「防火地域」の建築基準・制限を解説|耐火構造と適用すべき建物とは
建築物にはさまざまな法律規制がかけられています。建築物の居住者や使用者・周辺住民が安全に生活するためには、細かい法令をすべて遵守する必要があります。
今回取り上げる「防火地域」や「準防火地域」も建築物における規制のひとつで、市街地の不動産を担当する際には知っておくべき知識です。
それぞれにどんな建築制限があるか、しっかり確認しましょう。
「防火地域」「準防火地域」とは
「防火地域・準防火地域」は、市街地における火災を防ぎ、火災の危険を取り除くための地域で、「都市計画法」に定められています。
「防火地域」は、市街地において最も火災の危険度が高い地域として、駅前や建物の密集地などに多く設定されています。
そして「準防火地域」は、防火地域に次いで危険度が高い地域として、防火地域の周辺に多く設定されるエリアです。
防火地域・準防火地域に建物を建築する場合には、それぞれ建築基準法に定められた建築制限に従う必要があります。
「防火地域」「準防火地域」の建築基準・制限
防火地域・準防火地域の建築制限は、「地域」「建築物の延べ面積」「階数」に応じて決められています。
最も制限の厳しい「耐火建築物」には、「耐火構造」を適用する必要があります。
次に厳しい「準耐火建築物」には、「準耐火構造」の適用が求められます。
続いて「一定の防火措置」「防火構造」と基準が緩和されます。
画像出展元:国土交通省ホームページ
「耐火構造」の条件は、主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根、階段)が、通常の火災が終了するまでの間、建築物の倒壊・延焼を防止するために必要な構造であることです。
例えば、政令で定める技術的基準に適合する鉄筋コンクリート造・れんが造などが該当します。
「準耐火構造」は、主要構造部が通常の火災による延焼を抑制するために必要な構造であるとされています。
こちらは、主要構造部を耐火被覆するなどの基準を満たせば、木造でも可能です。
耐火建築物・準耐火建築物とも、延焼のおそれのある外壁の開口部には、防火戸など遮炎性能を有した防火設備を適用しなければいけません。
また「防火構造」とは、建築物の外壁・軒裏の構造において、周囲で発生する通常の火災による延焼を抑制するために必要な防火性能を備えていることを言います。
例えば、政令で定める技術的基準に適合する鉄網モルタル塗・しつくい塗などが該当します。
特殊建築物について
建築物の用途に特殊性がある場合には、それぞれに一定の耐火基準が定められています。
画像出展元:国土交通省ホームページ
防火地域・準防火地域のメリットデメリット
防火地域・準防火地域は、建築方法などに多くの制限がかかりますが、火災保険で割引を受けられるなどのメリットもあります。
そこで、防火地域・準防火地域のメリット・デメリットをまとめました。
防火地域・準防火地域のメリット
- 駅前など利便性が高く需要の多い地域である。
- 建ぺい率の緩和を受けられる。防火地域・準防火地域の「耐火建築物」「準耐火建築物」の建ぺい率を10%緩和)
- 火災保険で割引を受けられる。(住宅金融支援機構が定める基準(建築基準法の準耐火建築物相当)に適合する住宅)
防火地域・準防火地域のデメリット
- 耐火性能のある建材を使用するなど建築費が割高になる。
- 建築方法など規制が多くデザインが制限される。
お客様の安全性が第一
建築基準法などの法律を遵守することは、不動産業者として最低限の条件です。
デザイン性の高い建築物をプロデュースしてお客様を喜ばせることも大切ですが、違法建築物であっては意味がありません。
お客様の要望であっても、デザインや費用面を優先して法律外の施行をすることは絶対にやめましょう。
お客様の安全性が脅かされるだけでなく、発覚した場合に担当者や会社の信用も落とすことになります。
また、2019年に準耐火建築物の建ぺい率が緩和されたように、建築や不動産に関する法律は日々アップデートされています。
常に最新の正しい情報を持つように心がけましょう。
不動産営業実務マニュアルに興味がある方は下記の記事をご覧ください。
不動産業務実務の基本に興味がある方は下記の記事をご覧ください。
不動産業務実務の基本関連記事