ITで不動産仲介を変える!株式会社TERASS CEOに学ぶデジタル化が業界にもたらす変化と注意点

投稿日 : 2021年03月08日/更新日 : 2023年06月08日


「これからの時代、不動産仲介ではエージェントの“個”のスキルがますます重要になるでしょう。

そこで私たちは、エージェントが個人で活動しやすい環境づくりに取り組み、ひとりでも多くのカスタマーが気持ちよく、そして心から満足のいく不動産購入ができる未来を目指しています。」

こう語るのは、家を探すカスタマーとエージェントをマッチングするプラットフォーム『Agently(エージェントリー)』を運営する株式会社TERASSの代表取締役CEO 江口 亮介氏だ。

カスタマーに対してエージェントがオンラインでアプローチする。

実店舗を構えずに契約を締結する……業界の常識を覆すサービスを展開する江口氏に、その事業内容や不動産業界のデジタル化について話を伺った。

オンラインでカスタマーにアプローチする新しい営業のあり方


冒頭でも触れたとおり、『Agently』はカスタマーとエージェントをマッチングするプラットフォームだ。

利用の流れとしては、まず家を買いたい人が希望条件を入力し、その情報を匿名化した状態でエージェントに開示する。

エージェントはそれを受け、アプローチしたいカスタマーに対してチャットでメッセージを送信。

カスタマーはその中から魅力的な提案を選び、実店舗で対面することなく家探しを進めていく。

カスタマーにとってのメリットは、何といっても匿名で始められる手軽さだろう。

一般的な仲介サービスを利用する場合とは違い、物件の希望を登録したら営業の電話がひっきりなしにかかってくる、などといったことはない。

一方のエージェントには、自分が会いたいと思うカスタマーに絞ってアプローチができるというメリットがある。

登録された情報の量や質から購買への本気度を測れることはもちろん、自身の強みに合うニーズをもったカスタマーを選ぶこともでき、確度の高い案件のみに時間を割くことが可能になるのだ。

また、特に若い世代のエージェントが活躍しやすくなることもメリットだと江口氏は続ける。

「若手のエージェントはチラシ配りばかりさせられてなかなかチャンスに恵まれない、というのはこの業界の“あるある”ですが、『Agently』を使っての営業なら話は変わってきます。

オンラインでのコミュニケーションに慣れた若い世代のほうが、カスタマーと良好な関係を築きやすいんですよね。

先日も、新卒のエージェントが契約をとっていました。

そうやって“ITネイティブ”と呼ばれる世代が力を発揮できるようになることで、業界全体に新しい風を吹かせられ、ゆくゆくは業界の構造にも変化が生じると確信しています。」

エージェントをレーティングし、顧客によりよい出会いを


不動産仲介の新たな形を確立した『Agently』。

江口氏は、その先に見据える展望について次のように話す。

「まずは対象エリアを拡大しながら、取引の数を増やすことに注力していきます。

最初は東京23区の物件のみを対象にしてスタートしましたが、先日これを1都3県(神奈川県、埼玉県、千葉県)に拡大しました。

ゆくゆくは東名阪にまで広げていければと考えています。

そうやって実績が増え、情報が蓄積してくれば、エージェントの“レーティング”ができるようになるでしょう。

契約数、契約率はもちろん、カスタマーからの返信率などさまざまな角度からエージェントを評価し、そのスキルを可視化する。

それは、カスタマーにとってこの上なく有益な情報になるはずです」。

また、現在すでに取り組んでいるエージェントの業務支援にも、ますます力を入れていくそうだ。

「当社では、契約締結後の業務、例えば各種ドキュメンテーションの準備などをエージェントに代わって行っています。

エージェントには、コンサルティングや物件の調査・提案など、彼らにしかできないこと、つまりプロフェッショナルの価値が活きる業務に集中してほしいと考えているので。

とはいえ、これから取引の数が増加すれば、今のままでは追いつかなくなります。規模が拡大しても耐えうるよう、早急に体制を強化していかなければなりませんね」。

デジタル化、DX推進の本質はカスタマーの満足


最後に江口氏に聞いたのは、不動産業界のデジタル化、DX推進について。

業界の慣習にとらわれず先進的な事業を展開する江口氏は、これからの不動産業界をどう見ているのだろうか。

「昨年からの新型コロナウイルスの流行で、業界のデジタル化は一気に進みました。

非対面決裁やリモート面談、VR内見が当たり前になり、これまで頑なにFAXを使っていたような方々ですらWeb会議を利用するようになった。

これをきっかけに、今後よりスピーディーにデジタル化が進んでいくことを願っています。」

しかし江口氏は、デジタル化の加速に期待を寄せる一方で、次のように警鐘を鳴らす。

「不動産業界に限らず、デジタル化、DXの推進の必要性が叫ばれていますが、目的を間違えているケースが多いのではないかと感じています。

これらの取り組みを業務効率化、およびそれによるコスト削減のためと考えるのは、非常にもったいないこと。本質はそのもっと先、カスタマーがハッピーになれることにあると思うんです。

デジタル化が進み、エージェントがよりよい仕事ができるようになり、クオリティーの高いサービスがカスタマーに届く……そう、すべてはカスタマー起点です。私たちは常にそのことを忘れません。」

常に本質を見極め、ブレずに、そして臆せずに新しいスタンダードの創出にチャレンジし続ける江口氏。

その仕事には、変化の波が押し寄せるこれからの時代を進むヒントがあった。

◆江口 亮介 株式会社TERASS 代表取締役CEO慶應義塾大学経済学部を卒業後、株式会社リクルート(現:株式会社リクルート住まいカンパニー)に新卒入社。『SUUMO(スーモ)』の広告企画営業として活動した後、同事業の商品戦略策定や営業推進、新商品の開発に携わる。その後、マッキンゼー・アンド・カンパニーへの転職を経て、2019年4月に株式会社TERASSを創業。カスタマーと不動産エージェントをつなぐマッチングサービス『Agently(エージェントリー)』やハイエンド不動産に特化した情報サイト『TERASS(テラス)』を手がける。

DXサービス導入インタビューの個別記事

  1. 住宅ローンの提案の幅と業務効率が改善|株式会社TERASS様
  2. ITで不動産仲介を変える!株式会社TERASS CEOに学ぶデジタル化が業界にもたらす変化と注意点
  3. 住宅ローンもお客様に寄り添ったベストな提案を実現|株式会社マルビシ様
  4. 業務効率化と提案力向上を実現。住宅ローン業務が“課題”から“強み”に|北洲ハウジング
  5. 住宅ローン業務の品質向上や働き方改善はもちろん、社員のスキル向上にも効果的|株式会社アルプスピアホーム
  6. 『いえーる ダンドリ』は不動産仲介市場への参入を支えてくれたパートナー|株式会社I-House
  7. サービス品質のムラがなくなり、営業の業務負担も大きく軽減|百年住宅株式会社様
この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。