債務不履行等に備える法定担保物権を確認|質権・先取特権・留置権

投稿日 : 2020年05月11日

契約にはさまざまなトラブルがつきものであり、それは不動産契約においても例外ではありません。

債務が不履行になった場合に備えて、民法では法定担保物権の規定を設けています。

今回は法定担保物権の中から「質権」「先取特権」「留置権」について解説します。

kobayashi

この記事の監修者:
平山 和歌奈
宅建スペシャリスト

不動産会社や金融機関にて、ローンの審査業務、金消・実行業務などに従事。その過程で、キャリアアップのため自主的に宅建の取得を決意。試験の6ヶ月前には出勤前と退勤後に毎日カフェで勉強、3ヶ月前からはさらに休日も朝から閉館まで図書館にこもって勉強。当日は37℃の熱が出てしまったが、見事1発で合格した。現在はiYell株式会社の社長室に所属。

 

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「質権」「先取特権」「留置権」の試験科目

権利関係

「質権」「先取特権」「留置権」が含まれる試験分野

物権

「質権」「先取特権」「留置権」の重要度

★☆☆☆☆  宅建試験ではほとんど出題されません

「質権」「先取特権」「留置権」過去10年の出題率

10%

 

2020年宅建試験のヤマ張り予想

法定担保物権の中でも、今回ご説明する「質権」「先取特権」「留置権」については、過去10年の宅建試験ではそれぞれ1問ずつしか出題されていません。

同じ法定担保物権である「抵当権」の方がはるかに出題率は高いので、今回の項目は軽くチェックするに留めておき、抵当権の分野で得点を稼ぐのも作戦のひとつでしょう。

 

法定担保物権の性質

法定担保物権の「質権」「先取特権」「留置権」には以下のような性質があります。

付従性 債権が消滅すると同時に担保物権も消滅する
随伴性 債権の移転と同時に担保物権も移転する
不可分性 債務の弁済がなされるまで目的物の全部に権利を行使できる
物上代位性 担保目的物が滅失した場合には価値代替物による物上代位の権利が行使できる

 

「質権」の解説

 

質権とは、債権者が債務者もしくは第三者から受け取った担保を、債務の弁済がされるまで保管・占有し、弁済がされなかった場合にその担保を処分して優先的に弁済を受けることができる権利のことです。

 

質権の成立

不動産質権が成立するためには、以下2つの要件を満たす必要があります。

  1. 当事者間の合意がある
  2. 目的物の引き渡しがある

目的物の引き渡しが前提となる契約のことを要物契約と言います。

 

「先取特権」の解説

 

先取特権とは、複数の債権者がいる債務者から優先的に弁済してもらえる権利のことです。

 

先取特権の種類

先取特権には支払いを受ける財産の種類により以下のように分けられます。

一般先取特権 債務者の総財産から支払いを受けられる権利 共益費用・雇用関係・葬式費用等の債権について発生
動産先取特権 特定の動産から支払いを受けられる権利 不動産の賃貸借や動産の保存・売買等の債権について発生
不動産先取特権 特定の不動産から支払いを受けられる権利 不動産の保存・工事・売買債権について発生

 

不動産先取特権の登記義務

不動産先取特権は登記が必要です。複数の先取特権の登記がある場合には、登記の先後により優先順位が決まります。

 

「留置権」の解説

 

留置権とは他人の物の占有者が、その物に関して生じた債権の弁済を受けるまでその物を留置できる権利です。

不動産の例で言うと、賃貸借契約をしている賃借人が雨漏り等の建物の修繕をしても賃貸人がその費用を払わないときには、賃貸借契約が終了しても留置権を行使して部屋の明け渡しを拒むことができます。

ただし、エアコン等の「占有に必須ではないが建物の価値を向上させる造作」の設置費用の請求は造作買取請求権にあたりますので、留置権の行使はできません。

 

留置権が認められる要件

留置権が認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 留置する物を占有していること
  2. 占有が不法行為によって始まったものでないこと
  3. 債権と留置する物との間に牽連性(つながり)があること
  4. 債権が弁済期にあること

留置権者の管理義務

留置権を行使することにより留置権者は目的物を占有することが認められますが、その際には「善良な管理者の注意をもって」留置物を占有する管理義務があります。

 

「質権」「先取特権」「留置権」に関連する法律

この項目に関連する法律は以下のとおりです。

民法(令和2年4月1日施行)

342条(質権の内容)

質権者は、その債権の担保として債務者又は第三者から受け取った物を占有し、かつ、その物について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

 

336条(一般の先取特権の対抗力)

一般の先取特権は、不動産について登記をしなくても、特別担保を有しない債権者に対抗することができる。ただし、登記をした第三者に対しては、この限りでない。

 

295条(留置権の内容)

他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。2 前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。

 

実際に過去問を解いてみよう

問題:

不動産質権は、目的物の引渡しが効力の発生要件であるのに対し、抵当権は、目的物の引渡しは効力の発生要件ではない。(平成29年度本試験 問10より改題)

答え:〇

 

解説

不動産質権の成立には「目的物の引渡し」が必要(要物契約)になります。それに対して抵当権の場合には目的物の引渡しが成立要件ではありません。

 

「質権」「先取特権」「留置権」ポイントのまとめ

この項目で押さえておくべきポイントは以下のとおりです。

  1. 質権とは債務の弁済完了まで担保を保管して優先的に弁済を受けるための権利
  2. 質権の成立には当事者間の合意と要物契約が必要
  3. 先取特権は複数の債権者の中から優先的な弁済を受けられる権利
  4. 先取特権には一般先取特権・動産先取特権・不動産先取特権がある
  5. 留置権は他人の物の占有者が弁済完了まで占有物を留置できる権利
  6. 留置権が認められるには債権と留置物との間に牽連性が必要

 

最後に

 

今回は法定担保物権の中から、質権・先取特権・留置権について解説しました。

抵当権と同じく、今回ご説明した法定担保物権は債務不履行になった場合に大変重要になる物権です。

法定担保物権の正しい知識を身につけることで、お客様に万が一の契約トラブルが起こった際にも適切なアドバイスが可能になります。

宅建試験では出題頻度の低い項目ですが、実務上役に立つ知識として覚えておきましょう。