心裡留保の意思表示・公序良俗に反する契約は無効か|民法を社会常識で推量

投稿日 : 2020年03月05日


契約の意思表示の中には、周囲が眉をひそめるような類のものがあります。

例えば公序良俗に反する内容の意思表示、そしてウソや冗談による心裡留保(しんりりゅうほ)の意思表示です。

今回はこの2つについて、民法ではどのように規定しているかを確認しましょう。

kobayashi

この記事の監修者:
平山 和歌奈
宅建スペシャリスト

不動産会社や金融機関にて、ローンの審査業務、金消・実行業務などに従事。その過程で、キャリアアップのため自主的に宅建の取得を決意。試験の6ヶ月前には出勤前と退勤後に毎日カフェで勉強、3ヶ月前からはさらに休日も朝から閉館まで図書館にこもって勉強。当日は37℃の熱が出てしまったが、見事1発で合格した。現在はiYell株式会社の社長室に所属。

 

宅建受験者はここをチェック!

 

「心裡留保」「公序良俗に反する契約」の試験科目

権利関係

「心裡留保」「公序良俗に反する契約」が含まれる試験分野

意思表示

「心裡留保」「公序良俗に反する契約」の重要度

★ ☆ ☆ ☆ ☆  基本だけ押さえておきましょう

「心裡留保」「公序良俗に反する契約」過去10年の出題率

0%

 

2020年宅建試験のヤマ張り予想

心裡留保に関しても公序良俗に反する契約に関しても、過去10年の宅建試験では一度も出題されていません。そのため、2020年度の試験でも出題される可能性は極めて低いと考えられます。

 

「心裡留保」「公序良俗に反する契約」の解説

心裡留保による契約とは、また、公序良俗に反する契約とはどのような契約なのでしょうか。

 

心裡留保(しんりりゅうほ)とは

心裡(しんり)には以下の意味があります。

心の中。心中。

引用:三省堂 大辞林 第三版

 

そして心裡留保とは、真意でないにも関わらず行う意思表示のことです。ウソや冗談で何かを提示することは、この心裡留保にあたります。

不動産で例えれば「この家をタダでお前にやる!」と誰かに言ったとしたら、それが笑い話の冗談だとしても、契約の意思表示をしたものとして扱われます。

 

意思の欠缺(けんけつ)・意思の不存在

内心の気持ち(意思)と対外的な表示行為が一致しない意思表示のことを意思の欠缺、または意思の不存在と言います。

民法上で意思の欠缺(意思の不存在)とされる意思表示は、心裡留保に加えて虚偽表示・錯誤があります。

 

 

公序良俗(こうじょりょうぞく)に反する契約とは

公序良俗とは「公の秩序と善良の風俗」の略称です。簡単に説明すれば、社会的な道徳観・倫理観のことです。

 

つまり公序良俗に反する契約とは、社会的に見て道徳・倫理に反する内容の契約を意味します。

 

何が公序良俗に反するか

民法で公序良俗に反する規定がなされたのは明治29年ですので、当時の通念であった公序良俗と現代の公序良俗とは異なっている点が多くあります。

社会通念は時代に応じて移り変わるため法律上の規定はなされていませんが、現在では一般的に、以下の基準が設けられています。

 

財産秩序に反する行為 ギャンブル・ネズミ講など
倫理的秩序に反する行為 売春・愛人契約など
自由や人権を侵害する行為 差別的な行為など

 

 

心裡留保・公序良俗に反する契約は有効か無効か

心裡留保による契約の場合、契約は有効です。「あれは冗談だったから」では済まされません。

心裡留保で契約の意思表示をして、承諾者が同意した後で取り消しをしたいと願っても取り消すことはできません。

ただし例外として、相手の方でも表意者が冗談を言っていることに気付いている(悪意)の場合には、契約は無効にできます。

対して公序良俗に反する契約の場合には、契約は例外なく無効になります。

例えば「土地をあげるから愛人になれ」といった意思表示をされた場合には、その契約を履行するには「愛人になる=倫理に反する行為をする」必要があるため、そのような行為をしないように法律がきちんと保護しています。

 

善意の第三者との関係

心裡留保による契約・公序良俗に反する契約で第三者が関係してきた場合にも、上記の考え方が踏襲されます。

心裡留保で契約が有効になっている場合はもちろんのこと、もし相手方の悪意で契約が無効になっていたとしても、善意の第三者に対抗することはできません。これは善意の第三者に過失があるかどうかは関係がありません。

対して公序良俗に反する契約の場合には、善意の第三者にも対抗ができます。

何よりも守るべきなのは社会的な倫理・道徳であると考えると、誰を守るべきなのかがはっきりするのでわかりやすいですね。

 

「心裡留保」「公序良俗に反する契約」に関連する法律

 

この項目に関連する法律は以下のとおりです。公序良俗に関連する不法な契約に関する法律も、参考までに掲載します。

 

民法 (令和2年3月1日時点)

第93条(心裡留保)

意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

【改正後】

第93条(心裡留保)

意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

2 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

 

第90条(公序良俗)

公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。

【改正後】

第90条 (公序良俗)

公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

 

第132条(不法条件)

不法な条件を付した法律行為は、無効とする。不法な行為をしないことを条件とするものも、同様とする。

 

「心裡留保」「公序良俗に反する契約」ポイントのまとめ

この項目で押さえておくべきポイントは以下のとおりです。

  1. 心裡留保の意思表示による契約は有効
  2. 表意者の心裡留保について相手方が悪意であれば契約は無効
  3. 公序良俗に反する契約は無効
  4. 心裡留保による契約では善意の第三者に対抗できない
  5. 公序良俗に反する契約では善意の第三者にも対抗できる

 

最後に

今回は心裡留保による契約・公序良俗に反する契約について解説しました。どちらも一般常識を考えれば結論が推測しやすいので、比較的わかりやすい内容だったかと思います。

この2つは、宅建の試験問題としては出題頻度が少ない項目です。しかし過去10年出題されなかったからと言って、今年度も出題されないとは確実には言い切れません。

また、試験に出る・出ないに関わらず、宅地建物取引士として働く上では必ず知っておかなければいけない知識のひとつです。

宅建の過去問にないからと後回しにせず、基本的な知識として覚えておきましょう。