住宅ローンにも影響する違反建築物と既存不適格建築物の違いを解説します

投稿日 : 2020年03月20日


2020年はあの阪神淡路大震災から25年という節目の年になります。その後も東北や九州などで大規模な震災が続き、倒壊を防ぐためにも常に災害に強い建物を建築する意識を持つ必要があります。

しかし基準を満たしていない建物があるのもまた事実です。今回はそれらの違反建築物と既存不適格建築物について解説していきます。

kobayashi この記事の監修者:
小林 紀雄
住宅業界のプロフェッショナル

某大手注文住宅会社に入社。入社後、営業成績No.1を出し退社。その後、住宅ローンを取り扱う会社にて担当部門の成績を3倍に拡大。その後、全国No.1売上の銀座支店長を務める。現在は、iYell株式会社の取締役と住宅ローンの窓口株式会社を設立し代表取締役を務める。

 

違反建築物とは

違反建築物とは、建築基準法を始めとする建物を建築することに関する法律基準に違反している建築物のことを言います。

違反の要件としては①~⑤などのさまざまなケースがあります。

  1. 建ぺい率の制限
  2. 容積率の制限
  3. 敷地の接道義務
  4. 違法な増改築
  5. 違法な用途変更

 

その中でも「3.敷地の接道義務」違反に関しては、建築基準法上の道路に接していないことになるため、建築物自体を取り壊して再建築を行うこともできません。ちなみにこのような建築物のことを再建築不可物件といいます。

これらの違反建築物は、建築中の場合は工事停止命令を、また完成後の場合は取り壊しや使用禁止といった措置を、特定行政庁の権限によって行うことができます。

 

違反の種類①

建ぺい率と容積率に関する具体的な違反のケースは以下のような場合です。

  • 建ぺい率60%、容積率100%の敷地に対して、建ぺい率70%、容積率110%の建物を実際に建築した
  • 建ぺい率、容積率それぞれの範囲内であっても、図面上とは異なる数値の建物を建築した
  • 完成の検査後、勝手に敷地を売却したり、建築内容とは異なる増築などを行った

 

違反の種類②

建築計画概要書と実際に建築した建物の内容が異なる場合も違反となります。

例:建築計画概要書では3階建ての建物だが、実際に建築した建物は地下室も造られていた

 

建築計画概要書とは、建築確認申請をおこなう際に提出する書類の1つで、敷地の面積・建物の大きさや高さ・配置図などが記載されています。

 

違反建築物が受ける制限

違反建築物は住宅ローンを利用することができません。よって売却時においても購入時においても売買できる手段は現金のみになります。

また、購入時においては、重要事項説明義務により必ず買主様に内容が伝わります。実際にそのようなリスクを負ってまで購入を決断する買主様は少ないので、その結果建物の資産価値も大幅に下落することになります。

 

既存不適格建築物とは

 

既存不適格とは以前は適法であったものが、建築基準法をはじめとする諸所の法律による改正などによって、現在では適法ではなくなっている事例を言います

そのような物件のことを既存不適格建築物(既存不適格物件)と言います。

建築基準法をはじめとする建築物に関係する法律は、他の法律と比べて改正頻度が高いため、当初は適格だった建物も、後に既存不適格建築物になることがあります。

既存不適格建築物は違反建築物とはならず、原則そのままの状態で建築物自体の存在は認められますが、一定規模を越える増改築をおこなう場合は、現行の法律に沿った基準に適合する必要があります。また再建築といった建て替えに関しても、現行の法律基準によっては、以前と同規模の建物を建築することができない場合があります。

 

ただし、条件付きではありますが、耐震補強を含む1部の増改築に対しては、既存不適格建築物の状態のままでも行うことが可能です。

現行の法律に沿った増改築や建て替えを行うには多くの費用が必要となるため、工事自体を断念せざるを得ない持ち主もいます。その結果工事が進まず却って災害に危険な建物が増えることになってしまうため、そのようなケースを防ぐことが理由になっています。

 

既存不適格建築物になるケース➀

一般的に既存不適格建築物に該当するケースとしては以下のケースがあります。

  • 用途地域、建ぺい率、容積率などの基準変更
  • 条例や指導要綱の変更

既存不適格建築物になるケース②

  • 高度地区における最高高さ制限

2004年より都市計画の見直しによって、最高高さ制限を新たに定めた区域があります。2004年以前に建築された建物の高さ次第では、高さ制限に引っかかり既存不適格建築物に該当しているケースが考えられます。

 

最高高さ制限のある高度地区で不動産の物件調査を行う場合は、その物件に関する建築計画概要書を取得して、対象物件が既存不適格建築物にあたるのかどうかを確認しておくと良いでしょう。

 

既存不適格建築物になるケース③

  • 地区計画による既存不適格

既存の建築物が完成した後に新たな地区計画が定められたときに、場合によっては新たな地区計画の規制に抵触し、対象の建築物が既存不適格建築物になってしまうことがあります。

 

上記の②と③両方とも意外と見落としがちなケースともいえるので、不動産業を営んでいる方で対象の物件が高度地区の最高高さ制限や、地区計画に絡む可能性が高い場合は注意が必要です。

 

適合させることによる影響

 

既存不適格建築物は前述した通り違反建築物ではありません。原則購入時においても住宅ローンを受けることができますし、売買においても現金を含むさまざまな決済で取引を行うことが可能です。

 

しかし、既存不適格建築物が違反建築物ではなく、また以前の法律ではクリアしていた規制要件であっても、現行の法律に対して多くの規制要件に触れる場合は、ケースにもよりますが、住宅ローンを受けられない可能性もあります。

 

既存不適格建築物の売買を行う場合は、前もって住宅ローンを受ける予定の金融機関等に、ローンを受けられるかどうかの確認を取っておくと良いでしょう。

 

違反建築物と既存不適格建築物との違い

違反建築物と既存不適格建築物との最大の違いは、違反建築物は違反物件になりますが、既存不適格建築物は違反物件ではないということです。

これは当初から違法であった違反建築物と、当初は適法で法律の改正等によって規制に引っかかることになってしまった既存不適格建築物との出発点がそもそも異なっているのが理由です。

しかし建て替え等の再建築においては、どちらの場合でも以前と同じ規模の建築物を建てることはできません。

また住宅ローンに関しても、ケースによっては既存不適格建築物でもローンを受けることができないという点については、双方とも同じと言えます。

 

まとめ

日本は昔から地震を始めとする災害が多い国です。

災害に強い建物を造るために法律を常に改正し、規制を強めることは大事なことではありますが、違反建築物の撤去も含めてそれに伴う増改築の莫大な費用という問題が発生しているのも事実です。

過去適応されていた法律の内容も把握しておくことで、お客様にきちんと説明できるようにしておきましょう。