媒介契約3種類とそれぞれの規制を確認する|媒介と代理の違いとは

投稿日 : 2020年05月29日/更新日 : 2022年11月25日

宅建業者は自社主体で不動産を売買するだけでなく、お客様所有の不動産の売却先を見つけたり、不動産を購入したいお客様に向けて物件の紹介をしたりします。

お客様の物件売買のお手伝いをすることを媒介と言います。

今回は、媒介契約の種類を比較しながら、媒介契約と似た言葉の代理契約との違いについても解説します。

 

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「媒介契約」の試験科目

宅建業法

「媒介契約」が含まれる試験分野

媒介・代理契約

「媒介契約」の重要度

★ ★ ★ ★ ★ 媒介契約3種類の違いを理解しましょう

「媒介契約」過去10年の出題率

100%

 

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今回の項目は、宅建業者のそもそもの業務に深く関連する内容なので、試験に出る出ないに関わらず、宅建士を志す人は必ず理解すべき項目です。

もちろん宅建試験においても、媒介契約は超頻出項目です。

3種類の媒介契約でどのように規制が変わってくるか、きちんと学びましょう。

 

「媒介契約」の解説

 

不動産の売却や購入を希望するお客様が宅建業者に媒介を依頼し、宅建業者がそれを承諾した際に媒介契約を締結します。

媒介契約は、物件の売買または交換だけでなく賃貸においても締結されますが、賃貸の場合は媒介契約書面の作成が必要ないなど、売買または交換に比べて宅建業法の規定がゆるくなっています。

今回は、売買または交換の媒介契約について解説します。

 

媒介契約の種類

媒介契約は、売主もしくは買主が媒介の権利を単一の宅建業者に任せるか、複数の宅建業法等に任せるかにより、3種類の契約形態に分かれます。

  1. 一般媒介契約
  2. 専任媒介契約
  3. 専属専任媒介契約

それぞれの契約形態を確認しましょう。

 

一般媒介契約

 

一般媒介契約とは、売主が1つの宅建業者だけでなく複数の宅建業者に依頼できる契約形態です。

この一般媒介契約は、他の宅建業者の商号または名称の明示があるタイプと、明示がないタイプに分かれます。

 

専任媒介契約

専任媒介契約とは、1つの宅建業者に媒介を依頼する契約形態です。

売主は他の宅建業者に依頼することはできませんが、売主自身が個人的に買い手を見つけて直接物件を売却する自己発見取引は認められています。

 

専属専任媒介契約

専属専任媒介契約とは、1つの宅建業者に媒介を依頼する契約形態です。

専任媒介契約との違いは、自己発見取引が認められない点です。

 

媒介契約の規制

 

一般・専任・専属専任と、契約形態によって契約締結に伴う宅建業者と依頼主に課せられる規制や義務が変わります。

以下、契約形態の違いによる規制の違いを比較していきます。

 

有効期間および更新

媒介契約の有効期間と、期間満了時の更新の取り扱いは以下のとおりです。

一般媒介契約 期間の制限なし 更新の制限なし
専任媒介契約 契約期間は3ヶ月 ・自動更新不可

・更新後の期間は3ヶ月

専属専任媒介契約 契約期間は3ヶ月 ・自動更新不可

・更新後の期間は3ヶ月

 

業務処理状況の報告義務

契約の締結後、物件への問い合わせ状況や引き合いなどの進み具合を依頼主に報告する、業務処理状況の報告義務は以下のとおりとなります。

一般媒介契約 報告の義務なし
専任媒介契約 2週間に1回以上の報告義務あり
専属専任媒介契約 1週間に1回以上の報告義務あり

 

指定流通機構(レインズ)への登録義務

レインズへの登録義務は以下のとおりです。

一般媒介契約 登録の義務なし
専任媒介契約 契約日より7営業日以内に登録する義務あり
専属専任媒介契約 契約日より5営業日以内に登録する義務あり

 

申し込みがあった旨の報告

物件に対して売買または交換の申し込みがあったときには、どの契約形態であっても遅滞なくその旨を依頼主に報告する義務があります。

一般媒介契約 遅滞なく報告の義務あり
専任媒介契約 遅滞なく報告の義務あり
専属専任媒介契約 遅滞なく報告の義務あり

 

自己発見取引の可否

売主が、直接知り合いなどに物件を売却する自己発見取引が認められるか否かは、以下のようになります。

 

一般媒介契約
専任媒介契約
専属専任媒介契約 不可

 

媒介と代理の違い

 

媒介契約と代理契約はよく混同されがちですが、この2つは以下のような違いがあります。

媒介契約 宅建業者に契約権限はない 売主と買主の引き合わせを行う
代理契約 宅建業者に契約権限がある 売主(もしくは買主)と直接交渉する

 

ただし、民法上では「代理契約は媒介契約の規定を準用する」との決まりがありますので、上記の規制は媒介でも代理でも同じと考えて差し支えありません。

 

「媒介契約」に関連する法律

この項目に関連する法律は以下のとおりです。

宅地建物取引業法(令和231日時点)

34条(取引態様の明示)

宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買、交換又は貸借に関する広告をするときは、自己が契約の当事者となつて当該売買若しくは交換を成立させるか、代理人として当該売買、交換若しくは貸借を成立させるか、又は媒介して当該売買、交換若しくは貸借を成立させるかの別(次項において「取引態様の別」という。)を明示しなければならない。2 宅地建物取引業者は、宅地又は建物の売買、交換又は貸借に関する注文を受けたときは、遅滞なく、その注文をした者に対し、取引態様の別を明らかにしなければならない。

 

34条の2(媒介契約)

(中略)

3 依頼者が他の宅地建物取引業者に重ねて売買又は交換の媒介又は代理を依頼することを禁ずる媒介契約(以下「専任媒介契約」という。)の有効期間は、三月を超えることができない。これより長い期間を定めたときは、その期間は、三月とする。

4 前項の有効期間は、依頼者の申出により、更新することができる。ただし、更新の時から三月を超えることができない。

5 宅地建物取引業者は、専任媒介契約を締結したときは、契約の相手方を探索するため、国土交通省令で定める期間内に、当該専任媒介契約の目的物である宅地又は建物につき、所在、規模、形質、売買すべき価額その他国土交通省令で定める事項を、国土交通省令で定めるところにより、国土交通大臣が指定する者(以下「指定流通機構」という。)に登録しなければならない。

(中略)

9 専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、前項に定めるもののほか、依頼者に対し、当該専任媒介契約に係る業務の処理状況を二週間に一回以上(依頼者が当該宅地建物取引業者が探索した相手方以外の者と売買又は交換の契約を締結することができない旨の特約を含む専任媒介契約にあつては、一週間に一回以上)報告しなければならない。

 

34条の3(代理契約)

前条の規定は、宅地建物取引業者に宅地又は建物の売買又は交換の代理を依頼する契約について準用する。

 

宅地建物取引業法施行規則(令和231日時点)

15条の10(指定流通機構への登録期間)

法第三十四条の二第五項の国土交通省令で定める期間は、専任媒介契約の締結の日から七日(専属専任媒介契約にあつては、五日)とする。

 

実際に過去問を解いてみよう

問題:

宅地建物取引業者Aが、BからB所有の中古マンションの売却の依頼を受け、Bと専任媒介契約を締結した場合の有効期間は3月を超えることができず、また、依頼者の更新しない旨の申出がなければ自動更新とする旨の特約も認められない。ただし、Bが宅地建物取引業者である場合は、AとBの合意により自動更新とすることができる。(平成29年度本試験 問43より抜粋)

答え:×(できない)

 

解説

依頼者Bが宅建業者であっても、媒介契約の有効期間を自動更新とする特約を設けることはできません。

 

「媒介契約」ポイントのまとめ

この項目で押さえておくべきポイントは以下のとおりです。

  1. 媒介契約には3種類ある(一般・専任・専属専任)
  2. 媒介契約の種類により規制が異なる
  3. 代理契約は媒介契約の規定を準用する

 

最後に

 

今回は、媒介契約の種類と媒介契約の種類によって異なる宅建業者と依頼主に課せられる規制について解説しました。

媒介契約は、宅建業の業務の大元となる大変重要な契約です。宅建士を志す方は媒介契約についてしっかり理解しましょう。

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。