新防火地域とは?防火地域との違いや建築物の注意点・メリットを解説
新防火地域(新防火区域)や防火区域など災害危険度の高い地域を指す言葉はいろいろありますが、人にわかりやすく説明することは難しいですよね。
しかし、顧客への説明のあいまいさや、顧客が理解できていないままの契約手続きなどは、「話が違う!」とクレームに発展する可能性もあります。
そこで今回は、以下について詳しく解説していきます。
- 新防火地域(新防火区域)とは何か
- 防火地域、準防火地域との違い
- 新防火地域で家を建てる際の注意点、メリット
顧客が新防火地域の物件を希望する場合、注意点も事前に説明しておけば、後のトラブルを避けられる可能性があります。
ぜひ最後まで読んでくださいね。
新防火地域(新防火区域)とは?防火地域・準防火地域との違い
ここでは、新防火地域(新防火区域)の特徴や、防火地域・準防火地域との違いを表にまとめてわかりやすく解説します。
新防火地域(新防火区域)とは?
新防火地域とは、東京都建築安全条例第7条の3に基づいて、東京都知事が指定する災害時の危険性が高い地域のことです。
そのため、「東京都建築安全条例第7条の3の区域」とも呼ばれます。です。
災害とは、主に震災による火災などを指します。
木造建築が密集している地域は、震災による建物倒壊で道がふさがれたり、火災が周囲に燃え広がったりなど、二次災害の危険性が高くなります。
新防火地域の目的は、こう言った木造建築が密集している地域の建築物に規制を設け、火災の延焼を防いだり、災害時の安全を確保したりすることです。
東京都は他の地域に比べて、木造住宅が密集している場所が多く存在します。
「新防火地域」は、防火地域、準防火地域だけでは対応しきれていない地域の安全を確保するために、2013年に新しく定められた基準です。
新防火地域・防火地域・準防火地域の違い
防火地域、準防火地域、新防火地域の違いは、建てられる建築物の耐火性能です。
基準の厳しい順から、防火地域>新防火地域>準防火地域となります。
以下の表は、それぞれの地域に要求される耐火性能をまとめたものです。
防火地域、新防火地域、準防火地域に要求される耐火性能
延べ床面積 | 1・2階建て | 3階建て | 4階以上 | |
---|---|---|---|---|
防火地域 | 100平方メートル超 | 耐火建築物 | ||
100平方メートル以下 | 耐火建築物 準耐火建築物 |
耐火建築物 | ||
新防火地域 | 500平方メートル超 | 耐火建築物 | ||
100平方メートル以下 | 耐火建築物 | 準耐火建築物 | ||
準防火地域 | 1500平方メートル超 | 耐火建築物 | ||
500~1,500平方メートル | 耐火建築物 準耐火建築物 |
耐火建築物 | ||
500平方メートル以下 | 一定の防火基準を満たす木造建築物 | 耐火建築物 準耐火建築物 一定の防火基準の建物 |
防火地域・新防火地域・準防火地域の耐火性能基準は、建物の階数や延べ面積によって変わります。
耐火性能基準が最も厳しい防火地域は、延べ面積100㎡以下の1・2階建てでも準耐火建築物である必要があります。
一方で、準防火地域では500㎡以下の1・2階建てであれば、木造建築物も認められます(防火措置は必要)。
新防火地域は準防火地域よりも基準が厳しく、木造はNGです。
しかし、延べ面積の基準が500㎡とされているなど、防火地域よりも制限が緩和されています。
耐火建築物・準耐火建築物とは?
耐火建築物・準耐火建築物とは、火災発生時の延焼や損傷による倒壊を防ぐ建物です。
耐火建築物、準耐火建築物の基準を以下にまとめました。
建物の構造 | 木造 | |
---|---|---|
耐火建築物 | 鉄筋コンクリート造 耐火被覆※1した鉄骨造 |
× |
準耐火建築物 | 主要構造部が耐火建築物に準じた建物 | 主要構造部※2を耐火被覆すればOK |
※1…火災が広がらないように、耐火・高断熱の建材で覆うこと
※2…壁、梁、柱など建物を支える部分
耐火建築物では、鉄筋コンクリートなどの耐火構造のみが認められ、準耐火建築物では耐火構造だけでなく、主要構造部を耐火被覆した木造も認められます。
耐火・準耐火建築物は、火が広がりやすい開口部に防火設備を設置する必要があります。
開口部の防火設備には以下が挙げられます。
- 玄関の防火扉
- 防火窓
- 防火ダンパー付の換気扇
新防火地域に家を建てる際の注意点
新防火地域に家を建てる際の注意点は、以下2点です。
- 建設費用
- デザインの制限
新防火地域に限らず、耐火建築物を建てる場合、一般の住宅に比べて使用できる建材が限られる上、耐火性のある建材は建材費も高くなります。
また、窓やドアなどのデザインも限られるため、デザインにこだわりたい顧客からの依頼時は、事前に地域の確認をしておくといいでしょう。
新防火地域は東京都市整備局の新たな防火規制の指定区域図で確認できます。
新防火地域に家を建てるメリット
新防火地域に家を建てるメリットは、以下2点です。
- 建ぺい率が緩和される
- 火災保険の割引
以前から、耐火建築物の建ぺい率は通常よりも10%緩和されていました。
加えて、2019年6月に建築基準法が改正され、準耐火建築物も建ぺい率10%緩和の対象となっています。
以下のような顧客の悩みは、耐火建築物・準耐火建築物の建築で解決できるかも知れません。
- 土地はあるけど、建ぺい率オーバーで理想の間取りにできない
- リフォームしたいけど、建ぺい率オーバーのため再建できない
新防火地域など耐火建築物・準耐火建築物を建てられる地域であれば、通常よりも土地を有効活用できる点がメリットです。
また、耐火建築物・準耐火建築物の場合、火災保険の割引が適用される可能性もあるため、建設時は費用がかかりますが、長期的に見ると維持費を節約できます。
まとめ
新防火地域と防火地域・準防火地域との違いや注意点、メリットがご理解いただけたかと思います。
新防火地域は、震災による火災等の危険度が高い地域です。
そのため、防火地域・準防火地域と同様に、建物の耐火性能の制限に注意が必要です。
事前に新防火地域で家を建てる際の注意点を伝えておくと、後の顧客とのトラブルを避けられるので、この機会に理解を深めておきましょう。
火災報知器の設置は義務?消防法と条令・罰則・設置基準・設置場所の決まりと宅建業者の責任とは
不動産営業実務マニュアルに興味がある方は下記の記事をご覧ください。
不動産業務実務の基本に興味がある方は下記の記事をご覧ください。
不動産業務実務の基本関連記事