特殊性のある契約を確認|消費貸借・寄託・使用貸借・贈与・交換・買戻し

投稿日 : 2020年05月12日/更新日 : 2023年01月24日

不動産契約と聞いて、まず頭に思い浮かべるのは売買契約や賃貸借契約でしょう。

しかし、不動産契約を行う人の状況によって、さまざまな契約のケースが考えられるため、民法ではイレギュラーなケースに対応するために、売買契約や賃貸借契約以外にも特殊性のある契約形態を認めています。

今回は、特殊性のある契約の中から、消費貸借契約・寄託契約・使用貸借・贈与契約・交換契約・買戻しについてご説明します。

 

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「特殊性のある契約」の試験科目

権利関係

「特殊性のある契約」が含まれる試験分野

その他

「特殊性のある契約」の重要度

★ ☆ ☆ ☆ ☆ 余裕があったら確認しましょう

「特殊性のある契約」過去10年の出題率

5%

 

2020年宅建試験のヤマ張り予想

今回ご説明する項目の中で、過去10年の宅建試験で出題されたのは「贈与契約」「使用貸借」のみ、かつ1回ずつの出題です。

2020年度の宅建試験においても、出題される可能性はかなり低いと予想されます。

本記事でご説明する項目を勉強するのは、試験範囲を一通りさらった人で、なおかつ余裕がある時に目を通しておく程度で十分です。

 

「特殊性のある契約」の解説

 

今回ご説明する消費貸借契約・寄託・使用貸借・贈与契約・交換契約・買い戻しは、宅建試験問題としては出題頻度が低いものの、不動産取引上ではよく登場してくる内容です。

それぞれの概要をよく確認しましょう。

 

消費貸借契約

お客様がマイホームの購入資金を得るために組む住宅ローンは、消費貸借契約にあたります。

消費貸借契約とは、借りたものを消費し、その後同種同量のものを返す契約です。借りたお金は全く同じ紙幣・硬貨を返すことはできませんが、同じ種類・同じ量(金額)を返すことで返済と見なすのです。

消費貸借契約には利息なしの契約と利息ありの契約があります。

 

寄託契約

寄託契約とはモノの保管を頼む契約です。有償の寄託契約と無償の寄託契約があります。

寄託契約の受寄者は、善良な管理者の注意を持って保管(有償の寄託契約)、もしくは自己の財産に対するのと同一の注意を持って保管(無償の寄託契約)する義務があります。

 

使用貸借

使用貸借とは金銭の授受が伴わない賃貸借契約のことです。つまり、タダで建物を借りている人がいたら、それは使用貸借契約により借りているということです。

使用貸借にはいくつかの決まりがあります。

  1. 借地借家法の対象とはならない
  2. 法定更新の対象とはならない
  3. 相続の対象とはならない
  4. 第三者への対抗力は認められない
  5. 目的物の保管・保守の費用は賃借人が負担する

 

贈与契約

 

贈与契約とは無償でモノや金銭等を与える契約です。

この契約では受贈者(もらう人)だけが得をして、贈与者(あげる人)には利益が生じません。

そのため、通常の売買契約では契約書の取り交わしがなくても成立するのに対し、贈与契約では契約書の取り交わしがなければ贈与者の都合で解除ができます。

ただし、履行済の贈与分は返還請求できません。不動産を贈与する場合は、物件の引き渡しがなくても登記変更が完了していれば贈与済と見なされます。

 

交換契約

交換契約とは、簡単に言えば物々交換です。金銭がモノに置き換わっただけとして考えられるため、売買契約の規定がそのまま適用されます。

また、交換契約は両当事者の意思の合致のみで成立します。

 

買戻し

買い戻しは不動産のみを対象とした契約制度です。いったん売却した不動産を、売却代金を返還することにより取り戻し、売買契約自体を解除します。

買い戻しは売買契約が往復したものと考えられるため、一般的な売買契約の原則が適用されます。ただし買い戻しまでの期間に発生した利息分の支払いは免除される点のみ異なります。

 

「特殊性のある契約」に関連する法律

この項目に関連する法律は以下のとおりです。

民法(令和2年4月1日施行)

587条(消費貸借)

消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

 

第593条(使用貸借)

使用貸借は、当事者の一方が無償で使用及び収益をした後に返還をすることを約して相手方からある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。

 

549条(贈与)

贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

 

第586条

交換は、当事者が互いに金銭の所有権以外の財産権を移転することを約することによって、その効力を生ずる。2 当事者の一方が他の権利とともに金銭の所有権を移転することを約した場合におけるその金銭については、売買の代金に関する規定を準用する。

 

第579条(買戻しの特約)

不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができる。この場合において、当事者が別段の意思を表示しなかったときは、不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなす。

 

実際に過去問を解いてみよう

問題:

AB間で、Aを貸主、Bを借主として、A所有の甲建物につき①賃貸借契約を締結した場合と、②使用貸借契約を締結した場合、Bが死亡した場合、①では契約は終了しないが、②では契約が終了する。(平成27年度本試験 問3より抜粋)

答え:〇(終了する)

 

解説

①賃貸借契約による賃借人の賃借権は相続の対象になりますが、②使用貸借による使用貸借人の使用借権は、相続の対象にはなりません。よって使用貸借人の死亡により使用借権は失われます。

 

「特殊性のある契約」ポイントのまとめ

この項目で押さえておくべきポイントは以下のとおりです。

  1. 住宅ローンは消費貸借契約
  2. 寄託はモノの保管を頼む契約
  3. 贈与契約はモノや金銭をあげる契約
  4. 交換契約は物々交換
  5. 買い戻しができるのは不動産だけ

 

最後に

 

今回は特殊性のある契約について解説しました。

多様な状況下にあるそれぞれのお客様に対応できるよう、契約形態に関する幅広い知識を身につけて業務を行いましょう。

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。