検査済証とは|義務化はいつから?確認済証・建築確認・完了検査の違いなども見本付きで解説
中古物件の中には検査済証のない物件が少なくなく、増築や用途変更を行ったり、売買の際に住宅ローンを利用したりしようとするのに、支障をきたすことがあります。
そもそも検査済証とはどういったものなのでしょうか。
今回は、確認済証や中間検査合格証、検査済証やそれぞれに関わる検査について解説したうえで、検査済証のない物件で用途変更などを行う場合についても触れていきます。
検査済証とは
検査済証とは、建築基準法によって定められた建築確認・中間検査・完了検査の3つが認められると、建築主に対して交付される書類です。
検査済証の交付後に建築物を使用することができます。
検査済証の交付については建築法の第7条第5項によって定められています。
建築主事等は、前項の規定による検査をした場合において、当該建築物及びその敷地が建築基準関係規定に適合していることを認めたときは、国土交通省令で定めるところにより、当該建築物の建築主に対して検査済証を交付しなければならない。 |
引用元:リート等による高齢者向け住宅等の取得等に関するモデル事業調査報告書
建築確認とは
建物を建てるとき、行政の許可なく工事を着工することはできず、建築確認を受けることが必要です。
建築確認とは、建築物の建築をする場合に、工事に着工する前に、建築計画が建築基準法などの法令で定められている設備や構造、敷地などの建築基準に適合しているか、建築主事や指定確認検査機関が確認を行うことをいいます。
建築確認に合格後、建築確認済証の交付を受けると、工事に着工することができます。
中間検査とは
中間検査とは、工事に着工後、特定の工程の後に義務付けられている検査で、建築主事や指定確認検査機関による中間検査に合格した後、先の工程の工事を再開することができます。
特定の工程は建築基準法で定められているもののほか、市町村が独自に定めています。
中間検査に合格すると、中間検査合格証が交付されます。
完了検査とは
完了検査とは、建築物の工事完了後に設備や構造、敷地が建築基準法などの法令に適合しているか、建築主事や指定確認検査機関が実施する検査をいいます。
建築主は工事完了日から4日以内に完了検査を申請することが義務付けられており、適法と認められて完了検査に合格すると検査済証が交付されます。
第七条 建築主は、第六条第一項の規定による工事を完了したときは、国土交通省令で定めるところにより、建築主事の検査を申請しなければならない。
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- 建築確認とは、建築物の建築をする場合に、工事に着工する前に、建築計画が建築基準法などの法令で定められている設備や構造、敷地などの建築基準に適合しているか、建築主事や指定確認検査機関が確認を行うこと
- 中間検査とは:工事に着工後、特定の工程の後に義務付けられている検査のこと
- 完了検査とは:建築物の工事完了後に設備や構造、敷地が建築基準法などの法令に適合しているか、建築主事や指定確認検査機関が実施する検査のこと
検査済証がない建築物の割合
国土交通省では、建築確認の件数に対する検査済証の交付枚数によって算出した完了検査率のデータを公表しています。
検査済証の交付を受けていない建築物は、築年数が経過した物件では意外と多く、建築主事の取り扱い分の完了検査率は1998年では38%という低水準でした。
その後は2001年には65%、2005年には73%、2009年には91%と向上しています。
完了検査率が上昇した背景には2つの要因があり、1つは2002年〜2004年に受検率アップのための3ケ年計画が実施され、国や自治体が違法建築物の取り締まりが強化されたことです。
2つ目として、2003年に国土交通省が金融機関に対して、検査済証のない建築物への融資を控えるように要請したことが挙げられます。
住宅ローンを利用できなければ販売が難しいため、不動産会社が販売する建売住宅では、完了検査を受けるケースが大半を占めるようになりました。
検査済証がない建築物の用途変更
検査済証がない建築物は、原則として建築確認申請を伴う行為ができません。
そのため、防火地域や準防火地域での増築、それ以外の地域での10㎡を超える増築、類似用途を除く200㎡以上の用途変更、大規模な修繕を行うのが難しいです。
また、検査済証がない建築物は住宅ローンを組めないことが多いため、売買しにくいというリスクもあります。
ただし、検査済証がない建築物も、国土交通省が定める「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」に則って調査などの手続きを行えば、用途変更などができる可能性があります。
「用途変更」とは、新築のときと異なる用途で建築物を使用することをいい、たとえば、倉庫を店舗やオフィスに転用するケースが挙げられます。
調査の結果、現行の建築基準法などの法令に適合していれば問題ありません。
現行の法令に適合していない場合でも、既存不適格建築物か違反建築物かで扱いは変わり、既存不適合建築物の場合は一定の緩和措置が受けられます。
<既存不適切建築物>
建築した当時は法令に適合していたが、建築基準法などの改正によって、現行の法令に適合していない建築物
<違法建築物>
建築した当時から法令に適合していない建築物
法適合状況調査の流れ
「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」による法適合調査は、検査済証がない建築物が違法建築物ではなく、既存不適格建築物に該当する場合は、用途変更や増改築を円滑に進めるのが目的です。
「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」で、法適合状況調査の主な対象としているのは、確認済証の取得が特定行政庁の台帳などで確認できて、検査済証がない建築物です。
確認済証の有無によって調査の流れが変わります。
確認済証がある場合は、基本的には依頼者がとりまとめた確認済証や設計図書の提出を受けて、調査者である指定確認検査機関が法適合状況調査を実施する流れです。
一方、確認済証がない場合は、依頼者は、法適合状況調査を申請する前に、建築士に復元図面と規模によっては復元構造計算書の作成を依頼することが必要です。
依頼者が設計図書をとりまとめて調査者に提出した後の流れは、確認済証の有無に関わらず同じであり、法適合状況調査として図上調査と現地調査が実施された後、報告書が作成されます。
報告書は、検査済証がない物件で増築などの建築確認申請を行う際に提出する、既存不適格調書の添付資料として活用することが可能です。
確認済証がある場合
確認済証がある場合の法適合状況調査の流れについて、以下のステップに沿って解説していきます。
- 調査に必要な設計図書の準備(依頼者)
- 現地の状況と設計図書の照合(依頼者)
- 設計図書などをとりまとめて調査を申請(依頼者)
- 法適合状況調査の実施(調査者)
- 調査結果の報告書の作成(調査者)
1. 調査に必要な設計図書の準備依頼者は、法適合状況調査に必要な確認済証や添付されていた設計図書を準備します。 竣工図や竣工時引渡書のほか、中間検査合格証や添付された設計図書、工事監理報告書などの資料もあれば用意します。 また、増改築などの工事を実施している場合、増改築図面や改修工事履歴、工事写真、 現況図などがあれば、提出が必要です。 また、不特定多数が集まるアパートや事務所などで特定建築物に該当し、特定建築物調査の報告書がある場合には提出資料に含めます。
2. 現地の状況と設計図書の照合依頼者は、確認済証に添付されている設計図書と現地の状況に不整合がないか確認します。 増改築や用途変更によって、設計図書と現地の状況が異なる場合には、建築士に当該部分の復元図書の作成を依頼します。規模や状況によっては復元構造計算書も依頼する必要が生じます。
3. 設計図書などをとりまとめて調査を申請調査者である指定確認検査機関に提出する確認済証や設計図書などの資料をとりまとめて、調査を申請します。
4. 法適合状況調査の実施指定確認検査機関による法適合状況調査は図上調査を行った後、現地調査が実施される流れです。 図上調査は文字通り、図面による調査であり、確認済証に添付された設計図書などをもとに、建築した時点での法令に適合しているかを調査します。
現地調査は、現地が図上調査を実施した設計図書と相違がないか確認するものです。 目視や計測、設備の動作確認、躯体の劣化状況などの調査を行います。 そして、設計図書通りではない部分があった場合には、詳細な調査を行います。 たとえば、設計図書にはない増築部分があった場合には、依頼者に当該部分の復元図書の作成を依頼します。
5. 調査結果の報告書の作成法適合状況調査の後、指定確認検査機関による報告書の作成が行われます。 報告書に記載されるのは、まず、調査の対象となった建築物の概要、調査にあたって依頼者から提示された設計図書などの資料、調査日や調査方法、調査の範囲などです。 そして、建築基準法や各規程の法的適合状況も記されます。 適合状況は、「適合」、「既存不適格」、「不適合」、「不明」といった区分で表示され、判断理由が添えられます。 また、柱や梁などの主要構造部など著しく劣化や損傷をしている場合は、報告証に記載されます。
依頼者は、適合以外の場合は特定行政官庁に相談して、法令に適合するよう改修を行うことが求められます。
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確認済証がない場合
確認済証がない場合の法適合状況調査の流れについて、次のステップに沿って解説していきます。
- 建築士へ復元図面の作成を依頼(依頼者)
- 調査に必要な設計図書の準備(依頼者)
- 設計図書などをとりまとめて調査を申請(依頼者)
- 法適合状況調査の実施(調査者)
- 調査結果の報告書の作成(調査者)
1. 建築士へ復元図面の作成を依頼依頼者が建築士に復元図面や規模などに応じて復元構造計算書の作成を依頼します。
2. 調査に必要な設計図書の準備竣工図や竣工時引渡書のほか、増改築などの工事を実施している場合は増改築図面や改修工事履歴、工事写真、現況図などを用意します。
3. 設計図書などをとりまとめて調査を申請建築士に依頼した復元図面や手元にある資料をとりまとめて、指定確認検査機関に調査を申請します。
4. 法適合状況調査の実施指定確認検査機関によって、確認済証がある場合と同様に図上調査を行った後、現地調査が実施されます。 図上調査では復元図面や復元構造計算書などをもとに、建築基準法などの法令に適合しているか調査が実施されます。 現地調査では復元図面と現地の状況の照合が行われますが、図面通りではない場合には、当該部分の法適合調査が進められないため、復元図面など設計図書の修正が求められます。
5. 調査結果の報告書の作成指定確認検査機関によって、確認済証がある場合と同様に調査結果に基づいた報告書が作成されます。
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建築確認検査済証がない場合について詳しくは以下の記事をご参照ください。
あわせて読みたい:建築確認済証がないとどうなる?|再発行不可の重要書類を紛失した時の対応方法
検査済証の再発行
検査済証を紛失した場合は再発行することはできません。
検査済証に代わるものとして、建築確認申請の経過などが記載された台帳記載事項証明書の発行を受けることができますが、自治体によって多少取り扱いが異なります。
擁壁の検査済証の必要性
擁壁とは、高低差のある傾斜地などで斜面が崩壊して崖崩れが起きるのを防ぐために設けられた工作物です。
擁壁には、鉄筋コンクリート造擁壁やコンクリート製のブロックを使用した間知ブロック擁壁、石積み擁壁といった種類があります。
高さ2mを超える擁壁をつくる場合は、建築基準法によって工作物としての確認申請が義務付けられています。
そのため、既存の2mを超える擁壁で検査済証がないものは、現行の建築基準法に適合していないため、不適格擁壁と呼ばれています。
擁壁のある土地を購入する場合で不適格擁壁に該当する場合は、擁壁の工事費用が発生するので注意が必要です。
検査済証と適合証明書の違い
適合証明書とは、住宅金融支援機構の独自の技術基準に適合していることを証明する書類で、フラット35を利用して融資を受ける場合に必要です。
ハウスメーカーや工務店などの建築会社が適合証明機関に検査の申し込みを行うと、新築住宅の場合は設計検査や中間検査、竣工時検査が実施され、適合している場合には適合証明書が交付されます。
適合証明書は建築基準法に基づく検査済証とは別のもので、竣工時検査が行われるのは、工事が竣工して検査済証が交付された後です。
検査済証がなくてもリフォームできるケース
建築確認申請が必要なリフォームの場合、原則として検査済証が必要ですが、リフォームの規模によっては建築確認申請が不要です。
リフォームで確認申請が必要になるのは、準防火地域と防火地域の増築とそれ以外の地域での10㎡を超える増築工事、主要構造部の1/2以上を超える改築などです。
たとえば、間取り変更を伴わないリフォームや、キッチンや浴室などの設備交換リフォームなどを行うときに、建築確認申請は必要ありません。
また、検査済証がない場合で確認申請が必要なリフォームを行いたい場合も、前述の法適合状況調査を受けて、建築した時点では建築基準法令に適合していることが確認できた場合には、リフォームが可能なケースがあります。
既存不適格調書は建築確認申請をする際の添付資料にすることが可能です。
既存不適格調書とともに必要な書類を添えて、建築確認申請を行います。
ただし、検査済証のない建築物は違法性があるケースが少なくなく、不適合となる部分を是正しなければ、確認申請が必要なリフォームを行うことはできません。
たとえば、吹き抜け部分に床を張って居室を設けて、容積率の基準をオーバーしているケースなどが挙げられます。
まとめ
建築物を建てるには、建築確認申請の後に確認済証が交付されると工事の着工が可能であり、中間検査や完了検査を経て、検査済証が交付されると使用できるようになります。
検査済証のない建築物での建築確認申請が必要となる用途変更や大規模な修繕は以前よりも進めやすくなりましたが、違法な状態の物件は是正しなければならない点に留意しましょう。
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