土地の合筆登記の費用とはどのくらい?|メリットや申請手順などを徹底解説
複数の土地を法的に1つにまとめる手続きを「合筆登記」と言います。
合筆が必要なケースとは、どのような場合でしょうか。また、合筆登記はどのように行えばいいのでしょうか。
お客様の資産運用にも関わる重要な手続きですので、きちんと理解しておきましょう。
土地の「合筆」とは何か
「筆(ひつ)」とは
「筆(ひつ)」とは、登記簿上で1つの土地を表す単位です。広さにかかわらず1筆(いっぴつ)の土地ごとに1つの登記簿が存在し、登記された土地には1筆ごとに地番が割り振られます。
「合筆(がっぴつ)」とは
「合筆(がっぴつ/ごうひつ)」とは、隣接する複数の土地を1筆の土地にまとめることです。合筆のための登記手続きを「合筆登記」と言います。
「合筆」が認められる条件
土地を合筆するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
◆合筆が認められる土地の条件
- 隣接している
- 地目(土地の用途)が同じである
- 地番区域が同じである
- 所有者(所有権の登記名義人)が同じである、または共同所有者の持分が同じである
- 所有権以外の権利(抵当権など)の登記がない(ただし、抵当権・先取特権・質権の受付番号が同じであれば合筆可)
逆に、次の条件に当てはまる場合は、合筆することができません。
◆合筆が認められない場合
- 隣接していない(離れている)
- 地目が異なる
- 地番区域が異なる
- 所有者が異なる
- 共同所有者の持分が異なる
- 所有権以外の権利の登記がある
- 仮登記・予告登記がある
土地を合筆する目的・メリット
土地を合筆する目的・メリットは以下のとおりです。
売却手続きを簡略化するため
土地の売買では、売買契約締結や所有権移転登記など、売主様・買主様ともに多くの手続きを行う必要が生じます。その際、目的の土地が登記上複数に分かれていると、その分だけ必要な手続きが増え、プロセスがより煩雑になってしまいます。
そこで、買主様が購入後に1つの土地として利用する予定であれば、前もって合筆しておくと、手続きが簡略化されます。その分、手続きにかかる諸費用も抑えられるという利点もあります。
相続割合に応じて分割するため
隣接する複数の土地を複数の相続人で分け合う際に、1つの土地に合筆してから改めて分筆することがあります。土地の筆数と相続人数が合致しない、相続割合とそれぞれの土地の評価額が合わないなど、そのままでは決定通りの分け方ができない場合には、一度合筆してから再び分筆すると相続しやすくなります。
合筆後の登記簿について
合筆後の地番
合筆するには、法務局にて「合筆登記」を行う必要があります。合筆登記をすると、土地の地番は合筆前の首位の地番(若い方の地番)が引き継がれます。
そして、もう一方の地番の登記簿は閉鎖され、閉鎖登記簿として保存されます。土地の閉鎖登記簿の保存期間は、50年間と定められています。一度閉鎖された地番は、特別な事情がない限り再び使用されることはありません。
登記識別情報の交付
合筆などの登記をすると、登記名義人を識別するための「登記識別情報」が交付されます。「登記識別情報」は数字と符号からなる12ケタの文字列で、2008年までの「登記済証(登記申請書副本)」に代わる本人確認手段です。
合筆登記の申請方法
「合筆登記」の手順
土地の合筆登記は、以下の手順で行います。
- 法務局や市役所などで資料調査を行う
- 現地調査を行い、物理的な現況を確認する
- 合筆登記の申請手続きを行う
- 登記識別情報を受け取る
資料調査では、合筆前の土地の登記事項説明書・公図・地積測量図などを参照します。現地調査とともに、合筆の認可条件をクリアしているか確認します。
条件をクリアしていることが確認できたら、合筆登記の申請手続きを行います。登記申請の方法には、「窓口申請」「郵送申請」「オンライン申請」の3種類があります。
登記申請方法の選択肢
①窓口申請
管轄法務局の窓口にて申請を行います。
②郵送申請
申請書を郵送する場合は,申請書を入れた封筒の表面に「不動産登記申請書在中」と記載し、書留郵便にて管轄法務局に送付します。また、登記完了時に交付される「登記完了証」を郵送により返却されたい場合は、宛名を記載した返信用封筒と書留郵便分の切手を同封します。
③オンライン申請
2020年1月14日よりインターネットによる申請書類送付も可能になりました。パソコンに「申請用総合ソフト」をインストールし、「QRコード付き登記申請書」を作成します。作成した申請書は、申請ソフトから直接、法務局に送信することができます。
◆登記申請の必要書類
- 合筆する土地の登記識別情報または権利証
- 印鑑証明書
- 委任状(土地家屋調査士や司法書士に依頼する場合)
合筆にかかる費用
合筆登記には、以下の費用が必要となります。
費用の内訳 | 金額の目安 |
合筆登記にかかる登録免許税 | 1律1,000円(合筆後の筆数分必要) |
登記申請手数料 | 窓口での申請…土地1筆につき600円
オンラインでの申請…500円 |
公図・地積測量図などの取得費用 | 土地1筆につき各500円程度 |
印鑑証明書の発行手数料 | 窓口での申請…450円
オンラインでの申請…410円 |
専門家に依頼せず、自分で登記申請する場合には、上記のとおり費用は合計数千円となります。
土地家屋調査士などの専門家に依頼する場合は、上記に加えて報酬3~6万円程度が必要となります。
合筆した土地にある建物の登記
合筆した土地に建物があれば、建物の登記簿にも変更登記が必要となる場合があります。
合筆をすると、複数の地番が1つに統合されます。これにより閉鎖された地番の土地に所在していた建物であれば、表題部の「所在」や「家屋番号」が変更になります。
合筆の反対は「分筆」
「分筆」とは
合筆とは逆に、1筆の土地を2つ以上に分けて、それぞれを別の独立した土地として新たに登記をしなおすことを「分筆」と言います。また、分筆のための登記手続きを「分筆登記」と言います。
関連記事:土地の分筆とは|メリット・費用・注意点や測量から登記までの手順を徹底解説
合筆と分筆の違いは「測量」の要否
合筆と分筆の違いは、登記において「測量」が必要かどうかにあります。
「合筆」では、それぞれの土地の地積測量図がそろっていれば、改めて測量する必要はありません。一方「分筆」では、新たな境界を作成することになりますので、「境界確定測量」をする必要があります。
「境界確定測量」には、現地の測量や書類作成のため、数十万円以上の費用がかかります。
登記簿が見つからない場合は合筆・分筆を疑う
担当不動産の調査で目的の登記簿がなかなか見つからない場合は、過去に合筆または分筆を行っていないか確認します。閉鎖登記簿や過去の公図などを調査してみるといいでしょう。
明治時代以前の古い「旧紙図」をもとに作成された公図には、筆界線や地番の記載漏れがある場合があります。不明点があれば、法務局にて登記官に相談しましょう。
その他、専門的な調査が必要なときは、土地家屋調査士などに依頼することも検討します。
自分で合筆したいお客様にも適切なサポートを
合筆は、不動産取引や資産管理において利便性・費用面でメリットが多く、不動産業務の中で取り扱うことが少なくない手続きです。
また、不動産のエキスパートである宅建業者であれば、不動産登記について売買に直接かかわらない手続きも含め、幅広く理解しておく必要があります。
特に合筆登記は、土地家屋調査士などの専門家に依頼せず、「自分で行いたい」と考えるお客様も多くいます。その際、適切にサポートができるよう、申請方法などをマスターしておきましょう。
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