【注意!?】危ないブロック塀の見分け方や対策|組積造と補強コンクリートブロック造の違い
塀や壁は、プライバシーの確保や防火、防犯などに役立ち、街中のいたるところに見かけます。
しかし、地震による倒壊事例が報告され、近年ブロック塀の安全確保が課題となっています。どうすればブロック塀の危険性を見分けることができるのでしょうか。
今回はブロック塀に代表される塀壁の特徴や危険性を見分けるポイントについて説明します。
塀壁
塀(へい)とは
家や敷地などにおいて他との境界に設置する囲いのことをいいます。区画、目隠し、防火、侵入防止などの目的で設けられます。隙間の多いものは垣と呼びます。塀は連続した壁で、見通すことができません。
壁とは
部屋などを形成するため仕切りとして、垂直に建てられた構造物です。建物の外観を形成している外壁や、内部の仕切りとなる内壁を指すことが多いです。
材料
材料には、石、煉瓦(れんが)、コンクリートがあり、材料により土塀、築地塀、コンクリート塀、ブロック塀などに分類されます。
ブロック塀の種類
ブロック塀は鉄筋の有無で大きく2種類にわかれます。
1つは組積造(そせきぞう)のブロック塀で、もう1つは補強コンクリートブロック塀です。
組積造
組積造は、煉瓦・石材・ブロックなどを積み重ねて造る建築構造です。補強コンクリートブロック造りでも、組積造のものもありますが、「組積造のブロック塀」というときは、鉄筋が入っていないれんが造・石造・鉄筋のブロック造のことをいいます。
組積造のブロック塀は、以下のように定められています。
- 組積造のブロック塀は最高で1.2m(ブロックで6段ほど)までとすること
- 4m以内ごとに控え壁(控え壁)を設置するなどの安全対策を取ること(建築基準法施行例第61・62条の規定より)
補強コンクリートブロック塀
補強コンクリートブロック塀は、コンクリートブロックを組積して鉄筋で補強されているブロック塀です。
補強コンクリートブロック塀は、以下のように定められています。
- 補強コンクリートブロックの塀は最高で2.2m(ブロックで11段ほど)までとすること
- ブロック塀が1.2m超(ブロック6段超)の場合には、3.4m以内ごとに控え壁(ひかえかべ)を設置するなどの安全対策を取ること(建築基準法施行例第61・62条の規定より)
日本のブロック塀の危険性
日本は1960年代以降の高度経済成長期、敷地内部を見通すことのできないコンクリート製のブロック塀が多く設置されました。
しかし、地震によってブロック塀が倒壊する恐れがあることや、外から敷地内が確認できないことによって防犯上の問題があるという懸念がありました。都市の住宅密集地には倒壊の恐れがある老朽化したブロック塀がまだ残されている場合があります。
そこで近年では、ブロック塀を低めに重ねて、その上にアルミ製のフェンスを設置した塀が多くなっています。
安全なブロック塀とは
安全なブロック塀は、以下の項目を満たしている必要があります。
項目 | 内容 | |
1 | 鉄筋コンクリートの基礎が設けられている | 基礎の不適正なものは、わずかな力が横から加わるだけでも倒れてしまいます。そのため、T形、L形の形状の基礎にし、抵抗力を向上させる対策が必要です |
2 | 基礎が地中深く根入れされている | 日本建築学会の規定で、40㎝以上根入れすることが定められています |
3 | 地盤は基礎からの転倒に抵抗できる | 抵抗力の大きな地盤は、スコップで掘るのが困難です |
4 | 縦方向の鉄筋が適正に配置されている | ブロック塀は、必要な鉄筋間隔が日本建築学会の規定で定められています |
5 | ブロックが強く適正な厚さである | ブロック塀は、高さにより必要な壁の厚さが日本建築学会の規定で定められています |
6 | ブロックにひび割れや欠けなどの損傷がない | 外観の損傷は、性能の低下を表します |
7 | 壁体に傾きやぐらつきがない | 自立構造物では、傾きやぐらつきは倒壊に結び付く致命的な現象です |
危ないブロック塀とは
危ないブロック塀の特徴
危ないブロック塀とは、以下の特徴があります。
- 傾きやぐらつきがある
- ひび割れがある
- 高さが高すぎる
- 控え壁の間隔が広すぎる、また控え壁がない
- 透かしブロックが連続して使用されている。または多すぎる
- 築30年以上たっている。またはブロックがボロボロである
- 石垣などの上に立っている
- 土留めに使っている
なぜ危ないブロック塀が多いのか
・「軽微な建設工事」は、建設業の許可を得る必要がない
建設業法上ブロック塀の設置などの500万円未満の「軽微な建設工事」は、建設業の許可を得る必要がありません。建設業の許可を得るには、実務経験や資格などの要件を満たす必要がありますが、500万円未満の工事であれば誰でも施工できてしまうことが理由の1つと考えられます。
・ブロック塀を単独で造る場合は役所への届出は必要ない
建設業の許可がなくても、建築基準法を守らなければならないことに変わりはないですが、家屋など建物を新築、大規模修繕した場合と違い、ブロック塀を単独で造る場合は、届出を提出しなくても造ることができてしまいます。行政が建築基準法を守っているか、塀の安全性が保たれているか確認する機会がほとんどないことが理由に挙げられます。
・基準に満たないまま放置されている
1981年に制定された改正基準法では、ブロック塀の高さ(2.2m)や控え壁の設置について定められました。実情として、それ以前に作られた現在の基準を満たさないまま放置されている「既存不適格」のブロック塀が多く残っています。
学校のブロック塀の緊急調査の結果
2018年8月10日、文部科学省が緊急調査を行っています。
調査の結果、全国の幼稚園や小中学校、高校などのうち安全性に問題のあるブロック塀があるのは12,640校であることがわかりました。これは、ブロック塀を設置する学校(19,389校)の約6割にのぼります。
学校は安全性を重視されて造られていますが、それでも6割に問題があるということは、それ以外の住宅や工場などのブロック塀はもっと問題がある可能性が高いと考えられます。
ブロック塀の安全対策について
国土交通省は、ブロック塀の安全確保対策として、以下の対策を挙げています。
出典:国土交通省
ブロック塀の点検チェックポイント
組積造のブロック塀
ブロック塀について、次の項目を点検し、1つでも不適合があれば危険なので改善しなければなりません。まず、外観で1~5をチェックし、1つでも不適合がある場合やわからないことがあれば、専門家に相談しましょう。
- 塀の高さは地盤から1.2m以下か
- 塀の厚さは十分か
- 塀の長さ4m以下ごとに、塀の高さの1.5倍以上突出した控え壁があるか
- 基礎があるか
- 塀に傾き、ひび割れはないか
- 基礎の根入れ深さは20㎝以上か
出典:国土交通省
補強コンクリートブロック塀
補強コンクリートブロック塀については、次の項目を点検し、1つでも不適合があれば危険なので改善しなければなりません。まず、外観で1~5をチェックし、1つでも不適合がある場合やわからないことがあれば、専門家に相談しましょう。
- 塀の高さは地盤から2.2m以下か
- 塀の厚さは10㎝以上か(塀の高さが2m超2m以下の場合は15㎝以上)
- 塀の高さが1.2m超の場合、塀の長さ3.4m以下ごとに、塀の高さ1/5倍以上突出した控え壁があるか
- コンクリートの基礎があるか
- 塀に傾き、ひび割れはないか
- 塀の中に直径9㎜以上の鉄筋が、縦横とも、80㎝間隔以下で配筋されており、縦筋は壁頂部および基礎の横筋に、横筋は縦筋にそれぞれかぎ掛けされているか。また、壁の高さが1.2m超の場合、基礎の根入れ深さは30㎝以上か
出典:国土交通省
出典:国土交通省
調査のポイント
調査の際、現地で確認するポイントは以下の通りです。
外観
- 高すぎないか(組積造は1.2m以下、補強コンクリートブロックは2.2m以下)
- 厚さは十分か(組積造は壁頂までの距離1/10以上、補強コンクリートブロック造は10㎝以上)
- 控え壁があるか(組積造は4以下ごとに壁の厚さの1.5倍以上突出した控え壁、補強コンクリートブロック造は3.4m以下ごとに塀の高さの1/5以上突出した控え壁を設ける)
- 基礎があるか
- 老朽化し亀裂が生じたり、傾き、ぐらつきなどが生じていないか
内観
補強コンクリートブロック造の場合、外観点検で問題が発見されたときは補修方法を検討する必要があるためブロックを一部取り外すことがあります。その際は、建築士・専門工事業者などの専門家に診断してもらうことになります。
- 鉄筋の接合方法、モルタルの充填状況は建築基準法に施行令第62条の6に照らして適切か
- 鉄筋のピッチ及び定着状況は、建設基準法施行令第62条の8に照らして適切か
- 基礎の根入れの深さは、建築基準法施行令第62条の8に照らして適切か
検査費用
ブロック塀の強度や耐震性の検査費用は、国や自治体が補助金制度を設けている場合があります。各自治体に確認してみましょう。
検査費用は数万円、改修や費用には数十万円かかるのが相場です。
まとめ
■ブロック塀の種類
- 組積造:煉瓦・石材・ブロックなどを積み重ねて造る建築構造
- 補強コンクリートブロック塀:コンクリートブロックを組積して鉄筋で補強されているブロック塀
ブロック塀の特徴や見分けるポイントについて説明しました。
少しでもおかしいと思ったら調査が必要です。ブロック塀の検査には各自治体の補助金制度もあるため、安全を確保するためにも積極的に活用し調査をしたほうが良いでしょう。
取り返しのつかない事態を未然に防ぐために、取り扱い物件の塀の点検は行っていきましょう。
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