「債権譲渡」とは何かをわかりやすく解説|成立要件・対抗要件
債権譲渡は、法律の知識として専門性が高いため、難しい分野です。債権譲渡について解説しようとすると、他の専門用語も使用することになり、難易度が上がってしまいます。
しかし、宅建士の試験で出題されるレベルの問題であれば、暗記と過去問の学習で十分に習得可能です。
今回は、債権譲渡について、宅建試験の学習用にわかりやすくまとめました。この分野の試験勉強を始める際の“とっかかり”として、また試験直前の復習として、ぜひ活用してください。
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「債権譲渡とは/譲受人の対抗要件/債権譲渡制限特約」の試験科目
権利関係
「債権譲渡とは/譲受人の対抗要件/債権譲渡制限特約」が含まれる試験分野
債権譲渡
「債権譲渡とは/譲受人の対抗要件/債権譲渡制限特約」の重要度
★★★☆☆ 民法改正点で出題される可能性はやや高め
「債権譲渡とは/譲受人の対抗要件/債権譲渡制限特約」過去10年の出題率
40%
2020年宅建試験のヤマ張り予想
今回のテーマである債権譲渡については、2020年の民法大幅改正の変更点に含まれます。そのため、例年の出題率は低くても2020年には出題される可能性が高まっています。
改正されるのは、「債権譲渡制限特約を定めても、債権の譲渡は有効である」という点です。出題されることを前提に、改正点に重点をおいて学習を進めましょう。
「債権譲渡とは/譲受人の対抗要件/債権譲渡制限特約」の解説
債権譲渡とは
「債権譲渡」とは、相手方に特定の行為をさせる権利(債権)を、そのままの形で第三者に譲渡することです。内容を変えて締結しなおす契約である「更改」とは区別されます。
例えば、AさんがBさんに1,000万円を貸し、5年後に返済してもらう契約をしたとします。しかし2年後、Aさんは急にまとまった資金が必要になりました。このような場合に、Aさんは第三者CさんにBさんへの債権を売ることで、すぐに資金を調達できます。ただし、債権の売却金額は、元の額より減額となるのが通常です。
債権譲渡は、債権の譲渡人(元の債権者)と譲受人(債権の購入者)の間で契約を交わすことで成立します。
また、譲渡できる債権は既存の債権だけでなく、将来債権(将来発生する予定の債権)についても譲渡することができます。
債権譲受人の対抗要件
・債務者から支払いを受けるための条件
債権譲渡の契約は、譲渡人と譲受人の意思表示のみで成立します。そのため、債務者が債権者の変更を知らずに、誤って二重支払いをしてしまいかねません。
そこで、民法では債権の譲受人が債権を行使して債務者から支払いを受けるために、下記のいずれかが必要としています。
◆譲受人による債務者への対抗要件
- 譲渡人から債務者への通知
- 債務者の承諾
譲受人から債務者への通知は無効です。譲受人には、債権を手に入れるために虚偽の通知をする可能性があるからです。
また、譲受人は譲渡人に「代位」して通知することはできませんが、譲渡人の「代理」として通知することは認められます。
◆「代位」と「代理」の違い
- 代位…債権者の債権を保存するためなど一定の理由がある場合に、他人の権利を行使すること
- 代理…本人に代わり他者との法的行為を行うこと
◆二重譲渡における対抗要件
債権者が1つの債権を2者に譲渡してしまった場合、この債権を優先的に行使できるのはどちらの譲受人でしょうか。
この場合に重要となるのは、対抗要件となる譲渡人の通知または債務者の承諾の「確定日付」です。
◆二重譲渡における優先順位の基準
- 確定日付のある通知または承諾がある者が優先される
- 両者とも確定日付のある通知または承諾がある場合→日付が早いものが優先される
- 通知または承諾の確定日付が同時である場合→両譲受人とも、それぞれに債権を主張できる(債務者に全額請求できる)
「債権譲渡制限」の特約について
債権譲渡は、原則として自由に行うことができます。そのため、たとえ債権の譲渡を制限する旨の特約を定めても、もし債権譲渡契約を行えば、その契約は有効であり、譲受人は債権を取得できるとしています。
例えば、AさんがBさんに対する債権を有していて、その債権に譲渡制限の特約を設定していたとします。それでも、AさんがCさんに債権を譲渡しBさんに通知すれば、債権譲渡は成立します。
ただし、譲受人が特約の存在について悪意または重過失があった場合は、債務者は元の契約通りAさんに債務の弁済を行い、Bさんへの支払いを拒絶することができます。
悪意とは、民法において、「事実を知っていながら故意に行うこと」を指します。今回では、Cさんが債権譲渡制限があることを知っていながら譲渡契約を結ぶことを指します。重過失とは、当然払うべき注意を怠ることで法律違反や損害を見過ごすことです。
これら、債権譲渡制限に関する条文は、2020年の民法改正で規定されます。
「債権譲渡とは/譲受人の対抗要件/債権譲渡制限特約」に関連する法律
この項目に関連する法律は以下のとおりです。
民法 (令和2年4月1日施行)
債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。 2 当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。 3 前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。 4 前項の規定は、債務者が債務を履行しない場合において、同項に規定する第三者が相当の期間を定めて譲渡人への履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、その債務者については、適用しない。
債権の譲渡は、その意思表示の時に債権が現に発生していることを要しない。 2 債権が譲渡された場合において、その意思表示の時に債権が現に発生していないときは、譲受人は、発生した債権を当然に取得する。 3 前項に規定する場合において、譲渡人が次条の規定による通知をし、又は債務者が同条の規定による承諾をした時(以下「対抗要件具備時」という。)までに譲渡制限の意思表示がされたときは、譲受人その他の第三者がそのことを知っていたものとみなして、第四百六十六条第三項(譲渡制限の意思表示がされた債権が預貯金債権の場合にあっては、前条第一項)の規定を適用する。
債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。 2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。 |
実際に過去問を解いてみよう
問題:
AがBに対して1,000万円の代金債権を有しており、Aがこの代金債権をCに譲渡した場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。(平成23年度本試験 問5より改題)
- AB間の代金債権には譲渡禁止特約があり、Cがその特約の存在を知らないことにつき重大な過失がある場合でも、Cはこの代金債権を取得することができる。
- AがBに対して債権譲渡の通知をすれば、その譲渡通知が確定日付によるものでなくても、CはBに対して自らに弁済するように主張することができる
- BがAに対して期限が到来した1,000万円の貸金債権を有していても、AがBに対して確定日付のある譲渡通知をした場合には、BはCに譲渡された代金債権の請求に対して貸金債権による相殺を主張することができない。
- AがBに対する代金債権をDに対しても譲渡し、Cに対する債権譲渡もDに対する債権譲渡も確定日付のある証書でBに通知した場合には、CとDの優劣は、確定日付の先後ではなく、確定日付のある通知がBに到着した日時の先後で決まる。
答え:3✖
解説
BはCからの請求に対して「期限が到来した1,000万円の貸金債権」による相殺を主張することができるので、3は誤りです。
「債権譲渡とは/譲受人の対抗要件/債権譲渡制限特約」ポイントのまとめ
この項目で押さえておくべきポイントは以下のとおりです。
- 「債権譲渡」とは、相手方に特定の行為をさせる権利(債権)を第三者に譲渡することである
- 将来債権(将来発生する予定の債権)についても譲渡することができる
- 債権譲受人が債権を行使するには、譲渡人から債務者へ通知するか債務者の承諾を得る必要がある
- 譲受人は譲渡人に代位して通知することはできないが、代理として通知することはできる
- 二重譲渡における対抗要件は、「確定日付」である
- 債権譲渡制限特約があっても債権の譲渡は有効となる
最後に
法律の専門家でなければ、「債権譲渡」と言ってもすぐには理解できないかと思います。しかし、ビジネス上、債権譲渡のような取引が行われることがあります。
宅建業のクライアントは個人だけでなく企業であることも少なくありません。また、不動産は大きな取引物であり、債権・債務が関係する案件も多いのです。
そのため、宅建試験の試験範囲に含まれますが、合格を目的とするなら深掘りする必要はありません。概要と基本ルール・いくつかの判例を把握しておけば正解できますので、今回の記事でご紹介した点を中心に学習しましょう。
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