物権変動と登記|契約取消し・解除・時効取得・相続における所有権

投稿日 : 2020年03月11日

物権変動とは、契約などを原因として、所有権や占有権などの物権が発生・変更・消滅することです。

物権変動は、宅建士の多くの業務で取り扱うため、宅建試験でも必須の分野とされています。

この記事では、その中でも「登記をめぐる個別の判例」について解説します。

個別とはいえ、対抗要件などの基礎知識が必要であり、それを理解することでどのような問題にも対応できるようになります。

まずは判例の結論を知ることからスタートし、少しずつその理由も理解できるようにしましょう。

kobayashi

この記事の監修者:
平山 和歌奈
宅建スペシャリスト

不動産会社や金融機関にて、ローンの審査業務、金消・実行業務などに従事。その過程で、キャリアアップのため自主的に宅建の取得を決意。試験の6ヶ月前には出勤前と退勤後に毎日カフェで勉強、3ヶ月前からはさらに休日も朝から閉館まで図書館にこもって勉強。当日は37℃の熱が出てしまったが、見事1発で合格した。現在はiYell株式会社の社長室に所属。

 

宅建受験者はここをチェック!

 

「物権変動と登記」の試験科目

権利関係

「物権変動と登記」が含まれる試験分野

物権変動

「物権変動と登記」の重要度

★★★★☆  頻出分野の実践編・応用編ととらえましょう

「物権変動と登記」過去10年の出題率

60%

 

2020年宅建試験のヤマ張り予想

このテーマの問題の出題率は60%程度ですが、「物権変動」分野全体では80%と高く、ここ5年に関しては100%となっています。

2020年も引き続き出題される可能性が高いでしょう。

「物権変動と登記」の学習内容は、判例ごとにどのような結論が下されているかということです。

個別のケースを扱うことになりますが、物権変動における対抗要件や基本の理解も求められます。

そのため、「物権変動」分野全体を通して頻出問題として学習することが大切です。

 

「物権変動と登記」の解説

物権変動の対抗問題における原則

不動産の物権変動で物権を主張できる人が複数いる場合(対抗問題)、原則として「登記」を先に備えている人が勝ちます。

ただし、物権を主張できるためには、「相手に登記がないことを主張する正当な利益を有する者」でなくてはいけません。

そして、正当な利益を有するかどうかは、判例によって異なります。

 

 

契約取消と登記

詐欺や強迫などで本人の意向に反して行われた売買契約は、後から取消すことができます。

例えば、売主AさんがBさんに不動産を売却した後、Bさんが詐欺をしていたことが分かった場合、Aさんは売買契約を取消すことができます。

しかし、契約取消において物権を主張する第三者が現れた場合は、そのタイミングが取消し前か後かによって結論が異なります。

 

①「取消し前」に対抗する第三者が現れたとき

詐欺をして不動産を購入したBさんが、Aさんから契約を取消される前に第三者であるCさんに不動産を売却し、登記も済ませてしまった場合、Cさんに悪意があるかどうかで結論は異なります。

Cさんに悪意があれば、Aさんを保護する必要があり、Aさんは不動産を取り戻すことができます。逆に、Cさんに悪意がなければ、Aさんは取り戻せません。

 

②「取消し後」に対抗する第三者が現れたとき

BさんがCさんに不動産を転売したのが、Aさんが売買契約を取消した後だった場合は、AさんはCさんから不動産を取り戻せません。

なぜなら、売買取消しによって所有権がBさんからAさんに戻ったことと、BさんがCさんに転売したこととは、「二重譲渡」とみなされるためです。二重譲渡の場合には、登記に従うことになりますので、登記を備えているCさんの所有権が認められます。

また、二重譲渡のケースであれば、Cさんは善意・悪意を問われません。

 

契約解除と登記

買主の債務不履行などを理由に、売主が売買契約を解除することがあります。

このケースで債務者が第三者に不動産を売却し、登記も済ませてしまった場合、所有権は誰のものとなるのでしょうか。

 

①契約解除前に第三者へ売却された場合

契約解除前であれば、不動産は債務者の所有物であるため、それを自由に売却することができます。そのため、それを購入した第三者の権利も尊重されるため、登記を済ませていれば、第三者は所有権を主張できます。

 

②契約解除後に第三者に売却された場合

契約取消後の場合と同じく、二重譲渡の状態であるため、登記を先に備えている方が勝ちます。そのため、第三者が登記を備えているなら、第三者の所有権が認められます。

 

 

取得時効と登記

民法には「時効制度」があり、ある財産について一定期間以上占有していた者は、その所有権を取得することができるとされています。

取得時効が成立した不動産について、占有者Aさんが所有権を取得する一方、従来の所有者Bさんが第三者Cさんに不動産を売却した場合、所有権は誰のものになるのでしょうか。

 

①取得時効完成前に第三者が取得した場合

第三者=新しい所有者であるCさんは、前の所有者Bさんから権利とともに義務も承継します。そのためCさんは、時効取得者Aさんに所有権を譲る義務も引き継ぐことになります。

 

②取得時効完成後に第三者が取得した場合

時効取得後に不動産が第三者へ売却された場合、時効取得者と第三者は二重譲渡の関係となります。つまり、もとの所有者Bさんは、一方では取得時効によりAさんに不動産を譲渡し、もう一方でCさんに売却しています。

二重譲渡のケースでは、登記を備えている方が所有権を主張できるため、Cさんの所有権が認められます。

 

 

相続と登記

相続が発生したときには、それぞれの財産を相続人全員で共同所有している状態です。

例えば、Aさんの遺産に現金と不動産があり、相続人にBさんCさんという2人の子がいた場合、Aさんがなくなった時点では、現金をBさんCさんで等分し、不動産も2人で共有していることになります。

このような相続のケースで、Bさんが無断で不動産を第三者Dさんに売却し、登記を済ませてしまった場合、所有権は誰のものになるのでしょうか。

 

①遺産分割前に第三者に売却した場合

遺産分割協議を済ませていない段階では、登記がなくても各法定相続人の持分について無条件で権利が認められます。

そのため、遺産分割前にBさんが無断で不動産の名義を自分に変更し、Dさんに売却・登記をしてしまった場合でも、Bさんの持分以外の部分は、他の相続人であるCさんの所有権が認められます。

したがって、Cさんの持分について、第三者Dさんは無権利者となり、不動産の単独所有権を得ることはできません。

 

②遺産分割後に第三者に売却した場合

遺産分割協議により遺産のうち不動産をBさんが単独で相続することになったにもかかわらず、不動産を相続しなかった方の相続人Cさんが無断で第三者Dさんに売却し、登記を済ませてしまった場合はどうなるのでしょうか。

この場合、まず相続発生時のCさんの持分が、遺産分割協議によりBさんに移転します(C→B)。次にその部分を含む不動産全部が、CさんによってDさんに移転します(C→D)。

このとき、Bさんのもともとの法定相続分については、登記がなくてもBさんの所有権が認められます。そのため、Dさんが取得できるのはCさんのもともとの相続分のみとなります。

したがって、このケースではCさんの持分について、C→B、C→Dと二重譲渡となっているため、登記を備えているDさんに所有権が認められます。ただし、Dさんに単独所有権は認められません。

 

③相続放棄後に第三者に売却した場合

相続人のうち相続放棄をした人が、放棄したはずの遺産を第三者に売却した場合、所有権は誰のものになるのでしょうか。

まず、相続放棄をした相続人には、その後の相続権や財産所有権は認められません。また、相続放棄をした場合、遺産は残りの相続人で分割します。

相続財産は登記がなくても所有権を認められますので、相続放棄者が勝手に財産を売却しても、それを購入した第三者は無権利者となります。

したがって、第三者は所有権を主張できません。

 

「物権変動と登記」に関連する法律

民法(施行日:令和2年4月1日)

第177条(不動産に関する物権の変動の対抗要件)

不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

第899条の2(共同相続における権利の承継の対抗要件)

相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。

(以下省略)

 

「物権変動と登記」ポイントのまとめ

  1. 契約取消し前の第三者に対して、相手が善意かつ無過失であれば対抗できない
  2. 契約解除前の第三者は、登記を備えていれば対抗力を持つ
  3. 取得時効完成前の第三者に対して、時効取得者は所有権を主張できる
  4. 契約取消し後・契約解除後・取得時効完成後の第三者に対しては、登記を備えていなければ対抗できない

 

判例問題でも手がかりとなる判断基準を意識する

 

宅建試験では、判例を答える問題が多く出題されます。

法令の規定に収まらない個別の判例をひとつひとつ覚えるのは、非常に難易度が高そうに感じられます。

しかし、個別の判例であっても、その判断には一定の規則性があったり、基準となる他の法律や司法の理念があったりします。

それらを理解すれば、丸暗記するよりも手がかりを持って、楽に覚えられるでしょう。