都市再生特別措置法とは何かをわかりやすく解説|デメリットも紹介
みなさんは大阪天王寺にあるあべのハルカスという建物をご存知でしょうか。
周りの商業施設やオフィスビルより頭一つ飛び出ているその姿は、目を見張るものがあります。
実はこのあべのハルカスは、今回解説する都市再生特別地区の恩恵を受けて建設された建物です。
ここからは都市再生特別地区の定義・意義・目的、そして不動産営業にはどう関わっていくのかを見ていくことにしましょう。
都市再生特別地区とは何かわかりやすく解説
都市再生特別地区とは、当時の小泉内閣によって勧められていた都市再生プロジェクトの一環として、2002年(平成14年)に都市再生特別措置法として制定され、都市計画法における地域地区の1つに位置づけられています。
都市再生特別措置法の特徴としては、指定された都市再生緊急整備地域内において、本来都市計画法では規制されている用途地域や容積率、また高さなどのあらゆる規制を解除することで、当該地域の高度利用を図ることを目的としています。
高度利用とは、高さのことではなく、当該地域の再生や活性化も含めて、より高密度かつ高次元の土地利用をおこなうといった意味になります。
また補足として都市再生緊急整備地域の中でも、特に重要度が高い地域に関しては、特定都市再生緊急整備地域と呼ばれています。
都市再生特別地区が定義される法律
都市再生特別地区の法律による根拠は、都市再生特別措置法によるところが大きいですが、それ以外にも都市再生特別地区が定義されている法律があります。
都市再生特別措置法の条文も含めると、以下の3つになります。
・建築基準法:第60条の2(都市再生特別地区)
都市再生特別地区内においては、建築物の容積率及び建ぺい率、建築物の建築面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、それぞれの建築面積)並びに建築物の高さは、都市再生特別地区に関する都市計画において定められた内容に適合するものでなければならない。(後略)
引用:e-Govウェブサイト
・都市計画法:第8条(地域地区)第1項第4号の2
都市再生特別措置法(平成十四年法律第二十二号)第三十六条第一項の規定による都市再生特別地区。
引用:e-Govウェブサイト
・都市計画特別措置法:第36条(都市再生特別地区)
都市再生緊急整備地域のうち、都市の再生に貢献し、土地の合理的かつ健全な高度利用を図る特別の用途、容積、高さ、配列等の建築物の建築を誘導する必要があると認められる区域については、都市計画に、都市再生特別地区を定めることができる。
引用:e-Govウェブサイト
都市計画法は、1つの地域にさまざまな建物や施設が乱立し、都市の景観や利便性を損なわないことを目的として、あらゆる規制を設けた法律ですが、地域の統一性は保たれても1地区のみを発展させることには対応しきれない法律でもありました。
そこで都市計画法におけるあらゆる規制を除外することによって、1地区のみを比較的自由な環境で発展させ、結果地域全体が活性化することを促したのが、都市計画特別措置法の趣旨とも言えます。
除外できる規制制限の種類
都市再生特別地区には、都市計画法におけるさまざまな規制を除外できることはすでに述べましたが、ここでは実際にどのような規制が除外できるのかを、➀規制に囚われないものと②規制自体が解除されるものの2つの観点から見ていきます。
➀本来の規制に囚われることなく定めることができるもの
建築物における最高限度:容積率・建ぺい率・高さ
建築物位置ける最低限度:容積率・建築面積
その他にも囚われないものとして、壁面位置の制限があります。
ただし上記の内容は、都市再生特別地区に関する都市計画に定められた内容には適合する必要があります。
②次に規制自体が除外されるもの
制限:用途地域及び特別用途地区・用途地域における容積率・斜線・高度地区による高さ
規制:日影
多くの規制が除外等されており、これだけでも柔軟に都市再生をおこなう土台は整っているといえます。
都市再生特別地区の一例
2018年現在で都市再生特別地区は、53地域87地区が決定されています。
北海道から九州までまさに全国規模といってよいでしょう。
また郊外ではなく駅前など、比較的人が集まりやすいところに多く設定されているのも特徴です。
ここからはそんな都市計画再生特別地区の一例を見ていくことにしましょう。
大阪市阿倍野筋1丁目地区
ここでは冒頭でも紹介したあべのハルカスが所在する「大阪市阿倍野筋1丁目地区」を例にとってみていくことにします。
画像引用:大阪市 都市再生特別地区(一部抜粋)
建築物の高さの最高限度を例にとると、高層部の高さが310mと表記され、大阪駅前地区の高さ150mと比べると、かなり高いのがわかります。
このように従来の規制を除外して、規制の枠組みに囚われないことによって、初めてあべのハルカスのような個性のある建物を造ることができ、結果的に地域への集客を促していくことになるのです。
都市再生特別地区の目的
都市再生特別地区を設ける目的としては、都市再生特別措置法を通じて以下の内容で述べられています。
➀国際競争力と防災機能の強化
②コンパクトでかつ活気のある街の形成
③都市及び居住機能を高度化し住宅再生をおこなう
そしてこの3点を民間事業者の力を主にして都市再生をおこなうとされています。
この場合における都市再生とは、情報化・国際化・少子高齢化に対応した都市及び居住機能の高度化をおこなうといった意味になります。
当時の平成不況を背景とした民間企業への活力を促すといった点もありますが、将来に向けたあらゆる面における日本の国際競争力を保つために制定したという一面も、伺い知ることができます。
不動産営業における都市再生特別地区
不動産のお仕事においても、この都市再生特別地区の知識が必要になってくる場合があります。
ここからは不動産の営業において、都市再生特別地区がどのように関わってくるかをみていくことにしましょう。
重要事項説明書内の都市再生特別措置法
不動産営業において都市再生特別地区が関わってくるのは、重要事項説明書においてです。
重要事項説明書には「都市計画法・建築基準法以外のその他の法令に基づく制限」の中に都市再生特別措置法の項目があります。
都市再生特別措置法において、特に重要事項説明書に関わってくるのが以下の2つです。
➀立地適正化計画
住宅及び医療・福祉・商業各施設その他居住に関連する各施設の立地の適正化に関する計画
②居住誘導地域
居住を誘導すべき区域
その他にも都市再生特別措置法における重要事項説明として関わってくるものもありますが、全てが一般的な不動産売買において利用されるわけではありません。
関連記事:重要事項説明とは?宅建業者の役割と上手く説明するポイントを解説
まとめ
グローバルな時代となった現代では、都市機能を強化することによって、世界に対して競争力を付けていかないと、政治・経済そして観光などあらゆる要素に遅れをとってしまいかねません。
都市再生特別地区の目的としては、都市部再生を図ることが主ではありますが、日本の底力を押しあげることにも繋がっているのではないでしょうか。
あわせて読みたい: 不動産営業実務マニュアル / 基本
不動産営業実務マニュアルに興味がある方は下記の記事をご覧ください。
不動産業務実務の基本に興味がある方は下記の記事をご覧ください。
不動産業務実務の基本関連記事
- 不動産業務効率化
- 不動産DXサービス特集
- 不動産DX導入インタビュー
- 不動産業界DX
- 不動産営業とは?仕事内容と成約率アップのポイントを解説
- 賃貸管理会社はどこが良い?管理戸数ランキングと選び方を紹介