私道負担とは何なのか・負担金(費用)はいくらか|デメリットや面積なども徹底解説
土地の売買の際に「私道負担あり」と表記された物件が目に付くことがありますが、この表記は分譲地の販売でよく見られるケースのひとつです。
また、この「私道負担あり」の土地は何かと「私道問題」が起きやすいという特徴があるため、売買の際には十分に注意しなければなりません。
今回の記事では、私道とは何か、土地における私道負担とは何かということを解説します。
私道負担ありの土地で起こりがちなトラブルはもちろんのこと、私道負担ありの土地について知っておくべきメリット・デメリットについて詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
Table of Contents
私道負担とは接道義務のために敷地の一部を道路にすること
そもそも私道負担とは、所有する土地(敷地)の一部を法律に則って道路にすることです。
もともと建築基準法には、「建物の敷地は幅4m以上の道路に2m以上接していなければならない」というルールがあります。
このルールは「接道義務」と呼ばれており、災害時や緊急時に車がスムーズに通れるルートを確保することなどが目的とされています。
幅4m未満の道路の場合では、所有する敷地から建物を後退(セットバック)させる必要があるのです。
私道の所有者の例には、以下のようなケースが挙げられます。
1.地主
土地所有者が私道を所有しているケース。
2.土地購入者同士での私道の共有
土地購入者全員が共有名義で私道を所有するケース。
3.土地購入者が私道の一部を所有
土地を購入した人々が私道を細かく分筆し、それぞれが土地の一部を所有するケース。
4.不動産業者
分譲地を不動産業者が所有しているケース。
私道負担が生じる道路の種類については、以下の表を確認してください。
【私道負担が生じる道路の種類】
1項2号道路 | 宅地開発(都市計画法、土地区画整理法などに基づき許認可等を受けた開発)により建設した道路 |
1項3号道路 | 建築基準法が施行された昭和25年11月23日に既に幅員4m以上の道として存在し、現在に至っている |
1項5号(位置指定道路) | 土地の所有者が建設した幅員4m以上の道で、特定行政庁(23区の場合は各区)が許可してその所在の指定をしたもの |
2項道路 | 昔からある狭い道 |
但し書道路 | 法43条第1項ただし書の適用を受けたことがある建築物の敷地が接する道 |
引用元:東京都都市整備局
出典元:https://smtrc.jp/useful/knowledge/hyoka-kakaku/2016_06.html
私道負担はいくらかかる?
私道にかかる費用は、原則として所有者または私道を共有している人々が負担すると決められています。
私道負担を大きく分けると、次の3つが該当します。
- 道路整備
- 税金(固定資産税・都市計画税・不動産所得税など)
- 水道管などのインフラ設備
それぞれの項目について、詳細を確認していきましょう。
私道負担面積の計算方法
道路設備をする際、まずは私道負担面積(セットバック面積)がどの程度になるのかを計算します。
私道負担面積は以下の計算式から求められます。
私道負担幅 × 土地の間口 = 私道負担面積(割合)
例えば、分譲地で幅3.2mの道路を挟む形で、二つの建物が向かい合っている場合では、前面の道路の幅は3.2mですから、0.8m足りなくなります。
この場合、0.8mのうちの半分にあたる0.4mが私道負担幅となります。
自身の土地の間口が10mだった場合、上記の計算式に当てはめて私道負担面積を計算してみると以下のようになります。
0.4m × 10m = 1.4(㎡・平米)
この場合、私道負担面積は1.4㎡となることがわかります。
課税(固定資産税・都市計画税・不動産所得税)されるケースがある
私道とは、その言葉どおり「私人が所有している道路」であるため、固定資産税の対象となります。
上述した「私道の所有者の例」に合わせると、固定資産税の支払いの内訳は以下のようになります。
1.地主
土地を所有している地主に支払い義務が生じる
2.土地購入者同士での私道の共有
おのおのが所有する持ち分の割合のみ支払い義務が生じる
3.土地購入者が私道の一部を所有
おのおのの所有する私道部分に支払い義務が生じる
4.不動産業者
所有する不動産業者に支払い義務が生じる
固定資産税以外にも、私道の取得によって生じる不動産取得税、また私道を取得した区域が都市計画法で指定されている場合は都市計画税などが発生します。
なお、私道が「公共性の高い道路」として認められる場合は、非課税になる場合もあります。
ただし、私道が「公共用道路」として認められるためには、私道の所有者が自ら役所に申請をしなければなりません。
申請をせずに、「この道路は公共性が高いので非課税にします」と行政から言われることはまずあり得ないので、必ず非課税申請を行う必要があることを確認しておきましょう。
非課税が認められる条件は、各都道府県・各自治体によって異なります。
こちらでは一例として、東京都主税局が公表している非課税の条件を紹介します。
<非課税になる条件>
■ 通り抜け私道
- 道路の起終点がそれぞれ別の公道に接しているもの
- 道路全体を通して幅員1.8m程度以上あるもの
- 客観的に道路として認定できるもの
- 利用上の制約を設けず不特定多数人の利用に供されているもの
■ 共用私道(行き止まり私道、コの字型私道)
- 道路幅員が4m以上あるもの
- 客観的に道路として認定できるもの
- 利用上の制約を設けず不特定多数人の利用に供されているもの
別途整備負担をしなければならない
公共の道路であれば整備は国や市町村が実施するため、特に負担が生じることはありません。
しかし私道の場合は、整備費用は私道の利用者が負担することになります。
私道の老朽化が進んでいる場合や、私道の下に配置している水道管の修繕作業が必要になった場合には、私道の利用者が整備負担をしなければなりません。
私道をすべて所有しているならば、整備にかかる費用は完全に自己負担となります。
共同名義で利用しているならば、利用している全員の同意を得た上で分割での費用負担ということになるのです。
また分筆で持ち合う場合であっても、工事の範囲が他者の私道にまで及ぶ場合には、そちらの同意を得る必要性が出てきます。
出費が生じるという点で、整備負担は非常に重要な問題となります。トラブルの火種を作らないためにも、事前の確認を徹底しましょう。
別途整備負担をしなければならない具体的な項目には、以下が挙げられます。
- 道路のアスファルトの劣化による舗装整備
- 水道管の埋没工事
- 水道管の修理・取り替え工事
- その他インフラに関わる整備全般
私道負担ありのとき、よくあるトラブル
私道の境界線が曖昧である場合や、複数の所有者で私道を共有する場合には、さまざまなトラブルが発生しがちです。
公道に面した土地であればこのようなトラブルは起こりませんが、私道となると所有者同士で揉め事が起こるケースは少なくありませんので、十分に注意してください。
道路や水道などのインフラ整備が必要なケース
道路や水道管などインフラ設備でありがちなトラブルに、私道を複数の所有者で共有している場合の整備費用の負担拒否が挙げられます。
例えば、私道全体のアスファルトが老朽化してきたので、共有者全員の費用負担で整備を行おうとした場合です。
こうした場合に、さまざまな理由から整備そのものに同意をせず、費用負担の支払いを拒否する人が現れることがあります。
道路工事であれ、水道工事であれ、私道全体のインフラ工事や老朽化対策は共有者全員の同意が必要となります。
しかし、同意書になかなか印を押してくれないなど、全員の同意を得るのに苦労するケースは多々あります。
また、土地の所有者が別の土地に住んでいたり、海外に移住していたりすると、さらに同意を取るのが困難になってしまいます。
私道におけるインフラ整備に関して行政はノータッチとなります。
こういったリスクがあることをあらかじめ念頭に置いておきましょう。
共有名義の土地を売買するケース
共有名義の土地を売買するケースでは、通行妨害や工事妨害が発生するリスクもあります。
通行妨害というのは、特定の私道において通行を認めない、自動車での通り抜けを認めない、といった妨害行為のことです。
場合によっては、通行料を請求されることもあります。
このようなことが起きないためにも、共有名義の土地を購入する場合は、私道とセットで購入承諾書を交わすことが大切です。
私道が飛び地での購入になる場合でも、上述したトラブル発生のリスクを考えてセットで購入しておくことが推奨されています。
できれば、私道の通行および工事の自由を認める「私道の掘削、通行等に関する承諾書」を共有者全員で取り交わしておくとよいでしょう。
私道の所有者が私道を独占したがるケース
すでに説明したように、私道の所有者によって通行に制限がかかったり、通行料を請求されたりといったことがあります。
これは私道の所有者が私道を独占したがることで起こり得る行為です。
こうしたトラブルの原因はさまざまありますが、特に多いのは土地所有者同士のいさかいや関係悪化による嫌がらせです。
最初は良好な関係を築いていたとしても、土地の所有者が変わってから関係が悪くなるということもあります。
該当の私道が建築基準法上の道路で、法的にこちらに正当性があれば裁判を起こして問題を解決することも可能です。
しかし、裁判を起こすとなると費用がかかりますし、裁判を経てその土地の所有者との関係性はますます悪くなってしまう危険性があります。
私道と公道の違いとは?
道路は「私道」と「公道」に分けられますが、私道と公道の定義は以下となります。
私道 | 個人や民間企業等が所有する道路 |
公道 | 国や地方公共団体が所有する道路 |
私道は個人や団体、民間企業が所有する道路のことで、維持・管理等もすべて個人・団体・民間企業が行います。
公道は国や地方公共団体が所有する道路です。
そのため、維持・管理等だけでなく、修理・工事・付け替えなどの計画はすべてと国や地方公共団体が行い、工事そのものは国や地方公共団体から依頼された業者が請け負います。
私道か公道かを調べる方法
その道路が私道か公道かわからない場合、以下の方法で判別することができます。
<市町村の役場で確認する>
各市町村の役場に行き、担当課(土木課・道路管理課など)の窓口で確認します。
市町村によっては、役場の公式サイトで情報を公開しているケースもあるので、チェックしてみるとよいでしょう。
<法務局で調べる>
法務局で土地の所有者を確認し、私道か公道かを判断できます。
法務局で調べる際のポイントは、その土地の所有者が誰なのか(名義)をきちんと確認することです。
所有者が「~市」「~村」または「国土交通省~」などとなっていれば国所有の公有地になります。
それ以外の道路は民間の私有地となることがほとんどです。
しかし、同じ私有地でも「公共用道路」として認められているケースもあるので、そのあたりも確認しておきましょう。
<公図を取る>
法務局や法務局支局・出張所に行けば、目的の土地の公図を取得することが可能です。
法務局にあるブルーマップで地番を確認し、申請書に記入して提出すれば公図を取得できます。
<下水道のマンホールで判別する>
私道か公道かは下水道のマンホールで判別することも可能です。
公道に設置されているマンホールには、その市町村のロゴやシンボルマークがデザインされています。
一方、私道に設置されているマンホールのほとんどは無地になっていることが特徴です。
私道負担ありの場合のデメリット
私道負担ありの土地の売買・取り扱いの際には、そのデメリットについて十分に把握しておかなければなりません。
私道負担ありの土地のデメリットには以下のようなものが挙げられます。
この3つのデメリットをそれぞれ確認していきましょう。
所有する私道を自由に使えない
私道負担ありの土地における私道は、最初から「道路」として利用するためのスペースとして設定されています。
そのため、道路以外の目的で利用することはできません。
私道上に新たな建物を建てたり、塀や扉、側溝といった外構を新たに設置したりすることはできないのです。
また、緊急時に車が通る妨げにならないように、障害物と見なされるような物を置くことも禁じられています。
利用敷地面積は減るのに経済的負担が発生する
私道負担部分の面積は、所有する土地の敷地面積に含まれません。
そのため、私道部分は建ぺい率や容積率の計算から外れることになります。
例えば、土地面積が100㎡で、私道負担面積が15㎡であった場合、実際に利用できる敷地面積は85㎡となります。
この実際に利用できる敷地面積に応じて、建ぺい率や容積率の数値を算出することになるのです。
利用敷地面積が減るにもかかわらず、私道負担部分に固定資産税や不動産取得税といった経済的な負担が発生する点もデメリットです。
また、すでに説明したように各種整備の必要性が出てきたときは、工事費用は私道所有者が負担しなければなりません。
共有名義であれば費用負担が分割になることもありますが、いずれにしても経済的な負担は免れないのです。
他人の通行を阻止するのが難しい
私道部分を所有しているといっても、そこが道路として利用されている以上、他者の通行を完全に阻止することはできません。
通行のほかにも、自分が所有している私道負担部分に他の家の車が勝手に何時間も駐車する、といったケースも見られます。
一度や二度なら気にならなくても、頻繁に駐車されることが続くと注意喚起をする必要がでてくるでしょう。
私道と通行権を巡るトラブルは全国でさまざまな事例が報告されています。
こうしたトラブルは、とりわけ私道部分を複数の家で利用している場合に多く見られます。
私道負担ありのメリット
私道負担ありの場合のメリットについても紹介していきます。
土地売却の際には私道部分を含めた売却益が得られる
私道負担の部分は所有者の権利となるので、私道部分の売買を自由に行うことができます。
また、敷地全体を売却する場合も、私道部分を含めた売却益を得ることが可能です。
私道の持ち分がない人が、高額で私道の購入を希望するケースもあるため、私道部分を含めた売却額を計算して提示するようにしましょう。
好みに合わせた道路を整備できる
私道部分は権利所有者のものなので、権利の範囲内で道路の整備も自由に行うことができます。
例えば、道路のコンクリートの色を変えるといったカスタマイズも自由になるのです。
権利面における他のメリットとしては、私道所有者は他者の通行を許可するかどうかを決めたり、通行料を取ったりといったように、権利者としての優位性を確保することができます。
閑静な環境を作りたいときは、私道部分に他者の出入りを一切認めない、車の通行を許可しないとすることも可能です。
私道負担とは・デメリット・メリットのまとめ
私道負担を含めた土地の売買の際に注意すべきは、顧客に対して「私道負担のトラブルやリスクにはどのようなものがあるか」という点までしっかり説明し、理解してもらうことです。
特に、共有名義で私道を所有する場合には、何かと問題が生じやすいため、より詳細な説明が必要です。
メリット・デメリットをしっかり説明しておくことが後のトラブルを防いでくれます。
必要事項を丁寧に説明し、納得してもらえるよう心がけましょう。
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