宅地建物取引業保証協会の業務とは|必要的業務と任意的業務に分けて解説

投稿日 : 2020年05月28日/更新日 : 2022年11月25日

宅建業者の多くは、開業時に必要な営業保証金のコスト削減などを目的として宅地建物取引業保証協会(保証協会)に加入しています。

しかし、保証協会の業務は弁済業務保証金分担金の預かりや弁済手続きだけでなく、宅建業界の発展のためにさまざまな側面から社員(宅建業者)を支援することも含まれています。

今回は、保証協会とはどのような組織か、そして保証協会が行っている業務内容について解説します。

 

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「宅地建物取引業保証協会」の試験科目

宅建業法

「宅地建物取引業保証協会」が含まれる試験分野

弁済業務保証金

「宅地建物取引業保証協会」の重要度

★ ☆ ☆ ☆ ☆ 試験にはあまり出題されません

「宅地建物取引業保証協会」過去10年の出題率

20%

 

2022年宅建試験のヤマ張り予想

過去の出題率を見ても、保証協会の業務に関する問題はほとんど出題されません。

2020年の宅建試験においても出題される確率は低いと考えられますので、弁済業務保証金の勉強をするときに概要を確認しておくだけで十分です。

ただし、保証協会の業務は弁済業務保証金制度に深く関わる内容となりますので、ポイントはきちんと確認しておきましょう。

 

「宅地建物取引業保証協会」とは

宅地建物取引業保証協会(保証協会)とは、国土交通大臣が指定した一般社団法人組織です。宅建業を営む宅建業者のみが社員となって構成されていて、加入は任意です。

宅建業者が保証協会に加入するときには、加入しようとする日までに既定の弁済業務保証金分担金を金銭で納付しなければいけません。

保証協会に新たな社員が加入したときや、社員がその地位を失ったときには、保証協会は直ちにその旨を免許権者に報告する義務があります。報告先の免許権者は、社員(宅建業者)が免許を受けた国土交通大臣もしくは各都道府県知事です。

 

保証協会の種類

現在、日本では2つの保証協会が存在します。

マーク 名称 上位組織
ウサギ 公益社団法人不動産保証協会 全日本不動産協会(ぜんにち)
ハト 全国宅地建物取引業保証協会 全国宅地建物取引業協会連合会(ぜんたく)

 

上記2つの保証協会はいずれも一般社団法人としてではなく、公益社団法人(一般社団法人の中でも公益性を認定された社団法人)として運営されています。

 

保証協会の業務

 

保証協会は社員(宅建業者)の業務と円滑な取引を支援するために、さまざまな業務を執り行います。

業務の種類はその重要度に応じて必要的業務任意的業務に分かれます。

必要的業務 保証協会が行う義務がある業務
任意的業務 義務ではないが保証協会が行うことができる業務

なお、任意的業務を行うには国土交通大臣の承認が必要になります。

 

必要的業務

保証協会の必要的業務は以下の3つです。

 

弁済業務

社員(宅建業者)が行った取引により、損害を受けた者に対して弁済手続きを行います。実際に弁済を行うのは、保証協会から弁済業務保証金の還付を請求された供託所となります。

 

苦情解決業務

社員の取り扱った取引について相手方等から苦情の申出があった際に、相談および調査などを行い解決を図ります。また当該社員に対する苦情内容の通知や全社員に対する周知も行います。

 

研修業務

宅建士および宅建業の従事者、または従事しようとする者に対して研修を実施します。

 

任意的業務

保証協会の任意的業務は以下の4つです。

 

一般保証業務

社員(宅建業者)との契約によって当該宅建業者が受領した支払金又は預り金の返還債務その他、宅建業に関する債務を負うこととなった場合において、その債務を連帯して保証します。

 

手付金等保管事業

宅建業者が自社物件の販売時に受け取った手付金等の保全措置をするために、指定保管機関として手付金等を保管します。

 

研修費用の助成

宅建業者を直接又は間接の社員とする一般社団法人(保証協会)が宅建士等に対して行う研修の実施に要する費用を助成します。

 

その他宅建業の健全な発達を図るために必要な業務

宅建業の健全な発達を目的とし、本来の業務に支障を及ぼすものではないと国土交通大臣より承認を受けたものであれば、広く業務を行うことができます。

 

「宅地建物取引業保証協会」に関連する法律

この項目に関連する法律は以下のとおりです。

宅建業法(令和241日施行)

64条の3(業務)

宅地建物取引業保証協会は、次に掲げる業務をこの章に定めるところにより適正かつ確実に実施しなければならない。

一 宅地建物取引業者の相手方等からの社員の取り扱つた宅地建物取引業に係る取引に関する苦情の解決

二 宅地建物取引士その他宅地建物取引業の業務に従事し、又は従事しようとする者(以下「宅地建物取引士等」という。)に対する研修

三 社員と宅地建物取引業に関し取引をした者(社員とその者が社員となる前に宅地建物取引業に関し取引をした者を含み、宅地建物取引業者に該当する者を除く。)の有するその取引により生じた債権に関し弁済をする業務(以下「弁済業務」という。)

2 宅地建物取引業保証協会は、前項の業務のほか、次に掲げる業務を行うことができる。

一 社員である宅地建物取引業者との契約により、当該宅地建物取引業者が受領した支払金又は預り金の返還債務その他宅地建物取引業に関する債務を負うこととなつた場合においてその返還債務その他宅地建物取引業に関する債務を連帯して保証する業務(第六十四条の十七において「一般保証業務」という。)

二 手付金等保管事業

三 全国の宅地建物取引業者を直接又は間接の社員とする一般社団法人による宅地建物取引士等に対する研修の実施に要する費用の助成

3 宅地建物取引業保証協会は、前二項に規定するもののほか、国土交通大臣の承認を受けて、宅地建物取引業の健全な発達を図るため必要な業務を行うことができる。

4 宅地建物取引業保証協会は、国土交通省令の定めるところにより、その業務の一部を、国土交通大臣の承認を受けて、他の者に委託することができる。

 

64条の4(社員の加入等)

一の宅地建物取引業保証協会の社員である者は、他の宅地建物取引業保証協会の社員となることができない。

 

実際に過去問を解いてみよう

問題:

宅地建物取引業者で保証協会に加入しようとする者は、その加入の日から2週間以内に、弁済業務保証金分担金を保証協会に納付しなければならない。(平成25年度本試験 問39より抜粋)

答え:×

 

解説

宅地建物取引業保証協会に加入しようとする者は「加入しようとする日までに」弁済業務保証金分担金を金銭で納付する必要があります。

 

「宅地建物取引業保証協会」ポイントのまとめ

この項目で押さえておくべきポイントは以下のとおりです。

  1. 日本には2つの保証協会がある
  2. 保証協会の業務は必要的業務と任意業務に分かれる
  3. 保証協会の必要的業務は弁済業務・苦情解決業務・研修業務
  4. 保証協会の任意的業務は一般保証業務・手付金等保管事業・研修費用の助成・その他宅建業の健全な発達を図るために必要な業務

 

最後に

 

今回は宅地建物取引業保証協会(保証協会)について解説しました。

保証協会は社員(宅建業者)の支援を行うばかりではなく、宅建業者の取引相手に問題が起こったときの対処や各種研修の実施など、宅建業界全体の発展のためにさまざまな業務を行っています。

試験対策のためだけでなく、宅建業者の頼れる存在である保証協会への理解をこの機会に深めておきましょう。

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この記事の監修者
小林 紀雄
住宅ローンの窓口株式会社代表取締役・iYell株式会社取締役兼執行役員
2008年にハウスメーカーに入社し営業に従事。2010年からSBIモーゲージ株式会社(現アルヒ株式会社)に入社し、累計1,500件以上の融資実績を残し、複数の支店の支店長としてマネジメントを歴任。2016年にiYell株式会社を共同創業し、採用や住宅ローン事業開発を主導。2020年に取締役に就任し、住宅ローンテック事業の事業責任者としてクラウド型住宅ローン業務支援システム「いえーる ダンドリ」を推進し事業成長に寄与。