準工業地域と工業地域は何が違う?|準工業地域の特徴と注意点のまとめ
工業系の用途地域には、工業地域、工業専用地域、準工業地域の3種類があります。
工業地域と聞くと一般的に工場地帯をイメージしますが、それぞれの地域にかけられている制限に違いがあり、建てられている建物や街並みも異なります。
今回は、準工業地域の特徴や注意点について解説します。
準工業地域
工業系の用途地域は工場の建造が許可されています。
その中でも準工業地域は建物の制限が緩く、一部の風俗施設と危険性、環境負荷が大きい重化学工場を除いて建物の用途に制限がない地域です。
そのため、住宅も建てることができ、住宅と工場が混在している街並みとなっています。
都市計画法における用途地域
用途地域は、用途や使用目的が異なる建物を同一地域に混在させないことで、良好な都市環境を形成することを目的に定められています。
用途地域は13種類あり、それぞれ異なる制限がかけられています。大きく分けると住居系、商業系、工業系の3つに分類されます。
用途地域については以下のページをご参照ください。
あわせて読みたい:制限が多く複雑な用途地域についてわかりやすく解説します
準工業地域の特徴
準工業地域と聞くと、工業という単語が含まれることから騒音や産業廃棄物、危険物などをイメージしてしまいます。
しかし、準工業地域は、危険性の高い工場や著しく環境を悪化させる恐れのある工場の建造や火薬類、石油類、ガス等の危険物の貯蔵、処理量が多い施設の建造が禁止されています。
そのため、工場専用地域や工業地域にあるような危険度の高い工場は準工業地域には存在せず、比較的小規模な工場が多くなっています。
また、病院や幼稚園、小中高等学校、大学など生活に欠かせない施設や床面積10,000㎡を超えるショッピングモールや遊技場も建設可能となっており、多種多様な建築物が存在しています。
準工業地域の制限と建築
準工業地域は、工業系の用途地域の中では比較的生活環境に恵まれた地域となっています。
具体的な準工業地域の制限内容と建てられる建物、建てられない建物について説明します。
準工業地域の制限内容
準工業地域の制限内容については以下のとおりです。
建ぺい率 | 50%、60%、80% | |
容積率 | 100%、150%、200%、300%、400%、500% | |
道路斜線制限 | 適用距離 | 20m、25m、30m、35m |
勾配 | 1.5 | |
隣地斜線制限 | 立ち上がり | 31m or 適用なし |
勾配 | 2.5 or 適用なし | |
日影制限 | 対象建築物 | 高さ10m超 |
測定面 | 4m、6.5m | |
規制値 | 4-2.5h/5-3h | |
敷地面積の最低限度 | 200㎡以下の数値 |
準工業地域で建てられる建物・施設
- 準工業地域で建てられる建物・施設は以下のとおりです。
- 住宅、共同住宅、寄宿舎、下宿、図書館
- 幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、専修学校、病院、診療所、公衆浴場、老人ホーム、身体障害者福祉ホーム、老人福祉センター、児童厚生施設、神社、寺院、教会、保育所、交番、公衆電話ボックス、
- 店舗(面積制限なし)
- 事務所(面積制限なし)
- 工場(面積制限なし・ただし危険性が大きいか、又は著しく環境を悪化させる恐れのある工場を除く
- ホテル・旅館(面積の制限なし)
- ボーリング場・スケート場・ゴルフ場・カラオケボックス・パチンコ屋・麻雀屋等(面積の制限なし)、料理店、キャバレー、ナイトクラブ
- 自動車教習所(面積の制限なし)
- 倉庫業の倉庫
準工業地域で建てられない建物・施設
準工業地域で建てられない建物・施設は以下のとおりです。
- 個浴付き浴場(個室浴場型の性風俗店など)
- 危険性が大きい工場・または著しく環境を悪化させる恐れのある工場
他の工業系用途地域との違い
工業系の用途地域は、工業地域、工業専用地域、準工業地域の3種類あります。
具体的にどこが違うのかは以下のとおりです。
工業地域
準工業地域は、危険性の高い工場や著しく環境を悪化させる恐れのある工場を建築することはできません。それに比べ工業地域は、危険性の大きさや取り扱う危険物の量に関わらずどんな工場も建築できます。工業地域の方が大規模な工場の建築もできるため、工業における利用を最優先にしている地域と言えます。
準工業地域では建築できる施設も、工業地域では制限のため建てることができないものもあります。例えば、幼稚園、小中学校、病院やホテルなどの宿泊施設、劇場や映画館、ナイトクラブなどです。
工業地域は工場や事務所などの需要が一般住宅に比べて高い地域であり、準工業地域のほうが住環境寄りの用途地域だと言えます。
工業地域については以下のページをご参照ください。
あわせて読みたい:工業地帯でも住居は建てられる | 工業地域について詳しく解説
工業専用地域
工業専用地域は、住宅や飲食業、物品の販売業の店舗を建築することが禁止されています。そのため、工業の利便性が最優先されている地域であると言えます。
工業専用地域については以下のページをご参照ください。
あわせて読みたい:住居ではなく工場のための用途地域 | 工業専用地域について解説します
商業地域との違い
準工業地域は、商業地域と同じく様々な用途の建物を建てることができます。しかし、商業地域より日当たりや日影などの制限が厳しいため、小規模から中規模の様々な用途の建物が密集したエリアを形成する事が多いです。
また、商業地域は150㎡を超える工場を建てることができず、準工業地域で建てることができない風俗店等を建てる事ができるという違いがあります。
商業地域については以下のページをご参照ください。
あわせて読みたい:商業地域とは|近隣商業地域との決定的な違いとメリット・デメリットを解説
営業の注意点
準工業地域は利便性の高い地域ですが、工場や騒音トラブル、環境汚染などのイメージが強く敬遠されがちです。
特に、土地購入の際「土壌汚染」を気にされる方が多くいます。土壌汚染とは、有害な物質が土壌に浸透し、土壌や地下水が汚染されている状態を言いますが、目に見えないためきちんと調べなければわかりません。土壌汚染について質問されたときに答えることができるようにしておくと良いでしょう。
準工業地域の地価は平均よりも低くなります。準工業地域は危険性が高くないにしろ工場を建てることができることから、閑静な住環境を望む人々の要望が低いためです。
土地売買の際、準工業地域の日照制限はメリットとなります。商業地域も準工業地域と同じく利便性の高い地域ですが、商業地域は日照制限がありません。準工業地域の日照条件の良さは、売却時も購入時もアピールポイントになります。
しかし、近年ではマンション用地が不足しており、準工業地域でも高層マンションが良くみられます。将来は今よりも日照が悪くなる可能性があることも頭に入れておくと良いでしょう。
まとめ
準工業地域は、一般的な工業地帯のイメージと違うことを解説しました。
住宅用として土地を購入される方も多いため、準工業地域の特徴や注意点をしっかり把握しておくと営業に大いに役立つでしょう。お客様の理想にあった提案ができるように、知識を広げましょう。
あわせて読みたい:準工業地域とは|制限や騒音についてわかりやすく解説!
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