相続税の計算方法の基本|複雑な税制・宅建の必須知識をわかりやすく整理
相続税の税金制度は大変複雑で、税理士でも相続に関する専門知識が必要です。
しかし、相続財産にはしばしば不動産が含まれるので、宅建業者にとっては避けて通れない知識です。
そこで今回は、相続税の計算方法についてご説明します。
相続税の計算方法の概要
各相続人の実際にかかる相続税額を割り出すには、以下のような流れで計算していきます。
- 相続財産の総額を計算する。
- 相続税の基礎控除額を計算し差し引く。
- 相続税の総額を計算する。
- 各相続人の取得割合に応じた相続税額を計算する。
- 各相続人ごとの加算・控除を計算する。
相続税が課税される財産の確定
相続税課税対象となる相続財産には、以下のような財産が含まれます。
- 現金・預貯金
- 土地・建物・借地権などの不動産
(小規模宅地の特例が適用される場合は50~80%減額) - 株式・公社債などの有価証券
- 美術品・骨董品・貴金属など
- 自動車・船舶など
- 家具などの家財道具
- 電話加入権・著作権など
- みなし相続財産(生命保険金・死亡退職金などの課税対象額)
- 生前贈与加算の対象となる贈与(相続開始前3年以内の生前贈与)
- 相続時精算課税制度を利用した贈与
※マイナス財産(債務など)・葬儀費用などは、上記の相続財産の総額から差し引かれます。
相続税総額の計算
各相続人に課せられる相続税は、法定相続分で分割したと仮定した場合にかかる相続税の総額に、各相続人の実際の相続割合をかけて計算します。
そのため、まずは法定相続分にかかる相続税の総額を計算する必要があります。
法定相続分にかかる相続税の総額は、次のように計算します。
- 課税対象財産の総額を計算する。
- 各法定相続人の法定相続分(課税部分のみ)を計算する。
- 法定相続分の価格に応じた税率をかけ控除額を差し引いて、各法定相続人の税額を計算する。
- 各法定相続人の税額をすべて足す。
①課税対象財産の総額
相続税には基礎控除額が設定されています。そのため、相続財産総額から基礎控除額を差し引いた部分にのみ課税されることになります。
課税対象財産の総額=相続財産の総額-基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数) |
②法定相続割合
・配偶者と子供が相続人である場合
配偶者1/2 子供1/2※
・配偶者と直系尊属(親や祖父母など)が相続人である場合
配偶者2/3 直系尊属1/3※
・配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合
配偶者3/4 兄弟姉妹1/4※
※複数人の場合はその総額となります。
③法定相続分の価格に応じた税率
法定相続分の金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | なし |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
各相続人の相続税額
各相続人の相続税額は、前節で求めた法定相続分にかかる相続税総額に実際の相続割合を乗じて算出します。
さらに、2割加算・各相続人の各種控除を最後に計算します。
- 相続税額の2割加算対象者…配偶者・子供・親以外の相続人
- 配偶者控除…「①1億6,000万円」または「②配偶者の法定相続分相当額」のどちらか多い金額まで非課税となります。
- 未成年者控除…満20歳になるまでの年数1年につき10万円で計算した額が減税されます。
- 障害者控除…障害者が受けられる控除で、満85歳になるまでの年数1年につき10万円で計算した額が減税されます。(特別障害者の場合20万円)
→ 詳しくは「国税庁ホームページ」で確認してください。
相続税額の計算シミュレーション
【条件】
被相続人が残した遺産は1億円、法定相続人は配偶者と子供2人、実際の相続割合は、配偶者40%・子供2人各30%とする。 |
①課税対象額
1億円 - 基礎控除額(3,000万円+600万円×3) = 5,200万円
②法定相続割合
配偶者 5,200万円×1/2=2,600万円
子供1人 5,200万円×1/2÷2人=1,300万円
③法定相続分の価格に応じた税率をかけ、控除額を差し引く
配偶者 2,600万円×15%-50万円=340万円
子供1人 1,300万円×15%-50万円=145万円
④相続税の総額 340万円+145万円×2=630万円
⑤実際の相続割合に応じた税額
配偶者 630万円×40%=252万円→配偶者控除により0円
子供1人 630万円×30%=189万円
実際の取引の際には税理士に相談を
相続税の計算方法を知っていれば、お客様に発生した不動産相続に関して、相談に乗ることができます。
どのように所有・処分すれば利益が大きくなるか、また節税できるかなど、一緒に考えることもできます。
ただし、相続税の税制は専門性・難易度が高いため、具体的な取引を開始する前には、相続専門の税理士にも協力してもらうといいでしょう。
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