登記事項要約書とは何か|項目・請求方法・費用を登記事項証明書と比較
土地や建物の情報を調べるために法務局に行く際には、自分が何の書類を取得すべきなのかをあらかじめ把握しておく必要があります。
登記事項証明書にも全部事項証明書・現在事項証明書・履歴事項証明書などいくつもの種類があり、自分の目的に見合うのはどの書類かが分からないと請求することもできません。
また、法務局で取得できる書類の中には、要約書(ようやくしょ)という書類もあります。
要約書と登記事項証明書とはどこが違い、どんなときに使うのかその違いを中心に詳しく解説します。
要約書とは「登記事項要約書」の略称です
要約書とは登記事項要約書の略称です。
その名のとおり登記事項を要約したもので、不動産登記の内容の一部が確認できます。
かつて登記用紙が紙で作られていた時代には、土地や建物の不動産情報は登記所内の所定の場所で閲覧できていました。しかし現在ではほとんどの登記情報がデジタル化されているため、紙ベースでの閲覧ができなくなっています。
データの一部分だけでも閲覧したいという希望者のニーズに応えるため、登記事項要約書が発行されるようになりました。
登記事項証明書との違い
要約書は登記事項証明書と比べて、記載される内容が少なくなっています。詳しい項目については後述しますが、簡単に説明すれば要約書は「現在の状況」だけが確認できるものであり、その点が過去の履歴までさかのぼれる登記事項証明書と異なります。
また、登記事項証明書は日本全国のどこの法務局でも請求できますが、要約書はその土地や建物の所在地を管轄している法務局でしか請求できません。
つまり登記事項証明書ではなく要約書を請求するのは「区域内の管轄法務局にすぐ行けて、対象不動産の現在の状況さえ分かれば良い」ときです。
要約書(登記事項要約書)を取得するメリット
登記事項証明書ではなく要約書を取得するメリットは、取得費用の安さです。
法務局で登記事項証明書を請求すると印紙代が600円かかります。それに対して要約書の請求にかかる印紙代は450円で済みます。
わずか150円の差ではありますが、日々いくつもの物件を取り扱う不動産業者にとってみれば、150円ずつの節約は積もり積もって大きな差益を生み出せます。
要約書(登記事項要約書)の記載項目
要約書には以下の項目が記載されています。
- 不動産の表示に関する事項(所在,地番,地目,地積,家屋番号,床面積など)
- 現在の所有者の住所,氏名及び申請書受付の年月日,受付番号
- 甲区(所有権に関する事項欄),乙区(所有権以外の権利に関する事項欄)のうち、現在効力を有しているものの主な登記事項
例:差押,仮差押など…債務者の住所,氏名
抵当権…債権額,抵当権者の住所,氏名
根抵当権…極度額,根抵当権者及び債務者の住所,氏名
要約書では確認できない項目
要約書では、対象不動産の過去を知ることができません。
現在の所有者になる前は誰が所有者だったか、権利関係がどのように移行されてきたのかを知るには、登記事項証明書を確認する必要があります。
また現在の所有者に関しても、その所有者に所有権が移転した「理由」を知ることはできません。
要約書(登記事項要約書)の見方
サンプルを元に、要約書の見方を確認してみましょう。
土地の登記事項要約書は以下のような体裁(部分)がとられています。土地ではなく建物の登記事項要約書でも同じ書式が使われています。
要約書の項目は「表題部」「権利部所有権」「権利部甲区(乙区)」に分かれています。
「表題部」には不動産の表示に関する事項が記載されています。所在地および土地の地番・種類・面積、建物の家屋番号・種類・構造・床面積などが確認できます。
「権利部所有権」では現在の所有者の住所・氏名が確認でき、表示登記申請書の受付年月日および受付番号も確認できます。
「権利部甲区(乙区)」では土地建物の所有権および所有権以外の権利に関する登記情報について、現時点で効力があるもののみ記載されています。所有権以外の権利とは、具体的には抵当権や根抵当権などの担保設定などを指します。
要約書(登記事項要約書)の請求方法
要約書は誰でも取得できます。提出時に身分証明書の提示や、請求書への捺印は不要です。
取得するときは管轄の法務局に出向き、印紙を貼付した登記事項要約書交付請求書を窓口に提出します。
土地の要約書を請求するときには「地番」、建物の要約書を請求するときには「家屋番号」を請求書に記載します。また特定の共有者に関する部分のみを請求するときには、共有者の氏名等も記載してください。
画像引用:名古屋法務局|登記事項要約書交付閲覧申請書(部分)
要約書(登記事項要約書)の手数料
要約書の取得費用は1通につき450円です。登記記録の枚数が50枚を超えるときには、超える枚数が50枚ごとに50円加算されます。
支払いは現金ではなく収入印紙での納付となります。収入印紙は法務局内の印紙売り場で購入するか、郵便局や大手コンビニエンスストアでも購入できます。
オンライン請求・郵送請求は可能か
要約書をインターネットでオンライン請求することはできません。また、郵送で請求書を送っても受け付けられません。
これは要約書が、従来の法務局内閲覧制度に代わり誕生した経緯によるものです。
紙ベースで要約書を取得することはできないものの、財団法人民事法務協会が提供する「登記情報提供サービス」を利用すれば、地番や家屋番号から同じ情報を見ることができます。
厳密には登記情報提供サービスで閲覧できるのは不動産の全部事項や所有者事項などなので要約書自体は閲覧できませんが、情報を得るための手段として覚えておくと良いでしょう。
要約書(登記事項要約書)を取得するときの注意点
法務局で登記事項要約書を取得するときには、あらかじめ要約書の特性について理解しておきましょう。
- 登記事項要約書には法的な証明力がないため、所有権の証明等のために利用することはできない。
- 過去の履歴は確認できない。過去に設定されて現在は抹消済の抵当権なども確認できない。
- 抵当権設定がある不動産でも、債務の残高が今いくらなのかは確認できない。
- 登記事項要約書はあくまでも現在登記されている情報を要約したものなので、土地の種類や面積・建物の種類や構造・床面積などの実際の状況と必ずしも一致しない可能性がある。
まとめ
今回は法務局で取得できる書類のひとつである要約書について解説しました。
要約書が何なのか、また何が確認できるのかがわかれば、登記事項証明書ではなく登記事項要約書を取得するシーンや取得したときの利点がはっきりします。また「要約書ではわからないこと」を知っておけば、不適切な書類を請求して無駄な経費を使うリスクも避けられます。
コストカットは、会社の利益を生むために必要な手立てです。全ての不動産営業マンは、売上を上げる努力はもちろん全力で行いながら、経費削減の手段も考えて会社全体の利益を上げる努力も行いましょう。
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