【注意!?】切土(きりど)・盛土(もりど)とは何か|違いや見分け方と一緒に解説

投稿日 : 2020年03月15日/更新日 : 2023年04月10日

切土や盛土という言葉をご存知でしょうか。

日本の国土は約7割が山間部である山地と丘陵地で占められています。そのため、この切土盛土によって傾斜地を造成した宅地が多く存在しています。切土と盛土はそれぞれ特徴があり、地震災害リスクにも違いがあります。

今回は切土と盛土の特徴と、土地選びの前に知っておきたい注意点について説明します。

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造成地と造成工事について

切土と盛土について触れる前に造成地と造成工事について説明しましょう。

山間部は傾斜地が多いためそのままの状態だと住宅地として利用することができません。そのため、傾斜地を階段のように水平な敷地にして利用できるように加工します。傾斜部分の土地を一部削り、その部分に土を下に盛って、ひな段上に宅地を作ります。このように山や丘などの土地を宅地に変える、土地の形質の変更のことを宅地造成と言います。

また、宅地造成によって作られた土地のことを造成地といい、造成地にするための工事方法を造成工事と言います。

造成工事には、切土と盛土の2つの方法があります。

切土と盛土とは|2つの違いを学ぶ

傾斜地を水平にするための造成工事として、斜面の土を切り出す切土、斜面に土を盛る盛土があります。この2つの特徴について説明します。

切土と盛土の説明

切土とは

切土は、高い地盤や斜面を切りとって低くし平坦な地面を作る工事です。

特徴として、切土は元の地盤を削ったものであるため全体的に均質で締まっていることです。山地や丘陵地は元々地盤がよいので、切土してとった部分も比較的良い地盤で災害などの被害を受けにくいと言われています。

盛土とは

盛土は、低い地盤や斜面に土地を盛り上げて高くし、平坦な地面を作る工事です。

盛土は傾斜地だけではなく、水田・湿地帯の埋立地や谷埋地などを造成する場合にも用いられます。

特徴は、盛られた土でできているため災害に対して弱く、転圧(締め固め)や地盤改良工事が不十分な場合、軟弱な地盤になってしまいます。東日本大震災などの地震や豪雨で、沈下や崩壊が多発しています。

新しく盛土された地盤は、3年から5年程度で沈下や圧縮が落ち着くと言われていますが、盛土の内部に石や木などの混入があるときは空洞ができたりするので10年近く経たないと安定しないこともあります。

切土と盛土の注意点

切土と盛土の境界線付近は最も注意が必要です。その部分は、災害によって発生する地盤事故が最も多い場所と言われています。その理由は、盛土部分は変形するが、切土部分は変形しないということにあります。そのため、地盤に段差ができてしまい建物が傾いてしまうことから、地盤事故を発生させる可能性が高い土地とされています。

切土と盛土の見分け方と大規模盛土造成地マップについて


土地の価格はあまり変わりませんが、切土と盛土では自然災害のリスクに大きな違いがあります。切土と盛土の見分け方について説明します。

見分け方は難しい?

少し前までは造成地の切土と盛土の判別は難しいものでした。しかし2011年の東日本大震災がきっかけで、切土・盛土についての情報がここ数年で増えています。

国土交通省で「大規模盛土造成地マップ公表状況について」のページがありますが、詳しくは各自治体に聞くことをおすすめします。国土交通省の指示により、自治体による「大規模盛土造成地の調査」が積極的に進められています。まだ着手されていない自治体も多くありますが、国土交通省の「大規模盛土造成地マップ公表状況について」のデータによると、公表率は毎年上がってきていることがわかります。

大規模盛土造成地マップとは

国が大地震による被害を未然に防止・軽減し、宅地の安全確保のために、宅地造成等規制法を改正し、宅地耐震化推進事業を創設しました。各市町村調査の手法を定めた国のガイドラインに基づき、造成前と造成後の地形を重ね合わせた大規模盛土造成地を抽出し、大規模盛土造成地マップを作成しています。

大規模盛土造成地とは

盛土造成地とは、谷間や山の斜面に土を盛るなどして作られた土地のことをいいます。このうち、過去の地震時の被害事例から、滑動崩落の発生が多かった盛土の面積や高さ、盛土をする前の地山の傾斜を元に、大規模盛土造成地について定義されました。下図は滑動崩壊について表しています。

画像引用:国土交通省

大規模盛土造成地には、下図のように谷や沢を大規模(3000㎡以上)に埋めて造成されていること、盛土前の傾斜が大きな地盤(20度以上)の上に高く(5m以上)盛土されているなどの定義があります。


画像引用:国土交通省

大規模盛土造成地マップを公表する目的

大規模盛土造成地を公表する目的として、宅地の所有者や管理者に大規模盛土造成地について知ってもらい、防災意識を高めていくというものがあります。宅地の防災を防ぐためには、日ごろから自らの宅地や周辺の擁壁に目を配り点検するという意識が大切です。以下チェックポイントにまとめた図を参考にし、おかしいと感じた事象を発見したときはすぐ各自治体へ連絡しましょう。

 

画像引用:東京都都市整備局

宅地造成等規制法とは

宅地造成等規制法は、1961年に宅地造成に伴う工事による崖崩れや土砂の流出など宅地被害を防止する目的で制定されました。

宅地造成工事規制地域は、都道府県知事が市街地及びその周辺地域で宅地造成に伴い生じる被害が大きい場所として指定した場所です。そのため、その地域で次の4つの工事を行う場合は地道府県知事の許可が必要です。

1 切土2m超 高さ2mを超える崖ができる切土
2 盛土1m超 高さ1mを超える崖ができる盛土
3 切土盛土合わせて2m超 切土と盛土が同時に行われ、全体で2mを超える崖
4 これらに該当しない「切土または盛土の工事を行う面積が500㎡を超える土地」

 

画像引用:兵庫県

まとめ

  • 切土とは、高い地盤や斜面を切りとって低くし平坦な地面を作る工事のこと
  • 盛土とは、低い地盤や斜面に土地を盛り上げて高くし、平坦な地面を作る工事のこと

切土と盛土では、地盤の質の特徴に違いがあり、自然災害のリスクに大きな違いがでてしまいます。

切土や盛土によって地盤面に高低差が生じた造成地、過去の埋め立てなどが考えられる土地の購入を検討する場合は注意が必要です。

仲介業者は買主様に対し、造成工事に関する図面の提示や説明をし、納得して土地を選んでいただくことが大切です。

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。