や固定資産税評価照明書は市区町村の役所で取得することができます。交付を受けるために必要な手数料は、いずれも300円程度です。
印鑑証明書は発行から3ヶ月以内のもの、固定資産税評価証明書は当該年度のものが必要ですので、注意しましょう。
固定資産税評価証明書は、登録免許税の算定のために必要になります。
登記済証と登記識別情報はいずれも、売主が当該の不動産を取得したときに、法務局で発行されたものです。
登記済証はいわゆる権利証です。2005年3月に不動産登記法の改正で登記事務がオンライン化され、登記識別情報の交付に切り替わったことで廃止されました。
登記済証の廃止前に発行された登記済証は、登記申請に用いることができます。
必要書類4. 買主(譲り受ける側)が用意するもの
所有権移転登記で買主(譲り受ける側)が用意する書類などは以下のものです。
- 住民票
- 認印
売主の用意する印鑑証明書は、発行から3ヶ月以内のものとされているのに対して、買主の用意する住民票は発行からの期限は設けられていません。
住民票は市区町村の役所で取得することが可能で、手数料は300円程度です。
所有権移転登記の申請書の書き方
所有権移転登記の申請書も記載する内容は、所有権移転登記の原因によって違いがあります。
法務局のホームページの「登記申請書の様式及び記載例」では、売買や贈与、離婚による財産分与のほか、相続は自筆証書遺言や公正証書遺言、法定相続、遺産分割といった種類の各様式(フォーマット)と記載例が掲載されています。
一例として、相続と贈与の場合の所有権移転登記はの登記申請書について説明していきます。
所有権移転登記申請書(相続)
相続による所有権移転登記の申請書は、義務者や権利者の項目がなく、義務者にあたる亡くなった被相続人の氏名と、権利者にあたる相続人の住所氏名を記入するのが特徴です。
原因の欄には所有権移転の原因となった事柄が起きた年月日を記載しますが、所有者である被相続人が亡くなり、相続が開始した日を書きます。
- 登記の目的
- 原因
- 被相続人
- 相続人(申請人)
- 添付情報
- 申請日
- 管轄の法務局
- 課税価格
- 登録免許税
- 不動産の表示(土地の不動産番号の記入で、所在や地番、地目、地積は省略可能。建物の不動産番号の記入で、所在や家屋番号、種類、構造、床面積は省略可能)
画像引用:所有権移転登記申請書(相続・法定相続)記載例 | 法務局
所有権移転登記申請書(贈与)
贈与による所有権移転登記の申請書は、権利者の欄に贈与を受けた受贈者、義務者の欄に贈与をした贈与者の住所氏名を記入します。
申請人兼義務者代理人の欄に記入するのは、贈与者から登記申請の委任を受けた受贈者の住所氏名です。
また、原因には贈与や贈与契約が成立した日を記入します。
贈与の場合の所有権移転登記の申請書は、売買の場合と大きく変わりません。
まとめ
不動産の所有権移転登記は義務付けられてはいないものの、登記を行っておかなければ、第三者に対して法的に権利を主張できません。
また、所有権移転登記を行わずに死亡してしまうと、手続きが煩雑になります。
売買や相続、贈与などで所有権を取得した場合は、速やかに所有権移転を行うことをお伝えしましょう。
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この記事の監修者: 小林 紀雄 住宅業界のプロフェッショナル某大手注文住宅会社に入社。入社後、営業成績No.1を出し退社。その後、住宅ローンを取り扱う会社にて担当部門の成績を3倍に拡大。その後、全国No.1売上の銀座支店長を務める。現在は、iYell株式会社の取締役と住宅ローンの窓口株式会社を設立し代表取締役を務める。 |