賃貸不動産経営管理士とは? 仕事内容や難易度、将来性を解説!
2021年に国家資格として認定された賃貸不動産経営管理士は、不動産業界で注目されている資格です。ここでは、どのような資格なのか、取得する意味はあるのかといった疑問をお持ちの方へ、賃貸不動産経営管理士について詳しく解説します。
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賃貸不動産経営管理士とは
賃貸不動産経営管理士とは、2021年に国家資格として認定された賃貸管理業に関する資格です。
賃貸管理の社会的ニーズが高まり管理業者が増加した一方、オーナー様と管理業者、入居者と管理業者の間で多くのトラブルが生じています。トラブルが生じやすい原因の一つには、賃貸管理業に関する法律が整備されていなかったこと、が挙げられます。
そこで、2021年に「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が施行され、200戸以上を管理する管理業者に国への登録が義務付けられました。賃貸不動産経営管理士は、管理業者の事務所に必要とされる業務管理者の要件の一つです。
幅広い知識と柔軟な対応が求められる賃貸住宅管理において、所有者の資産の有効活用や、入居者の安心・安全確保のために重要な役割を担います。
賃貸不動産経営管理士を取得するメリット
賃貸不動産経営管理士を取得するメリットは、以下3つです。
- 賃貸住宅管理業界でのニーズが高い
- 適切な賃貸管理業務について体系的に学べる
- お客様からの信頼獲得につながる
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(第12条)において、賃貸住宅(200戸以上)の管理を受託する管理業者には、業務管理者の設置が義務付けられています。業務管理者になるための要件の一つが、賃貸不動産経営管理士として登録されることです。
また、賃貸不動産経営管理士の試験では、適切な賃貸管理業務に必要な知識から幅広く出題されます。実務に近い内容を体系的に学びたい方にもおすすめです。
賃貸管理業界で働く方だけでなく、不動産仲介業や金融業の方とも相性の良い資格です。名刺に資格名を記載することで専門性をアピールでき、お客様からの信頼を得やすくなります。
参考:e-GOV法令検索_賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律
賃貸不動産経営管理士になるには
賃貸不動産経営管理士になるまでの流れは、以下5つのステップです。
- 受験申し込み
- 賃貸不動産経営管理士試験の受験
- 合格発表
- 登録手続き
- 資格付与
注意が必要なのは、試験合格後に登録手続きが必要な点です。ここでは、試験と登録について順を追って解説しましょう。
賃貸不動産経営管理士試験に合格
賃貸不動産経営管理士の資格を取得するには、試験に合格しなければなりません。
例年3月頃に試験の実施要領が公開され、8月頃に申し込みが始まります。試験の勉強方法は、テキストでの独学か講習を受けるかの2択です。
試験の実施団体である賃貸不動産経営管理士協議会の公式サイトには、同団体が出版する教材や関連団体が主催する講習の案内がありますので、興味がある方は公式サイトをご確認ください。
なお、試験の実施団体が指定する講習を受けた場合、試験問題が5問免除される制度があります。
資格登録
賃貸不動産経営管理士として活躍するためには、試験合格後に登録を受けなければなりません。
賃貸管理業の実務経験が2年以上ある方は、試験に合格すれば登録できます。実務経験がない方は、実務講習を修了後に登録できるようになります。
登録料は6,600円となり、有効期限は5年間です。
賃貸不動産経営管理士の仕事内容は?
賃貸不動産経営管理士に求められることは、専門家として賃貸管理物件を適切に管理し、物件を有効活用すること、入居者の安心・安全を確保することです。
管理業務は入居から退去まで長期に及ぶため、仕事内容も多岐にわたります。
募集から入居までの業務
オーナー様に対する入居者募集の提案や入居時の諸手続きを行います。具体的には、物件案内や入居審査、室内点検、契約手続きなどです。
入居中の業務
入居中の業務は、入居者の対応と建物の管理に分かれます。入居者が支払う家賃の管理、クレーム・トラブルへの対応、建物の定期点検や清掃、オーナー様への管理状況報告などを行います。
退去時の業務
退去時は入居者とのトラブルが生じやすいため、賃貸不動産経営管理士の存在が重要です。退去の立ち会いや原状回復費用の計算、必要に応じてオーナー様へリフォームの提案などを行います。
賃貸不動産経営管理士の試験日や試験概要
賃貸不動産経営管理士の試験概要は以下の通りです。
試験日 | 11月第3日曜 |
試験時間 | 120分 |
受験料 | 12,000円 |
出題方式 | 四肢択一×50問 |
受験対象 | 年齢や学歴等による制限なし |
合格発表 | 12月下旬 |
上記は2023年度の試験実施要領を参考に作成したものです。
年度によって情報が異なる可能性があるため、必ず実施団体の公式サイトをご確認ください。
賃貸不動産経営管理士の試験難易度や合格率
賃貸不動産経営管理士は、賃貸管理に関する知識が幅広く問われる試験です。2022年度の合格率は27%でした。
比較されることの多い宅建士の合格率は15%前後であるため、宅建士よりも難易度が低いといえます。
とはいえ、2021年に国家資格として認定されたばかりの資格です。今後、試験の傾向が変わる可能性もあるでしょう。例えば、宅建士と同等の合格率まで難易度が上がることも想定されます。
例年の傾向や試験の実施団体が主催する講習、教材などからできる限り情報収集をしたうえで試験に望みましょう。
賃貸不動産経営管理士の年収
賃貸不動産経営管理士は賃貸管理業に役立つ資格であるものの、独立した職種ではないため独自の年収データがありません。
年収は勤め先や職種、業務範囲などによって大きく異なります。
募集中の求人を参考にすると、賃貸不動産経営管理士に関する仕事の相場は年収300万円~600万円です。資格手当があるものの、宅建士よりも低く設定されているケースがあります。
また、賃貸住宅管理業は業務の幅が非常に広く、勤め先によって求められる知識が異なります。年収だけではなく、業務内容にも注目してみてください。
賃貸不動産経営管理士の将来性やキャリアパス
長い目で見ると、賃貸不動産経営管理士の将来性は高いといえます。賃貸管理業務はAIに代替できない仕事であるためです。
入居者のクレーム・トラブル対応はイレギュラーが多く、きめ細やかな対応が求められます。また、オーナー様へのリフォームや入居者募集の提案も、個々の事例に適したアイディアが必要です。
その他、以下の社会的な傾向からも、賃貸不動産経営管理士の将来性の高さが伺えます。
- 管理業務を委託するオーナー様が増加している
- 単身世帯や外国人の増加で賃貸住宅ニーズが高まっている
- 入居者の要望が高度化し、賃貸物件の管理が複雑になっている
キャリア形成に最も役立つのは賃貸管理業界ですが、不動産仲介業界の方が取得すれば知識の幅が広がり、お客様への提案に活きるでしょう。
また、金融業界の中には賃貸管理に大きく関わる仕事もあります。例えば、投資用不動産ローンを扱う仕事や損害保険を扱う仕事です。銀行業や保険業では必須といえないものの、取得しておくと取引先やお客様との信頼関係を構築しやすいでしょう。
賃貸不動産経営管理士と併用して受験したい資格
賃貸不動産経営管理士と類似の資格を掛け合わせると、さらに有効活用できます。賃貸不動産経営管理士と相性の良い資格を3つ紹介します。
宅建士
宅建士と賃貸不動産経営管理士は比較されることの多い資格です。
宅建士は宅建業であるため入居までの業務がメイン、賃貸不動産経営管理士は入居後の業務がメインです。宅建士と賃貸不動産経営管理士を取得すれば、不動産取引に必要な知識を網羅的に習得できます。
マンション管理士
マンション管理士は、分譲マンションの管理・運営に悩む管理組合からの相談に応じる専門家です。
マンション管理に関する法律や設備、長期修繕計画などの知識が求められます。
賃貸管理という観点からは賃貸不動産経営管理士と類似していますが、試験の対象となる法律など異なる点も多々あります。ダブルライセンスを取得すれば、幅広い知識を持つ専門家としてスキルアップできるでしょう。
管理業務主任者
管理業務主任者は、マンション管理業者が管理組合に対して管理委託契約に関する重要事項説明などを行うために必要な資格です。
分譲マンションの管理業務が対象となるため、オーナー様から直接受託する賃貸管理業とは性質が異なります。
管理業務主任者と賃貸不動産経営管理士は、どちらも管理業者に必要な資格であるため、2つを取得しておくと対応できる仕事の幅が広がるでしょう。
まとめ
賃貸管理の社会的ニーズが高まる中、賃貸不動産経営管理士が注目されています。
賃貸管理業界で働く方だけでなく、不動産仲介業や金融業とも相性の良い資格です。お客様からの信頼関係構築やキャリアアップのために取得を検討してみてはいかがでしょうか。