不動産の「現状有姿渡し(現況渡し)」とは|トラブルを避ける方法
中古物件を引き渡す際に出てくる言葉が「現状有姿」です。
今回は現状有姿についての理解を深めて、トラブルなく円滑に引き渡しが行えるように、トラブルの事例や対策などを見ていきましょう。
「現状有姿」とは
「現状有姿」とは、現在のあるがままの状態のことを指します。
中古物件などをリフォームせずそのまま引き渡す契約をする場合に、「現状有姿渡し」というのです。
中古物件における「現状有姿」の解釈
中古物件の売買契約において「現状有姿渡し」は、以下のように解釈されます。
①物件に経年劣化による小さな汚れ・傷があっても、そのままの状態で引き渡す。
②契約締結から引き渡しまでの期間に、物件に変化があったとしても、そのままの状態で引き渡す。
ただし、②は売主側の見解であり、不動産業界の慣行では、現状有姿渡しであっても直ちに責任を免れるのは難しいとされています。
現状有姿渡しのトラブル事例
「現状有姿」は、厳密に定義されているわけではありません。
そのため、売買契約の当事者間でも認識に食い違いが起きやすく、トラブルに発展しやすい部分です。賃貸物件や新築物件購入のように、綺麗な状態で自分が住み始めることができるのが当然と考えている買主も少なくありません。
例えば、買主は住宅設備機器の不具合を売主が修理してくれるものと思っていたのに、売主はそのまま引き渡すものと考えていたとか、買主は、部屋の埃やキッチン・お風呂の汚れなどは、売主がハウスクリーニング業者に依頼して綺麗にしてくれるものと考えていたのに、売主はそのままでよいと思っていた、といったことなどで売主、買主の間で認識が食い違うことがあります。
現状有姿渡しでトラブルを起こさないために
現状有姿渡しでトラブルを起こさないために、下記の点に注意しましょう。
1.宅建業者の丁寧な説明が大切
2.売主の瑕疵担保責任について具体的に定めておく
1つずつ解説していきます。
宅建業者の丁寧な説明が大切
宅建業者には、買主に「現状有姿」についてきちんと理解してもらう責任があります。売主側との認識に食い違いがないよう丁寧に説明し、実際の物件要素について具体的に確認することが大切です。
現状有姿について特に食い違いやすいのは、以下のポイントです。
契約前に当事者双方の認識を確認しましょう。
◇現状有姿について食い違いやすいポイント
- 備え付けの家具・家電(棚・エアコン・照明器具など)
- ウォシュレット
- 物置き
- エクステリア備品(ガーデニング用品・郵便受けなど)
- 庭木・庭石 など
ひとつひとつは細かなことですが、軽視してはいけません。
必ず、「付帯設備表」「物件状況報告書(告知書)」に丁寧に書き込み、重要事項説明の際に売主・買主双方にしっかりと説明を行なうようにしましょう。
売主の瑕疵担保責任について具体的に定めておく
現状有姿渡しであっても、売主の責任が一切ないわけではありません。
買主が契約時に認識していなかった瑕疵(傷・欠陥)が契約後に発覚した場合には、売主が責任を負うとされているのです。これを「瑕疵担保責任」といいます。
一般的には、土地の場合は土壌汚染、不同沈下、地中埋設物等、建物の場合は、建物構造上主要な部位の腐食、白アリの害、雨漏り、給排水管の故障を売主の瑕疵担保責任の範囲として定めることが多いです。
マンションの場合には、上記の内、共用部分に起因する瑕疵は免責とすることが一般的です。
特に初めて住宅購入をする買主の場合には、売主の瑕疵担保責任の範囲を広く解釈してしまいがちですので、売主の責任が明確であるように、契約書には「瑕疵担保責任」の範囲と期間を定めておきましょう。
◇売主が個人の場合
瑕疵担保責任は、任意規定となります。範囲・期間を各案件ごとに定めます。
◇売主が宅地建物取引業者の場合
法令により、以下のような期間が定められています。
①買主が瑕疵の存在を知った時点から1年以内(民法第570条)。
②物件引き渡し日から2年以上とすることもできる。ただし、買主が①より不利になる特約は不可。(宅建業法第40条)
ただし、物件の性質によっては、売主が瑕疵担保責任を負うことが難しい場合に、免責特約を定めることもあります。
売主の瑕疵担保責任とは|契約書への定め方と2020年民法改正のポイント
まとめ
売主、そして買主双方でトラブルを起こさないためにも事前に条件を洗い出したり丁寧な説明を心がけるなど、細かなことにも気を配っていくようにしましょう。
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