「高度地区」とは|地域ごとの高さ制限を調査・対応するポイント
都市計画法の地域地区に、「高度地区」というエリアがあります。これは、建築物に高さ制限を設定した地域です。
国土は都市計画や地域の特性に合わせて細かく分割・分類されており、建物の建設などを行う場合には、それぞれの場所に規定された規則や制限を守らなければいけません。お客様がいくら希望しても、まったくの好き勝手にはできないのです。
法令を守りつつお客様の要望に応えるためには、まずは法令についてきちんと理解する必要があります。そこで今回は、「高度地区」の概要と具体的な制限の例、業務でのポイントをご紹介します。
「高度地区」とは
「高度地区」とは、用途地域内において市街地の環境を維持し、土地利用の増進を図るため、建築物の高さ制限を定める地区のことです。
高さ制限には、「最高限度」または「最低限度」があり、用途地域・自治体によって使い分けられています。(引用:電子政府の総合窓口e-Gov|都市計画法第9条18項)
都市計画法の「地域地区」について
「高度地区」は、都市計画法により規定される「地域地区」の1種です。
「地域地区」とは、その土地をどのような用途でどの程度利用するかを各市区町村が定めた分類です。市街地環境の維持や発展を計画的に行うために定められています。
「地域地区」には、「高度地区」の他にも「高度利用地区」「用途地域」「防火地域」など約20種類ほどが規定されています。
「最高限度高度地区」と「最低限度高度地区」
高度地区には、建築物の高さの上限を定めた「最高限度高度地区」と、建築物の低さの下限を定めた「最低限度高度地区」があります。
ただし、指定割合としては圧倒的に「最高限度高度地区」が多いため、単に「高度地区」と言うと、通常「最高限度高度地区」を指すのが一般的です。
それぞれの「高度地区」を定める目的
【「最高限度高度地区」を指定する目的】
「最高限度高度地区」を指定する目的は、良好な市街地環境の維持にあります。特に住宅街では、快適な住環境を確保するため、日照・採光・通風などが重要となります。
そのため、住宅などの建築物の高さに一定の制限を設定し、建築物同士がそれぞれの環境を侵害し合わないようにしています。
【「最低限度高度地区」を指定する目的】
建築物の低さの下限を設ける「最低限度高度地区」を指定する目的は、市街地中心部の高度利用を促すことです。商業地域・オフィス街としての利便性を確保したり、都市部の限られたスペースを有効利用したり、高度な都市機能を維持・充実させる目的があります。
「高度地区」の高さ制限の例
高度地区において設定される高さ制限で一般的なのは、「北側斜線制限」と「絶対高さ制限」です。
「北側斜線制限」とは
「北側斜線制限」は、日陰に入りやすい北側に近接した建物への日当たりを確保するために設定されます。日照の角度や方角を考慮し、斜線で区切った領域に建築物の高さを収める必要があります。
「絶対高さ制限」とは
「絶対高さ制限」とは、建築物の各部分を地盤面から一定の高さ以内に収めるよう設定される制限です。「第1種高度地区は10m」などと規定されます。
「北側斜線制限」と「絶対高さ制限」ともに規定されている場合は、より低い方を適用するのが一般的です。
画像引用:練馬区|高度地区の種類
上の図は、東京都練馬区における「高度地区」の規定です。高さに応じて2段階の「北側斜線制限」を設けている地区や、「絶対高さ制限」のみを設定している地区、「最低限度高度地区」と、練馬区内でも細かく分類されていることがわかります。
例えば、「17m第2種高度地区」では、①建物の15m以下の部分には「1:1.25」の北側斜線制限が設け、15m以上の部分には「1:0.6」の北側斜線制限を設けています。さらに、「17m以下」の絶対高さ制限を重ねて設定しています。
「高度地区」を調べる方法
「高度地区」の規定は各自治体により異なる
「高度地区」は都市計画法による「地域地区」のため、その規定は各市区町村がそれぞれ独自の法令に定めています(建築基準法による高さ制限は全国共通)。また、自治体によっては高さ制限以外に、制限の緩和特例を設定していることもあります。
そのため、担当不動産を取扱う際には、案件ごとに個別の確認が必要です。
「高度地区」の確認方法
各自治体の「高度地区」における高さ制限を確認するには、役所公式サイトを調べます。「○○市(自治体名) 高度地区」で検索すると、該当ページが見つかりやすいでしょう。
自治体内の各高度地区の分布を確認する場合は、同じく役所のホームページに公開されている「都市計画情報」「都市計画マップ」などを閲覧します。もしくは、市区町村の都市計画課などの窓口で問い合わせてみましょう。
例として、埼玉県さいたま市の「都市計画情報」のページを引用します。
画像出展:さいたま市|地図情報
ピンクの枠線で囲われているエリアが「最高限度15m地区」、オレンジの枠線で囲われているエリアが「最高限度20m地区」です。
高度地区の分け方が、用途地域の分け方をもとに設定されているのがわかります。
上記のように地域地区情報を一通り記載した表示だけでなく、高度地区の分布のみの地図を表示・閲覧することも可能です。
「既存不適格建築物」なら重要事項説明が必要
「高度地区」の高さ制限の規定は、居住者のニーズや都市計画の変更により、改正されることがあります。そのため、以前に取り扱ったことのある自治体の不動産であっても、案件ごとに毎回確認することが大切です。
また、法令の改正により「既存不適格建築物」となった物件を取り扱う可能性もあります。「既存不適格建築物」の不動産契約においては、現在は不適格となっている旨を重要事項説明により説明し、書面にしなくてはいけません。
住宅ローンにも影響する既存不適格建築物・違反建築物とは何なのか|違いも含めて解説
「高度地区」と「高度利用地区」の違い
「高度地区」と似た名称の地域地区に「高度利用地区」があります。この2つは混同されやすいので、きちんと違いを理解する必要があります。
「高度地区」とは、各自治体がそれぞれの土地の特性に合わせて高さ制限(最高限度または最低限度)を設定している地域地区のことです。
一方、「高度利用地区」とは、現状では道路や街並みなどの整備が進んでおらず、これから高度な機能を備えた都市として発展させていく予定の地域地区のことです。
高度利用地区では、建築物の容積率の限度(最高限度または最低限度)、建ぺい率の最高限度、建築面積の最低限度、壁面の位置制限を定め、高層ビルの建設や道路整備を活性化していきます。
◆「高度地区」と「高度利用地区」の違い
高度地区 | 高度利用地区 | |
「高度」の意味 | 高さのこと | 都市機能のこと |
建築物への制限規定の内容 | 高さ制限(最高限度または最低限度) | 容積率、建ぺい率、建築面積、壁面位置など |
制限の範囲内でお客様の希望を叶える
各自治体の「高度地区」の規定は、建物を建築する際に必ず詳細に確認し、違法建築にならないよう守らなければいけません。細かい規定を守りながら、お客様の希望を最大限に実現するのも、宅建業者の手腕のひとつです。
そのためには、斜線制限を活かしたデザインなど、幅広いケーススタディを行い、日頃から提案アイディアを広げておくといいでしょう
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