不動産売買契約における「手付金」とは|用意する際の注意点3つ
不動産の売買契約においては、あらかじめ「手付金」を支払う必要があります。買主様の中には「内金」や「申込金」と混同されてる場合があるため、正しく理解してもらえるように周知が必要です。
今回は、手付金とは何かと準備をする際の注意点について解説します。
手付金とは
不動産売買における手付金とは、契約の締結時に買主様側から売主様側へ支払う金銭のことです。
契約の成立を前提としての受け渡しであり、本来は売買代金の受け渡しの際に売主様側から返還されます。ただし、現在では手続きを簡略化させるために買主様側が手付金で支払った金額を差し引いた売買代金を支払うことが一般的です。
手付金が必要な理由
売買契約をしてから売主様側に実際にお金を支払うタイミングは引き渡し(決済)のタイミングです。売買契約から決済までの間には住宅ローンの審査等があるため、売主様側にお金が入るのは契約から1~2ヶ月以上後の話になります。
そのため、手付金という形で売買代金を先払いしておくのです。
また、手付金は買主様が契約解除を希望するためには放棄、売主様が契約解除を希望するには倍返しが必要です。
お互いに時間をかけて行う契約だからこそ、キャンセルを発生させないためのお金として手付金が必要なのです。
手付金の種類
手付金は、買主様と売主様、双方の合意によって金額や性質が決められます。
種類としては「証約手付」「違約手付」「解約手付」の3つに分類されます。法的な効力が大きく異なるため、それぞれの手付金の性質の違いについて理解しておく必要があります。
証約手付
証約手付とは、不動産売買の契約が成立したことを証明するための手付金です。
金額は5万円から10万円程度が一般的とされており、売買代金を受け渡すタイミングで売主様から返還されます。
ただし、実際の不動産取引において証約手付が選択されることは稀です。
違約手付
違約手付とは、買主様側に契約不履行(違約)があった場合に没収される罰金のような性質を持った手付金です。
違約手付を支払っても損害賠償金が発生する場合は別で請求されるうえ、賠償金額が違約手付の金額を下回る際は全額が没収されます。場合によっては買主様側に著しく不利な手付のため、こちらも選択されることは多くありません。
解約手付
解約手付は不動産売買における解約権を確保しておくための手付金です。
契約の履行に着手するまでであれば、買主様側から解約する際は解約手付を放棄、売主様側から解約する際は解約手付の2倍の金額を支払うことによって無条件に解約することができます。
契約の履行に着手するまでの解約であれば、仮に解約によって損害を被ったとしても損害賠償金の請求はできません。そのため、契約の履行がいつに当たるかを双方で確実に確認しておくことが重要です。
過去の判例によると、契約の履行の着手とは「客観的に外部から認識できるような形で、契約の履行行為の一部をなしたこと、または履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をしたこと(最判昭40年11月24日)」とされています。
ただ単に売買代金の準備をしただけでは履行の着手とはなりません。買主様側では内金・売買代金の支払い、売主様では登記、物件の引き渡し等が該当します。
また、不動産売買の現場ではトラブルの防止のために、特記事項として手付解除期限の具体的な日付を取り決める場合もあります。
なお、双方で特段の取り決めがされなかった場合、手付金は解約手付であると推定されます。
手付金の金額相場
手付金の金額は売主様・買主様双方の合意によって自由に金額を定めることが可能です。
ただし、キャンセルを防ぐという目的がある事から0円になることはありません。そのため、不動産業者が売主の場合は販売価格の5%を下回る手付金は受け取ってもらえない事がほとんどです。
ただし、会社によっては規約で手付金の下限を設定している場合もあります。その場合、社内の規約と買主様からの申し出を総合的に判断し、手付金の受領を判断することになります。
なお、手付金の相場は一般的に物件価格の5%~10%とされています。また、中古物件の場合の相場は約5%です。
手付金を準備する時の注意点
手付金は、売買契約と同時に支払うものとされています。契約の前に支払ってしまった場合、売主側が倒産や破産をすると取り戻せない可能性があるからです。
そのほか、手付金を支払う際の注意点には以下のようなものがあります。
- 手付金は必ず用意する
- ローンで支払えない
- 必ず現金で支払う
それぞれの詳細について、以下で説明します。
手付金を用意できない時|親からの贈与を検討する
原則として、手付金がない不動産売買が成立することはありません。手付金なしで不動産を売買する場合は現金による一括支払いに限定されることになり、実質的に売買が不可能になります。
手付金を用意できない場合は、買主様の親権者からの贈与を提案します。
基礎控除の110万を超える贈与の場合は贈与税がかかりますが、「直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合の非課税」の適用を受けることで贈与税を払わずに贈与することが可能です。
控除額は契約の締結日と住宅の分類によって変わります。令和2年の4月1日から令和3年3月31日に省エネ住宅の売買契約をした場合は1,500万円、それ以外の一般住宅であれば1,000万円が非課税です。
加えて基礎控除の110万円も控除できるため、省エネ住宅なら1,610万円、一般住宅なら1,110万円までを非課税にできます。
手付金をローンで用意するのはNG
手付金を用意できないとしても、カードローン等でお金を借りて用意することは避けなければいけません。
カードローンで借金をすることによって、住宅ローンの審査に通らなくなる可能性があるからです。
手付金は、必ず買主様の預貯金で用意をしてもらいましょう。
手付金は現金で準備する
手付金は、原則として売買契約の締結と同時に支払うのが原則です。そのため、金額にかかわらず現金でやりとりすることになります。
これは、売買契約のほとんどが平日夜か週末に行われることが要因です。振込にしてしまうと、契約と支払いに時間差が発生してしまいます。
予め現金を準備しておき、現金を持ち歩くことになるため防犯に注意しておくことが大切です。
手付金と申込金の違い
手付金が解約手付である、もしくは解約手付と推定される場合には、契約がキャンセルになっても、買主様の側に手付金が戻ることはありません。
一方の「申込金」は、買主様の手元に預けておく性質のお金です。物件の購入意思の表示のために行うものであり、契約解除権の留保などの機能はありません。そのため、キャンセルになった場合は買主様に全額返金されます。
あわせて読みたい:申込証拠金と手付金は違う|まぎらわしい2つの特徴と注意点を整理
手付金と諸費用の違い
「諸費用」とは、物件の購入以外に必要になる費用のことです。仲介手数料のほか、登録免許税や不動産取得税が該当します。
手付金が住宅価格に対して支払うものであるのに対し、諸費用は住宅価格とは別に支払う必要があります。
まとめ
今回は手付金の概要と役割手付金を準備する際の注意点について解説しました。手付金の性質を理解していないとトラブルに発展する場合があるほか、フルローンを組んでも手付金は現金で支払う必要がある点に注意が必要です。
買主様がスムーズな取引ができるように、手付金についての理解を深めましょう。
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