不動産における瑕疵担保責任とは|期間や請求内容、法改正の内容を解説

投稿日 : 2020年04月27日

不動産は売却したら終わりではなく、通常、売主様は買主様に対して一定の期間、「瑕疵(かし)担保責任」を負います。

今、この瑕疵担保責任は民法改正によって、「契約不適合責任」に変わる変革のときを迎えています。

瑕疵担保責任とは何か、買主が請求できる手段や期間について解説したうえで、法改正についても触れていきます。

kobayashi この記事の監修者:
小林 紀雄
住宅業界のプロフェッショナル

某大手注文住宅会社に入社。入社後、営業成績No.1を出し退社。その後、住宅ローンを取り扱う会社にて担当部門の成績を3倍に拡大。その後、全国No.1売上の銀座支店長を務める。現在は、iYell株式会社の取締役と住宅ローンの窓口株式会社を設立し代表取締役を務める。

 

瑕疵担保責任とは

瑕疵(かし)とは、通常持っているべき品質や性能を持っていないことをいい、すなわち欠陥や不具合を指します。

瑕疵担保責任とは、売買の目的物である不動産に隠れた瑕疵があった場合、売主が買主に対して損害賠償や契約解除の責任を負うことをいいます。

 

売主は把握している瑕疵について、売買契約の際に買主に告知する義務があります。

売主が知っていた瑕疵を買主に隠していた場合には、売主が瑕疵担保責任を負う期間に関わらず、買主は損害賠償や契約の解除を求めることが可能です。

 

また、売主が把握していなかった隠れた瑕疵による購入後のトラブルを避けるために、売主が隠れた瑕疵に対して責任を持つ範囲や期間を決めておきます。

 

瑕疵担保責任に関しては、『売主の瑕疵担保責任とは|契約書への定め方と2020年民法改正のポイント』でも詳しく解説しています。

 

 

 

不動産における瑕疵の例

 

隠れた瑕疵とは、売主が売買契約を結ぶ時点で把握しておらず、通常の注意を払っても把握できない瑕疵を言います。

不動産売買における瑕疵の例として、建物では雨漏りやシロアリの被害、屋根や柱、梁など主要な構造部の腐食、給排水管の故障などが挙げられます。

土地の瑕疵では、廃棄物が埋まっている地中埋設物や土壌汚染、軟弱地盤といったケースがあります。

 

 

 

瑕疵担保責任が必要な理由

売買契約をする時点で把握できる欠陥があれば、買主は購入をとりやめるか、値引き交渉を行うという選択肢をとれます。

また、売主も不具合をあらかじめ把握していれば、補修を行ってから売却することができます。

しかし、土地は掘り起こして見なければ瑕疵に気づかなかったり、建物は実際に生活してみると欠陥が見つかったりするため、売主は買主に対して瑕疵担保責任を負うことが必要になります。

 

 

 

瑕疵が見つかったら

瑕疵担保責任は、売主は民法上、無過失責任とされ、売主に故意や過失がなくても負わなければならないとされています。

瑕疵が見つかった場合、買主は売主に対して損害賠償請求を行うことが可能です。

また、瑕疵により本来の契約の目的を果たせない場合には、契約を解除することもできます。

 

 

瑕疵担保責任の期間

 

売主が買主に対して瑕疵担保責任を負う期間は、法律による期間の定めがあります。

また、売買契約の特約によって瑕疵担保責任を負う期間を決めることが多いです。

 

 

瑕疵を発見した日から1年以内

民法上、瑕疵担保責任を負う期間は、瑕疵を発見した日から1年以内と定められています。

引き渡し日から1年以内ではなく、発見した日から1年以内であるため、売主は長期間重い責任を負うことになります。

民法上も任意規定であることから、売買契約の特約によって瑕疵担保責任を負う期間を定めることもできます。

 

 

売主による違い

売主が瑕疵担保責任を負う期間は、売買契約の特約によって定めることができますが、売主が宅地建物取引業者の場合と、個人などそれ以外の場合で異なります。

また、新築住宅に関する規定もあります。売主が宅地建物取引業者のケースと個人などのケースに分けて解説していきます。

 

売主が業者の場合

売主が宅地建物取引業者である不動産会社の場合、宅地建物取引業法によって瑕疵担保責任を負う期間は引き渡しから2年以上とすることが義務付けられています。

宅地建物取引業者と異なり、専門知識を持たない消費者を保護することが目的です。

 

しかし、実際のところ、住宅の柱や梁といった部分の瑕疵が2年以内に発見されることは多くありません。

そこで、新築住宅を取得した人を保護することを目的に2000年に「住宅の品質確保の促進等に関する法律」が施行されました。

いわゆる品確法と呼ばれる法律で、新築住宅の売主は住宅の基本構造部分の瑕疵担保責任を10年間負うことが義務付けられています。

住宅の基本構造部分に当たるのは、基礎と土台、床、柱、壁、筋交いなどの斜め材、小屋組、横架材、屋根、雨水の侵入を防止する部分です。

雨水の侵入を防ぐ部分とは、屋根や外壁、サッシ、雨水を排出するための排水管などをいいます。

 

個人売買の場合

民法の規定では、買主は隠れた瑕疵を知った後、1年以内に申し出ることで売主が瑕疵担保責任を負うとされています。

しかし、任意規定であることから、個人が売主の場合の瑕疵担保責任を負う期間は買主との交渉で決められるのが一般的です。

買主側から見ると、なるべく瑕疵担保責任の期間が長い方が望ましいです。

しかし、売主にとって瑕疵が見つかって責任を負うことが負担となり、不動産を売却しにくくなるのを避けるため個人が売主の場合は、瑕疵担保責任を負う期間は引き渡しから1~3か月程度とされることが多いです。

 

 

10年の消滅時効とは

瑕疵担保責任を負う期間については、民法第566条3項で「契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない」と定められています。

引用元:民法第566条3項

 

このことからも、瑕疵があることを知った日から1年以内であれば、いつまでも買主は瑕疵担保責任に関する権利の行使が可能であるととることもできます。

しかし、民法第167条には1項には、「債権は、十年間行使しないときは、消滅する」という規定があります。

引用元:民法第167条1項

 

そのため、最高裁の判例においても、買主が瑕疵担保責任に関わる権利として、売主に損害賠償や契約の解除を請求できるのは、引き渡しから10年間で消滅時効にかかるとされました。

つまり、民法上、買主が売主に瑕疵担保責任による損害賠償や契約の解除を請求できるのは、引き渡しから10年以内、かつ、瑕疵を発見してから1年以内に限られます。

 

 

 

任意規定と免責

民法の瑕疵担保責任に関わる規定は任意規定であるため、売買の当事者である売主と買主の合意によって変更することが可能であり、売買契約に特約として盛り込めます。

そのため、個人が売主の場合の中古住宅の売買契約では、買主との合意によって、瑕疵担保責任を全て免責にすることや、「雨漏りとシロアリによる被害のみ」とするなど、瑕疵担保責任を負う範囲を限定することもあります。

 

ただし、瑕疵があることを売主が知っていながら買主に告げていなかった場合は、瑕疵担保責任の免責の特約は無効となります。

 

 

 

買主を守る法律

 

瑕疵担保責任に関連して、買主を守るための法律として次に挙げるものがあります。

  • 住宅瑕疵担保法
  • 宅建業法(宅地建物取引業法)

 

 

住宅瑕疵担保法

「特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律」は通称「住宅瑕疵担保法」といい、品確法による新築住宅の売主の10年間の瑕疵担保責任を確実に履行させるために制定されました。

 

新築住宅の売主は基本的な構造部分に対して10年間の瑕疵担保責任を負うことが法律で決められていても、万が一、売主の業者が倒産してしまうと、現実的に賠償金の支払いなどを行うことは難しくなります。

そのため、住宅瑕疵担保法では新築住宅の売主の事業者は保険に加入するか、供託金を預けることが義務付けられています。

なお、住宅瑕疵担保法によって保証される瑕疵担保責任の範囲は品確法による基本構造部分であり、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分となっています。

 

 

宅建業法(宅地建物取引業法)

もし売主である宅地建物取引業者が、瑕疵担保責任について買い主に不利な特約(例えば瑕疵担保責任の期間を引き渡しから1ヶ月以内に限る、など)を契約書に自由に加えられるとしたら、知識で劣る買い主にとっては非常に不利です。

そのため、宅建業法では、「物件の引き渡しの日から2年以上」となる特約のみを認めることとし、それよりも買い主に不利な特約は無効となります。

 

 

売り主の負担をカバーする保険

買い主に対する保護が手厚くなると、その分、売り主の負担が大きくなります。売り主の負担をカバーするための仕組みが「既存住宅売買瑕疵保険」です。売り主が「既存住宅売買瑕疵保険」に加入していると、万が一、引き渡し後に建物の保険対象部分に瑕疵が見つかった場合でも、その補修費用を保険でまかなうことができます。

既存住宅売買瑕疵保険には、売主が宅地建物取引事業者の場合に加入する保険と、売主が個人の場合に加入する保険があります。個人間売買の保険に加入する場合、まず売主は検査機関に申し込み、検査機関は対象の住宅が保険会社が求める一定の品質を超えているか、検査を行います。問題なかった場合、住宅瑕疵担保責任法人に申し込みの手続きを行います。

 

 

2020年4月に民法が改正

2020年4月1日の民法改正によって、瑕疵担保責任という概念が廃止されて、新たに契約不適合責任という概念が売主に課されるようになります。

 

契約不適合責任とは何か解説していきましょう。

 

 

契約不適合責任の内容

契約不適合責任とは、契約内容に適合しないものに対して負う責任をいいます。

引き渡しを受けた売買の目的物の種類や数量、品質が契約内容と適合しない場合に売主が買主に対して責任を追います。

 

隠れた瑕疵以外も対象になる

瑕疵担保責任では売買契約の締結までに生じた隠れた瑕疵が対象でした。

契約不適合責任では隠れた瑕疵に限らず、契約内容に適合しなければ対象になります。

 

買主の請求できる権利が増える

瑕疵担保責任では、買主が売主に対して請求できるのは「損害賠償」と「契約解除」でした。

契約不適合責任ではこの二つに、「追完請求」と「代金減額請求」が追加された四つの手段があります。

 

<追完請求>

追完請求とは、目的物の種類や品質、数量が契約内容と適合しない場合に、買主が売主に対して補修の実施、あるいは不足物や代替品の引き渡しを求めることです。

 

<代金減額請求>

代金減額請求は追完請求を行っても売主が補修などを行わない場合に、買主が売主に対して、代金の減額を請求することをいいます。

 

<損害賠償請求>

損害賠償請求は、従来の民法では契約が有効であると信じていた信頼利益のみが対象でしたが、改正後は契約が履行されていれば得らえていたことが見込める利益も対象になりました。

 

<契約の解除>

契約の解除ができるのは従来の民法では契約の目的が達成されない場合のみでした。改正後は契約の目的が達成できる場合でもハードルが高いケースでは、契約の解除を求めることができるようになります。また、追完請求や代金減額請求と合わせて請求することも可能です。

 

 

改正の理由

瑕疵担保責任に関わる民法改正の理由はいくつかあります。

 

一つ目には、民法に「瑕疵」など普段使われていない難しい言葉が用いられている点です。

二つ目には、瑕疵担保責任を問うには、隠れた瑕疵であることを買主が立証しなければならず、買主が売主に瑕疵担保責任を問うためのハードルが高かった点です。

三つ目には、これまでの民法では日本の社会通念が判断基準となっているため、国際ルールと整合性をとることも理由も挙げられます。

 

 

売主への影響

民法の改正によって買主保護が重視され、売主の責任は重くなりました。

売主が責任を負う範囲が隠れた瑕疵に限らなくなったことで、瑕疵が隠れたものであったことを買主が立証する必要がなくなり、損害賠償などを求めるハードルが下がります。

 

また、追完請求と代金減額請求という手段が増えています。

さらに目的を達成できる場合でも、実現が難しい場合は契約の解除ができるため、契約を解除するケースが増えていくことも考えられるのです。

 

ただし、契約不適合責任は任意規定であるため、まずは契約の内容を明確にしておくことが大切です。

ホームインスペクターを利用して住宅の状態を把握しておくと、契約書に詳細な住まいの状態を記入しておけます。

個人間の中古住宅の売買では既存住宅瑕疵保険に加入すると、高額な費用負担が発生するリスクを抑えられます。

 

 

買主への影響

民法改正によって、買主にとっては売主の責任を問いやすくなったことから、より安心して中古住宅を購入できる環境が整いました。

一方で、対象が隠れた瑕疵に限定されなくなったことで契約不適合責任による請求は行いやすくなりました。

また、従来の瑕疵担保責任で買主が売主に対して請求できる手段であった損害賠償請求や契約の解除は内容が拡充しています。

また、追完請求や代金減額請求という手段も追加されたことにより、瑕疵の状況に応じた対応が取りやすくなります。

 

 

売却におすすめの時期

民法改正によって売主の責任が重くなるため、不動産の売却をするのは改正前のタイミングがおすすめです。

契約不適合責任は任意規定ではありますが、売主の責任の範囲を限定すると売却価格に影響することが考えられます。

民法改正の前のほうがより有利な条件で売却を進めやすいでしょう。

 

 

 

まとめ

不動産売買において、民法改正によって瑕疵担保責任から契約不適合責任に変わることで、買主にとっては中古住宅を安心して購入できる環境が整う一方で、売主の責任は重くなります。

売却を考えている不動産を所有している場合は、2020年3月中の売却を促すようにしましょう。