「瑕疵担保責任の履行に関する措置の対応」とは何かを売主視点から解説
本来あってはならないことですが、建物を購入した後に今まで誰も気付かなかった重大な欠陥が見つかることが稀にあります。
日本の法律はそのような事態に対しても買主様は補償を受けることができ、また売主様はその補償に備える必要を規定しています。
今回はいわゆる瑕疵担保責任の履行を実務に沿って詳しく解説していきます。
瑕疵
瑕疵担保責任を解説していく前に「瑕疵」という言葉の意味を考えてみましょう。
瑕疵とは一言で表すと「傷や欠陥」という意味です。傷や欠陥ぐらい大したことはないのではないかと思いますが、住宅において瑕疵が見つかった場合、ケースによってはそのまま住み続けることが困難になったり、建物の価値が下落するなど住宅の所有者にとって大きな影響を及ぼします。
そこで瑕疵が見つかったときには、相手に対してどのように責任を追及できるかを取り決める必要があります。その取り決めともいえるのが「瑕疵担保責任」です。
瑕疵担保責任
先程あえて瑕疵が見つかったという表現を用いましたが、瑕疵担保責任とは建物の契約時に気付かなかったいわゆる「隠れた瑕疵」が契約後見つかったときに、売主様が買主様に対して負う責任の事をいいます。
瑕疵担保責任は売主様が買主様との契約時において、該当建物の瑕疵に気付かなかったとしても、売主様は買主様に対して責任を負う必要があります。
ただし買主様が契約時の時点で該当建物における瑕疵を知っていた場合は、売主様は買主様に対して瑕疵担保責任を負う必要はありません。
宅建業法における特約の制限
瑕疵担保責任は民法において規定されており、要約すると以下のようになります。
・善意(知らなかった)の買主が瑕疵を「発見した時から1年以内」に損害賠償請求と解除ができる。(民法第570条)
宅建業法で規定されている瑕疵担保責任については、要約すると以下のようになります。
・売主が宅地建物取引業者の場合は、瑕疵担保責任に関して建物等の「引き渡しの日から2年以上」となる特約をする場合を除き、民法が規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない(宅建業法第40条)
言い換えると、瑕疵担保責任において宅建業法では、原則民法の規定よりも買主様に不利となる特約を結ぶことはできませんが、民法の規定より不利なケースとなる引き渡しの日から2年以上の特約に関してのみ、例外的に結ぶことができることを意味しています。これがいわゆる宅建業法における特約の制限にあたります。
ただし新築住宅における主要部分の瑕疵については、民法・宅建業法どちらも建物等の引き渡しから10年と定められています。
関連記事:不動産における瑕疵担保責任とは|期間や請求内容、法改正の内容を解説
瑕疵担保責任の履行に関する措置の概要とは
まず瑕疵担保責任の履行に関する措置の概要は、宅建業法第35条1項に以下のように定められています。
・当該宅地又は建物の瑕疵を担保すべき責任の履行に関し保証保険契約の締結その他の措置で国土交通省令・内閣府令で定めるものを講ずるかどうか、及びその措置を講ずる場合におけるその措置の概要
この条文は重要事項説明の一環として、売主様に生じる瑕疵担保責任の履行に関する措置について述べています。
この場合における瑕疵担保責任の履行に関する措置とは、売主様(宅地建物取引業者)が倒産や廃業などの理由で瑕疵担保責任を負うことができなくなった場合でも、保険の加入等によって瑕疵担保責任を履行するための備えを行っているのを、買主様に説明することが述べられています。
次に瑕疵担保責任の履行に関する措置について説明します。
買主様に説明すべき瑕疵担保責任の履行に関する措置の概要
買主様に対しての説明に関しては、国土交通省のガイドラインでもある「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」に指針が示されています。
- 保証保険契約又は責任保険契約にあっては、当該保険を行う機関の名称又は商号、保険期間、保険金額及び保険の対象となる宅地建物の瑕疵の範囲
- 保証保険又は責任保険の付保を委託する契約にあっては、当該保険の付保を受託する機関の名称又は商号、保険期間、保険金額及び保険の対象となる宅地建物の瑕疵の範囲
- 保証委託契約にあっては、保証を行う機関の種類及びその名称又は商号、保証債務の範囲、保証期間及び保証の対象となる宅地建物の瑕疵の範囲
- 住宅瑕疵担保履行法に基づく住宅販売瑕疵担保保証金の供託の場合は、保証金を供託し、供託する供託所の表示・所在地・及び共同分譲の場合の販売瑕疵負担金割合
1~3においては買主様に説明を行う際に、保健機関等の契約書類などを別途添付すればよいとされています。
新築住宅における瑕疵担保責任の履行に関する措置
先に述べた通り、売主様(宅地建物取引業者)は新築住宅における瑕疵担保責任の履行に関する措置を買主に対して説明を行う際、瑕疵担保責任の履行における保険の加入や保証金の供託などの措置を講じていることを説明する必要があります。
その瑕疵担保責任の履行における保険の加入や保証金の供託といった措置の事を資力確保措置と言います。
資力確保措置の説明としては、住宅瑕疵担保責任保険を締結している場合と、住宅販売瑕疵担保保証金の供託を受けている場合とでは、末尾備考欄と宅建業法第37条による契約書の記載の仕方が異なってきます。
➀住宅瑕疵担保責任保険を締結した場合の記入例
住宅瑕疵担保責任保険法人は以下の5社となり、締結した法人の名称や所在地、瑕疵負担割合などが記入されます。
- 財団法人住宅保証機構
- 株式会社住宅あんしん保証
- 株式会社日本住宅保証検査機構
- 株式会社ハウスジーメン
- ハウスプラス住宅保証株式会社
・末尾備考欄の記入例
対象不動産建物は、「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」に基づく措置として次のとおりの住宅販売瑕疵担保責任保険が付歩します。当該保険の概要は以下のとおりです。
なお、保険の内容の詳細につきましては、●●●(保険会社)作成の重要事項説明書(住宅取得者用)をご参照ください。 |
・契約書の特約欄への記入例
売主は、本件建物の瑕疵担保責任の履行を確保するため、次のとおりの住宅販売瑕疵担保責任保険を付保します。当該保険の概要は以下のとおりです。
|
②住宅販売瑕疵担保保証金の供託の場合の記入例
・末尾備考欄の記入例
売主は「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」第11条に基づき次のとおり住宅販売瑕疵担保保証金を供託します。
|
・契約書の特約欄への記入例
売主は「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」第11条に基づき次の供託所に住宅販売瑕疵担保保証金を供託します。
|
既存住宅における瑕疵担保責任の履行に関する措置
売主様は既存住宅における瑕疵担保責任の履行に関する措置を買主様に対して説明を行う際、当該住宅の販売または媒介を行った宅地建物取引業者の内宅地建物取引士の資格を持ったものが、ガイドラインでもある宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方に則して買主様に説明を行います。
売主様が機構の既存住宅保証制度を申請する場合の記入例
・末尾備考欄の記入例
瑕疵担保責任の履行に関する措置について対象不動産の建物は㈱ の既存住宅保証制度(別紙)の登録を受けます。 |
・契約書の特約欄への記入例
売主は、本件建物について、㈱ の既存住宅保証制度(別紙)の登録を受けます。 |
まとめ
瑕疵担保責任は買主様を瑕疵から守るとても優れた法律です。
また売主様(宅地建物取引業者)にとっても瑕疵への備えを規定することによって、結果的に買主様からの信頼を守ることにも繋がっています。
瑕疵担保責任は実際に多く発生する事例ではありませんが、重要な説明事項です。
どのように重要事項説明書に記載するのか、契約書にはどう記載するのかしっかり確認しておきましょう。
不動産営業実務マニュアルに興味がある方は下記の記事をご覧ください。
不動産業務実務の基本に興味がある方は下記の記事をご覧ください。
不動産業務実務の基本関連記事
- 不動産業務効率化
- 不動産DXサービス特集
- 不動産DX導入インタビュー
- 不動産業界DX
- 不動産営業とは?仕事内容と成約率アップのポイントを解説
- 賃貸管理会社はどこが良い?管理戸数ランキングと選び方を紹介