「特定都市河川浸水被害対策法」とは何かわかりやすく解説

投稿日 : 2019年11月28日/更新日 : 2023年04月10日

昨今、大型台風やゲリラ豪雨により、都市部にも甚大な被害が及んでいます。

災害対策として、「特定都市河川浸水被害対策法」「浸水被害対策区域制度」が設けられています。

これらの法律は、建設への規制や義務を含むため、不動産業者にとって確認すべき知識です。

 

特定都市河川浸水被害対策法について

「特定都市河川浸水被害対策法」とは、都市部を流れる河川の流域において、著しい浸水被害が発生し、またはその恐れがあるにもかかわらず、河道等の整備による浸水被害の防止が市街化の進展により困難な地域について、「特定都市河川流域」として指定する制度です。

この「特定都市河川流域」の指定により、流域内の住民・事業者は雨水を貯留浸透させる努力義務があります。また、雨水浸透阻害行為を行う場合は、あらかじめ東京都の許可が必要です。

 

雨水浸透阻害行為の許可について

雨水浸透阻害行為とは、「宅地等」にするために行う土地の改変など、雨水が浸透しやすい土地から雨水が浸透しにくい土地へと浸透機能が阻害される行為をいいます。

 

◆雨水浸透阻害行為に該当するもの

  • 土地の形質を山林や耕地などから宅地や道路・水路などへ変更する
  • 舗装していない土地を舗装する
  • 排水施設を伴うゴルフ場・運動場等の新設・増設
  • 締め固めていない土地をローラー等により締め固める

 

特定都市河川流域において雨水浸透阻害行為を行う際には、以下のような手続きにより許可を取得する必要があります。

 

◆雨水浸透阻害行為の許可申請

  1. 都道府県庁の窓口にて事前相談を受ける。
  2. 雨水の流出を抑制する対策を定めた計画を作成する。
  3. 「雨水浸透阻害行為」許可申請書を提出し、許可を取得する。

 

「浸水被害対策区域制度」とは

「浸水被害対策区域制度」とは、頻発する局地的な大雨などに対して、公共下水道の整備のみでは浸水被害の防止をすることが困難な地域において、官民連携による浸水対策を推進していく必要がある区域を指定する制度です。

 

これは、平成27年の下水道法改正で、新たに規定されました。

これは、公共用地の地下に雨水貯留施設などを整備しようとしてもスペースに限界があるため、民間の所有する土地の地下にも整備していこうとするものです。

「浸水被害対策区域」においては、民間企業などが建築などで設置する排水設備に対して、雨水貯留浸透機能の整備を義務付けています。また、公共の下水道管理者がその排水設備を管理することが可能です。

 

「特定都市河川区域」内にある物件の取り扱い

「特定都市河川区域」内の物件は、浸水被害を受けやすいと指定されている分、不動産価値は下落しやすい傾向にあります。

また、担当した不動産が「特定都市河川区域」にある場合は、その旨を買主様・借主様へ説明し、重要事項説明書を交付する必要があります。

 

浸水被害の可能性を調査する方法

国土交通省では、洪水・浸水想定区域を公開しています。

その情報は、「ハザードマップポータルサイト」で閲覧することが可能です。担当する不動産の取引を始める際には、必ず確認するようにしましょう。

 

お客様にリスクを充分に説明する

「特定都市河川区域」「浸水被害対策区域」は、洪水・浸水被害の危険度が他地域より高いことを示すマイナス要素と言えます。

しかし、買主様にとって割安で不動産を取得できる可能性も含んでいます。

リスクを十分に説明すれば納得するお客様もいることに留意し、客観的で正しい知識を身につけましょう。

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。