登録免許税の計算方法を解説|不動産登記の軽減税率が適応する条件とは
お客様が住宅ローンを利用してマイホームなどの不動産を購入するときには、所有権保存登記あるいは所有権移転登記、抵当権設定登記の申請が必要であり、登録免許税がかかります。
登録免許税としてどの程度の費用が発生するのでしょうか。
登録免許税とは何か、登録免許税の計算方法などについて解説していきます。
登録免許税とは
登録免許税の計算方法を紹介する前に、登録免許税について説明します。
登録免許税は、不動産登記など法務局で登記手続きを行う際に支払う国税です。
不動産登記には初めて所有者を記録するときの所有権保存登記や、売買や相続などによって所有者が変わったときに行う所有権移転登記などの種類があります。
登記手続きの種類によって税率が異なり、一部の登記では期限付きで軽減措置が設けられています。
不動産登記の種類や登録免許税については、『買主が支払う登記費用|登録免許税の計算方法・種類・税率を確認』でも紹介しています。
関連記事:登録免許税とは|不動産登記にかかる税金の計算と軽減措置について
登録免許税はいつ支払うのか
不動産登記のうち、表題登記は建物完成後1ヶ月以内に行うことが義務付けられているため、1ヶ月以内に登録免許税を支払い、登記を行う必要があります。
しかし、そのほかの所有権保存登記や所有権移転登記、抵当権設定登記は、法的には義務付けられてないため、特に支払い期限はありません。
登録免許税の支払いが発生するのは、不動産登記を行うタイミングです。
詳しい納付方法は後述しますが、銀行などで登録免許税の支払いを行い、領収済通知書を登記申請書に貼付します。
ただし登録免許税の額が3万円以下の場合は、申請書に収入印紙を貼付することも可能です。
登録免許税の計算に必要な準備
登録免許税を計算するときには、不動産登記の種類ごとに定められた税率を知っておくことが必要です。
また、税金を計算するときの算定基準の課税標準の固定資産税評価額、あるいは抵当権設定登記金額も把握しておく必要があります。
登録免許税の税率
登録免許税の税率で主に使われるものは、国税庁のホームページの【No.7191 登録免許税の税額表】に掲載されています。
登録免許税の税率は、土地の所有権移転登記では、売買と贈与などによる場合は2%、相続などの場合は0.4%です。
建物の所有権保存登記は0.4%です。
建物の所有権移転登記の税率は土地と同じで、売買と贈与などによる場合は2%、相続などの場合は0.4%となっています。
不動産取得の場合の計算に必要な【固定資産税評価額】
土地や建物の取得に関わる所有権保存登記や所有権移転登記で、税金を計算するうえで基準となる課税標準は固定資産税評価額です。
固定資産税評価額は固定資産税を算出するための基準となる評価額ですが、固定資産税や都市計画税のほか、登録免許税や都市計画税の課税標準としても使われています。
固定資産税評価額は市区町村が個別に決定しています。
固定資産税評価額を知りたい場合、すでに所有している土地や建物の場合は、毎年、固定資産税の納税通知書と一緒に送付される課税明細書で確認することが可能です。
建物の所有権保存登記や所有権移転登記を新築後すぐに行う場合、通常、固定資産税評価額はまだ決定していません。
その場合は、「新築建物課税標準価格認定基準表」に基づいて法務局の登記官が認定した価格を課税標準として用います。
抵当権設定の場合の計算に必要な【抵当権設定金額】
抵当権設定登記で課税標準となるのは、抵当権設定金額です。
抵当権設定金額とは債権額のことで、借入額になります。
たとえば、購入する5,000万円を担保に住宅ローンを借り入れ、頭金として500万円入れている場合、抵当権設定金額は4,500万円です。
登録免許税の計算方法
不動産登記のうち、不動産取得に関わる所有権保存登記と所有権移転登記、金融機関から住宅ローンなどを借り入れた場合の抵当権設定登記の登録免許税の計算方法について解説していきます。
登録免許税の計算式
登録免許税は課税標準に税率をかけて算出できます。
<登録免許税の計算式>
所有権保存登記:固定資産税評価額(または法務局の認定価格) × 税率(0.4%) = 登録免許税額
所有権移転登記(売買・贈与):固定資産税評価額 × 税率(2%) = 登録免許税額
所有権移転登記(相続):固定資産税評価額 × 税率(0.4%) = 登録免許税額
抵当権設定登記:抵当権設定金額 × 税率(0.4%) = 登録免許税額
登録免許税の計算例
登録免許税はどのように計算するのか、具体的な計算例を紹介します。
<所有権保存登記/法務局の認定価格が2,000万円の場合>
(法務局の認定価格)2,000万円 × (税率)0.4% = 8万円
<所有権移転登記(売買)/固定資産税評価額が2,000万円の場合>
(固定資産税評価額)2,000万円 × (税率)2% = 40万円
<所有権移転登記(相続)/固定資産税評価額が2,000万円の場合>
(固定資産税評価額)2,000万円 × (税率)0.4% = 8万円
<抵当権設定登記/ローン借入額3,000万円の場合>
(抵当権設定金額)3,000万円 × (税率)0.4% = 12万円
登録免許税の軽減措置について
不動産登記の登録免許税には税率の軽減措置があり、一定の要件に合致すると納める税金が少なく済みます。
ただし、時限措置であり、軽減を受けられる期限が定められています。
軽減措置を受けるための要件
住宅用家屋関わる登録免許税は、次に挙げる6つの登記軽減措置が設けられています。
住宅用家屋の所有権保存登記や所有権移転登記、抵当権設定登記の軽減措置は2022年3月31日までの取得、そのほかは2020年3月31日までの取得が対象です。
<住宅用家屋の軽減措置の種類と対象>
- 住宅用家屋の所有権保存登記…新築又は未入居の住宅の取得
- 住宅用家屋の所有権移転登記…売買や競売による住宅の取得
- 特定認定長期優良住宅の所有権保存登記及び所有権移転登記…新築又は未入居の認定長期優良住宅の取得
- 認定低炭素住宅の所有権保存登記及び所有権移転登記…新築又は未入居の認定長期優良住宅の取得
- 特定の増改築等がされた住宅用家屋の所有権移転登記…宅地建物取引業者(買取再販業者)からの一定のリフォームが行われた住宅の取得
- 住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権設定登記…住宅の新築や増築、取得のための借り入れ
<共通する要件>
- 自己居住用の住宅で、床面積50m2以上
- 新築又は取得後1年以内に行う登記
- 区分所有建物は耐火建築物又は準耐火建築物
この他、中古住宅の取得による所有権移転登記や抵当権設定登記には築年数などによる制限があり、特定の増改築等がされた住宅用家屋の所有権移転登記には詳細な要件があります。
また、住宅用家屋の軽減税率の要件については、国税庁のホームページの【No.7191 登録免許税の税額表】に内容が掲載されています。
軽減税率適用のために必要な書類
抵当権設定登記の手続きに必要な書類や必要なものについて、軽減措置を受けるために必要な書類を含めて解説していきます。
<必要書類・必要なもの>
- 抵当権設定契約書
- 資格証明書
- 権利証(登記済証または登記識別情報通知)
- 印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
- 委任状
- 不動産所有者の実印
- 住宅用家屋証明書
抵当権設定契約書と資格証明書は金融機関が用意するものであり、委任状は双方が必要、その他はローンの借り入れをする不動産所有者が用意をします。
登録免許税の軽減措置の適用を受けるために必要な書類は住宅用家屋証明書です。
住宅用家屋証明書は適用要件を満たす場合に、市町村の役所で必要書類と手数料を添えて申請すると、発行されます。
軽減措置を受ける場合の税率
【登録免許税の税率】の章で紹介した国税庁のホームページの【No.7191 登録免許税の税額表】には、軽減税率についても掲載されています。
登録免許税の税率は軽減措置が適用されると、以下のように変わりますので注意してください。
土地の所有権移転登記 | 登録免許税の税率は軽減措置が適用されると、売買に関するものは2%が1.5%になります。
相続や贈与による所有権移転登記には軽減税率は適用されません。 |
建物の所有権保存登記 | 0.4%ですが、新築や未入居の住宅用家屋の場合は0.15%に軽減されます。 |
建物の売買の所有権移転登記 | 2%なのに対して、住宅用家屋の場合は0.3%になります。 |
買取再販業者からの増改築等がされた住宅用家屋の所有権移転登記 | 税率は1%。また、新築や未入居の特定認定長期優良住宅、あるいは認定低炭素住宅では、所有権保存登記は0.4%が0.1%、所有権移転登記は2%が0.1%に軽減されます。 |
抵当権設定登記 | 0.4%ですが、住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権設定登記の場合、0.1%になります。 |
軽減措置を受ける場合を含めた条件ごとの計算方法
登録免許税の軽減措置の適用を受けられる場合、どのように計算をすればよいのでしょうか。
次に挙げるように、条件ごとに分けて解説していきます。
土地と建物が同じ場合
所有権保存登記や所有権移転登記で、土地と建物の税率が同じ場合は以下のようにまとめて計算することが可能です。
課税標準額(土地の固定資産税評価額 + 建物の固定資産税評価額) × 税率 = 登録免許税額
ただし、土地の所有権保存登記が行われるケースは限られます。
また、土地の所有権移転登記の軽減税率は、建物の所有権保存登記や所有権移転登記の軽減税率とは税率が異なります。
土地と建物で適用税率が異なる場合
土地や建物の所有権保存登記や所有権移転登記で、登録免許税の適用税率が異なる場合には、土地と建物のそれぞれの登録免許税額を計算して、合計します。
(土地の固定資産税評価額 × 税率) + (建物の固定資産税評価額 × 税率) = 登録免許税額
中古住宅を購入して軽減税率が適用される場合の所有権移転登記の計算例です。
<中古住宅の購入/固定資産税評価額…土地:1,500万円、建物:2,000万円>
(土地の固定資産税評価額)1500万円 × (税率)1.5% + (建物の固定資産税評価額)2,000万円 x (税率)0.3% = 22万5,000円 + 6万円 = 28万5,000円
抵当権の設定登記
住宅ローンなどを借り入れるときの抵当権設定登記の登録免許税は、次に挙げる計算式で算出できます。
抵当権設定金額 × 税率 = 登録免許税額
住宅ローンの借り入れによる抵当権設定登記で軽減税率が適用されるケースの計算例です。
<住宅ローン借入額3,000万円の場合>
(抵当権設定金額)3,000万円 × (税率)0.1% = 3万円
抵当権の抹消登記
住宅ローンを完済したときに行う抵当権抹消登記の登録免許税の計算式は以下です。
1,000円 × 不動産の数 = 登録免許税額
不動産の数の数え方は土地と建物はそれぞれ1つという数え方になり、氏名や住所の変更登記を行う場合も同様の方法で計算できます。
土地と建物の不動産抹消登記を行う場合の計算例は以下になります。
<一戸建ての抵当権抹消登記を行う場合>
1,000円 × (不動産の数)2 = 2,000円
抵当権抹消登記の登録免許税に軽減措置はありません。
登録免許税はいくらかかるのか(金額例)
では、実際に住宅ローンの借り入れをして、家を建てたり、マンションを購入したりするとき、登録免許税はトータルでいくらになるかご説明します。
次に挙げる3つのケースで解説します。
中古マンションの例
中古マンションの購入では、土地と建物の所有権移転登記と抵当権設定登記を行います。
<物件価格5,000万円、住宅ローン借入額4,000万円の場合の登録免許税額>
中古マンションの場合の計算式:
土地の所有権移転登記/900万円 × 1.5% = 13万5,000円…※1
建物の所有権移転登記/2,200万円 × 0.3% = 6万6,000円…※2
抵当権設定登記/4,000万円 × 0.1% = 4万円…※2
- 土地の評価額:900万円
- 建物の評価額:2,200万円
- 土地の移転登記:13万5,000円
- 建物の移転登記:6万6,000円
- 抵当権の設定登記:4万円
合計:24万1,000円
※1…2021年3月31日までに登記を行う場合の軽減税率を適用
※2…2022年3月31日までに登記を行う場合の軽減税率を適用
新築マンションの例
新築マンションを購入するときには、土地の所有権移転登記と建物の所有権保存登記、抵当権設定登記を行います。
建物の所有権保存登記は所有権移転登記よりも税率が低いため、中古マンションを購入する場合よりも登記費用が割安になります。
<物件価格5,000万円、住宅ローン借入額4,000万円の場合の登録免許税額>
新築マンションの場合の計算式:
土地の所有権移転登記/900万円 × 1.5% = 13万5,000円…※1
建物の所有権保存登記/2,200万円 × 0.15% = 6万6,000円…※2
抵当権設定登記/4,000万円 × 0.1% = 4万円…※2
- 土地の評価額:900万円
- 建物の評価額:2,200万円
- 土地の移転登記:13万5,000円
- 建物の保存登記:3万3,000円
- 抵当権の設定登記:4万円
合計:20万8,000円
※1…2021年3月31日までに登記を行う場合の軽減税率を適用
※2…2022年3月31日までに登記を行う場合の軽減税率を適用
新築一戸建ての例
新築一戸建てを購入するときには、通常、土地の所有権移転登記と建物の所有権保存登記、抵当権設定登記を行います。
同じ物件価格の一戸建てとマンションでは、一戸建ての方が土地の価格が占める割合が大きく、土地の所有権移転登記の税率は、建物の所有権保存登記や所有権移転登記の税率より高いため、登録免許税が割高になります。
<物件価格5,000万円、住宅ローン借入額4,000万円の場合の登録免許税額>
新築一戸建ての場合の計算式:
土地の所有権移転登記/1,300万円 × 1.5% = 19万5,000円…※1
建物の所有権保存登記/1,800万円 × 0.15% = 2万7,000円…※2
抵当権設定登記/4,000万円 × 0.1% = 4万円…※2
- 土地の評価額:1,300万円
- 建物の評価額:1,800万円
- 土地の移転登記:19万5,000円
- 建物の保存登記:2万7,000円
- 抵当権の設定登記:4万円
合計:26万2,000円
※1…2021年3月31日までに登記を行う場合の軽減税率を適用
※2…2022年3月31日までに登記を行う場合の軽減税率を適用
登録免許税の納付方法
登録免許税の納付方法は、現金で納付する方法と収入印紙で納付する方法、オンライン申請で電子納付する方法の3種類があります。
現金で納付する方法
(1) | 税務署、あるいは一部の金融機関で領収済通知書(納付書)を入手 |
(2) | 必要事項を記入して、郵便局や銀行、税務署で支払うと、領収書が交付される |
(3) | 領収書は登録免許税納付用台紙に貼付し、登記申請書、登録免許税納付用台紙、添付書類の順に重ねてホチキスで留めて、登記申請書と登録免許税納付用台紙の綴り目に契印を行う |
(4) | 法務局で登記申請を行う |
収入印紙で納付する方法
※収入印紙で登録免許税を納められるのは3万円以下
(1) | 法務局や郵便局で収入印紙を購入 |
(2) | 収入印紙を登記申請書に貼付し、法務局で登記申請を行う |
オンライン申請で電子納付する方法
(1) | インターネットバンキングやモバイルバンキング、電子納付に対応したATMを利用して納付 |
※オンライン申請でも現金や収入印紙による納付を選択することもできます。
まとめ
実際には不動産登記の申請手続きは司法書士に委託することが多いため、登録免許税も司法書士が納付を行います。
しかし、不動産購入などに必要な登録免許税の目安を知っておけば、お客様に費用の概算をお伝えすることができます。
ただし、軽減税率は時限措置のため、適用される期限が設けられていますので、把握しておきましょう。
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