第一種中高層住居専用地域とは|メリット・デメリットや事務所は許可できるのか解説
「第一種中高層住居専用地域」は、高層の住居用建築物を建てられる地域です。ベッドタウンとして住みやすい地域であるため、不動産の営業や仲介業務においても、取り扱う機会が多いエリアです。
しかし、法令で定められた用途地域には細かい建築制限があるうえ、似たような名称の地域が多く混同されがちです。
そこで今回は、「第一種中高層住居専用地域」の特徴と用途・建築制限、類似の用途地域との違いをご説明します。
「第一種中高層住居専用地域」とは
「第一種中高層住居専用地域」とは、都市計画法が規定する「用途地域」の1種類です。そのため、「第一種中高層住居専用地域」とは何かを説明するには、まず「用途地域」について理解しておく必要があります。
まずは都市計画法による「用途地域」を確認
「都市計画法」は、土地の利用方法や開発・整備などについて規制する法律です。都市の健全な発展と秩序ある整備、国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進を目的としています。
都市計画法により、国土全体は細かく分けられ、用途制限や建築制限が定められています。
国土はまず、都道府県と国土交通省によって、「都市計画区域」とそれ以外の区域に分けられ、都市計画区域はさらに「市街化区域」とそれ以外の区域に分けられます。
次に、市街化地区は市区町村によって、21種類の「地域地区」に分けられます。地域地区とは、その土地をどのような用途でどの程度利用するかを定めた分類です。その内の1種類が「用途地域」です。
用途地域はさらに、都市生活の基盤となる13種類のエリアに分類されます。「第一種中高層住居専用地域」は、その1地域です。
「第一種中高層住居専用地域」とは
「第一種中高層住居専用地域」とは、都市計画法において「中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域」とされています。マンションや戸建てなどの住居と、学校や大学、病院、小規模店舗などが建てられます。
第一種中高層住居専用地域は、略して「一中高」または「一中専」と呼ばれています。
「第一種中高層住居専用地域」の用途・建築制限
この章では、「第一種中高層住居専用地域」の具体的な用途・建築制限をご紹介します。
「第一種中高層住居専用地域」で許可される建物
①住宅 |
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②サービス業用の小規模店舗
(2階以下、500㎡以下) |
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③兼用住宅
(住宅部分50%以上) |
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④教育施設 |
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⑤医療・福祉施設 |
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⑥その他の公共施設 |
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⑦宗教施設 |
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⑧小規模作業工場
(2階以下) |
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⑨一定規模の車庫 |
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「第一種中高層住居専用地域」で許可されない建物
①事務所 |
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②宿泊施設 |
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③遊戯施設 |
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④風俗施設 |
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⑤工場 |
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⑥倉庫 |
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⑦その他 |
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「第一種中高層住居専用地域」の建築制限
建ぺい率 | 30%・40%・50%・60%のいずれか | |
容積率 | 100%・150%・200%・300%・400%・500%のいずれか | |
斜線制限 | 隣地斜線制限 | 基準の高さ…20mまたは31m
傾斜勾配…1.25倍または2.5倍 |
北側斜線制限 | 基準の高さ…10m
傾斜勾配…1.25倍 |
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道路斜線制限 | 適用距離…20m・25m・30m・35mのいずれか
傾斜勾配…1.25倍または1.5倍 |
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日影規制 | 建築物の高さ | 10mを超えるもの |
測定水平面 | 4mまたは6.5m | |
規制値 | 「3-2h」「4-2.5h」「5-3h」のいずれか | |
最低敷地面積 | 200㎡以下で各自治体が設定 |
容積率について詳しくは以下のページを参考にしてください。
あわせて読みたい:容積率とは何なのか|緩和特例・緩和要件などを詳しく解説
「第一種中高層住居専用地域」のメリット・デメリット
前章までをふまえ、「第一種中高層住居専用地域」の特徴をまとめます。この地域の不動産購入を検討するお客様に、わかりやすく案内できるようにしましょう。
「第一種中高層住居専用地域」のメリット
- 日常生活に必要な施設が一通りそろっている
- 治安がいい
- 騒音や振動、ネオンなどがない
- 不動産価値が割安(郊外に多いため)
「第一種中高層住居専用地域」のデメリット
- レジャー施設が建てられない
- オフィスビルが建てられない
- 日当たり・日影に関する建設条件が比較的厳しい
「第一種中高層住居専用地域」は、繁華街やオフィス、一般的な工場がないため、比較的静かですが、程よい人通りもあり治安がいい地域です。また、スーパーや病院など、日常生活に必要な施設も一通りそろっているため、利便性がよく大変住みやすいでしょう。
類似する地域との違い
「第二種中高層住居専用地域」との違い
「第二種中高層住居専用地域」は、「第一種~」と比べて規制が緩い住居専用地域です。
①建築できる「サービス業用店舗」の規模
- 第一種中高層住居専用地域…500㎡以下
- 第二種中高層住居専用地域…1,500㎡以下
②「事務所」の建築が許可されるか
- 第一種中高層住居専用地域…不可
- 第二種中高層住居専用地域…1,500㎡以下なら可能
③「自家用倉庫」の建築が許可されるか
- 第一種中高層住居専用地域…不可
- 第二種中高層住居専用地域…1,500㎡以下なら可能
④工場における危険物の貯蔵が許可されるか
- 第一種中高層住居専用地域…不可
- 第二種中高層住居専用地域…量が非常に少ない施設なら可能
- 第一種中高層住居専用地域…100%~500%
- 第一種低層住居専用地域…50%~200%
- 第一種中高層住居専用地域…2階以下、500㎡以下なら可能
- 第一種低層住居専用地域…不可(ただし、小規模兼用住宅は可能)
- 第一種中高層住居専用地域…可能
- 第一種低層住居専用地域…不可
※ここで言う「危険物」とは、火薬・石油類・ガスなどです。
以上のように、「第二種中高層住居専用地域」は、より大きな店舗やオフィスビルなど、ベッドタウン以外の要素も含まれます。
「第一種低層住居専用地域」との違い
「第一種低層住居専用地域」は、文字通り「第一種中高層~」と比べて建築物の高さ制限が厳しい住居専用地域です。
①容積率の制限
- 第一種中高層住居専用地域…100%~500%
- 第一種低層住居専用地域…50%~200%
②店舗の建築許可
- 第一種中高層住居専用地域…2階以下、500㎡以下なら可能
- 第一種低層住居専用地域…不可(ただし、小規模兼用住宅は可能)
③大規模な公共施設の建築許可
- 第一種中高層住居専用地域…可能
- 第一種低層住居専用地域…不可
※ここで言う「大規模な公共施設」とは、大学、高等専門学校、専修学校などと病院を指します。
以上のように、「第一種低層住居専用地域」には店舗や大規模な学校、病院がないなど、より住宅街として特化し、閑静な地域です。
第一種低層住居専用地域とは何かわかりやすく解説|メリットや第二種との違いも紹介
まとめ各地域の特徴を理解し営業に生かす
■「第一種中高層住居専用地域」で許可される建物
①住宅 |
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②サービス業用の小規模店舗
(2階以下、500㎡以下) |
|
③兼用住宅
(住宅部分50%以上) |
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④教育施設 |
|
⑤医療・福祉施設 |
|
⑥その他の公共施設 |
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⑦宗教施設 |
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⑧小規模作業工場
(2階以下) |
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⑨一定規模の車庫 |
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「第一種中高層住居専用地域」は、住みやすい住環境でファミリー層にもシニア世代にも人気のエリアです。物件を探しているお客様に街の特徴やメリット・デメリットを伝えるなど、営業に生かしたいところです。
また、「第一種中高層住居専用地域」は都市計画法によるエリア分けのごく一部分です。宅建業者として幅広い業務に携わるには、他のエリアについても把握し、各地域地区や区域区分の特徴や建築制限について理解を深めることが大切です。
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