表題部・権利部の登記内容と申請方法|宅建士必須の専門知識を学ぶ

投稿日 : 2020年03月12日/更新日 : 2022年11月25日


登記情報の調査や登記手続きは、宅建士の必須業務です。担当する不動産の現況や権利関係を調査するために登記調査が必要ですし、新築住宅の建設や既存不動産の売却など取引が行われた場合には登記申請をしなければいけません。

しかし、登記制度を定める「不動産登記法」は、実務的な細かい規定が多く、すべてを理解するのは困難です。

そこでこの記事では、各登記の内容にフォーカスし、登記の種類や登記情報の読み取り方などをわかりやすくまとめました。

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「表示に関する登記・権利に関する登記」の試験科目

権利関係

「表示に関する登記・権利に関する登記」が含まれる試験分野

不動産登記法

「表示に関する登記・権利に関する登記」の重要度

★★★★★ 登記調査は宅建の最重要業務のひとつ

「表示に関する登記・権利に関する登記」過去10年の出題率

80%

 

2020年宅建試験のヤマ張り予想

登記の申請手続きや登記情報の調査は、宅建士のメイン業務のひとつです。そのため、宅建試験にも毎年必ず出題されます。

登記内容に関する問題が出るか、登記制度の仕組みに関する問題出るかは年度によるため、この記事で取り扱う登記内容に関する問題の出題率は80%としました。

しかし、分野全体では100%となり、今年も例年通り、ほぼ100%の確率で出題されると予想しています。

 

「表示に関する登記」の解説

 

「表示に関する登記」とは

登記とは、個々の不動産(土地または建物)の物理的現況や権利関係をデータ化した法的記録です。不動産取引を行う際に、目的の不動産の現況を調査するために必要です。

「表示に関する登記」とは、登記記録の「表題部」に記録される情報で、その不動産の所在地や面積、所有者の氏名・住所など物理的現況が記録されています。

表示に関する登記は、それぞれの不動産を特定したり、どこにどんな土地・建物があるかを確認するために存在します。所有者やその他の関係者の権利を守る目的ではありません。

そのため表題部には、法的な対抗力はありません。

表題登記と滅失登記

まだ登記記録のない土地・建物について、新規で登記を行うことを「表題登記」といいます。

登記記録に表題部がなければ、所有権の保存や抵当権の設定など権利に関する登記ができないため、新規の登記では、まず「表題部」を新設することになります。

土地の崩落や建物の解体などにより既存の不動産が滅失したときには「滅失登記」を行い、登記を閉鎖します。

 

土地の分筆登記と合筆登記

「筆(ひつ)」とは、1つの土地を表す最小単位です。

1筆の土地を2筆以上の土地に分けることを「分筆(ぶんぴつ)」といい、その登記を「分筆登記」といいます。「土地の分割」が単なる便宜上の線引きであるのとは違い、「分筆」は正式な記録として登記することを指します。

2筆以上の土地を1筆の土地に合併することを「合筆(がっぴつ/ごうひつ)」といい、その登記を「合筆登記」といいます。

分筆・合筆は登記記録における変更であるため、物理的な変更は関係ありません。

また、分筆・合筆登記は、基本的に所有者の意思で行われるため、表題部の所有者または権利部(甲区)の所有権登記名義人によってのみ可能とされています。

ただし例外として、1筆の土地の一部が別の地目(土地の利用目的)となった場合、または一部が別の地番区域に変更される場合には、登記官が職権で分筆登記を行わなければいけません。

また、地図を作成する必要があり、所有者や登記名義人が同意していれば、職権で分筆登記または合筆登記を行うことができます。

 

建物の合併・分割・区分・合体の登記

 

建物の合併・分割・区分の登記は、1個の建物の範囲を変更するための登記であり、建物の形状の変更はともないません。

一方、建物の合体は工事を行い物理的な変更を加える行為です。

建物の合体を行った場合、合体後の建物についての表題登記と、合体前の建物の抹消登記を行う必要があります。

 

表題部の登記手続き

表題部の登記は、個々の不動産の特定などを目的としており、公益性の高い記録です。そのため、表示に関する登記には、申請義務が課せられます。

建物を新築した場合には建物の取得日から1ヵ月以内、土地・建物が滅失した場合には滅失した日から1ヵ月以内に、それぞれ登記申請をしなければいけません。

ただし、表示に関する登記は、所有者からの申請がなくても、登記官が職権で行うことが可能です。

 

「権利に関する登記」の解説

 

「権利に関する登記」とは

権利に関する登記とは、登記記録の「権利部」に記録される情報で、その不動産の所有権の名義人や抵当権の設定などが記録されます。

権利に関する登記は、権利を主張する人が複数現れた場合などに、誰が権利を有しているか明らかにしたり、当事者の権利を守るために存在します。そのため、権利に関する登記には、法的な対抗力があります。

また、個人の権利を守ることが目的であるため、登記の申請義務はなく、個人の意向に委ねられます。

 

所有権の保存の登記

ある不動産について初めて所有権を設定する場合、「所有権の保存の登記」を行い、「権利部(甲区)」を開設します。甲区ができたことで初めて、抵当権など所有権以外の権利(乙区)について登記できるようになります。

所有権保存登記を行う時点では、それ以外の権利者はいないため、所有権保存登記の申請は以下の者が単独で行えます。また、下記以外の者が行うことはできません。

 

◆所有権保存登記を行える者

  1. 表題部所有者またはその相続人その他の一般承継人
  2. 所有権を有することが確定判決によって確認された者
  3. 収用によって所有権を取得した者
  4. 区分建物において表題部所有者から所有権を取得した者

 

登記した権利の順位

同一の不動産について登記した権利の順位は、原則として登記の前後によるとされています。

同一の不動産に2つ以上の権利に関する登記がなされた場合、その順番は次のように決定されます。

権利部の同一区(甲区または乙区)内の複数の登記については、順位番号により決まります。異なる区の登記については、受付番号により決まります。

付記登記(主登記に付記される登記)の順位は、主登記(独立の順位番号を有する登記)の順位で決まります。同一の主登記に付された複数の付記登記については、付記された順番の前後によって決まります。

 

 

仮登記について

「仮登記」とは「予備登記」ともいわれ、本登記をするための手続きや契約が完了していない段階で“予約”として行う登記です。将来の権利順位を確保し対抗力を持つために行われます。

仮登記の段階では対抗力はありませんが、本登記を行ったときに仮登記の順位が有効となります(順位保全の効力)。

 

仮登記ができるのは、以下の場合です。

  1. 登記申請に必要な情報を登記所に提供できない場合
  2. 権利の設定・移転・変更・消滅に関して請求権を保全したい場合

 

仮登記の申請は、原則として共同申請で行う必要がありますが、以下の場合には仮登記権利者の単独申請が認められます。

 

◆仮登記の単独申請が認められる場合

  • 仮登記の登記義務者の承諾があるとき
  • 仮登記を命ずる処分があるとき

 

ただし、所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者がある場合、その承諾があれば単独申請することができます。

ここでいう「第三者の承諾」とは、第三者の承諾情報または第三者に対抗できる裁判があったことを証明する情報を提供して申請した場合を指します。

また、仮登記の抹消は、仮登記の登記名義人が単独で申請することができます。仮登記の登記名義人の承諾がある場合には、仮登記の登記上の利害関係者も単独で申請することができます。

「表示に関する登記・権利に関する登記」に関連する法律

この項目に関連する法律は以下のとおりです。

不動産登記法(施行日:令和2年4月1日)

第4条(権利の順位)

同一の不動産について登記した権利の順位は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記の前後による。

2 付記登記(中略)の順位は主登記(中略)の順位により、同一の主登記に係る付記登記の順位はその前後による。

 

第39条(分筆又は合筆の登記)

分筆又は合筆の登記は、表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は、申請することができない。

2 登記官は、前項の申請がない場合であっても、一筆の土地の一部が別の地目となり、又は地番区域(地番区域でない字を含む。第四十一条第二号において同じ。)を異にするに至ったときは、職権で、その土地の分筆の登記をしなければならない。

(以下省略)

 

第47条(建物の表題登記の申請)

新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。

(以下省略)

 

第57条(建物の滅失の登記の申請)

建物が滅失したときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(中略)は、その滅失の日から一月以内に、当該建物の滅失の登記を申請しなければならない。

 

第74条(所有権の保存の登記)

所有権の保存の登記は、次に掲げる者以外の者は、申請することができない。

一 表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人

二 所有権を有することが確定判決によって確認された者

三 収用(中略)によって所有権を取得した者

2 区分建物にあっては、表題部所有者から所有権を取得した者も、前項の登記を申請することができる。この場合において、当該建物が敷地権付き区分建物であるときは、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない。

 

第106条(仮登記に基づく本登記の順位)

仮登記に基づいて本登記(中略)をした場合は、当該本登記の順位は、当該仮登記の順位による。

 

 

「表示に関する登記・権利に関する登記」ポイントのまとめ

  1. 表示に関する登記とは、不動産の所在地や面積、現在の所有者など物理的現況を「表題部」に記録することである
  2. 表題部を新設することで新規の不動産をはじめて登記することを「表題登記」という
  3. 1筆の土地を2筆以上の土地に分けることを「分筆」、2筆以上の土地を1筆の土地に合併することを「合筆」という
  4. 表題部の登記申請は、不動産の取得や情報に変更があってから1ヵ月以内に行わなければならない
  5. 初めて所有権を設定することを「所有権保存登記」といい、所有者が単独で行える
  6. 同一の不動産について登記した権利の順位は、原則として登記の前後による
  7. 仮登記は、本登記ができない段階で、将来の権利順位を確保するために先行して行う登記である

 

試験範囲全体をバランスよく学習する

 

今回の記事は、不動産登記法に規定される登記内容の取扱いに関する知識を、コンパクトにわかりやすくまとめたものです。

実際の不動産登記法を初心者が読めば、実務的な専門性の高さに混乱してしまうでしょう。この分野をきちんと習得するには、かなりの学習時間を要します。

ただ、宅建試験の合格が目的であるなら、1分野を深追いしすぎるのは危険です。今回取り上げた分野は出題率がとても高いため、基礎をしっかり理解することは必須ですが、試験範囲全体をバランスよく学習することが大切です。

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。