不動産の覚書|基本の構成とひな形作成サービスを紹介
不動産売買において、契約書以外に顧客と「覚書」を取り交わすことがあります。
今回は覚書のひな形をダウンロードできるサービスと、覚書の書き方の基本を解説します。
不動産向けの覚書|ひな形ダウンロード先
覚書のひな形・テンプレートを紹介しているサイトは多数ありますが、今回はその中でも以下の2つのサイトを紹介します。
- 文例書式ドットコム
- bizroute(ビズルート)
文例書式ドットコム
文例書式ドットコムは、Eメール文章・契約書・議事録などのビジネスに関係する書類のひな形・テンプレートを提供しているサイトです。
「不動産に関する契約書の書き方」というページで、さまざまな書類の覚書のひな形が掲載されています。
- 転貸に関する合意書(賃貸人と賃借人との覚書)
- 契約解除に関する覚書
- 売買代金に関する覚書 など
書類の文章を作成するうえでのポイントやマナー、法律知識についても解説しています。
bizroute(ビズルート)
bizroute(ビズルート)は、ビジネスに役立つノウハウを紹介しているオンラインメディアです。
「総務」「営業」「人事」「経理」「開発」「その他」の6つのジャンルから、さまざまな書類のテンプレートをダウンロードできます。
覚書も同様で、ワード版・エクセル版それぞれで「個人向け」「法人向け」「法人向け変更用」をダウンロード可能です。
PDF作成ツールも提供しており、ビジネスを幅広くサポートしてくれるでしょう。
覚書とは
覚書は、一般的に「取引相手と合意した内容を確認する」ための書類のことです。
- 契約のうち重要度が低い内容を変更する
- 契約書の疑問点を明確にする
すでに交わした契約に補足や変更があった場合にも取り交わすことがあります。
原則として契約は口頭でも有効です。
しかし、覚書がないと約束したことを証明する書類が残っていない状態です。
約束したことを明確にできません。
「言った・言わない」になるトラブル防止の観点からも、覚書は有効です。
覚書の効力
覚書の効力は「契約書と同等」です。
「覚書は仮の契約書類」「大した効力がない」と勘違いしている方も少なくありませんが、実際にはそうではありません。
覚書でも契約書と同じく、当事者や記載内容の特定や署名捺印が必要です。
名称が違うからといっても、覚書を書けば契約の意思は明確です。
契約書と覚書の違い
契約書と覚書、名称に違いがありますが、内容はほとんど同じです。
名前の感じからして契約書の方が効力が強いイメージがありますが、実際には変わりません。
ただ、両者を使い分けることはできます。
使い分けるポイントは「契約内容が紙1枚に収まる内容かどうか」です。
合意や変更したい内容が紙1枚に収まるなら覚書、それ以上の枚数に及ぶ場合には契約書を再発行します。
覚書と念書の違い
覚書と似たような書類に「念書」があります。
両者の違いは以下のとおりです。
- 覚書:双方の合意に基づく契約が書かれる
- 念書:一方の当事者が一方的に約束させる文書
念書は約束をさせられる側だけが保管します。
双方の合意に基づいて双方で保管する覚書とはその点で異なります。
不動産契約で覚書が交わされるケース
不動産の契約において覚書が交わされるのは、以下の2パターンが考えられます。
- 契約変更が発生した場合
- 契約後に合意内容を確認する必要がある場合
契約変更が発生した場合
すでに契約された契約書の内容に変更が生じた場合は、覚書を取り交わします。
覚書に決まったフォーマットはなく自由に作成できますが、契約の変更に関する重要な書類です。
変更される内容はキチンと明記することが必要になります。
覚書という題名だけでなく、変更確認書という題名で作られることもあります。
契約後に合意内容を確認する必要がある場合
契約締結の際に金額や条件が確定できない場合、別途で覚書を作成することがあります。
実際に作業をしてみないと金額などが確定できない場合、業務請負契約書に「報酬額は別途協議のうえで定める」などと記載します。
そのうえで実際に金額が確定したあと、内容を明記した覚書を取り交わします。
覚書の書き方
覚書には明確な書式は決まっていませんが、かといって「なんでも良い」というわけではありません。
ここでは、覚書の基本的な書き方のポイントを紹介します。
- タイトルを決める
- 前文を書く
- 合意内容を書く
- 日付・署名を入れる
- 後文を書く
タイトルを決める
最初に必要になるのはタイトルです。
ただ、書き方に決まりはありません。
もっとも大切になるのは覚書に書く「合意した内容」「変更した内容」ですから、タイトルはシンプルに「〇契約に関する覚書」だけでも構いません。
ただし、単に「覚書」だけだと何を取り決めしたのかが分からなくなります。
どんな覚書なのかひと目で分かるように「〇〇に関する覚書」とした方が良いでしょう。
前文を書く
前文は、契約当事者が誰なのか特定して覚書の内容を分かりやすく説明するために作成します。
「目的」「当事者」などが前文にあたります。
目的では契約の主旨・内容を記載するのが基本です。
当事者の項は個人か法人かによって、記入する内容が変わります。
- 個人:住所・氏名
- 法人:本社所在地の住所と法人名
合意内容を書く
約束した内容を「合意内容」として記載します。
日付・署名を入れる
覚書の末尾に日付と署名、捺印するスペースを設けます。
契約が成立した日付を証明する大切な部分です。
日付については「いずれか片方が署名した日」「書面上で最後に押印した日」など選択肢があるため、双方で話し合ってから決めましょう、
署名欄には「住所」「会社名」「役職」「名前」の順で記入します。
押印は何でも良いですが、印鑑証明をとった実印を使用するのがベターです。
後文を書く
必ずしも作成する義務はありませんが、あると丁寧な部分です。
当事者間の合意を証明する文言や覚書を当事者同士が保管するといった内容を記載します。
不動産の覚書には収入印紙は必要?
覚書に収入印紙が必要かは、契約の内容で判断されます。
タイトルに関係なく文章の内容が大切なことは、国税庁のホームページにも記載があります。
課税文書に該当するかどうかは、その文書に記載されている内容に基づいて判断することとなりますが、当事者の約束や慣習により文書の名称や文言は種々の意味に用いられています。そのため、その文書の内容判断に当たっては、その名称、呼称や記載されている文言により形式的に行うのではなく、その文書に記載されている文言、符号等の実質的な意味を汲み取って行う必要があります。
課税文書に該当するかどうかは、以下の3つに該当するかどうかが判断の分かれ目です。
(1) 印紙税法別表第1(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により証されるべき事項(課税事項)が記載されていること。
(2) 当事者の間において課税事項を証明する目的で作成された文書であること。
(3) 印紙税法第5条(非課税文書)の規定により印紙税を課税しないこととされている非課税文書でないこと。
収入印紙を貼らないとどうなる?
収入印紙を貼る必要がある課税文書に収入印紙を貼らない場合、罰則が科されます。
規定の印紙額の3倍を納めなければいけません。
ポカミスで忘れた場合や収入印紙を貼付けても正しく割印ができていない場合も同様です。
意図して貼らなかった場合にはさらに罪が重くなります。
「20万円以下の罰金」「1万円の懲役」またはその両方が科されることになります。
まとめ
今回は覚書のひな形をダウンロードできるサービスと、覚書の書き方の基本を解説しました。
覚書には決まった書式がないため、ある程度自由に作成できます。
ただ、契約書と同じ効力を持つ正式な書類ですから、適当な書き方はできません。
契約変更や合意の内容を明確にして、トラブルを未然に防ぐ覚書を作成しましょう。