住居ではなく工場のための用途地域 | 工業専用地域について解説します

投稿日 : 2020年06月07日

「工業専用地域」はまさに「工場の・工場による・工場のための」用途地域といって過言ではありません。

今回は工業専用地域について詳しく解説していきます。

普段は馴染みの薄い工業専用地域ですが、これを機に理解を深めていきましょう。

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この記事の監修者:
小林 紀雄
住宅業界のプロフェッショナル

某大手注文住宅会社に入社。入社後、営業成績No.1を出し退社。その後、住宅ローンを取り扱う会社にて担当部門の成績を3倍に拡大。その後、全国No.1売上の銀座支店長を務める。現在は、iYell株式会社の取締役と住宅ローンの窓口株式会社を設立し代表取締役を務める。

 

工業専用地域とは

工業専用地域とは、都市計画によって定められた用途地域の1つで工業系の用途地域に該当します。

工業専用地域について触れる前に、まずは都市計画と用途地域について解説します。

 

用途地域とは

・都市計画

都市計画を一言で表すと「街づくり」と同じ意味になり、実際に街づくりを行う区域の事を都市計画区域と言います。

都市計画区域は、市街化区域・非線引き区域・市街化調整区域の3つに分けられ、指定は原則、都道府県が行いますが、複数の県にまたがる場合は国土交通大臣が指定をします。

 

・用途地域

都市計画うちの1つに地域地区があり、用途地域はその地域地区をさらに分類した地域になります。

用途地域とは、その地域をどのような用途に活用するかを定めたもので、住居・商業・工業系の3つの産業で計13種類があります。

地域の指定に関しては、原則、都道府県及び市町村が行いますが、複数の都道府県にまたがる場合は国土交通大臣及び市町村が行います。

用途地域については以下のページをご参照ください。

あわせて読みたい:制限が多く複雑な用途地域についてわかりやすく解説します

 

工業専用地域を指定する目的

工業専用地域は、工場の利便増進を図ることに特化した用途地域で、ほぼ全ての種類の工場を建てる事ができる反面、住居や学校・病院などを建てる事はできません。

また、工業専用地域は主に海岸沿いの工業地帯などに指定されるケースが多いです。

 

工業専用地域における用途・建築制限

 

工業専用地域も他の用途地域と同様、地域内で建設できる建築物とそうでないものがあります。

ここからは、建築制限も含めて工業専用地域内で建設できる建物と建設できない建物について紹介します。

 

建築できる建物・施設

工業専用地域において許可される建物は以下のとおりです。

カテゴリー 建物の種類
医療・福祉施設 ・診療所

・保育所

・老人福祉センター

・児童厚生施設

・公衆浴場

公共施設 ・派出所(交番)

・公衆電話ボックス

宗教施設 ・神社

・お寺、寺院

・教会

店舗 ・床面積合計10,000㎡以下の物品販売及び飲食店を除く店舗

・カラオケボックス

・ガソリンスタンド

営業用・自動車倉庫 ・3階以上または床面積合計300㎡を超えるもの
工場 ・ほぼ全ての種類

 

工業専用地域ではほぼ全ての種類の工場やプラントを建てることができますが、卸売市場・ごみ処理施設・火葬場等は別途都市計画決定が必要となります。(都市計画区域内)

 

建築できない建物・施設

工業専用地域において許可されない建物は以下のとおりです。

カテゴリー 建物の種類
住居 ・戸建て住宅

・マンション

・一定規模以下の住宅兼店舗

・一定規模以下の住宅兼事務所

学校・教育施設 ・幼稚園

・小学校

・中学校

・高校

・大学、専門学校

・図書館

医療・福祉施設 ・病院

・老人ホーム

・福祉ホーム(身体障害者用)

店舗 ・床面積合計10000㎡を超える物品販売及び飲食店を除く店舗

・パチンコ店

・雀荘

・ホテル、旅館

・ボウリング、スケート場

・プール

・劇場、映画館

・風俗店舗

・キャバレー、ナイトクラブ

 

工業専用地域では住居・学校・病院といった施設を地域内に建設できません。

また、商業施設に関してもパチンコ店やホテルなどは建設できません。

 

建築における制限

工業専用地域における建築制限は以下のとおりです。

制限の種類 数値
建ぺい率 ・30%・40%・50%・60%のいずれか
容積率 ・100%・150%・200%・300%・400%のいずれか
道路斜線制限 ・適用距離:20m・25m・30m・35mのいずれか

・傾斜勾配:1.5倍

隣地斜線制限 ・基準の高さ:31mまたは適用名なし

・傾斜勾配:2.5倍または適用なし

北側斜線制限 制限なし
絶対高さ制限 制限なし
日影規制 制限なし
最低敷地面積 200㎡以下

高度地区・(準)防火地域などの制限内容については各自治体ごとで異なります。

 

 

工業専用地域が持つメリットとデメリット

工業専用地域は他の工業系地域にはない多くのメリットがある反面デメリットもあります。

ここからは工業専用地域が持つメリットとデメリットについて見ていきます。

 

 

メリット

工業専用地域によっては、商業施設や住居に隣接する場合があります。

 

・近隣地域に注目する(例:神戸市ハーバーランド周辺)

画像引用:神戸市情報マップ | 12都市計画情報

 

上記は、神戸市のハーバーランド周辺の地図で、用途地域は以下のように色分けされます。

  • 水色:工業専用地域(大手製造業の工場・造船所)
  • 黄色:第一種住居地域(学校や住居)
  • 肌色:第二種住居地域(小学校・高校)
  • 赤色:商業地域(ハーバーランドの商業施設)
  • 紫色:準工業地域(ハーバーランドの商業施設がメイン)

もし、勤務先が水色の工業専用地域である場合は、周辺の第一種または第二種住居地域に住むことで通勤時間の短縮や交通費の負担が減るといった利点があります。

また、この場合は商業地域との距離も近いため、買い物をするのに都心部まで出向く必要がない点や、お子様がいる家庭にとっては住居と勤務先の近くに学校があることも大きな魅力と言えるでしょう。

 

デメリット

工業専用地域のデメリットは以下のとおりです。

 

➀住むことができない

工業専用地域では住宅の建設が認められていないため、住居を構え生活することはできません。

 

②工場の環境に影響される

周辺地域の住居においても、隣接する工業専用地域に位置する工場からの騒音・粉塵・臭い・光害といった公害の他に、周辺を走るトラックなど大型車の騒音・排気ガス、また日当たりが悪いといった問題が発生する可能性があります。

上記の対策として多くの自治体は工業専用地域を含む多くの用途地域に対して、騒音規制や環境保全のための条例を定めています。

 

例として神戸市では以下のような騒音規制及び環境保全に関する条例を定めています。

参考:神戸市HP | 騒音規制法及び環境の保全と創造に関する条例(兵庫県条例)による規制

 

しかし、上記のような条例を定めていても問題自体は実生活に大きく影響するため、前もって実際に下見を行うなど、自分の眼で状況をしっかりと確認しておく必要があります。

 

 

類似する他地域との相違点

ここからは残りの2つの工業系用途地域と工業専用地域との違いについて解説します。

 

準工業地域

準工業地域は、環境が悪化する恐れのない工場の利便増進を図ることを目的とした地域です。

大規模な工場と風俗店以外は建設することができるため、実際の地域内は小規模な工場や商業施設・住居などが混在しており、工場や遊戯施設からの騒音や光害といった問題もよく起こっています。

また、準工業地域は工業地域の周辺に指定される事が多い傾向にあります。

準工業地域については以下のページをご参照ください。

あわせて読みたい:準工業地域と工業地域は何が違う?|準工業地域の特徴と注意点のまとめ

 

工業地域

工業地域は、主に工場に関係する利便の増進を図る事を目的とした地域です。

工業専用地域と比べると、住居を建てることができますが学校や病院は建設できません。

また、準工業地域よりも大規模な工場が建設できる反面、商業施設に関してはやや制限が厳しくなっています。

さらに、近年は工場跡地の再開発などによる住宅や高層マンション及び大型商業施設の建設などで注目されている地域でもあります。

工業地域については以下のページをご参照ください。

あわせて読みたい:工業地帯でも住居は建てられる | 工業地域について詳しく解説

 

営業に活かしていくには

 

工業専用地域に位置する工場群は工業地帯といっていい程大規模かつ集中配置されているため、地域内だけでなく周辺地域に対しても多くの影響を及ぼします。

よって、工業専用地域に隣接している地域に住居を構える場合は、周辺の利便性を説明するだけでなく、以下の問題点が発生する可能性が高くなることを伝える必要があります。

  1. 工場からの騒音・粉塵といった公害
  2. 周辺を走るトラックなど大型車の騒音・排気ガス
  3. 日照や日影の問題

また、工業専用地域から離れた住宅系地域などを勧めるといった事も視野に入れておきましょう。

 

まとめ

用途地域は、その地域の活用方法を定めるといった趣旨の他に、人々の住生活の環境を保持するという目的もあります。

かつては産業の発展が最も大切だとされた時代もありましたが、これからは環境だけでなく人々の生活も守る都市計画を定める事が必要な時代になってきています。

不動産営業として、工業専用地域を含む他の工業地域に関しても理解をし、メリット・デメリットを説明できるようにしておきましょう。