「共同担保目録」とは何かわかりやすく解説|登記簿謄本の見方や全部抹消も紹介
不動産の売買をする際に、登記簿謄本(登記事項証明書)の内容が理解できない担当者が多いです。
恐らく「登記簿謄本を見たこともない」という方ばかりだと思います。
共同担保目録や抵当権といった権利関係は、不動産専門用語が複雑に並べられているので、難しい用語を理解するところから始めることになります。
この記事では、不動産売買に関する、不動産登記においての共同担保目録や抵当権などを分かりやすく説明します。
共同担保目録とは|わかりやすく説明
不動産登記においての共同担保目録とは何かを分かりやすく説明します。
共同担保目録とは何かを理解するために、必要な抵当権を説明した後に共同担保目録を説明します。
抵当権とは
抵当権とは、お金の貸し借りで、借り主側の不動産を担保(たんぽ)として設定する権利のことです。
例えば、住宅ローンを組むときや、銀行からの借金の担保として土地や建物などの不動産に抵当権を設定します。
お金を借りた側が返済できなくなった場合、借り主側の不動産に抵当権が設定されていると、貸主が裁判所に申し立てて、担保になっている不動産を競売にかけます。
競売で売却した不動産のお金から、抵当権を持っている貸主が、優先的に貸したお金を回収できます。
抵当権は、登記簿謄本に記録されます。また、不動産登記は「一不動産一登記」が原則です。
共同担保目録とは
共同担保目録とは、一つの債権の担保に対して、複数の不動産を抵当権として登記記録する際に添付される目録のことです。
一つの債権の借金額が高い場合、共同担保として複数の不動産に抵当権を設定します。貸主側の担保額を確保するためです。
共同担保目録が含まれる登記簿謄本は4部構成
共同担保目録が記載されている登記簿謄本は4部構成になっています。
登記簿謄本とは、不動産登記の記録がまとめられた用紙に、法務局の印鑑が押された公的証明書のことです。
- 「表題部」
- 「権利部(甲区)」
- 「権利部(乙区)」
- 「共同担保目録」
の順番で記載されています。
記載内容は、不動産の状態や所有者情報、抵当権設定の有無は登記簿謄本を確認すれば把握できます。
登記簿謄本に記載されている内容と見方を記載される順番で説明します。
表題部の見方
画像引用:法務局 登記事項証明書(様式例:土地)
登記簿謄本の表題部には、不動産を特定するための基本情報が記載されています。
表題部は、土地と建物で記載されている項目が異なります。
土地
不動産登記法第34条「土地の表示に関する登記の登記事項」による、土地の表題部に記載されている内容を説明します。
- 所在:土地が所在している市区町村が記載されています。
- 地番:土地固有の番号のことです。所在と地番で土地の場所を特定します。
- 地目:土地の使用用途のことです。宅地や山林、公園など23種類に分かれています。
- 地積:土地の面積のことです。
- 原因及びその日付[登記の日付]:土地が登記された原因とその日付のことです。
- 所有者:土地の所有者が記載されています。
建物
不動産登記法第44条「建物の表示に関する登記の登記事項」による、建物の表題部に記載されている内容を説明します。
- 種類:建物の仕様用途が記載されています。居宅や事務所、工場など23種類に分かれています。
- 構造:建物の構造が記載されています。構造は「構成材料、屋根の種類、回数」の順番です。
- 床面積:建物の各階における床面積が記載されています。
権利部(甲区)の見方
画像引用:法務局 登記事項証明書(様式例:土地)
登記簿謄本の権利部(甲区) には、所有権に関する内容が記載されています。過去から現在までの建物所有者が確認できます。
- 順位番号:建物の所有者として登記された順番が記載されています。
- 登記の目的:建物の所有権を登記した目的が記載されています。
- 受付年月日・受付番号:登記申請が出された年月日と、毎年1月1日から法務局で何番目に登記受付されたか記載されています。
- 権利者その他の事項:所有権の登記申請をした人の氏名や住所、原因が記載されています。
権利部(乙区)の見方
画像引用:法務局 登記事項証明書(様式例:土地)
登記簿謄本の権利部(乙区) には、所有権「以外」の権利に関する内容が記載されています。
権利部(乙区)を見れば、共同担保目録として抵当権が設定されているか確認できます。
- 原因:いつ誰がどんな理由で所有権以外の権利の登記申請したか記載されています。
- 債務額:貸し借りをした金額が記載されています。
- 利息借り:主が貸し主に支払う利息が記載されています。
- 損害額:借り主の返済が期日に間に合わない場合に発生する損害額が記載されています。
- 債務者:借り主の住所と名前が記載されています。
- 抵当権者:貸し主の住所と名前が記載されています。
- 共同担保:共同担保目録の番号が記載されています。
共同担保目録の見方
画像引用:法務局 登記事項証明書(様式例:土地)
共同担保目録には、抵当権が設定されている複数の不動産が記載されています。
- 記号及び番号:登記申請の受付をした番号が記載されています。
- 番号:抵当権が設定されている不動産に割り当てられた番号が記載されています。
- 担保の目的である権利の表示:債務の担保として抵当権が設定されている不動産の所在や地番、家屋番号が記載されています。
- 順位番号:登記が行われた順番です。若い順位番号の抵当権者が優先的にお金を回収できます。
共同担保目録がある場合は権利部(乙区)に番号が記載される
権利部(乙区)に共同担保の番号が記載されている場合、共同担保目録が添付されています。
共同担保の番号は、ひらがなと数字で割り当てられていて、共同担保目録の番号と符号しています。
一つの債権に対して複数の不動産に抵当権が記載されていない場合は、共同担保目録が添付されません。
共同担保目録における順位番号とは
共同担保目録に記載されている番号は、抵当権の順位を表しています。
抵当権が実行されて不動産が競売にかけられた場合、順位が若い抵当権者が優先的にお金を回収できます。
共同担保目録を手に入れる方法
共同担保目録は、大きく分けて3つの方法で入手できます。
オンラインで登記簿謄本(登記事項証明書)を請求する方法
法務局の「登記・供託オンライン申請システム」というオンラインサービス使って、登記事項証明書を取得できます。
①「登記・供託オンライン申請システム」にアクセス
②必要事項をオンライン上で入力する
③受け取り方法を郵送または窓口から選ぶ
オンライン上で登記簿データをPDFで取得する方法
法務局の「登記情報提供制度」というサービスがあります。このサービスを使って、オンライン上で登記簿データをPDFで取得できます。
①「登記情報提供サービス」にアクセス
②必要事項をオンライン上で入力する
③登記情報をPDFで取得する
法務局で登記簿謄本(登記事項証明書)を請求する方法
登記所または法務局の証明センター窓口でも、登記事項証明書を取得できます。
①法務局の窓口に直接出向く
②登記事項証明書交付請求書を窓口で入手する
③必要事項を記入して、窓口で登記情報を取得する
取得する際の注意点
登記事項証明書を取得する際に注意点があります。
「共同担保目録が必要」と指定しないと、目録が添付されていない登記事項証明書が発行されてしまいます。
オンラインや窓口で取得する際には、共同担保目録を「要」にして請求してください。共同担保目録を請求しても料金に変更はありません。
不動産を売買する前に共同担保目録(抵当権)の抹消が必要
不動産を売買する前に共同担保目録(抵当権)の抹消が必要です。
売買はできますが、抵当権がついている不動産は買われにくいからです。また、抵当権がついたままだと、不動産の売買契約がスムーズに進まなくなります。
また、債務の残額がある場合は、金融機関と返済時期や返済方法を決めておきましょう。
債務の返済が完了している場合、登記事項証明書に記載されている抵当権は自動で抹消されません。法務局で抵当権抹消登記手続きをおこなう必要があります。
抵当権抹消登記に必要な書類と手続き
抵当権抹消登記は必要書類を揃えて、法務局で手続きをおこないます。
申請者が用意するものは、抵当権抹消登記申請書のみです。
金融機関が用意するものは複数あります。
- 弁済証書
- 登記済証または登記識別情報
- 登記事項証明書
- 委任状
申請書が用意する「抵当権抹消登記申請書」は法務局にあります。または、法務局のホームページからダウンロードして事前に準備できます。
抵当権抹消登記申請書
画像引用:法務局 抵当権抹消登記申請書
抵当権抹消登記申請書とは、土地や建物に設定された抵当権の抹消登記を申請する書類です。
法務局のホームページから申請書をダウンロードして、パソコンまたは手書きで記入します。
しかし、個々のケースによっては記載が異なります。訂正方法にも決まりがあるので、事前に司法書士や法務局に確認してください。
登記原因証明情報
登記原因証明情報とは、債務の完済後に金融機関が用意する「弁済証書」です。
登記原因が登記官にわかるように、抵当権抹消登記申請書と合わせて登記原因を証明する書類の提出が必要です。
登記識別情報・登記済証
登記識別情報または登記済証とは、抵当権設定登記の際に交付される「登記識別情報通知」や登記済であることが証明できる「抵当権設定契約書」のことです。
金融機関に本人確認のため登記識別情報を預けますが、債務を完済すると返却されます。
会社法人番号
会社法人等番号とは、金融機関の商号や代表取締役の名前が書かれた資格証明書です。
以前は抹消するための書類に、資格証明書の添付が必要でした。
ただ、平成24年11月から、抵当権抹消には会社法人等番号のみ記載で問題ないです。
会社法人等番号は、債務の完済後に金融機関から郵送されます。
委任状
抵当権抹消登記は、原則、抵当権者と共同申請です。ただし、抵当権者である金融機関が、登記申請を委任するための委任状を発行すれば、登記申請は借り主のみでおこなえます。
まとめ
抵当権とはなにか、共同担保目録とはなにか、登記簿謄本(登記事項証明書)の内容や見方、抵当権抹消登記について紹介しました。
最後に記事内容の中で重要なポイントをおさらいします。
- 抵当権とは、お金の貸し借りで、借り主側の不動産を担保(たんぽ)として設定する権利のことです。
- 共同担保目録とは、一つの債権の担保に対して、複数の不動産を抵当権として登記記録する際に添付される目録のことです。
- 共同担保目録の見方は「記号及び番号」「担保の目的である権利の表示」「順位番号」
- 登記簿謄本(登記事項証明書)は4部構成になっていて、オンラインや窓口で取得できます。
- 債務を完済した場合、登記簿謄本(登記事項証明書)に記載されている抵当権は自動で抹消されません。法務局で抵当権抹消登記手続きをおこなう必要があります。
- 不動産の抵当権抹消登記するためには手間と時間がかかります。
- 不動産売却前に抵当権抹消ができない場合、買い主が見つからず売買契約が遅れてしまう可能性があります。
不動産売買に関する内容を理解しやすくするために、上記でご紹介した6つの重要なポイントは憶えておきましょう。
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